「ふと思ったんだが佐々木よ、駄洒落の『駄』ってどういう意味だ?」
「……まず、『洒落』について説明しようか。
洒落というのは言葉遊びの一種で、発音の似た言葉を代用して文を作るものだ。
ただし、単に同じような響きを持たせるだけでは上手とは認められない。
意味の上でも二重性を持たせる……つまり、和歌における掛詞のような技法が喜ばれる。
語彙もさることながら、それ以上に機転と教養が求められる話芸ということだね」
「ふむ、なるほどな。原義では意外に高尚なもんなのか、洒落って。
そうすると、駄洒落は蔑称ってことになるのか?」
「いや、そうとも言えないんだよ、キョン。
洗練された文化は、人によっては嫌味なものに感じるものなんだ。
そういった人からの皮肉が、『駄』の一字に込められていると言われている」
「要するに、『君たちのお上品な洒落と違って、俺たちのはどーせ下らないですよーだ』ってとこか。
……っておいコラ佐々木、何笑ってやがる」
「いや、『ですよーだ』の部分の言い方が何とも可笑しくて……
くくっ、君も小さい頃にはそうやって子供っぽくいじけたりしたのかい?」
「まさか。俺は生まれたときからクールなのだけが取り柄でね」
「クールなキョン君、お顔が赤いよ?」
「何? 俺の顔が赤いって?
いい眼科を知ってるんだ。紹介してやろうか」
「『下らないですよーだ」ね……。ふむ、可愛いじゃないか、『下らないですよーだ』。
下らないですよーだ……よーだ……よーだ……」
「連呼するな! エコーも掛けるな!」
「……今日は僕の圧勝だね。精神を鍛えて出直して来たまえ。くっくっ」
「言ってろ!」