「いつも悪いね、キョン。」
いつも通りの学校生活を終えて、いつも通り俺はこいつ、佐々木を後ろに乗せてチャリを漕いでいた。
ああ、全くもって面倒で仕方がない。だがどこか慣れてしまった自分がいるのがわかる。
「くつくつ、いい傾向だ。」
……やれやれ。面倒だと口でいってはみるが佐々木には無駄なようだ。
……そう言えば。
「お前はなぜ自分のチャリを使わん? お前も自分のチャリを持ってない、と言うことはないだろうに。」
「……別にいいじゃないか、慣れてしまったんだろう?」
何か俺は変なことを言っただろうか、佐々木の声が動揺しているのか、若干震えている気がする。
「いや、気になって仕方がない。」
そう言うと佐々木はしばらく黙りこくってしまった。やはり何か余計なことを言ってしまったのだろうか。こちらから表情をうかがうことはできないので、どうしようか、と悩んでいると、佐々木の方から俺に話しかけてきた。
「……言える訳ないだろう? 君は僕に恥をかかせたいのかい?」
えー、あー、うん。特に恥をかかせる気はなかった。すまん。
が、そんな恥ずかしい理由が有るだろうか。自分の自転車に乗らず、二人乗りをわざわざしたがる理由など。ん? 待てよ? わざわざしたがる、じゃなくて……。
「なる程、それなら仕方ないな。にしても佐々木が、なぁ……。」
「……別にいいじゃないか。まあわかってくれたならいいが。」
そう言った佐々木の腕が俺の腰にそっとまわされた。
「佐々木……。これからは付き合わせてもらうぞ。」
佐々木の、腰に回された腕に力がこめられた気がした。
「お前がチャリに乗れるようになるまでの練習にな。中学生にもなって乗れないのは恥ずかしいしな。」
地面に投げられた。
最終更新:2010年09月14日 00:22