「Every cat shoud own a man」
我輩は猫である。名前はシャミセン。今のマイホームを手に入れて1年経つ。
地球の支配者:猫は全て人間を飼うべき。
「Every cat shoud own a man」これは我輩の座右の銘である。
いつものようにマイベットに寝転び、自己言及のパラドックスや時間移動のパラドックスについて考察を行っていた。
支配者たるもの、日常の些事にはとらわれず、崇高な考察で真理の追究を目指すものである。吾輩のように。
「なあ、シャミセン、俺はどうしたら良いかな?」
子分の話を端的に言うと、嫁と愛人達のどっちを選ぶかで悩んでいるらしかった。
我々猫には嫁と愛人の違いなど正直理解不能だ。
「今のお前に言っても1%も理解できないか」
気が向いたら話相手になってやるつもりだ。
その時、不意にドアが開いた。
「キョンくんーただいまー」
「おう、妹」
「シャミー。またキョンくんのベットで寝ているー」
ゲ、嫌な奴が来た。
「おいおい、シャミセンをあまりいじめるなよ」
「シャミー。こっちおいでー」
フギャー
我輩の尻尾を引っ張る下僕。痛いぞ、すごく痛いぞ。早く離せ。
「妹よ、尻尾は敏感だから引っ張るのは止めなさい」
下僕が吾輩の尻尾を離したすきに吾輩はマイベットの下に隠れる。何で地球の支配者である吾輩が逃げ回らなければならんのだ。
「シャミ出てこーい」
どこから持ち出したか、おもちゃの刀で吾輩を小突く。
やめろ。
「お前はシャミセンにかまってないで大人しく部屋に帰りなさい」
「うん。わかったー」
やれやれやっと帰ったか。
主人を敬わないとは不敬な奴だ。罰として体が成長しない呪いをかけてやった。
我慢できないので別荘に行くことにした。
別荘では子分の嫁が出迎えてくれた。ご苦労様だな。うん
「また来たかシャミセン君。妹ちゃんから逃げているのかな? ゆっくりしていってくれ」
「キョンか。僕だ。シャミセン君がまた僕の所に来たよ」
ーーー「またか。いつもすまないな。今からそこに行くから待っててくれ」
人間は電話という機械で、遠くの個体と連絡を取れるらしい。
連絡を取る必要があるというのが、吾輩には理解不能の思考回路である。
「僕をほったらかしてキョンは他所の女の子と遊び回ってばっかり。僕も適当な男の子と遊ぼうかなー」
我輩には人間の美的感覚はよくわからないが、子分の嫁は人間の感覚で美人=異性にモテるらしい。
子分は人間にしては浮気者で、美人の嫁がいるのに他の女にも子供を産ませようとして嫁と浮気相手の両方に怒られている。
猫と違って人間のメスは嫉妬深い。
我輩は人間になったことはないから実感は皆無だが、同情の言葉が伝わればオスとして同情の言葉をかけてやることにする。
「そうだ、シャミセン君。鰯でも食べるかい? くつくつ」
実は我輩がここに来たのは食事のためである。子分は不遜にも我輩にキャットフードや煮干など不味い食い物を出してくるので困る。
これに反して子分の嫁の家では生魚や肉が食える。
しばらくすると子分が迎えに来た。大儀であるが、我輩は別荘にしばらくいるぞ。
「シャミセン君はしばらくここにいたいみたいだね。くつくつ」
「そうらしいな。どうしようか」
「僕がちゃんと世話をするから心配ないよ」
「いつも悪いな、お願いする。それじゃ俺はこれで」
「晩御飯を御馳走しようと準備していたのだが、食べていかないのか?」
「気遣いありがたいが、家に帰って食うことにする」
『遠慮せずに食えば良いぞ』
「キョン、今のは?」
「ああ、確かに」
『そんなに怖がること無いと思われるが』
「これが、シャミセンくん……」
恐怖のためか、嫁は膝をガタガタさせて子分の腕にしがみつく。
「シャミセンがしゃべったみたいだが、お前は落ち着け」
「キョン、今日は泊まってくれないか?」
「そんなに怖いのか?佐々木」
「お願いだよ。キョン」
「やれやれだな」
別荘の待遇は素晴らしい。さすが子分の嫁はわかっている。
ただ、久しぶりに人間の交尾が見れると思ったが、その日は見れなかった。
交尾観察するまで別荘にいようかなー。
(おしまい)
最終更新:2008年07月29日 20:34