SS, コピペ一覧/割と平和なカランドローネの一日 - 【オリウマ】サクラグローリアを語るスレ@wiki

「ふーっ、ふーっ、ふーっ」
「良いペース！後3回！」
「ふーっ、ふーっ、う、うーいっしゃぁ！」
「最後ちょっと早かったよ！後1回！」
「ぐ、う、ふーっ、う！」
「よーしOK！」
「ふあーっ！しんどかったよー！」
「お疲れさま、でも大分熟せるようになってきたんじゃない？
お正月がいい休息期間になったのかな？」
「うん、最初に比べると相当太腿周りは強化出来た実感あるよ
前は4セットで死にそうになってたのに今は8セットいけるし
死にそうになるのは変わらないけど」
「それが筋トレの醍醐味って奴！じゃあ折角だからもう1セット挑戦を」
「ごめんなさい流石にもうキツいです(超早口)」
「そう？じゃあ次はアタシだな
ドリンク飲んでクールダウンしたら補助変わってー」
「わかったー」

『割と平和なカランドローネの一日』

トレーニングルームからこんにちは、カランドローネです
1月4日に実家から寮に戻ってきた後、私とベレヌスはジャージに着替えてトレーニングルームに集まり、年末以来の筋トレに励んでいました
特に約束したわけでも無いのに自然と行われる合同筋トレは、年明けからは毎日の夕食前の日課になっています
最近私がそれなりに高負荷のトレーニングをこなせるようになってきたことでベレヌスがノリノリになってきてトレーニングがドンドンキツい方向に行っているのですが、
それもまた楽しみになってきている自分の変化が嬉しいような、乙女としてちょっとどうなんだと悲しいような、複雑な気持ちです

くーちゃんの捻挫が年末に完治して以降、私とくーちゃんは余り連絡を取っていません
捻挫が完治した日の夜、トレーナー室でくーちゃんとトレーナーさんに改めて怪我してる間の手伝いのお礼を言われた後にくーちゃんは
『グローリアに勝つためにこれからティアラ三冠本番まではトレーニングの強度と密度を上げていく
だからあまりカランとも遊べないようになるよ』
と真剣な顔で言っていました

阪神ジュベナイルフィリーズの衝撃をくーちゃんは正面から受け止めて、どうやってグローリア先輩を倒すかをトレーナーさんと真剣に話し合っています
内容が気にはなるのですが、流石に正式なチームメンバーでもない私が聞いて良い話ではありません

自分の夢に向かって真っ直ぐ努力するくーちゃんの姿は何だかとても大人びて見えました
私は来年の今頃くーちゃん程に真摯にレースに、ライバルに向き合えているのでしょうか
そう考えると何か恐ろしいプレッシャーを感じます
これもまた、トゥインクルシリーズに挑む試練の内の一つなのでしょうか
そんな事もあって、最近は筋トレにより一層の熱が入っている私でした

ベレヌスも年末の有馬記念でお姉さんがプラネットセブン先輩に差し切られた姿と、レース後に悔しさを表に出さずプラネットセブン先輩の勝利を讃える堂々たる姿を見て以来、トレーニングへの熱が質量ともに増してきているように思えます
私達が知らないだけで、きっとくーちゃんも、お姉さんも、それこそルドルフさんやトウカイテイオーさんと言った先輩達も、
こんな風に先輩達の背中を見てメイクデビューへのモチベーションを高めていっていたのでしょう
そう思うと、今の時間を無駄には出来ないな、という思いが自然に湧き上がってくるのでした

「ならもう1セット」
「ごめん、本気で死ぬからムリ」

ふう、お風呂は命の洗濯ですねえ
夕食と入浴を済ませた私は私服に着替えた後、部屋から出てまたもやロビーをうろうろしています
別にヒマだからうろついている訳ではありません
これもまたレースに関係する大事な事なのです

「あ、いたいた」
「おーい、カランちゃんこっちこっち」
「お待たせー、今日はみんな早いね」
「カランが風呂で溶けてただけじゃないのー？」
「筋トレ頑張ってるもんねー」
「うるさいよベレヌス」

今日集まっているのはクラスの栗東寮組の内、ベレヌスを中心としたグループの皆です
で、集まって何をするのかと言いますと

「うわー、ものの見事に出遅れてる……」
「待って？なんでこの先輩ここから勝てたの？
いくらG1を7勝した人と言っても2000mでこの出遅れは致命傷でしょ？」
「しかもこの先輩、本職は逃げ先行よね？」

寮のコンピュータ室にあるPCで、過去のレース動画を皆で観戦しての研究会です

今日のお題は出遅れ対策
まずやるな！という話ですが実際どうしてもやってしまうことはあるもの
ならば過去のレースで出遅れから見事に逆転勝利した先輩達の事例を学んで
自分達に出来る部分がそこにないかを探そうという試みですね

しかしまあ見事にやっちゃってますね、この先輩
雨の東京レース場で完全にバ群の後ろに押し出されちゃってますよ

あれ？
え？うそ、なんで

「なんで内ラチ沿いこんな簡単に上がってくのこの人」
「え？このレースって良バ場だったっけ？」
「しっかり不良バ場ですな……」
「しかも雨降ってるから間違いなく足元田んぼだよねこれ」
「足元田んぼだから内ラチ沿いを避けて走るのは解るのよ
でもなんでこの田んぼの中をフツーにまくって上がって来てるのこの先輩」
「うわー、4コーナー手前でもう3,4番手だよ
これだけ足元田んぼのコースでまくり戦法仕掛けたら流石に最後で足止まるんじゃ無いの？」
「うわ、うわ、うわ」
「一気に先頭にたって足元の良いバ場の真ん中に躍り出て来てるよ、この先輩」
「え、今の斜行じゃないの？」
「後ろとだいたい2バ身距離あるからセーフだね……」
「なんで1400mまくって来て後ろ突き放せるのこの人……」
「あ、流石に2番の先輩が詰めてきてる」
「お、これは差せる？」
「うわー、しのぎきっちゃったよ…」
「G1を7勝する人は格が違ったわ……」
「ねー、ベレちゃん、これアタシらに参考に出来る部分ある？」
「……田んぼのレース場でも内ラチ沿いから強襲してくる奴がいることを忘れるなという教訓、かな？……」
「ベレヌス、それフツーに走っても勝ち目無い相手って言わない？」
「ガッツリ蓋出来れば今のは前残り出来たかもしれないじゃん」
「でもべレちゃん、その場合蓋もろともに2番の先輩がぶち抜いてくだけだよね……
」
「……別のレース探そっか？」
「そだねー、カランちゃん、なんか適当に探してみて」
「りょーかーい」

こんな感じで真面目と言えば真面目、緩いと言えば緩い研究会を皆が集まれる日には入浴後にやって、
その後皆で宿題を片付けて就寝というのが最近のルーティンです

割とレース漬けな毎日ですが、これはこれで充実しているのを感じます
私達の世代もこの1月でスカウト可能年齢に達しました
先生から聞いた例年のパターンでは、この後の2月の模擬レースの成績と、１年間の成績や体力テストの結果等を見てスカウトする候補を決めるトレーナーさんが多いそうです
そして進級して最初の4月の模擬レースが終わると私達もスカウトされるようになります
そこからが本当のトゥインクルシリーズのスタートです
その日が来ることが楽しみなような、永遠に来ないで欲しいような
そんな期待と不安をいつも通り胸に抱えて、私は明日のためにベッドに入るのでした