今日は、僕の名前は佐々木。名前はここでは伏せておかないといけないんだ。その理由はみんなの知っているとおりだよ。別に不満はないさ、妹さんなんかに比べればね(笑)。
ここでは、僕の自己紹介をするほど暇はないと思う。それにここにいるということは僕のことはそれなりに把握しているんだろうね。
わからない人はkwskと書くか、分裂を読んで欲しい。まぁそれでも僕のことはほとんどの紹介されていないのだけれど、今のところそれが僕のすべてさ。
だから、ここでは僕について少し詳しく紹介したいと思う。嘘(釣りっていうんだよね確か)かどうかはみんなが判断してくれ。大人の対応を僕は望んでいる。
以前、僕はずっと一人だったんだよ。一人だった、というのは僕という存在が今では複数存在するとかそういうゲームの残機的な意味じゃないんだ。
僕の世界に、具体的にいえば僕が感じていた世界に僕にとって信のおける人がいなかったと言えばいいのかな。それは、"身内"も含めてね。
両親はとても真面目な人だ。仕事熱心で共働きなので家にいないことは多かったし、たまに帰ってきてもあまり話すことも無かったんだ。
二人とも難関国立大学の出身者で、会社ではとても高い地位にいると聞いている、というのも、僕はあまり知らないんだ。両親の仕事を知らないのも可笑しいよね。
でも、僕は彼らのことをとても誇らしげに思っていたよ。たとえ、そのせいで僕がほとんどかまってもらえなくても、僕には自慢の両親だったんだ。
ここは頭のいい住人達が多いと思っている、だからこう思ったろうね、何故、過去形なのかって。
簡潔にいうとね、僕の父は亡くなったんだ。小学校の六年生だったころに。
母はとても強い人だったよ、人前では決して泣かなかったしね。でも僕は、母のようにはなれなかった。そのショックで僕は一度変わってしまったんだ。
今思えばとてもみっともないね、何があったのかというと、世間一般でいう"グレた"というところかな。
中学へ上がったばかりの時、僕は初めて煙草を吸ったよ。お酒はもうたしなむようになっていたしね。
母親はそのことを知っていたのかは今でもわからないよ。でも、きっと気づいていただろうな、うまく証拠隠滅したつもりなんだけど。
グレたといっても、悪い人間とつきあっていたわけでもないし、学校の成績のも、自分が満足できる程の学力は維持していたよ。
クラスでも浮いていたわけでもない、普通に周りの女子とも話していたし、学校生活でいじめなどの問題とは無縁に過ごせたのは幸いだったね。
僕はずっと隠していたよ。僕の影の部分を、非行の事実を。
でも、みんなは何か感づいていたんじゃないかな。
僕の制服に染みついた煙草の匂い、雰囲気。僕の闇を感じて、みんなは中学生ながらに僕を慕ってくれていたのかもしれない。抽象的だけど、わかってくれると信じているよ。
でもね、たまにそういうのに気付かない人がいる。僕のことを、「まじめで頭のいい物静かな優等生」と信じて近づいてくる人がいるんだ。
彼らのことを空気の読めない人間だとは思わないよ。実際に僕はそう見せるように演じていたわけだからね。
自慢するわけじゃないけど、僕の容姿を気に入ってくれたのか僕は多くの男性に告白されたよ。どれも知らない人ばかりだった。
すべて丁重にお断りしたよ。僕にその気はなかったし、影のほうに気付かれても困るしね。
でも、正直うんざりしていたんだ。彼らにも、この退屈な世界にも。
だから、告白してくる彼らをからかってやったんだ。そのときだね、"僕"が初めて生まれたのは。
思惑通り"僕"のおかげで、告白される回数も減っていったよ。僕が返したときの彼らの顔といったら本当に愉快だった。一言でいえば「なんだこいつ」ってところかな?
そのせいで変な女というレッテルを張られてしまったけど、なかなか面白いじゃないかとおもってね、普通に受け入れたよ。
三年の初めのころだった。母親に塾へ行かないかと言われたんだ。本当はそんな面倒は勘弁と思っていたけどね、僕の志望校はレベルも高いし、賛成したよ。
塾は本当に退屈だった。そんなレベルは既に終わっているんだよと何度も講師にいってやりたかった。
だからノートを取るふりをして、机に落書きなんかをしてたよ。まだのこっているかな?あのヒゲは傑作だったんだけど。
そんなある日に、彼が現れたんだ。いわずもがな、彼の名前は「キョン」。
「よぉ、お前もこの塾に通ってたんだな」「君は、確かキョン君だったね」「そういうお前は…スマン、なんだったか」
佐々木だよ、よろしく。といいつつノートで机の落書きを隠したのは一生の秘密だ。
彼の第一印象は「どうでもいい」だった。僕の中では今まで僕に告白してきた連中達と何ら変わりのない存在だった。もしかしたら、僕を追いかけてきたのかもしれない。
だから、やることはいつもどおり。
「キョンとは、面白い名前だね。本来の君の名前から考えたら相当ひねったんじゃないかな?そのあだ名を考えた人は相当言葉遊びにたけているといえるね。
いや、遊びなんていったら、失礼だよね。でも僕は名前なんて大して意味のないものだと思っている。その人の存在を確認し得るものであれば、どんな記号でも
変わらないと思うんだ。たとえば、出席番号とかね。僕が一番で君が二番であっても問題ないわけだ。むしろ機械から見ればそちらの方が管理しやすいだろう。
怖い話だと思わないかい?人間はきっと、どんどん楽な方に進んでいく。すべての人が数字で管理されるようになるのは時間の問題だよ。まるで、家畜のようにね。
キョン君、君はどう思うんだい?君は普段あだ名で呼ばれることが多いみたいだけど、そんな君にとっては名前とはどんな価値があるのかな?」
今思えばなんてひねくれているんだろうね。でも、これは単に適当に考えただけさ。たいていの人はこんなこと言われれば引くのは目に見えているからね。
ほら、彼もとても困った顔をしている。きっと呆れて―――
「さぁな、俺にはよくわからん。俺も学校の連中や先生、家族にまであだなで呼ばれているからな、名前がどれだけ重要かって言えば現実は大したことないかもしれないし
俺もあだなで呼ばれることは別にいやじゃないしな。でもな、名前に価値はなくても意味はあると思うんだ。名前を付けるのは他人だからな、きっと名前にはそれなりの
意味をこめてるんだろ。元気に育ってほしいとか、明るくなってほしいとかな。全部が全部とは言わんがな、お前の名前にだって意味はあるだろ?」
―――――あのね、あなたの名前はね、お父さんが考えたのよ?その意味はね――――――
彼のいうことは正しかった。僕は肯定することしかできなかった。そして、何か大切なことを教えられたような気がした。
初めてだった。誰かが僕の意見に対して正しい答えを返すことができたのは。
そのとき思ったよ。おもしろい、彼ならこの退屈な日常を打破できると。
キョンが欲しいと。
それから、僕は彼にのめりこんでいった。男性を寄せ付けないための"僕"は、いつしか彼の近くにいるための"僕"になった。
煙草をやめた。彼と電話で話す時間が増えた。
お酒をやめた。彼と一緒にいれば、もっと楽しいから。
それから、僕は彼とは進学別れとなった。
僕は彼を追わなかった。僕は誰かに溺れて流されてしまうような人じゃないから。それが彼にとって僕の定義であり、親友でありつづけるための正しい選択だと思ったから。
しかし、一年少しで、僕らは再会したよ。いづれはこちらから連絡しようと思っていたけど、神様に感謝するべきだね。
なんて、その時は思っていたのだけれど、よくよく考えてみれば神様は―――おっとここでは書けない、まだそれはしっかりとした定義がないからね。
なんにせよ、僕はキョンと再会したんだ。これからまた、退屈せずに済みそうだよ。なんて、本当はもっと違うことを言いたいのだけれど(笑)
でも、そう簡単にはいかなかったよ。彼との間にはどうやら大きな障害があるみたいだ。
だけど僕と彼ならなんてことはないさ、僕らはきっと相性がいい。
さて、僕のことはなんとなくでも理解できてくれたとおもって、ここら辺で締めさせてもらうよ。
最後に、僕の抱負を述べたいと思う。
「僕は、新世界の神にな――――――」
「だめよ!」
「あら、どうして?会誌をつくるから、エッセイを書けといったのは涼宮さんの方でしょ?」
「そういうことじゃないの!問題は中身よ!最初の自己紹介は意味分かんないし、途中から完全にノロケじゃない、しかも最後は法に抵触してるわ!!」
「つつみ隠さず書けといわれたから正直に書いたのに、ずいぶんな駄目出しね」
「……これは、エッセイではない……」
「いわゆる、暴露本ですねwww」
「おい、俺にも読ませてくれよ。気になるだろ?」
「(君)(あんた)は駄目!!」
「なんでだよ……」
「しかたないね、橘さん。これはうちの高校で「わかりました!」「だー!絶対阻止!!有希!止めなさい!」
「了解」「―――」
「まて、ここでやんのかおい!」
「バイトが入りましたので、僕はこれで」「お先に失礼します……」「佐々木さん!早く脱出するのです!」
「おい!みんなどこ行――「あんたは駄目!」
やれやれ、なんてね。くつくつ
END