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出典:《楽府詩集(台湾)》《漢魏六朝百三名家集(国デジ)》
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*晋鼓吹曲二十二篇(傅玄)
《晉書‧樂志》曰:
武帝令傅玄製鼓吹曲二十二篇以代魏曲:一曰《靈之祥》,二曰《宣受命》,三曰《征遼東》,四曰《宣輔政》,五曰《時運多難》,六曰《景龍飛》,七曰《平玉衡》,八曰《文皇統百揆》,九曰《因時運》,十曰《惟庸蜀》,十一曰《天序》,十二曰《大晉承運期》,十三曰《金靈運》,十四曰《於穆我皇》,十五曰《仲春振旅》,十六曰《夏苗田》,十七曰《仲秋獮田》,十八曰《順天道》,十九曰《唐堯》,二十曰《玄雲》,二十一曰《伯益》,二十二曰《釣竿》。
・''訳''
《晋書‧樂志》曰
「晋武帝(司馬炎)の命令により傅玄が作成した鼓吹曲二十二篇を以って、魏曲に代える:以下略」

**霊之祥
古《朱鷺行》。《古今樂錄》曰:「《靈之祥》,言宣皇帝之佐魏,猶虞舜之事堯也。既有石瑞之徵,又能用武以誅孟度之逆命也。」

靈之祥,石瑞章。旌金德,出西方。
天降命,授宣皇。應期運,時龍驤。
繼大舜,佐陶唐。讚武、文,建帝綱。
孟氏叛,據南疆。追有扈,亂五常。
吳寇勁,蜀虜強。交誓盟,連遐荒。
宣赫怒,奮鷹揚。震乾威,曜電光。
陵九天,陷石城。梟逆命,拯有生。萬國安,四海寧。

#region(単語解説)
【孟氏叛,據南疆】孟氏、南疆はちょっと不明。直訳すれば南の果て。上庸の孟達だと思う
【陶唐】五帝のうち、尭をさす。舜は尭のあとを継いだ。
【梟】猛々しい。梟雄。
【五常】五徳。儒教が説く約束事。仁・義・礼・智・信
【逆命】暴虐な命令、もしくは命令に背くこと。「逆命利君」は漢の劉向『説苑』にもある。命にそむくことで、君主に利益を与える。
上庸の孟達が反乱を起こした(といわれる)とき、当時の皇帝だった曹叡は孟達の謀反を疑ったが、これを司馬懿は無視している。
#endregion

・''訳''
序:古の《朱鷺行》である。「《霊之祥》は,宣皇帝(司馬懿)の魏を補佐すること,昔の舜が堯に仕えるがごときであった事を言うものだ。既に石瑞のきざしはあり,またよく武を用いて孟達を誅した度の逆命をいうものなり」

霊は吉兆をしめし、石も瑞兆あきらかに。金徳の旌旗、西方より出づる。
天は命を降し、宣帝に授ける。期運に應じ、時流を飛翔す。
大舜を継ぎ、陶唐を補佐す。武文を讃え、帝綱を建てる。
孟氏が叛き、南疆に據る。追従者もあらわれ、五常は乱れる。
呉寇は勁く、蜀虜は強く。誓盟を交わし、たびたび荒すこと遐(ひさ)しい。
宣帝は激しく怒り、奮うこと鷹が飛揚するが如し。乾威を震し,電光は曜(かがや)く。
九天をしのぎ,石城を陷す。梟雄は逆命し,生有る物らを救う。萬國安んじて,四海は寧たり。

>金行の時代が来たぞ。宣帝陛下は天命をうけ、魏の武帝や文帝に仕え、ばーっと活躍したぞ。上庸の孟達が反乱して、敵の呉と蜀が攻めてくる。宣帝陛下ばーっと怒って、明帝の命令に逆らい、天下を平定した。宣帝陛下は、当時の皇帝より天命を知ってたyo。

**宣受命
古《思悲翁行》。《古今樂錄》曰:「《宣受命》,言宣皇帝禦諸葛亮,養威重,運神兵,亮震怖而死。」

宣受命,應天機。風雲時動,神龍飛。
禦諸葛,鎮雍、梁。邊境安,夷夏康。
務節事,勤定傾。攬英雄,保持盈。
淵穆穆。赫明明。沖而泰,天之經。
養威重,運神兵。亮乃震斃,天下寧。

・''訳''
序:古の《思悲翁行》である。《古今樂録》に曰く:「《宣受命》,宣皇帝が諸葛亮を禦するを言う,威重を養い,神兵を運ぶ,亮は恐怖に震え、しかるに死す」

宣は命を受け,天機に応じる。風も雲も時も動き,神龍は飛ぶ。
諸葛を禦し,雍、梁を鎮める。辺境を安んじ,夏を平定する。
節事を務め,定傾を勤む。英雄を攬し,盈を保持す。
淵は穆(おごそ)かにして。赫(かがやき)は明るく。沖はゆえに凪いで,天もまた和ぐ。
威重を養い,神兵を運ぶ。亮は一に震え斃れ死者となり,天下は安寧たり。

>諸葛亮が来たけど、宣帝陛下が軍を正しく統率なされば、敵は怯えるあまり自滅した。

**征遼東
古《艾而張行》。《古今樂錄》曰:「《征遼東》,言宣皇帝陵大海之表,討滅公孫淵而梟其首也。」

征遼東,敵失據。威靈邁日域,公孫既授首,群逆破膽,咸震怖。
朔北響應,海表景附。武功赫赫,德雲布。

・''訳''
序:古《艾而張行》。《古今樂録》曰:「《征遼東》,言宣皇帝陵大海之表,討滅公孫淵而梟其首也。」

遼東を征し,敵は據を失す。威霊は日域へ突き進む,公孫は既に首を己の手に授け,群逆どもは胆を潰し,咸に震え恐れる。
朔北は響應し,海表身に従う影のごとし。武功は赫赫,徳は雲布。

>宣帝陛下が遼東に軍を進め、敵の首をはねれば、反逆者は恐れ従い、海も人心も凪ぐ。

**宣輔政
古《上之回行》。《古今樂錄》曰:「言宣皇帝聖道深遠,撥亂反正,網羅文武之才,以定二儀之序也。」

宣皇輔政,聖烈深。撥亂反正,從天心。
網羅文武才,慎厥所生。所生賢,遺教施。
安上治民,化風移。肇創帝基,洪業垂。於鑠明明,時赫戲。
功濟萬世,定二儀。雲澤雨施,海外風馳。

【所生】生みの親、生地、生まれた者

・''訳''
序:古の《上之回行》。《古今樂録》曰く「宣皇帝は聖道深遠にて,乱がおこれば正し,文武の才を網羅し,以って二儀の序を定むる也」

宣皇は政を輔佐し,聖烈を深める。反乱をはねのけ正し,天心に従う。
文武の才を網羅し,慎みて成果を生めば。所生は賢にして,遺教を施す。
上を安んじ民を治める,化風はうつろい。帝基の創造を始める,業の洪れ垂れるや。金属を明明と溶かし,時とかがやかしく戲れる。
功は萬世を救済し,二儀を定める。雲は澤い雨は施し,海外までも風は馳せり。

>宣帝陛下は幼帝を補佐し、次の御世を固めました。

**時運多難
古《擁離行》。《古今樂錄》曰:「《時運多難》,言宣皇帝致討吳方,有征無戰也。」

時運多難,道教痡。天地變化,有盈虛。
蠢爾吳蠻,虎視江湖。我皇赫斯,致天誅。
有征無戰,弭其圖。天威橫被,廓東隅。

#region(単語解説)
【痡】毒害、危害、病のもととなる。
【道教】文字どおり道教(黄巾の乱等)のことか、道、教えといった古代概念かは不明
【蠢】おろか、うごめく
【橫被】あまねく覆う
#endregion

・''訳''
序:古《擁離行》。《古今樂録》曰:「《時運多難》,宣皇帝が呉方を討伐したとき,有征して無戦を言う」

時運は多難にして,道教は中原の病巣となる。天地は変化し,盈虚あり。
呉の蛮族は愚かにもうごめき,江湖を虎視す。我皇はおそれ多くもこの地に,天誅を致す。
征有れば戦い無く,晋呉の境界をなくす。天威はあまねく覆う,ひろく東の隅までも。

>陛下は恐れ多くも呉を討伐なさいました。

**景龍飛
古《戰城南行》。《古今樂錄》曰:「《景龍飛》,言景帝克明威教,賞從夷逆,祚隆無疆,崇此洪基也。」

景龍飛,御天威。聰鑒玄察,動與神明協機。
從之者顯,逆之者滅夷。文教敷,武功巍。
普被四海,萬邦望風,莫不來綏。
聖德潛斷,先天弗違。弗違祥,享世永長。
猛以致寬,道化光。赫明明,祚隆無疆。
帝績惟期,有命既集,崇此洪基。

・''訳''
序:古《戦城南行》。《古今樂録》曰:「《景龍飛》,景帝が克明威教,従を賞し逆を殺し,隆盛にして果てなく,此の洪基を崇めるものなり」

景龍は飛び,御天威をしめす。聡く細やかに玄察し,動ずれば神明も要所を助ける。
従う者は顕彰し,逆う者はみなごろし。文教を敷き,いさおし高く。
あまねく四海におよび,萬邦は風を望み,安らぎの届かぬ場所はなし。
聖徳のひそかな決断は,天に先んじて違うことなし。違い無き吉兆を,世が享けること永く長く。
猛を以って寬と致し,道は光と化す。赫く明明なる,皇帝の福徳は隆盛にして果てなく。
帝の治世に,命あるものは既に集い,溢れんばかりの基を崇めたてまつる。

>陛下∩( ・ω・)∩ばんじゃーい。曹操の秋胡行でも引用された、易経。

**平玉衡
古《巫山高行》。《古今樂錄》曰:「《平玉衡》,言景帝一萬國之殊風,齊四海之乖心,禮賢養士而纂洪業也。」

平玉衡,糾姦回。萬國殊風,四海乖。
禮賢養士,羈御英雄,思心齊。纂戎洪業,崇皇階。
品物咸亨,聖敬日躋。聰鑒盡下情,明明綜天機。

【纂戎】(先人の業績を)継承する
【品物咸亨】『易経坤卦』の『彖伝(たんでん)』“含弘広大、品物咸亨''。広大にして、物事をよく通す。度量が広い。

・''訳''
序:古《巫山高行》。《古今樂録》曰:「《平玉衡》,景帝が萬國を平定すれば,四海の心は凪ぎ,禮賢は士を養いしかるに洪業を纂する也」

玉衡は平らとなり,星の誤った回転をただす。萬國のそれぞれ異なる気風は,四海におとなしい心をもたらす。
礼賢は士を養い,羈は英雄を御す,思心をそろえ。先人の業績を継承し,皇階を崇める。
品物ことごとく亨(とお)り,聖を敬えば日は躋(のぼ)る。聡く細やかに下々の事情を見通し,明明と(天のはた織り機で神布を織りなすように)万事を総べて下さる。

>天は星をただしく統括し、陛下は人をただしく統べる。

**文皇統百揆
古《上陵行》。《古今樂錄》曰:「《文皇統百揆》,言文皇帝始統百揆,用人有序,以敷太平之化也。」

文皇統百揆,繼天理萬方。武將鎮四隅,英佐盈朝堂。
謀言協秋蘭,清風發其芳。洪澤所漸潤,礫石為珪璋。
大道謀五帝,盛德踰三王。咸光大,上參天與地,並化無內外。
無内外,六合並康乂。並康乂,遘茲嘉會。
在昔羲與農,大晉德斯邁。鎮征及諸州,為蕃衛。
玄功濟四海,洪烈流萬世。

#region(単語解説)
【珪璋】たぶん彫刻の一種?漆にすじを彫りこむ
【六合】天地の上下四方
【康乂】安らかに治まる。平和な治世。
【羲與農】伏羲~神農
#endregion

・''訳''
序:古《上陵行》。《古今樂録》曰:「《文皇統百揆》,文皇帝の始めに百揆を統べ,人を用いること序があり,以って太平の治世を敷く」

文皇は百揆を統し,天を継ぎ萬方を管理する。武將は四隅に鎮し,英佐は朝堂に盈ちる。
謀言は秋蘭に協和し,清風は其の芳香を発する。洪澤は水の流れこみ潤う所にして,岩は(水に削られ)吉祥を示す。
大道は五帝にひとしく,盛徳は三王をこえる。咸光は大にして,上は天から地までも洞察し,至りては無内外と化す。
内外は無く,天地四方は平和に治まる。平和に治まれば,人はまみえるたびに出会いを喜ぶ。
昔、伏羲、神農あり,大晋の徳は斯より足を踏み出した。鎮征しては諸州に及び,しだいに守りを固めていく。
玄功は四海にわたり,溢れんばかりの徳は萬世までも激しく流れゆく。

>万世一統たる陛下の徳に、限りはない。

**因時運
古《將進酒行》。《古今樂錄》曰:「《因時運》,言文皇帝因時運變,聖謀潛施,解長蛇之交,離群桀之黨,以武濟文,審其大計,以邁其德也。」
因時運,聖策施。長蛇交解,群桀離。
勢窮奔呉,虎騎厲。惟武進,審大計。
時邁其德,清一世。

【黨】徒党、親族?

・''訳''
序:古《將進酒行》。《古今樂録》曰:「《因時運》,言文皇帝は時運の変化により,聖謀を潛く施し,長蛇之交を解き,群は桀の氏族から離れ,以って武濟文,其の大計を審る,以って其徳を邁進するものなり」

時運に因りて,聖策を施す。長蛇は交解し,暴君たる孫の氏族は離散する。
勢は窮りて呉に奔り,虎騎は厳粛たり。ただ武進し,大計を知る。
其の徳より時は流れ,一世を清くする。

>陛下の聖なる行いにより、呉の繋がりは断たれました。

**惟庸蜀
古《有所思行》。《古今樂錄》曰:「《惟庸蜀》,言文皇帝既平萬乘之蜀,封建萬國,復五等之爵也。」

惟庸蜀,僭號天一隅。劉備逆帝命,禅、亮承其餘。
擁衆數十萬,闚隙乘我虛。驛騎進羽檄,天下不遑居。
姜維屢寇邊,隴上為荒蕪。文皇愍斯民,歴世受罪辜。
外謨蕃屏臣,内謀衆士夫。爪牙應指授,腹心獻良圖。
良圖協成文,大興百萬軍。雷鼓震地起,猛勢陵浮雲。
逋虜畏天誅,面縛造壘門。萬里同風教,逆命稱妾臣。
光建五等,紀綱天人。

#region(単語解説)
【良圖】良計。はかりごと
【大興】乃興という説もあり
【面縛】両手を後ろで縛り、顔を前に突き出してさらす。斬首前の状態
【壘門】華表。宮廷や廟宇、墓所などの前に建てる標柱。
【五等】司馬炎が制定した五等爵制のことか
【紀綱天人】紀綱は網から、きまりごと。国の法律。天人は、いわゆる天人相関説(人と天には相関性があり、人が良い行いをすれば、天も良くなるという概念)を指すと考えたほうが無難?
#endregion

・''訳''
序:古《有所思行》。《古今樂録》曰:「《惟庸蜀》,文皇帝の既に萬乘をして蜀を平らげ,萬國を封建し,また五等の爵を復旧したものなり」

とりたてて何もない蜀が,勝手に天の一隅で帝位を僭称した。劉備は帝命に逆い,劉禅、諸葛亮は其のおこぼれを継承した。
衆数十萬を擁し,隙を窺っては我が方の虚に乗じる。駅騎は羽檄を進め,天下はおちつく暇もない。
姜維はたびたび辺境をあらし,隴上を草はこびる荒野と為す。文皇は斯の民をあわれみ,歴世の罪辜を受ける。
外は蕃屏臣と諮り,内は衆士夫と謀る。爪牙は陛下の指示に応じ,腹心は良計を献上する。
良計を協して成文し,大いなる百萬の軍を起こす。雷鼓は地を震わせ起こし,猛勢は浮雲を払う。
逃げ惑う虜は天誅を畏れ,面縛しては壘門を造る。萬里を同じく風教すれば,逆命しては妾臣を数える。
光は五等を建て,紀綱は天と人を繋ぐ。

>蜀が暴れてましたが、我々臣下は、陛下のために力をあわせて頑張りました。

**天序
古《芳樹行》。《古今樂錄》曰:「《天序》,言聖皇應暦受禅,弘濟大化,用人各盡其才也。」

天序,暦應受禅,承靈祜。御群龍,勒螭虎。
弘濟大化,英俊作輔。明明統萬機,赫赫鎮四方。
咎繇、稷、契之疇,協蘭芳。禮王臣,覆兆民。化之如天與地,誰敢愛其身。

#region(単語解説)
【祜】福、幸い
【勒】くつわをはめる、手綱を絞る
【螭】みずち、水の妖
【咎繇】咎陶。皋陶。舜の臣下。中国における司法の祖。
【稷】弃(后稷)か。帝舜に仕えた農業の神。周王朝の支配者である姫姓の祖。
【契】子契。舜の臣下。殷王朝の始祖。
【兆民】たくさんの人民
#endregion

・''訳もどき''
序:古の《芳樹行》。《古今樂錄》曰く:「《天序》,聖皇が暦に応じて受禅なさり,広い中華を徳化なさり,人を用いて各の其の才を尽くさせる也。」

天の秩序により,暦をさだめ魏から禅譲をうけ、めでたく晋が誕生しますた。群龍を御し、水虎を率いてます。
咎繇、稷、契のような伝説級の臣下がそろい、蘭芳のように力をあわせて天地を治めれば、誰が私利私欲に走るでしょうか、いえ居ません凄いですねー。

**大晋承運期
古《上邪行》。《古今樂錄》曰:「《大晉承運期》,言聖皇應籙受圖,化象神明也。」

大晉承運期,德隆聖皇。時清晏,白日垂光。
應籙圖,陟帝位,繼天正玉衡。
化行象神明,至哉道隆虞與唐,元首敷洪化,百寮股肱並忠良。
民大康,隆隆赫赫,福祚盈無疆。

【虞與唐】帝舜から帝堯
【籙受圖】アカシックレコードというか、天の大いなる計画

・''訳もどき''
序:古《上邪行》。《古今樂録》曰:「《大晋承運期》,聖皇の籙受圖に応じ,化して神明をかたどるなり」

運期をつかさどる大いなる晋の,徳は高き我が聖皇。時は清晏のまひる、白日は光を垂らす。
天の予定図に応じ、聖なる陛下が階をお登りになれば、群星は正しく巡り乱れることがありません。
万物は遷り化して、いと高き五帝からつづく大道のもとへ還ります。陛下のもと、百寮に勤める股肱の臣は、みな忠誠を誓っています。
民衆は幸福で、盛んで明るく、限りない福に満ち溢れた暮らしをおくっています。

**金霊運
古《君馬黃行》。《古今樂錄》曰:「《金靈運》,言聖皇踐祚,致敬宗廟,而孝道行於天下也。」

金靈運,天符發。聖徴見,參日月。
惟我皇,體神聖。受魏禪,應天命。
皇之興,靈有徴。登大麓,御萬乗。
皇之輔,若闞虎。爪牙奮,莫之禦。
皇之佐,讚清化。百事理,萬邦賀。
神祗應,嘉瑞章。恭享禮,薦先皇。

樂時奏,磬管鏘。鼓淵淵,鍾喤喤。
奠樽俎,實玉觴。神歆饗,咸悅康。
宴孫子,祐無疆。大孝烝烝,德教被萬方。

#region(単語解説)
【祀禮】聖賢を祭る行事。ここでは司馬懿など、これまでの皇帝の遺徳を追慕する行事と思われ?
【磬】古代の打楽器
【管】一本の?笛?
【鏘】そうと読む。金属の打音を出す。「ジャーンジャーン、げぇっ○○!」の「ジャーンジャーン」は、漢字で「鏘鏘」とも書く。
#endregion

・''訳''
序:古の《君馬黄行》。《古今樂録》曰:「《金霊運》,聖皇が踐祚なさり,宗廟を敬いなさり,しかれば孝道は天下にいきわたる」

金行にいたり、天符は発せられた。金行が瑞兆を示せば、日月も従い世を照らす。
ああ我らが聖皇、神聖なるお方!魏より禅譲を受け,天命に応じなさる。
聖皇の王朝が興れば、神々も吉兆をしめす。居並ぶ高官大将のさらに上に立ち、万の臣下を制御なさる。
聖皇に仕え、神虎のごとく戦おう。虎のごとく爪牙を奮い、御せぬものは無し。
聖皇を補佐し、世を清める事こそ我らの誇り。全てを我らが百の事を成せば、万の国が寿ぐ。
神々の声に応じれば、あまたの神々が嘉したもう。恭しく祭事を行おう、先皇に薦めよう。

音楽の時間になれば、磬鼓や鍾といった楽器が並ぶ。鼓は重低音を響かせ、鐘は高らかに鳴りひびく。
酒樽や供物を捧げよ、玉杯を賜ろう。神々も羨むその宴、参加した者はみな満足す。
子孫の代までも、祐が下ること終わりなし。孝行は万民にひろがり、徳教は万方を覆い尽くす。

>これまでの皇帝陛下を奉りましょう、そうしましょう。

**於穆我皇
古《雉子行》。《古今樂錄》曰:「《於穆我皇》,言聖皇受命,德合神明也。」

於穆我皇,盛德聖且明。受禅君世,光濟群生。
普天率土,莫不來庭。顒顒六合内,望風仰泰清。
萬國雍雍,興頌聲。大化洽,地平而天成。
七政齊,玉衡惟平。峨峨佐命,濟濟群英。
夙夜乾乾,萬機是經。雖治興,匪荒寧。
謙道光,沖不盈。天地合德,日月同榮。
赫赫煌煌,曜幽冥。三光克從,於顯天,垂景星。
龍鳳臻,甘露宵零。肅神祇,祗上靈。
萬物欣戴,自天效其成。

#region(単語解説)
【七政】古代の占いなどに使用された星座。具体的な天体については諸説あり。ここでは玉衡が北斗星、七政が北斗七星の説をとる
【三光】日、月、星
【乾乾】易経:「君子終日乾乾」。
【臻】よい方向にいたる
#endregion

・''訳''
序:古の《雉子行》。《古今樂録》曰:「《於穆我皇》,聖皇が命を受け,徳を神明と合わせる也」

穆(おごそ)かなるかな我が皇帝,盛徳は聖かつ明らか。受禅なさった君の世で,光は群生に行き渡る。
あまねく天より地の果てまでも,庭に来たらぬ者は無し。広大な天地四方にあって、風を望み仰げば精神は安らかにして。
萬國は平和となり,晋を褒めたたえる歌声がおこる。大化はむつまじく,地は平にして而るに天は成る。
七政は秩序正しく巡り,玉衡はただ平らかに。峨峨たり佐命,濟濟たり群英。
朝も夜も乾乾として,萬機すべてを経営なさる。治興ると雖も,匪は寧を荒す。
謙道の光,沖に盈たず。天地は合徳し,日月は同栄す。
かくれなき輝き,発する光は幽冥たり。三光は克ちあるいは従い,天にあって輝き渡り,景星は光を垂る。
龍鳳はいたりて,甘露はこぼれ落ちる。神祇を前につつしみ,上霊を前に恭しく。
萬物が喜んで推戴すれば,自ずと天の意思はそのように成る。

>陛下の徳は天地のすみずみまで統制なさいますから、崇めなさい。崇めりゃ天も答えてくれますよ。

**仲春振旅
古《聖人出行》。《古今樂錄》曰:「《仲春振旅》,言大晉申文武之教,畋獵以時也。」

仲春振旅,大致民,武教於時日新。
師執提,工執鼓。坐作從,節有序。
盛矣允文允武。
蒐田表禡,申法誓。遂圍禁,獻社祭。
允以時,明國制。文武並用,禮之經。
列車如戰,大教明,古今誰能去兵。
大晉繼天,濟群生。

#region(単語解説)
【仲春】春二月。仲は陰暦2番目の月。孟が一番目、季が三番目で、孟夏、仲秋、季冬などと使う。
【振旅】部隊を整える、兵を訓練する
【大致】意思を主要な方面に示す
【提、鼓】指揮をとるための楽器の一種
《周礼・夏官・大司馬》「辨鼓鐸鐲鐃之用、王執路鼓、諸侯執貴鼓、軍將執晋鼓、師帥執提、旅帥執鼙、卒長執鐃、両司馬執鐸、公司馬執鐲」
【蒐田】春の日に田で狩猟を行う。広義では狩りを指す
《周礼・夏官・大司馬》「以教坐作、進退、疾徐、疏数之節、遂以蒐田」
【禡】古代の軍隊が駐屯した時、地方で儀式を挙行するときの祭壇。「禡牙」で、軍隊が出発挙行祭を行うときの牙旗
【禮之經】参考:[[大學衍義補/巻40(維基文庫)>http://zh.wikisource.org/wiki/大學衍義補/卷040]]
#endregion

・''訳''
序:古の《聖人出行》。《古今樂録》曰:「《仲春振旅》,言大晋申文武之教,畋獵以時也。」

春二月に隊列を整え,大いなる意思を民に示し,武を教えるにおいて時日は新たなり。
師は提を執り,工は鼓を執る。坐しては従をなし,節に序あり。
盛んなること、まことに文でありまことに武である。
春の日に田で狩猟を行い祭壇を表し,法誓を申す。狩猟場で獲物を追い,社祭に捧げる。
この時をもって,國制は明らかとなる。文武を並用して,礼をもって世を営む。
車の列は戦の如く,大教は明らかで,古今に誰が能く兵を去らんか。
大晋は天を継ぎ,群生を救済したもう。

**夏苗田
古《臨高臺行》。《古今樂錄》曰:「《夏苗田》,言大晉畋狩順時,為苗除害也。」

夏苗田,運將徂。軍國異容,文武殊。
乃命群吏,撰車徒,辨其號名,讚契書。
王軍啟八門,行同上帝居。時路建大麾,雲旗翳紫虛。
百官象其事,疾則疾,徐則徐。
回衡旋軫,罷陳弊車。
獻禽享祀,烝烝配有虞。
惟大晉,德參兩儀,化雲敷。

【麾】軍旗
【回衡】車を巡らせる。衡は古代における車の前部の横木を指す
【軫】古代における車の後部の横木、または車そのものを指す

・''訳''
序:古の《臨高臺行》。《古今樂録》曰:「《夏苗田》,大晋は畋狩の時にならい,苗より害を除く也。」

夏の苗田を,運り統率し往く。軍は國も形もばらばらで,文武もことなっている。
群吏に命じ,車と徒歩とを選別し,其の號名を見分け,契書を讃す。
王軍は八門を開き,行くこと上帝の居に。時路に大麾を建てる,雲旗は紫虚を翳す。
百官は其事を象り,疾と命じれば疾となり,徐と命じれば徐となる。
前後の車輪を巡らせ,問題のある車は列から除ける。
禽を献上し祀を享け,もろもろを有虞が采配する。
唯一の大晋に,徳あるものは左右に参じ,居並ぶこと雲を敷いたようになる。

**仲秋獮田
古《遠期行》。《古今樂錄》曰:「《仲秋獮田》,言大晉雖有文德,不廢武事,順時以殺伐也。」

仲秋獮田,金德常剛。涼風清且厲,凝露結為霜。
白藏司辰,蒼隼時鷹揚。鷹揚猶尚父,順天以殺伐,春秋時敘。
雷霆震威曜,進退由鉦鼓。致禽祀祊,羽毛之用充軍府。
赫赫大晉德,芬烈陵三五。
敷化以文,雖治不廢武。光宅四海,永享天之祜。

#region(単語解説)
【獮】秋の狩り
【白藏】秋空。秋は五色のうち白に該当。
《尸子・仁意》「春為青陽、夏為朱明、秋為白藏、冬為玄英」《周書・武帝記下》「今白藏在辰、凉風戒節、~」
【尚父】周尚父。太公望。《詩経・大雅・大明》「維師尚父、時維鷹揚」
【祊】家や地方の廟内で、祖先や神々をまつる。「方(=四方)を祭る」
#endregion

・''訳''
序:古の《遠期行》。《古今樂録》曰:「《仲秋獮田》,言大晋は文徳を有するといえども,武事を廃せず,時には殺伐をもちいる也。」

仲秋に田で狩りを行えば,金徳は常に剛し。涼風は清く且つ厲く,露は凝結して霜と為る。
白藏は辰(天体)を司り,蒼隼は時に鷹揚す。鷹揚すること太公望のごとく,天に従うゆえに殺伐,春秋の時をつげる。
雷霆は震えて威曜たり,鉦鼓の鳴るごとに進退する。禽をとどけ祖先や神々をまつり,羽毛之用を軍府に充てる。
赫赫なる大晋の徳,風にのりほのかに、烈しく、高く望月までも至らん。
文をもって辺境を教化し,治まると言えども武は廃れず。光は四海にすまい,永く天の祜を享く。

**順天道
古《石留行》。《古今樂錄》曰:「《順天道》,言仲冬大閱,用武修文,大晉之德配天也。」

順天道,握神契,三時示,講武事。
冬大閱,鳴鐲振鼓鐸,旌旗象虹霓。
文制其中,武不窮武。動軍誓眾,禮成而義舉。
三驅以崇仁,進止不失其序。兵卒練,將如闞虎。
惟闞虎,氣陵青雲。解圍三面,殺不殄群。
偃旌麾,班六軍。獻享烝,修典文。嘉大晉,德配天。
祿報功,爵俟賢。饗燕樂,受茲百祿,嘉萬年。

#region(単語解説)
【三時】後述の三驅では、一説として「一年のうち三回狩る」とある
【三驅】古代の王者の狩猟法。
狩るときに四方のうち一面を解放し、三面から追い立てることで、みだりに殺傷しない徳を示す……筈
易経や漢書五行誌、貞観政要君道の該当分を見ていたら、混乱してきた。
【殄】絶える、絶滅する
【偃旌麾】偃はふせる、寝そべる、横たえる。偃旗で軍旗を倒す、戦をやめる、密かに移動するなど。
【享烝】冬季の廟における祭祀。《周礼・夏官・大司馬》「入献禽以享烝」
【配天】漢代以前の古典を読んでると、ちょこちょこ出てくる。
#endregion

・''訳''
序:古の《石留行》。《古今樂録》曰:「《順天道》,仲冬に大閱し,武を用い文を修め,大晋の徳は天にひとしい也」

天道に順じ,神契を握し,三時を示し,武事を講じる。
冬には大閲し,鐲は鳴り鼓鐸を振るい,旌旗は虹霓を象り。
文が其中にて制し,武は武であることを止めず。軍は動き衆は誓い,禮は成りしかるに義を舉げる。
三驅を以って陛下の仁を称え,進みあるいは止まるも其の秩序を失わず。兵卒の練すること,將に闞虎の如し。
闞虎ひとつひとつの,気勢は青雲をも超える。三面の囲みを解けば,殺すも動物の群は絶えず。
旌麾をしまい,六軍の兵士を数える。祭壇に献上し,典文を修める。大晋を嘉すべし,その徳は天にならぶところ。
報功を記録し,爵は己を受け取るべき賢を俟(ま)つ。燕樂が饗き,ここに百録を受け,萬年を嘉す。

>陛下が恐れ多くも、日時を選び、軍の鍛練を閲覧なさるっていうぜ。最初はまごついてた兵士たちも、陛下の指示に従い鍛錬を重ねれば、一糸乱れぬ強兵となった。天は陛下を通して褒賞なさる。あーめでたい。

**唐堯
古《務成行》。《古今樂錄》曰:「《唐堯》,言聖皇陟帝位,德化光四表也。」

唐堯諮務成,謙謙德所興。積漸終光大,履霜致堅冰。
神明道自然,河海猶可凝。舜、禹統百揆,元凱以次升。
禪讓應天曆,睿聖世相承。我皇陟帝位,平衡正準繩。
德化飛四表,祥氣見其徵。興王坐俟旦,亡主恬自矜。
致遠由近始,覆簣成山陵。披圖按先籍,有其證靈液。

#region(単語解説)
【陶尭】帝尭、ここでは晋の皇帝ね
【準繩】基準。準は水平を定める水盛り、繩は直線を定める墨なわ
【亡主恬自矜】あるいは「亡國主自矜」。
魏の元皇帝?降伏した蜀劉禅と呉孫皓が、宴会で司馬炎に話しかけられた時の対応?にしては唐突だな
【國恬】不明。祖国を気にかけない?
【自矜】おのれを誇る?
【先籍】籍田。古代の天子、諸侯の畑田(天子は千畝、諸侯は五百畝とも)。
その畑で農業をおこなう行為(史記・孝文本紀)。
もしくは《詩経・周頌》に言う、皇帝が春に田植えを行うことで、豊穣を社稷に祈る儀式(籍礼)。
#endregion

・''訳''
序:古の《務成行》。《古今樂録》曰:「《唐堯》,聖皇が帝位にのぼれば,徳は光と化し四表を照らす也」

唐堯がお仕事の進捗を臣下と相談なされば,謙謙たる徳のおこる所。小さな徳も積みあげられれば終には光大となり,小さな災いも放置すれば大乱となる。
神明道自然,河海の猶お凝す可き。舜、禹は百揆を統し,元凱以って次升。
禅讓して天暦に應じ,睿聖世相承。我皇は帝位をのぼり,平衡は準繩を正す。
徳は化して四表を飛び,祥気は其のしるしを見せる。興王坐して夜明けを待つ,亡主は自矜を恬す。
千里の道も一歩から,ちりも積もれば山陵を成す。図をひらき先籍を指せば、陛下の田は霊液で潤う。

>陛下お仕事なう

**玄雲
古《玄雲行》。《古今樂錄》曰:「《玄雲》,言聖皇用人,各盡其材也。」

玄雲起丘山,祥氣萬里會。龍飛何蜿蜿,鳳翔何翽翽。
昔在唐虞朝,時見青雲際。今親遊萬國,流光溢天外。
鶴鳴在後園,清音隨風邁。成湯隆顯命,伊摯來如飛。
周文獵渭濱,遂載呂望歸。符合如影響,先天天弗違。
輟耕綜時綱,解褐衿天維。元功配二王,芬馨世所稀。
我皇敘群才,洪烈何巍巍。桓桓征四表,濟濟理萬機。
神化感無方,髦才盈帝畿。丕顯惟昧旦,日新孔所咨。
茂哉明聖德,日月同光輝。

#region(単語解説)
【祥氣萬里會】《論衡-雷虚》「千里同風(千里離れた土地にも都と同じ風が吹く、天下が良く治まり太平である事)」と同じ概念
【成湯、伊摯】殷朝の創始者湯王と、伊尹(湯王の補佐)
【先天天弗違】「易経」、もしくは周易からの引用。
 同じく引用した曹操の秋胡行([[秋胡行(曹操)]])と比較すると、ニュアンスが微妙に異なっているかも。
 曹操は徳人のありようを詠ったのに対し、こちらでは、純粋に天が示す吉兆のしるしを指している。
【褐衿】褐はあら布の衣服、衿は着物の衣帯
【髦才】髦は長く美しい髪、曹叡や司馬炎の髪みたいなの。優秀な才?
【帝畿】京洛。皇帝の直轄地。
【聖徳】もしくは人徳。
【昧旦】明け方のほの暗い時。朝議?
#endregion

・''訳''
序:古の《玄雲行》。《古今樂録》曰:「《玄雲》、聖皇は人を用い、各ことごとく其の材なり」

丘山から玄雲がもくもく、祥気は万里離れた先とこんにちは。龍はうねうねと飛び、鳳はひらひらと翔ける。
この吉兆は昔の唐虞の時代にも表れ、青雲の涯までも続いたという。
吉兆は今も親しく萬國に遊び、流光して天の外に溢れる。鶴は後園に在りて鳴き、清音は風にしたがって響く。
成湯王が有名なればこそ、伊摯は飛ぶようにやってきた。周文王が渭濱に狩猟すれば、遂には太公望呂望をみやげに帰ってきた。
かくのごとく符合が影響しあうこと、天に先んじて天と違わず。
耕すことをやめ時綱を統べ?、褐衿を解き国家の網紀を緩める。功臣を二王に配し、広がる芳香は世に稀なるところ。
我皇は群才を敘し、洪烈たること何と巍巍。桓桓と四表を征き、濟濟と萬機を理する。
神化感無方、髦才は帝畿に盈ちる。大いなる夜明けの議論に、日新たに孔所に咨る。
茂らん哉、明聖の徳。日月は同に光輝く。

>唐堯の睿(叡)、ここでの丕、髦など魏の皇帝のいみなが出る。曹操の作品と同じところから、別の意味で引用している。
>他の作品もそうだが、この作品では特に、魏における定義を書き換えることを強く意図したものと思われ。
>あぁ晋の作品だなぁ。

**伯益
古《黃爵行》。《古今樂錄》曰:「《伯益》,言赤烏銜書,有周以興,今聖皇受命,神雀來也。」

伯益佐舜、禹,職掌山與川。德侔十六相,思心入無間。
智理周萬物,下知眾鳥言。黃雀應清化,翔集何翩翩。
和鳴棲庭樹,徘徊雲日間。夏桀為無道,密網施山河。
酷祝振纖網,當奈黃雀何。殷湯崇天德,去其三面羅。
逍遙群飛來,鳴聲乃復和。朱雀作南宿,鳳皇統羽群。
赤烏銜書至,天命瑞周文。神雀今來遊,為我受命君。
嘉祥致天和,膏澤降青雲。蘭風發芳氣,闔世同其芬。

【十六相】十六族ともいう。堯舜の時代にいた、十六位の賢臣のこと。
【膏澤】良田に程よく降る雨水。

・''訳''
序:古の《黄爵行》。《古今樂録》曰:「《伯益》,赤烏が書を銜え,以って有周は興る,今聖皇の受命すれば,神雀も來たる也。」

伯益は舜、禹を佐し,山川を管理する。徳は十六相にひとしく,その思考は絶え間ない。
智理周萬物,多くの鳥の言をもって下知する。黄雀は清化に應じ,翔集すること何と翩翩たる。
和鳴して庭樹に棲み,雲日の間を徘徊す。夏桀は無道を為し,密網を山河に施した。
細かい網をめぐらせ大いに祝えば,まさに黄雀はなすすべもない。そこで殷湯は天徳をあがめ,三面に張り巡らされた網を外した。
逍遙する群は飛来して,いくつもの鳴き声が唱和していった。朱雀は南宿を作し,鳳皇は羽群を統べる。
赤烏が書を銜み至るに,天命は周文を瑞す。神雀は今来たり遊ぶ,我が受命せし君の為に。
嘉祥は天和を致し,膏澤を青雲より降らせる。蘭風は芳気を発し,(陛下の徳が)世をおおうこと其の芳香にひとしい。

>暴君が吉兆である黄雀を網にかけ、徳人が開放する。曹植の野田黄雀行でも扱われているテーマ。

**釣竿
古《釣竿行》。《古今樂錄》曰:「《釣竿》,言聖皇德配堯、舜,又有呂望之佐,以濟天功,致太平也。」

釣竿何冉冉,甘餌芳且鮮。臨川運思心,微綸沉九淵。
太公寶此術,乃在靈祕篇。機變隨物移,精妙貫未然。
游魚驚著釣,潛龍飛戾天。戾天安所至,撫翼翔太清。
太清一何異,兩儀出渾成。玉衡正三辰,造化賦群形。

退願輔聖君,與神合其靈。我君弘遠略,天人不足并。
天人初并時,昧昧何芒芒。日月有徴兆,文象興二皇。
蚩尤亂生民,黄帝用兵征萬方。逮夏禹而德衰,三代不及虞與唐。
我皇聖德配堯、舜,受禪即祚享天祥。
率土蒙祐,靡不肅,庶事康。庶事康,穆穆明明。
荷百祿,保無極,永太平。

【三代】だれを指すか不明。このへんは孟子の古代の王道に帰れ、という意味合いか?

・''訳''
序:古の《釣竿行》。《古今樂録》曰:「《釣竿》,言聖皇の徳は堯、舜の合計で,また呂望のような補佐あり,以って天功は行き渡り,太平にいたる也」
釣竿の何と冉冉たる,甘餌は芳しく且つ鮮し。川に臨めば思心を運び,かすかな糸のような流れは九淵に沈む。
太公の宝たる此の術,すなわち《霊祕》篇に在り。機変にしたがって物は移ろい,精妙なること未然を貫く。
游魚は著釣に驚き,潛龍は戻天に飛ぶ。戻天の安所に至り,翼を撫し太清を翔る。
太清の一に何ぞ異なる,陰陽は混沌より成り出でる。玉衡は三辰をただし,造化は群形を与える。

退きて願わん聖君を補佐せんと,その精神は其霊と合す。我君の広く遠い計略は,天人も並ぶに及ばず。
天人初めて並ぶ時,昧昧にして何と芒芒たる。日月に徴兆有り,文象は二皇を興す。
蚩尤は生民を乱し,黄帝は兵を用いて四方八方へ征く。夏禹を過ぎるに徳は衰え,三代は帝舜から帝堯に及ばず。
我皇の聖徳は堯、舜をとり合わせたもので,受禅して天子の位につき天祥を享ける。
地の隅々まで天祐をこうむり,靡くこと肅ならず,庶事は安らかである。庶事は安らかに,厳かで恭しく明明である。
天の恵みに感謝せよ,無極は保たれ,永く太平である。

>古の聖徳は陛下へと引き継がれ、今日も天下は泰平である。


*こめんと
 傅玄が晋のために作った替え歌。

 まず、東晋になると蜀漢正統論が出てくるが、初期の西晋は魏正統論を謳っていた。

 詩で取り上げられたテーマは、蜀と呉の討伐、遼東制圧、禅譲、鍛錬、朝廷の仕事、臣下。
 同じ鼓笛曲でも、テーマとなる対象、内容に違いがある。これはその王朝が重視していた支持層の違いにも繋がる。
 晋の場合、魏、呉に比べると、量は多いが古代の事象ばかり。
 蜀や呉を併呑し膨張する組織のなかで、中央と地方、名士と民衆との意識が乖離した結果が、この詩なのかもしれない。

 また、関羽が北上したとき、司馬懿は呉を動かすことを進言しているが、ここでは取り上げられていない。
 西での対決から始めることで、西の統治者=土に代わる金行と司馬一族を繋ぐ意図が考えられる。
 あとはまぁ、「呉を動かせ」発言が、当時そこまで評価されていなかった可能性(既に同盟はしていたし、同じことを考えていた人は他にも居ただろう)。

 ……量が多いのに、内容はなんというか、山海記(ファンタジー)読んでる気分だった。
 言いたい事はわかるんだが、こう、訳する気にならない……

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