26-605「佐々キョン」

「僕はね、人間は人生をどのように生きるべきかについて考えているんだ。
 幸せなんて有りもしないもの、求めるのはいい加減やめたほうがいいと思うんだよ。」
全く、少しは学校の勉強でもしたらどうだ?
「こっちの方がずっと楽しいんだよ。そうは思わない?」
思わない。
「いや、でも僕はねーー」
ほんと、こいつは嬉しそうに語る。笑顔がまぶしいね。

一体誰に似たんだか。
「いやいや、すまない。ここまで似るとは思ってなかったんだ。
 だってそうだろう?僕の遺伝子は半分しかこの子に受け継がれていないんだから。」
人生の命題について喜々としながら語る小学2年生なんてどこにいるんだ?
せめて口調ぐらい女の子らしくして欲しかったぞ。
「僕だってこっちの方が楽だよ。」
「くっくっ、だってね、この子、ずっと僕の話を目を輝かせながら聞いてくれるんだよ。
 ついつい、嬉しくなって多く語りすぎたようだ。ところで宿題は終わらせたの?」
「面倒だよ。あんなの。」
こうゆうところは誰に似てしまったのか。
「そうだなあ、自由研究どうするべきかなぁ。」
適当に貯金箱でも作っとけ。
「やだよ、そんなのつまらない。」
「くっくっ、そうだなぁ…漢字の成り立ちについて調べてみたらどうだろう?
 中々興味深いテーマだと思うけれど。」
「うん!それにしよう。」
漢字うんぬんに興味津々な女の子……いや、もう今更何も言うまい。
俺は苦笑いを浮かべていた。

「今、考えていることを当てて見せようか?」
お前なら当てられるさ。お前に隠し事なんて出来たためしがない。
「この子には女の子らしく育って欲しい、じゃないかい?」
そう言うと、ぽっこり膨らんだお腹をなでた。

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最終更新:2007年12月29日 00:15
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