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漢詩大会の漢詩全文/晋代 - (2011/10/11 (火) 15:50:17) の1つ前との変更点

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#contents(fromhere=true) ----- *陸機 **猛虎行 出典:《[[昭明文選/巻28>http://zh.wikisource.org/wiki/%E6%98%AD%E6%98%8E%E6%96%87%E9%81%B8/%E5%8D%B728#.E7.8C.9B.E8.99.8E.E8.A1.8C]]》、《[[藝文類聚/巻41>http://zh.wikisource.org/wiki/%E8%97%9D%E6%96%87%E9%A1%9E%E8%81%9A/%E5%8D%B7041]]》 ***原文 渴不飲盜泉水。熱不息悪木陰。 悪木豈無枝。志士多苦心。 整駕肅時命。杖策將遠尋。 飢食猛虎窟。寒棲野雀林。 日歸功未建。時往歲載陰。 崇雲臨岸駭。鳴條隨風吟。 靜言幽谷底。長嘯高山岑。 急絃無懦響。亮節難為音。 人生誠未易。曷云開此衿。 眷我耿介懷。俯仰愧古今。 ***訳 「渇くとも盗泉の水を飲まず、熱くとも悪木の陰で休まず。 ところが悪木も枝が茂るので、志士らは(陰に対して)苦心がたえない」と古人言う。 帝王の馬車を整え、陛下の命に従い。鞭を振るえば馬は遠く、より遠くへ。 飢えれば猛虎の窟にて食し。寒くとも野雀の林に棲む。 太陽西に帰するとも、功未だ成らず。時は往き、歳月は秋冬を迎える。 沸き起こる高雲を、岸辺から臨み。草木の枝は秋風にしたがい、呻吟す。 奥深き幽谷の底に、声無き言葉を発し。高山の頂に、思いの丈を長嘯する。 張り詰めた琴弦に、緩んだ弦のか弱い響きはなく。信義貞節のゆえに、音を為す事すら難しい。 人生は誠に難しい。どうして心を開けと言うのか。 正直に生きていた昔の私を省みるほどに。俯き、仰ぎ、古今を恥じる。 > 論語、詩経、楚辞、古詩の影響あり。他にも、王粲など当時の有名な作の雰囲気が混じっている。 > 自分の意思に背く命令に従い、ついに何ひとつ成功しないまま、煩悶する志士の姿を描写している。 > 晋代の混乱する政局の中、行き場も無く彷徨いつつ、生き方を曲げてしまった男が、昔を思い恥じ入る。 【渴不飲盜泉水。熱不息悪木陰】【悪木豈無枝。志士多苦心】 李善が注釈した文選によると、《尸子》「孔子至於勝母暮矣。而不宿。過於盗泉渇矣。而不飲。惡其名也」 (孔子が「勝母」に着いたとき日が暮れたが、宿をとらなかった。「盗泉」を過ぎるとき喉が渇いていたが、飲まなかった。 母に勝つ、泉を盗む、それぞれの悪名を嫌ったのだ) 江邃《文釋》によると、《管子》「夫士懷耿介之心,不蔭惡木之枝。惡木尚能恥之,況與惡人同處?」 (正しい心を持つ士は、悪木の枝の木陰にやどろうとしない。悪木ですら恥じるのに、まして悪人と同じ所に寄れと言うのか?) 【駕】帝王の馬車。 【時命】時の支配者の命令。思玄賦曰:爰整駕而亟行,時君之命也。 【策】《杜預左氏傳》では馬檛(杖、鞭)とする。 【將】《廣雅》では「欲」の意とする。 【功未建】《陸賈新語》「以義建功(義をもって功を建てる)」 【載陰】《神農本草》では、「秋冬為陰(秋冬を陰と為す)」 【駭】《廣雅》では、「起」。 ***解説 [[『晋書(維基文庫)』陸機の項>http://zh.wikisource.org/wiki/%E6%99%89%E6%9B%B8/%E5%8D%B7054]] / [[維基文庫 陸機作品一覧>http://zh.wikisource.org/wiki/作者:陸機?uselang=jaD]] / [[日本語版wikipediaの解説>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E6%A9%9F]]/  《詩品》では「上品」。有名人なので、解説は程々にして。  陸機の「[[弔魏武帝文>http://www.geocities.jp/sangoku_bungaku/riku_ki/mourning_gibu.html]]」における武帝の遺言は、(陸機による)偽作の可能性を指摘されている。偽作してまで曹操を貶めることで、中原における旧呉の優越性を示そうとしたのではないか、という(渡辺氏「[[三国志 演義から正史、そして史実へ>http://www.chuko.co.jp/shinsho/2011/03/102099.html]]」等)。  また、陸機の作品を読むと、曹操、曹丕など三国時代の有名人と同じ詩題の作品が目に付くので、意図的に同じ題の詩を作っている気もする(要検証)。 [[藝文類聚/卷041>http://zh.wikisource.org/wiki/%E8%97%9D%E6%96%87%E9%A1%9E%E8%81%9A/%E5%8D%B7041]] 晉陸機猛虎行曰.渇不飲盜泉水.熱不息惡木陰.惡木豈無枝.志士苦用心.整駕肅時命.振策將遠尋. 雑言古猛虎行曰:飢不従猛虎食,暮不従野雀棲。野雀安無巣,遊子為誰驕? 魏文帝猛虎行曰.與君媾新歡.託配於二儀.充列于紫微.升降焉可知.何梧攀鳳翼.雲雨散洪池.  三曹はフリーダムな作品が多いので、古典にもとづく原点回帰を提唱することで、晋代に残る魏の影響を削ごうとしたか。  「俺は●○より優れた詩を作れるんだ!」という自負もあったかもしれない。  いずれにせよ、[[1800年後に曹操ファンクラブ名誉会員>http://www.geocities.jp/sangoku_bungaku/riku_ki/tankako.html]]扱いされていることを、彼は泉下でどう思っているのだろうか。
#contents(fromhere=true) ----- *陸機 **猛虎行 出典:《昭明文選/巻28[[維基>http://zh.wikisource.org/wiki/%E6%98%AD%E6%98%8E%E6%96%87%E9%81%B8/%E5%8D%B728#.E7.8C.9B.E8.99.8E.E8.A1.8C]]》、《藝文類聚/巻41[[維基>http://zh.wikisource.org/wiki/%E8%97%9D%E6%96%87%E9%A1%9E%E8%81%9A/%E5%8D%B7041]]》 ***原文 渴不飲盜泉水。熱不息悪木陰。 悪木豈無枝。志士多苦心。 整駕肅時命。杖策將遠尋。 飢食猛虎窟。寒棲野雀林。 日歸功未建。時往歲載陰。 崇雲臨岸駭。鳴條隨風吟。 靜言幽谷底。長嘯高山岑。 急絃無懦響。亮節難為音。 人生誠未易。曷云開此衿。 眷我耿介懷。俯仰愧古今。 ***訳 「渇くとも盗泉の水を飲まず、熱くとも悪木の陰で休まず。 ところが悪木も枝が茂るので、志士らは(陰に対して)苦心がたえない」と古人言う。 帝王の馬車を整え、陛下の命に従い。鞭を振るえば馬は遠く、より遠くへ。 飢えれば猛虎の窟にて食し。寒くとも野雀の林に棲む。 太陽西に帰するとも、功未だ成らず。時は往き、歳月は秋冬を迎える。 沸き起こる高雲を、岸辺から臨み。草木の枝は秋風にしたがい、呻吟す。 奥深き幽谷の底に、声無き言葉を発し。高山の頂に、思いの丈を長嘯する。 張り詰めた琴弦に、緩んだ弦のか弱い響きはなく。信義貞節のゆえに、音を為す事すら難しい。 人生は誠に難しい。どうして心を開けと言うのか。 正直に生きていた昔の私を省みるほどに。俯き、仰ぎ、古今を恥じる。 > 論語、詩経、楚辞、古詩の影響あり。他にも、王粲など当時の有名な作の雰囲気が混じっている。 > 自分の意思に背く命令に従い、ついに何ひとつ成功しないまま、煩悶する志士の姿を描写している。 > 晋代の混乱する政局の中、行き場も無く彷徨いつつ、生き方を曲げてしまった男が、昔を思い恥じ入る。 【渴不飲盜泉水。熱不息悪木陰】【悪木豈無枝。志士多苦心】 李善が注釈した文選によると、《尸子》「孔子至於勝母暮矣。而不宿。過於盗泉渇矣。而不飲。惡其名也」 (孔子が「勝母」に着いたとき日が暮れたが、宿をとらなかった。「盗泉」を過ぎるとき喉が渇いていたが、飲まなかった。 母に勝つ、泉を盗む、それぞれの悪名を嫌ったのだ) 江邃《文釋》によると、《管子》「夫士懷耿介之心,不蔭惡木之枝。惡木尚能恥之,況與惡人同處?」 (正しい心を持つ士は、悪木の枝の木陰にやどろうとしない。悪木ですら恥じるのに、まして悪人と同じ所に寄れと言うのか?) 【駕】帝王の馬車。 【時命】時の支配者の命令。思玄賦曰:爰整駕而亟行,時君之命也。 【策】《杜預左氏傳》では馬檛(杖、鞭)とする。 【將】《廣雅》では「欲」の意とする。 【功未建】《陸賈新語》「以義建功(義をもって功を建てる)」 【載陰】《神農本草》では、「秋冬為陰(秋冬を陰と為す)」 【駭】《廣雅》では、「起」。 ***解説 [[『晋書(維基文庫)』陸機の項>http://zh.wikisource.org/wiki/%E6%99%89%E6%9B%B8/%E5%8D%B7054]] / [[維基文庫 陸機作品一覧>http://zh.wikisource.org/wiki/作者:陸機?uselang=jaD]] / [[日本語版wikipediaの解説>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E6%A9%9F]]/  《詩品》では「上品」。有名人なので、解説は程々にして。  陸機の「[[弔魏武帝文>http://www.geocities.jp/sangoku_bungaku/riku_ki/mourning_gibu.html]]」における武帝の遺言は、(陸機による)偽作の可能性を指摘されている。偽作してまで曹操を貶めることで、中原における旧呉の優越性を示そうとしたのではないか、という(渡辺氏「[[三国志 演義から正史、そして史実へ>http://www.chuko.co.jp/shinsho/2011/03/102099.html]]」等)。  また、陸機の作品を読むと、曹操、曹丕など三国時代の有名人と同じ詩題の作品が目に付くので、意図的に同じ題の詩を作っている気もする(要検証)。 [[藝文類聚/卷041>http://zh.wikisource.org/wiki/%E8%97%9D%E6%96%87%E9%A1%9E%E8%81%9A/%E5%8D%B7041]] 晉陸機猛虎行曰.渇不飲盜泉水.熱不息惡木陰.惡木豈無枝.志士苦用心.整駕肅時命.振策將遠尋. 雑言古猛虎行曰:飢不従猛虎食,暮不従野雀棲。野雀安無巣,遊子為誰驕? 魏文帝猛虎行曰.與君媾新歡.託配於二儀.充列于紫微.升降焉可知.何梧攀鳳翼.雲雨散洪池.  三曹はフリーダムな作品が多いので、古典にもとづく原点回帰を提唱することで、晋代に残る魏の影響を削ごうとしたか。  「俺は●○より優れた詩を作れるんだ!」という自負もあったかもしれない。  いずれにせよ、[[1800年後に曹操ファンクラブ名誉会員>http://www.geocities.jp/sangoku_bungaku/riku_ki/tankako.html]]扱いされていることを、彼は泉下でどう思っているのだろうか。

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