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*原文
出典:《漢魏六朝百三名家集(国デジ)》 《楽府詩集(台湾)》

天地間。人為貴。立君牧民。為之軌則。
車轍馬迹。經緯四極。絀陟幽明。黎庶繁息。

於鑠賢聖。總統邦域。封建五爵。井田刑獄。
有燔丹書。無普赦贖。皐陶甫刑。何有失職。

嗟哉後世。改制易律。勞民為君。役賦其力。
舜漆食器。畔者十國。不及唐堯。採椽不斫。

世歎伯夷。欲以厲俗。侈惡之大。儉為恭德。
許由推讓。豈有訟曲。兼愛尚同。疏者為戚。
*てけとーな日本語
造化の御手は、天地の間で。人をとうときと為し。君主を立て民を治め導き。世の秩序を定め。
君民の馬車のわだちや足跡は。縦横八方、隅々にまで通じ。人事の配慮は真に絶妙で。諸々の生命は、すこやかに育ち増えていった。

ああうるわしきかな古の聖賢は。中原の地と民とをすべて統べあげて。
各地に領地を設け、五爵に管轄をゆだね。枯れぬ井戸の傍らに田を設け、刑法をたて公の為に尽くさせた。
祭壇に罪状書を捧げ、神に誓い。金銭物品により罪を許すことをせず。皐陶の公正さと、甫侯の慎重さを持てば。どうして法家の職を失うことがある。

悲しむべきかな後の世は。上古の善政や良法は、すでに改悪され。君主のために民は苦労し。民の力も、私欲のために使い捨てられる。
舜が贅沢な漆食器を用いたところ。背く者は十國以上になったという。唐堯に及ばずとも。柱に彫刻をせず、質素な家に住まおう。

世に満ちる隠者の嘆きを聞き。疲弊した社会を立て直そうと意識して。奢侈の大いなる悪を拒絶し。倹約が美徳だという意識を共有する。
帝位を断った許由のように謙譲しあえば。どうして訴えを曲げることなど有るだろう。平民と君主の間に特別な差など設けず、互いに睦みあえば。古のように、疎いもの同士も兄弟姉妹のごとくなるだろう。

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*単語解説
【天地間。人為貴】
混沌が開けたとき生まれた万物の中では、人が最も貴い。《書経-泰誓上》が言う「万物の霊長」。

【絀陟】位を上げ下げすること。
絀は黜とも言い、罷免すること。陟は昇る、出世すること。

【黎庶】庶民

【於鑠】《春秋左氏伝》、曹丕《露陌刀銘》など。賛美を表す。

【丹書】古代、咎人の罪状を記した書。

【燔】ひもろぎ。神にささげる。あぶり焼き。

【赦贖】罪をあがなうための金銭や物品。または、その行為。
 これを許すと、国家の大典が空ろな文になってしまう、と言っている。

【皋陶甫侯】虞舜の時代の獄官長。のちに法関係の称号。《書経》《呂氏春秋》などに見える
 皋陶は、中国司法の祖。
 むやみに重い刑罰や冤罪がなかったという伝説があり、《論衡-是応》で「獄神」として出てくるなど、後漢でも司法の神として崇められていた痕跡がある。また、《論語》で皋陶を評価する文章があることから、儒教でも伝説的な人物となっている。
 甫侯は、周穆王の大臣。
 《晋書-刑法志》「甫侯修刑(刑法をととのえた)」。同じ罪だからと画一的に同じ罰を下すのではなく、個人や周辺、社会の状況に応じて罪の軽重を調整できるようにした人物、らしい。

【舜漆食器。畔者十國】
《韓非子-十過》「虞舜受之,作為食器,斬山木而財之,削鋸脩迹,流漆墨其上,輸之於宮以為食器。諸侯以為益侈,國之不服者十三」
(舜は禅譲を受けると、食器を作った。木を切り倒して私財にして、鋸で削り痕跡をやすりがけ、漆黒をその上に流し、宮殿に運んで食器とした。諸侯達はその奢侈に反発し、13の国が服従しなくなった)

【唐堯】
五帝の堯。質素で知られる。

【采椽不斫】
斫は斵とも書き、削るの意味。采椽は山から切り出した丸太を意味し、これを彫刻しない=飾らず質素な屋敷をあらわす。[[weblio辞書>http://www.weblio.jp/content/%E9%87%87%E6%A4%BD]]
《韓非子-五蠹》:“堯之王天下也,茅茨不翦,采椽不斫。”

【伯夷】伯夷叔斉。
周の武帝が殷を討伐しようとしたとき、それに反対して周の世を否定し、山に篭った。

【厲俗】
疲弊した社会を建て直し、風紀を正す。

【許由】伝説の聖人,尭が帝位を譲ろうとしたとき、それを断り、箕山に隠れた。

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*コメント
 法家の職責を全うする志を読んだもの。
 法を重視する内容、韓非子からの引用など、法家らしさが前面に出ている。
 大きく分けて、4つの内容(天地創造、古代の聖人、今の混乱、作者の意思)になる。

●1 古代の理想
 ▲1-A(起):大同思想を読み上げたもの。
  大同は、《礼記-礼運》にある、一種のユートピア論。
  [[weblio辞書>http://www.weblio.jp/content/%E5%A4%A7%E5%90%8C%E6%80%9D%E6%83%B3]]「人々は能力に応じて地位を得、相互に親睦しあっていると考えられている」
 ▲1-B(承):古代の法治
  

●2 現状と対策の提示
 ▲2-A(転):現状の混乱ぶり
  舜(贅沢)と尭(質素)の対比を用いることで、理想と現状の違いを打ち出している。
 ▲2-B(結):どうすれば大同思想を現実にできるか
  すなわち推讓、兼愛。
  君主は賢明で、君民は平等で、法律は公正に執行され、むやみに裁判がおこらない状況。

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