39-281「一本の缶コーヒー」

11月の終わり、寒い中、ひょんな事から谷口と2人で帰ることになる。
「たまには男どうしも悪くないはず」というのが谷口の弁だ。

「やあキョン」
「おう佐々木か」
はて?学校からの帰宅途中としたら、佐々木と俺がここで会うはずないが?どういうことだ?
「おはよ~ございます、今日も寒いですね佐々木さん」
谷口よ、あいさつはこんにちはが正しいぞ。
「お早よう、というよりも今晩はと言うのが良い時間かな?くつくつ」
佐々木の鋭い突っ込みに谷口は赤面している。
「何だキョン。佐々木さんと待ち合わせしてたのか。水臭いな。言ってくれれば……」
「いや、そういうわけじゃないが……」
「僕が望んだからキョンに会えたのかもね。くつくつ」
その後、俺達3人は四方山話に花を咲かせる。

そんな中、あのアホが突然言い出す。
「あの~ぶしつけな質問良いですか?佐々木さんは今幸せですか?彼氏が欲しいとは思いませんか?」
「やあ、生憎と僕はそこそこ快適なのだ。隣に誰かが居るからか、って?分かりきったことを聴かないでくれよ」
谷口よ、佐々木はお前や俺ごときが釣り合う相手じゃねーぞ。
「そうですか、いや、わかりますよ、はい」
谷口。溜息をつきながら俺を見るな。俺と佐々木は恋人どうしでも何でも無いんだぞ。

「寒いねキョン」
いつの間にか天使の羽衣からこぼれた綿のように雪が降ってきた。
「そうだ、ホットな缶コーヒーを買ってやる。ちょっと待て」
俺は佐々木用と自分用の缶コーヒーを買う。
「ありがとうキョン。遠慮無く頂くよ」
「WAWAWA悪いなキョン。暖かいぜ」
俺の手の缶コーヒーをひったくって去っていった。

「谷口の奴、奢ってやるなんて一言も言ってないのに」
「あれは彼なりの優しさなんだよ」
はにゃ?あれが優しさですか?
「わからないのかな?」
「いや、全然」
わからないが、佐々木と二人きりの方がずっと楽しいのは確かだ。これは谷口にはかわいそうな話かな。
「それじゃあ、そういう事にしておいてあげるよ」
「そんな事より、もう一本買い足さないと」
「僕にとって一本は少し多いみたいだから、半分キミが飲んでくれたまえ」
佐々木がそう言うのなら、若干照れるが、拒否する理由は無い。
俺達は、二人で一つの缶コーヒーを回し飲みした。
まるで何年も付き合っている恋人のように……

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年03月14日 22:11
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。