『黒い傘』
九曜さんと二人でお茶をしてウインドウショッピンッグをした帰り、雨が降ってきた。
「しまった、今日は傘持ってきてないわ。降水確率10%だったのに」
「―――大丈夫―――」
そう言った九曜さんの体は見る見る内に黒い傘に変身した。
「―――差して―――」
差してって、そんなものを
「―――早く…差して―――」
「はあ…」
ありがたいけど、ちょっと気味が悪くてどんよりする。>>878参照
「―――右に―――行くべき―――」
右に行くとキョンが青い傘を差して歩いているのがわかった。ありがとう九曜さん。
「やあ、キョン」
「やあ、佐々木か。奇遇だな」
その瞬間、九曜さんは傘から3頭体の幼児に変化して、チビ九曜はピョンとキョンの肩に乗る。
「―――オンブ―――」
「オンブって、乗っかかるんじゃないコンブ。それにこれはオンブじゃなくて肩車じゃないか」
僕のキョンとベタベタするのは、たとえ九曜さんでも気分が悪い。
いやいや、子供体型ということは、娘が父親に甘えるようなもの。ここで妬くのは大人げない。ここは僕が母親の役割を果たさないと。
「キョン。傘が無いので、悪いけど、ご一緒させてもらうよ。くつくつ」
「お前。さっきまでちゃんと傘を持ってなかったか?黒い傘を」
「さあ、キミの気のせいじゃないの?そうだ、傘は僕が持つよ」
「いや、すまんな」
「それからクーちゃん、今までありがとう」
「―――高い―――高い―――」
「お前らやたらとひっつくな。こんな所を知り合いに見られたら誤解されるじゃないか」
「その時は責任取って結婚してくれ」
「―――お父さん―――」
「おい、冗談きついぞ」
(おしまい)