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短歌行(曹丕) - (2012/10/22 (月) 21:48:26) のソース

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*原文
仰瞻帷幕。俯察几筵。其物如故。其人不存。
神靈倏忽。棄我遐遷。靡瞻靡恃。泣涕漣漣。
喲喲遊鹿。銜草鳴麑。翩翩飛鳥。挟子巣棲。
我獨孤煢。懐此百離。憂心孔疚。莫我能知。
人亦有言。「憂令人老」。嗟我白髮。生一何早。
長吟永歎。懐我聖考。曰「仁者壽」。胡不是保。

*訳
仰いで帷幕を見。俯いて几筵を察するに。其の物は故の如きも。其の人は存ぜず。
神霊たちまちと。我を棄てて遠く永く遷る。見れども見えず、頼み寄る辺なく。泣涕漣漣たり。
呦呦たる遊鹿。草を銜んで麑に鳴く。翩翩たる飛鳥。子を両翼の下に抱き巣に棲む。
我独り身よりもなく。ただ多くの患害悲傷を抱く。憂心はなはだ疚(や)めども。我をよく知る者はもう世に居ない。
人もまた言う有り。憂いは人をして老いしむと。ああ我が白髪。生えること一に何ぞ早き。
長吟永嘆し。我が聖考を懐う。曰く「仁者は命ながし」と。我の仁者よ、なぜその長寿を保てなかったのか。

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*単語

【仰いで帷幕を見~】窓かけや幕帳など家のは昔のままだが、父は既に亡い、とする
【倐忽】たちまちのうちに
【見る靡く恃む靡く】見るなく、頼むなく
【呦呦たる遊鹿】曹操の短歌行で引用された「詩経-鹿鳴」、「呦呦鹿鳴,食野之苹。我有嘉賓,鼓瑟吹笙」 
【麑】鹿の子
【挟子巣棲】「古詩十九首 其の一 行行重行行」の、「越鳥巣南枝」。 
 曹操の短歌行で言う「烏鵲南飛。繞樹三匝,何枝可依」
【孤煢】疾く旋回して飛ぶ《説文》、兄弟もなく《詩経》《楚辞》、一人憂愁《漢書巻九十七-外戚伝上》
【憂令人老】「古詩十九首 其の一 行行重行行」の、「思君令人老」か?
【聖考】すぐれた先人の考え
【仁者寿】《論語-雍也》子曰、「知者楽水、仁者楽山。知者動、仁者静。知者楽、仁者寿」。
「知者は水を楽しみ、仁者は山を楽しむ。知者は動き、仁者は静かなり。知者は楽しみ、仁者は寿(いのちなが)し」。
 曹操の短歌行「山不厭高,水不厭深」を踏まえる。

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*コメント
関連:「[[短歌行(曹操)]]」

これについては、[[文学スレッドのコメント>http://www.geocities.jp/sangoku_bungaku/so_hi/tankako.html]]以上のものはないなぁ。
曹操の同作を踏まえた上で作者の心を込めているぶん、作者のにじみ出るような、どす黒い孤独が強調されている。

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