32-542「狂って乱れたフラクラ解釈」

「キョン、君はフラクラだ。誰がなんと言おうと僕の中では――というか僕の僕
による僕の為のキャラスレSSでは――フラクラなんだ」
久々に自転車の荷台に佐々木を乗せてゆっくりと中学の頃の昔話に花を咲かせて
いるとこの僕少女、突然人の事を意味不明なカタカナ4文字で評しやがった。
あまりにも唐突に話の腰を折られたので若干困惑した俺はとりあえず問うた。
「まぁ待て佐々木よ。それは一体何時の何処の有名な哲学者が唱えた呪文なんだ
?ギリシャか?ソクラテスか?願わくばその謎ワードの意味が平凡かつ純朴な俺
そのものを表す言葉であれ」
佐々木はそんな俺の言葉を流れる清流が如く受け流し、あろうことか俺を非難し
始めた。
「君は本当に罪深い男だ。無邪気か邪気か、どちらが罪深いか分かるかい?最悪
なのは無邪気、確信犯さ。ああ確信犯と言うのは自分の行いを正しいと思って罪
を犯す者のことさ。悪いと理解していない。わかるかい?
だからこそ君はこの世で最も罪深く憎まれるべき存在だ、しかし君のことを誰よりも憎むべき者たちは
決して君のことを憎めぬという何とも形容しがたい立場に君はいる。だから尚更
君は罪深い」
そんな証明法罷り通ってたまるか。
まずはその意味不明正体不明にして略語なのか標語なのかも解らぬコトバの説明
から頼む。
生憎俺の辞書はお前程語彙が豊富ではないんだ。「そうかい?まぁ、そうだね。
知っていたら此所まで酷くはならないよね。良いだろう。説こうじゃないか」
佐々木は不安定な自転車の荷台で、無い胸を張りながら天を指し仰々しく宣った
――フラクラとは!

フ=普通に考えれば誰だってこんなシチュエーションならキスの一つか場合によ
って性欲に任せて押し倒したりしても良いと言うのにキスどころか抱き締めもせ
ずに華麗にスルーし、
ラ=楽々と相手の意図を歪曲解釈して自らを貶めた上でそれがどれだけ僕らの恋
心を抉るとも知らずに百八十度違う方向から無闇に責められないようなセリフを
吐き、
ク=狂おしい程に愛らしいその瞳で幾人もの人々――もちろんそのなかには僅か
ながら男性も含まれる――を魅了し同時に発生するフラグ、つまり特定の条件の
そろった状態で特定の行動をとれば特定の展開になると予想出来る分岐点を示す
物を、
ラ=落葉寸前の銀杏の葉を落とす程の力も使わずにいとも容易くためらいもせず
疑いもせずに残酷に跡形もなく破壊する能力を持つ者、即ちフラグクラッシャー


――をという意味だ。

佐々木はここまで一息で一気に言い切り、そして運動会で二百メートルを全力で
走り切った直後の中学生のようにぜぇはぁと肩で息をしている。
「き、キョン………解ってくれた……かい?」
俺はというと、
「うんまぁ………な」
虚空を見つめ曖昧な返事を返した。
正直、わかるようなわからないような……というかもう少しマシな表現があるか
と思うのだが。

「よく分かっていないように見えるけど、まぁここは分かってくれたと仮定した
上で本題に移らせてもらおう」
随分と長い前フリがあったもんだな。ていうかお前なんか異様にテンション高く
ないか?
「ふふふ……それはそうさ。いいかい、耳の穴かっぽじってよく聞いてくれよ我
が親友よ。今日僕両親は二人とも仕事の都合で家にはいないんだ。で、きょ、キ
ョン……今晩私の家に来ないかい!?一晩かけて語り合いたいことがあるんだ!

「ああ良いぜ」
「ほーらやっぱりまた折った!折角一人称私に変えてまで頑張えええええ!?」
「じゃあとりあえずお前を送ったらいったん家に帰って必要なもん持って行くか
らちょっと待っててくれ」
「……………………………うん」
俺の腰に回された佐々木の手の力がさっきよりも少し強くなった気がした。

ま、その後普通に来週提出の課題を持って佐々木宅に赴いた俺は、佐々木と一緒
に普通に勉強し普通に風呂に入り普通に寝た。

読点の付ける位置が変?
いや、別に変じゃないが。

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最終更新:2008年04月27日 20:02
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