70-106『限界破裂』

キミを見ていると胸が痛い。
「やぁ、キョン。」
「よう、佐々木。……ああ、嫌だ嫌だ……また近くにテストかよ。」
「どうしようもない人だねぇ、全く。」
守ってあげなくちゃ、壊れちゃうから。
「ほら、教科書を開けたまえ。僕が解説してやろう。」
「うう……」
キミは知らないけれど
「ここは、ここの用法を使うんだよ。」
「……ほう。」
キミは僕の『薬』さ。
「成る程。応用的にはこうなるのか?……ん?違ったか?佐々木。」
「……いや、そうなるよ。すまない、盲点でね。そこは考えつかなかった。」
呑み込んでしまえるのは、僕だけだろう。

「……ん?メール?ハルヒかよ。」

あの子かわいそうで胸が痛い。
いたずらに美しさ安売りしてる。
「…………」
もっと早くにキミと僕が
「……はぁ?!夕方から全員集合だと?!」
出会えていたなら、こんな風にね
「……テスト前に何を考えとるんだ、あいつは……」
傷つけやしないだろう。泣かせたりしないだろう。
「……すまんな。佐々木。」
「いや、構わないよ。……僕も部外者として着いていこうか?」
キミを見ていると胸が痛い。
「やめてくれ。ハルヒの機嫌が悪くなると、古泉が大変な事になる。」
崩れ落ちていくキミは、とても素敵に見える。
「ああ、全く大変だね。」
ここで見ているから、さぁ笑ってごらん。
「ここまでハルヒに気を回す事自体が、おかしな話だがな。」
「くっくっ。」

セラピー。これはセラピー。ただのセラピー。


僕の上で君が君じゃなくなる。
「んっ……」
どうしようもなく悲しくて淋しい戯れ。
「……何やってんだろうな、俺ら。」
これは悪夢なのさ。
「全く……。」
これはあなたなのさ。
「……やれやれだね、キョン。」
何の意味などないのさ。
キミが汚されちゃうから。
「まだ時間はあるが……」
キミが望む全てを
「さあ、何して欲しい?」
「もう一度するか、佐々木。」
「くっくっ。このエロキョンが。」
誰もいない所で。
「あっ……」
このままキミと限界破裂。

セラピー。これはセラピー。僕のセラピー。

「身体を合わせても、いまだと淋しいだけだな。」
「このままいっちゃおうよ……ね、キョン……」

「……さて、行かないといけねぇな。」
ずっと僕だけ見ててくれりゃ、きっとキミにも良かったのにね。
「行ってらっしゃい。」
全て与えたはずさ、キミに。
「僕はキミを思って、涙に枕を濡らすとするよ。」
「あいつらとは、こういう関係にない。」
全てあなたのためさ。

「……やっぱり、テスト前だしな。断わりのメールを送るか。」
いとしの僕の『不安定』。
「それはよくない。約束は守るべきさ。」
もう離さない。
「また、テスト明けにでも会おう。」
「……そうするか。」
キミを、キミをこのまま閉じ込めて永遠に。
「じゃあ、また今度。」
「ああ。」
キミの傍にいて、ずっとずっと話しかけるよ。

セラピー。これはセラピー。僕のセラピー。


「さて、テストも終わったね。出来はどうだい?」
「おかげさまで、だな。」
誰にも会わずに
「今日は何をして過ごす?」
ここで過ごそう。
「そうだな。お礼に買い物にでも行くか?」
ガラス細工の時を
「そうだね。では何か小物が良いな。こないだ、ガラス細工の栗鼠を見つけてね。」
「値段次第だ。」
「くっくっ。」
二人過ごそう。
「帰ってから、二人で過ごすかい?」
「お泊まりはヤバいだろうが。監視の目もある。」
過ぎた夜の数を
「最も、こうした気遣い自体がバカらしいんだが。」
「全くだね。」
数えずに過ごそう。
「それだって、俺はハルヒ達を守らないといけないんだがな。」
「だからこそキミ自身が無防備なんだよ。」
「そこはお前が守ってくれているんだろ?」
「言っていたまえ。」
キミと集中治療を、続けていこう。

そして。


キミは僕の『クスリ』になる。

END

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最終更新:2013年04月07日 03:34
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