27-162「佐々木さん、あけましたねおめでたいですか?の巻」

やあキョン。新年そうそう会えるとは何よりだね。
君も除夜の鐘をついてきたところかい。
君の煩悩は払えたかな。くっくっ。
ところでキョン、除夜の鐘は108つ。最近は皆それ以上つくけれど、
これが煩悩の数と同じだということは知っているね。
さて、では何故煩悩の数は108なのだろうかね。
僕も仏教にはさほど詳しくないのだけれど、
これは四苦八苦をそれぞれかけて、4*9=36、8*9=72、この両者を足した数で36+72=108
とも言われているそうだよ。
四苦とは「生老病死」の4者で、仏教では、生きることそのものがある意味での苦しみと考えていたのだね。
八苦とは、この四苦に足して、
愛別離苦(あいべつりく)
怨憎会苦(おんぞうえく)
求不得苦(ぐふとくく)
五陰盛苦(ごおんじょうく)
を足したもののことを言うんだ。
愛別は愛し合いながら別れる苦しみ
怨憎は憎む相手と出会う苦しみ
具不得は欲しいものが手に入らない苦しみ
五陰盛は色・受・想・行・識の5つで、
まあ簡単に言えば五感のようなもので、物事に執着する苦しみを言うそうだよ。

さて、キョン。
先ほど君が涼宮さんたち一緒に除夜の鐘をついているのをずーっと見ていた僕は、
この八苦のどれだけに該当しただろうねえ。
さてさて、一度鐘をついたくらいでは、とても救われない程度に思えるのだけれど。

仏教は基本的に執着を断ち切り、悟りを得ることでしか救いは訪れないけれど、
僕はことこれに関しては、執着を断ち切る道を選ぶつもりは毛頭ないのだよ。
で、あれば、ここは神道の神様にでも、お賽銭を備えて神頼みでもする他に、
途はないかと思うわけだよ、うん。
先ほどから後ろで僕を睨んでいる涼宮さんに遠慮して、今から君を奪い去ろうとは
思わないけれど、後日お参りに付き合ってくれるくらいは、君に期待したいわけさ。
お礼に、とっておきの晴れ着姿くらいは、披露するつもりだよ。くっくっ。



佐々木はそう言って、いつものようにくつくつと笑う。
提灯の淡い光のしたで、その吐息が白い靄のようにたゆたう。
そんななかで、微笑む佐々木の笑顔は、これから皆で見る予定の
初日の出のように、澄んだ明るさを見せていた。
やれやれ、今年もよろしくな、佐々木。
                                    おしまい。

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最終更新:2008年01月01日 08:46
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