36-77「偽者談義」

『偽者談義』
家で、佐々木とビデオを見た。中学時代と同じで、気がついたら当たり前のようにそういうことをする仲になっていた。
内容は懐かしのウルトラマンで、偽ウルトラマンの話だった。
話が終わった時、俺は抱えていた疑問を佐々木にぶつけた。
「なあ、佐々木。偽ウルトラマンはかなりバレバレのような気がするのに何でバレないんだ?完全に変装しないザブラ星人も間抜けだよな」

「どうなんだろう。難しい問題なのでちょっと瞑想して考察してみるよ」
そう言って佐々木は目を瞑る。
たっぷり五分間目を瞑っていたので、もしかしてずっと目を閉じたままで、眠り姫のために王子様の目覚めのキスが必要かという考えがもたげた頃
やっと目を開けた。

「判ったよ。偽ウルトラマンはあれで充分だということが証明できるはず」
「何だって?」
「つまり、ウルトラマンの最大の特徴はあの巨体。同じくらいの巨体で、体格がそう違わなければ同一人物と勘違いして不思議は無い」

「二人が並んでいる場合を除いて…」
それは驚愕の事実だ。

「そんなものなのか?」
「例えば、キミは競馬の馬の1頭1頭の違いがわかるかな?牧場の牛でも良い」
「わからん」
「だろうね。加えて、ウルトラマンは地球上に3分×登場回数しか存在しない。
短時間しか地球人の前に現れていない上に、その時はいつも戦闘中だから、細かい顔つきや体の違いを覚える余裕などない。
以上から、偽ウルトラマンはあの程度の類似でも充分だと証明された」
「なるほど」


「例えば、キミの前に僕の偽者が現れれば、キミは判別できるかな?」
「お前の方こそ俺の偽者がわかるのかよ」
「九曜さんと会った時、キミの偽者出現してね。キミらしからぬ態度を取ったのですぐ判明したよ」
俺の前には雪山で朝比奈さんの偽者が出たが、態度が変だから胸のホクロで本人確認したんだよな。懐かしい
中学時代なら佐々木の偽者が現れたような気がする。今なら誰が現れるのだろうか?

「キミの所には誰が現れたのかな?」
悪魔のような笑みで微笑む。ギク、朝比奈さんだが、それを言わない方が良いような気が…
「誰でも良いじゃないか」

佐々木はじっと俺を睨み、おもむろに質問した。
「涼宮さん、いや、朝比奈さんだろ?」
う、するどい…
「その顔だと図星みたいだね。くつくつ」
悪戯っぽく笑う佐々木。何でわかるんだろうか。しかし、その悪戯顔もすぐに涙を堪えたような顔になる。

「別に何もしてないぞ」
何故か言い訳する俺
「本当?」
佐々木は既に涙目だ。

佐々木も一応女だ。泣かしたらいけない。こんな場合どうしたら良いのだろうか?
「本当だ、だから忘れてくれると嬉しいなー。もちろんリアルでも朝比奈さんとは何もしてないぞ。そうだ、今度一緒に海に行こうぜ」
俺はどうしたら良いかわからなく混乱していたので、そう言って優しく抱きしめた。
俺の心が通じたのか、佐々木も泣くのを止めた。
「ありがとう、キョンの方から旅行に誘ってくれた今日の日を僕は一生忘れないよ」

(おしまい) a

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最終更新:2008年08月31日 17:13
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