諸君は自分に責任がない事柄で人から疑われた、あるいは叱責を受けたことは無いだろうか。
俺の場合は小学生の時に遡るがそれに類した事がある。
あの時は俺の仲が良かった連れが近所のスーパーで万引きをして、俺も一緒にしたと教師に言った事がある。
授業中の教室から担任に呼び出され、誰も居ない階段の一角で問い詰められた時の心境って誰か判るだろうか?
俺は何も知らなかったし何もしていなかったから知らぬ存ぜぬを話せば良かったんだろうが、その時は何か判らぬ義憤(?)に取り
憑かれいた様子で、有りもしない万引き話の共犯として教師のお叱りを受けることになった。
俺はアイツのことを小さな頃からよく知っていたと思っていたし、アイツもきっとそうだろうと思っていた。
アイツは泣きながら俺に謝っていた。ウチの両親も、まだ小さかった妹だって泣いていた。
もう、こんな事はイヤだ。子供心にそう思ったのは誰しも理解して頂けるかと思う。
そんな事が懐かしく思える様になって数年経った正月明けの事だが、俺はクラスメイトに呼び出しを受ける羽目になった。
呼び出しを受ける事自体、珍しい事ではなかった。
ある時は目立ち過ぎると云うどうでもいい理由だけで呼び出された事もあるし、誰某のグループに仲が良いと言う理由だけで呼び出さ
れてあれこれ難癖を付けられて、文句を言われた事がある。
時によってはそれが拳にとなった事があるが、俺自身、嘘偽りは嫌いだったので謂われのない事に対しては刃向かいもしたりした。
だが今回は少し毛色が違うらしい。俺はクラスの女子連中からの呼び出しを受けていた。
「あんた、佐々木さんの事どう思っているのよ」
クラスで一番背の高い、ショートカットの女が語気を荒げて俺に話し掛けた。
・・・俺の事を色々と面倒をみてくれるし赤点とった時なんか、一緒に俺ごときと勉強してくれるんだぜ。
俺みたいな人間に付き合わせて悪いと思っているが、あいつのホッとした表情を見ると俺も少しは頑張ろうという気が起こるんだ。
ショートカット娘は歯を食いしばって頭を垂れた。口元が動き何かを話している様だが俺には聞こえない。
伝わらない言葉は何も言っていないのと同じ事だ。そう、言ってやりたかった。
「あんたの言葉で誰かが泣くって事は考えないの?
佐々木さんが泣くって事はあんたは考えないの!?」
ブレイクアウトしたショートカット娘の替わりに、おさげの眼鏡っ子が俺に刃を向けた。
・・・俺は誰かを泣かせる様な羽目には金輪際陥らせないつもりだし、佐々木を泣かせる奴は俺が許さねぇ。アイツはいい奴だ。
それだけ言うと女連中は足早に去っていった。
・・・なんだよ、それだけか。
俺は教室に戻ると佐々木の姿を探した。
あいつは俺の席の隣だからすぐに見付かった。教科書を読みながら何か書き物をしているらしい。
不意に佐々木の頭に手をやって、頭を撫でてやった。
「ふ、ふわぁ、キョン!?キミはいきなり何をするんだ」
俺は構わず佐々木の頭を撫で続けた。あんな事を言われたら仕方ないだろう、気になる物は気になるのさ。
「ご、ごめん、キョン。人が見ているからやめてくれ」
佐々木が抗議の悲鳴を上げる。おっと済まん。俺は手をスライドさせて佐々木の耳を触った。
「ひゃっ!」
なぁ、こんな奴に涙させる人間って居るか?
居たら俺が地獄の底に突き落としてやる。
そう俺は思った。
最終更新:2008年01月05日 22:43