#contents(fromhere=true) ----- *原文 仰瞻帷幕。俯察几筵。其物如故。其人不存。 神靈倏忽。棄我遐遷。靡瞻靡恃。泣涕漣漣。 喲喲遊鹿。銜草鳴麑。翩翩飛鳥。挾子巣棲。 我獨孤煢。懷此百離。憂心孔疚。莫我能知。 人亦有言。「憂令人老」。嗟我白髮。生一何早。 長吟永歎。懷我聖考。曰「仁者壽」。胡不是保。 *訳 仰いで帷幕を見。俯いて几筵を察するに。其の物は故の如きも。其の人は存ぜず。 神霊たちまちと。我を棄てて遠く永く遷る。見れども見えず、頼み寄る辺なく。泣涕漣漣たり。 呦呦たる遊鹿。草を銜んで麑に鳴く。翩翩たる飛鳥。子を両翼の下に抱き巣に棲む。 我独り身よりもなく。ただ多くの患害悲傷を抱く。憂心はなはだ疚(や)めども。我をよく知る者はもう世に居ない。 人もまた言う有り。憂いは人をして老いしむと。ああ我が白髪。生えること一に何ぞ早き。 長吟永嘆し。我が聖考を懐う。曰く「仁者は命ながし」と。我の仁者よ、なぜその長寿を保てなかったのか。 ----- *単語 【仰いで帷幕を見~】窓かけや幕帳など家のは昔のままだが、父は既に亡い、とする 【倐忽】たちまちのうちに 【見る靡く恃む靡く】見るなく、頼むなく 【呦呦たる遊鹿】曹操の短歌行で引用された鹿鳴 【麑】鹿の子 【孤煢】「兄弟もなく」、という意味合いは、いつから? 【聖考】すぐれた先人の考え 【仁者寿】《論語-雍也》子曰、「知者楽水、仁者楽山。知者動、仁者静。知者楽、仁者寿」。 「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は寿(いのちなが)し」。 曹操の短歌行「山不厭高,水不厭深」を踏まえる。 ----- *コメント 関連:「[[短歌行(曹操)]]」 これについては、[[文学スレッドのコメント>http://www.geocities.jp/sangoku_bungaku/so_hi/tankako.html]]以上のものはないなぁ。 曹操の同作を踏まえた上で、作者の心を込めているぶん、作者の「どす黒い孤独」が前面に出ている。 ----- [[漢詩大会の漢詩全文/曹丕]]インデックスに戻る