17-438「電車にて」

「佐々木~佐々木~~!!」
俺は電車がホームに着くと同時に走り出していた。
佐々木と同じ車両に乗り合わせていたのだが、
満員の車両の中で端と端だったために声をかけられないでいた。
佐々木は俺のことに気付いていなかったらしく、
さっさと帰り始めてしまっていた。
「佐々木!!」
ようやく横に追いついて、
少し大きめの声をかけるとようやく俺に気がついて立ち止まってくれた。
「おや?キョンじゃないか?君は電車通学ではなかったと思うのだが?」
ああ、今朝自転車がパンクしちまってな。
親に電車で帰るように言われたんだ。
「成る程。そういうわけか。それは災難だったね。」
佐々木はそういうと楽しげに笑っていた。
全くとんだ災難だったぜ。まぁ、おかげでお前と同じ電車になれたんだからよしとするか。
「それは一体どういう意味だい?」
ああ、お前の誕生日はもうすぐだろ?
一緒に誕生日プレゼントを買いに行こうと思ってたんだ。
「本当かい?君がそんなことを律儀に覚えていたなんて、正直に言って僕にとっては純粋な驚きだよ。」
そういって目を丸くしていた。
「だが、よく考えてみると君も結構情の厚いところがあるから、覚えていても不思議ではないのかな?」
俺の言おうとしていた事をとらないでくれ。
「君からの誘いであれば慶んで受けよう。そして、君の誕生日もそろそろだったと記憶している。
どうかな?今度僕の誕生日プレゼントを買いに行ったときお互いにお互いのプレゼントを買ってみないか?」
成る程。それは面白いな。そうしよう。そんな色々な事を面白くさせようとしている辺り、
お前もハルヒに結構似ているかもしれないな。
「そんなことはないさ。誰でも人間は面白さを求めているものだよ。ちょうど君のようにね?」
エンターテイメント症候群か。確かにそうかもしれないな。
佐々木はのどの奥をくっくと鳴らしている。
「よく覚えていたね。君は優秀な生徒だよ。」
佐々木先生のほめられるとはね。
「さて、出かけるとなると日程をあわせないとね。私は月曜と水曜意外は空いているよ。」
佐々木が楽しそうに聞いてくる。
「そうだな……俺もハルヒたちに付き合わないといけないし大変だな。」
そういうと不意に佐々木は顔を曇らせ、
「そうだったね……妙な誤解が発生しては大変だから、止めておくかい?」
おいおい。乗り気だったじゃないか?突然どうしたんだ?
「いやね……君が涼宮さんを狙っていると言う話は有名だからね。」
ちょっと待て。俺はハルヒを狙っているだって!?誰だそんなデマを流した奴は。
「みんな言っているよ?北高にいった涼宮さんを同級生になった男が狙っているって。」
なんだって!?全く……昔からなんかそんな事ばっか俺は言われ続けるな……
お前は知っているだろうに……
「君がハルヒの事を好きかと聞かれて、否定しなかったと聞いていたんだけど?」
どれの事だ?そんなことを聞かれた覚えはないんだが……
「そうなのかい?私はそう聞いて、ああ……やっぱりな。と思って諦めてたんだけど。」
とりあえず、完璧に否定しておくが、それはない。
そういうと佐々木は安心したようだった。
そんなに俺が変人とくっつかないか心配なのか?過保護なやつだな……

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最終更新:2007年08月16日 10:28
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