文化祭。SOS団はバンド演奏をやる。その練習の為、俺は長門からベースを渡された。
「詳細はマニアックになるが、聞いて欲しい。フェンダー社のプレシジョンベース。あなたにはこれが良いと私という個体は判断した。
プレシジョンベースの特徴としては、ソリッド。あなたは幅広い表現をするが、根本は常に1つ。性格的な観点からも、こちらが良い。」
ごつく、無骨なベース……。3トーンのサンバースト、そして飴色のプラスチックのカバー……
「垢抜けんなぁ……」
長門に楽譜とメトロノームを貰い、自宅に帰る。今日は佐々木が来る日だ。
「プレべ、ねぇ。」
佐々木はベースを膝に乗せ、少し触る。
「この無骨さと洗練されなさ、キャラクターの強さは、まさにキミだね。」
「泣くぞ?」
俺の言葉に佐々木はくっくっ、と笑う。
「いやいや。長門さんとは仲良くなれそうだな、と思ってね。キミを端から見ているだけなら、多分ジャズベースを渡しているだろうから。」
「意味がわからん。とにかく楽譜に沿ってやってみる。スローバラードだし、なんとか……」
結果は、最悪の一言だった。後で嫌になる位理解したが、バラードは一番難しいのだ。
「くっくっくっくっ。」
「笑うなぁぁぁぁぁ!」
ミスしまくり、ズレまくり……まさに最悪だった。
「弾いていれば、指は動くようになるはずだ。あとは、タイム感だね。」
佐々木は俺を背後から抱き、耳を胸に押し付けた。
「さ、佐々木?!」
「知っているかい?人間の心拍数は、1分で約60。テンポは、1分でどれだけのリズムを刻むかなんだ。」
や、柔らかい感触と……い、良い匂いが……
「つまり、今の僕の鼓動。それがM.M=60に近いはずだよ。」
ほう。邪念を捨てて聴いてみるか。なるほど。テンポの60bpmは、こんな速さなんだな。
よし、理解したぞ!
翌日。皆で合わせる。60bpmのスローバラードだが……
「ハシリすぎよ、キョン!何が60bpmを理解した、よ!」
「2倍位ズレてましたよ?メトロノームでご確認下さい。」
…………あれ?
END
最終更新:2013年03月03日 04:53