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苦寒行 - (2014/03/10 (月) 11:12:33) の1つ前との変更点

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現在地:[[トップページ]]>[[漢詩大会の漢詩全文]]>[[漢詩大会の漢詩全文/曹操]]>今ココ ----- #contents(fromhere=true) ----- *原文 出典:《漢魏六朝百三名家集(国デジ)》《古詩源(近デジ)》《楽府詩集(台湾)》、ここでは古詩源より引用 北上太行山,艱哉何巍巍。羊腸坂詰屈,車輪為之摧。樹木何蕭瑟,北風聲正悲。 熊羆對我蹲,虎豹夾道啼。谿谷少人民,雪落何霏霏。延頸長歎息,遠行多所懷。 我心何怫鬱,思欲一東歸。水深橋梁絶,中路正裴回。迷惑失徑路,薄暮無宿棲。 行行日巳遠,人馬同時飢。擔囊行取薪,斧冰持作糜。悲彼東山詩,悠悠使我哀。 *てけとーな日本語 太行山を北へと向かえば。艱難たるかな何と高く険しいこと!羊腸の坂は詰屈で。そのために車輪はくだけた。 樹木は蕭瑟のようにうなり。北風の声が悲しく響く。 熊羆は我に対しうずくまり。虎豹は路を挟んで啼く。溪谷に人民は少なく。雪は落ちるように、絶え間なく降りしきる。 頸を延ばしては、長く歎息し。遠き行路に懷うところ多し。 我心の何ぞ怫鬱たる。思うて一たび東帰を欲す。水深うして橋梁は絶え。中路に正に徘徊す。 迷い惑して故路を失い。薄暮に宿棲無し。 歩き進むごとに日は遠ざかり、人馬は同時に飢える。袋を背負っては、薪を取りに行き。氷を斧で割り、溶かしては糜(かゆ)を作る。 悲しきは、かの東山詩。この荒涼たる視界が、我を哀しませる。 ----- *単語解説 【太行山】山西省東。山西省・山東省の地名は、この太行山脈の西・東にあることに由来する。 中国らしい断崖絶壁や雄大な自然で知られ、大行山大峡谷は、中国国家森林公園に指定されている。 また軍事の要衝であり、古くは春秋戦国時代の戦場になり、現在は中華人民共和国の軍事基地がある。 【羊腸坂】太行山にある坂の名前。狭い道が、曲がりくねった羊腸のようであることから。 《戦国策-秦策》に「決羊腸之険、塞太行口」とあり、また、日本でも「箱根八里」の歌(1番)に登場する。 【熊羆對我蹲,虎豹夾道啼】猛獣の多いさま。 蹲る熊というモチーフは、古代中国の青銅器でたまに使われている。 《周礼·考工記·凫氏》:「钟县謂之旋,旋虫謂之干。」 鄭玄注「今時旋有蹲熊、盤龍、辟邪。」 また、覇王や神獣に対し、虎などの猛獣がうずくまる、という伝説がある。 《管子([[近デジからの孫引き>http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/753826/171]])》 「桓公乗白馬而田、得虎、虎見桓公、恐而伏地、桓公怪而問之。管仲答曰、此馬似駮、駮食虎豹、虎疑駮而懼」 《管子-小問(維基)》 桓公乘馬。虎望見之而伏。桓公問管仲曰:「今者寡人乘馬。虎望見寡人而不敢行。其故何也?」 管仲對曰:「意者。君乘駁馬而盤桓。迎日而馳乎?」 公曰:「然」。 管仲對曰:「此駁象也。駮食虎豹。故虎疑焉。」 《太平御覧892巻(維基)》 《說苑》曰:晋平公出畋。見乳虎。乳虎伏而不動。 顧謂師曠曰:「吾聞之。霸王之主出。則猛獸伏而不敢起。今者寡人出見乳虎。伏而不動。此其猛獸乎?」 師曠曰:「鵲食猬。猬食鵔音俊鸃音宜。鵔鸃食豹。豹食駮。駮食虎。夫駮之狀。有似駁馬。今者君之出。必驂駁馬而出畋乎?」 公曰:「然。」 登場人物は違うが、いずれも「虎が、まだら模様の馬を駮(虎を食う神獣)と見間違え、うずくまる」ことは共通している。 覇王の意図をもっているというよりは、「激しい吹雪のために馬がまだら模様になるほどだ。しかし見てみろ、猛獣が我々を見て驚いているぞ」みたいな、「猛獣が出没するけど、今のこの馬の格好は、猛獣よけにちょうど良いよね!」みたいな、軍を鼓舞するための劇的な演出とみるべきか。 【中路】《宋書(台湾)》では、「中道」 【薄暮無宿棲】《宋書(台湾)》では、「暝無所宿棲」 【行行日巳遠】《宋書(台湾)》では、「行行日以遠」 【擔囊】擔は担う、囊はふくろ 【東山詩】《[[詩経-国風-豳-東山>http://www39.atwiki.jp/sangokushi7/pages/60.html#id_6baa07f9]]》。東征に成功し、帰ってきた周公が、配下や民衆の苦労をいたわって作った詩とされる。周公みたいに東征に成功し、皆を無事に故郷に帰せるんかなぁ……みたいな。 あるいは、[[歩出夏門行]]は、北征から帰った後に、この東山詩にちなんで作られたんかしら。 【悠悠】色々な意味があるが、ここでは荒涼という感じの意味合いをとる。 ----- *コメント 関連: 《[[詩経-国風-豳-東山>http://www39.atwiki.jp/sangokushi7/pages/60.html#id_6baa07f9]]》 《樂府解題》曰:「晉樂奏魏武帝《北上篇》。備言冰雪溪谷之苦。其後或謂之《北上行》。蓋因武帝辭而擬之也。」 ----- [[漢詩大会の漢詩全文/曹操]]インデックスに戻る
現在地:[[トップページ]]>[[漢詩大会の漢詩全文]]>[[漢詩大会の漢詩全文/曹操]]>今ココ ----- #contents(fromhere=true) ----- *原文 出典:《漢魏六朝百三名家集(国デジ)》《古詩源(近デジ)》《楽府詩集(台湾)》、ここでは古詩源より引用 北上太行山,艱哉何巍巍。羊腸坂詰屈,車輪為之摧。樹木何蕭瑟,北風聲正悲。 熊羆對我蹲,虎豹夾道啼。谿谷少人民,雪落何霏霏。延頸長歎息,遠行多所懷。 我心何怫鬱,思欲一東歸。水深橋梁絶,中路正裴回。迷惑失徑路,薄暮無宿棲。 行行日巳遠,人馬同時飢。擔囊行取薪,斧冰持作糜。悲彼東山詩,悠悠使我哀。 *てけとーな日本語 太行山を北へと向かえば。艱難たるかな何と高く険しいこと!羊腸の坂は詰屈で。そのために車輪はくだけた。 樹木は蕭瑟のようにうなり。北風の声が悲しく響く。 熊羆は我に対しうずくまり。虎豹は路を挟んで啼く。溪谷に人民は少なく。雪は落ちるように、絶え間なく降りしきる。 頸を延ばしては、長く歎息し。遠き行路に懷うところ多し。 我心の何ぞ怫鬱たる。思うて一たび東帰を欲す。水深うして橋梁は絶え。中路に正に徘徊す。 迷い惑して故路を失い。薄暮に宿棲無し。 歩き進むごとに日は遠ざかり、人馬は同時に飢える。袋を背負っては、薪を取りに行き。氷を斧で割り、溶かしては糜(かゆ)を作る。 悲しきは、かの東山詩。この荒涼たる視界が、我を哀しませる。 ----- *単語解説 【太行山】山西省東。山西省・山東省の地名は、この太行山脈の西・東にあることに由来する。 中国らしい断崖絶壁や雄大な自然で知られ、大行山大峡谷は、中国国家森林公園に指定されている。 また軍事の要衝であり、古くは春秋戦国時代の戦場になり、現在は中華人民共和国の軍事基地がある。 【羊腸坂】太行山にある坂の名前。狭い道が、曲がりくねった羊腸のようであることから。 《戦国策-秦策》に「決羊腸之険、塞太行口」とあり、また、日本でも「箱根八里」の歌(1番)に登場する。 【熊羆對我蹲,虎豹夾道啼】猛獣の多いさま。 蹲る熊というモチーフは、古代中国の青銅器でたまに使われている。 《周礼·考工記·凫氏》:「钟县謂之旋,旋虫謂之干。」 鄭玄注「今時旋有蹲熊、盤龍、辟邪。」 また、覇王や神獣に対し、虎などの猛獣がうずくまる、という伝説がある。 《管子([[近デジからの孫引き>http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/753826/171]])》 「桓公乗白馬而田、得虎、虎見桓公、恐而伏地、桓公怪而問之。管仲答曰、此馬似駮、駮食虎豹、虎疑駮而懼」 《管子-小問(維基)》 桓公乘馬。虎望見之而伏。桓公問管仲曰:「今者寡人乘馬。虎望見寡人而不敢行。其故何也?」 管仲對曰:「意者。君乘駁馬而盤桓。迎日而馳乎?」 公曰:「然」。 管仲對曰:「此駁象也。駮食虎豹。故虎疑焉。」 《太平御覧892巻(維基)》 《說苑》曰:晋平公出畋。見乳虎。乳虎伏而不動。 顧謂師曠曰:「吾聞之。霸王之主出。則猛獸伏而不敢起。今者寡人出見乳虎。伏而不動。此其猛獸乎?」 師曠曰:「鵲食猬。猬食鵔音俊鸃音宜。鵔鸃食豹。豹食駮。駮食虎。夫駮之狀。有似駁馬。今者君之出。必驂駁馬而出畋乎?」 公曰:「然。」 登場人物は違うが、いずれも「虎が、まだら模様の馬を駮(虎を食う神獣)と見間違え、うずくまる」ことは共通している。 覇王の意図をもっているというよりは、「激しい吹雪のために馬がまだら模様になるほどだ。しかし見てみろ、猛獣が我々を見て驚いているぞ」みたいな、「猛獣が出没するけど、今のこの馬の格好は、猛獣よけにちょうど良いよね!」みたいな、軍を鼓舞するための劇的な演出とみるべきか。 【中路】《宋書(台湾)》では、「中道」 【薄暮無宿棲】《宋書(台湾)》では、「暝無所宿棲」 【行行日巳遠】《宋書(台湾)》では、「行行日以遠」 【擔囊】擔は担う、囊はふくろ 【東山詩】《[[詩経-国風-豳-東山》。東征に成功し、帰ってきた周公が、配下や民衆の苦労をいたわって作った詩とされる。周公みたいに東征に成功し、皆を無事に故郷に帰せるんかなぁ……みたいな。 あるいは、[[歩出夏門行]]は、北征から帰った後に、この東山詩にちなんで作られたんかしら。 【悠悠】色々な意味があるが、ここでは荒涼という感じの意味合いをとる。 ----- *コメント 関連: 《[[詩経-国風-豳-東山》 《樂府解題》曰:「晉樂奏魏武帝《北上篇》。備言冰雪溪谷之苦。其後或謂之《北上行》。蓋因武帝辭而擬之也。」 ----- [[漢詩大会の漢詩全文/曹操]]インデックスに戻る

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