「佐々木さん佐々木さん、私もそのお守りが欲しいのです。もちろんタダでとは言いません。
代わりに私の作ったお守りを差しあげます。」
キョンにお守りを渡した直後、どこから湧いてきたのか見慣れたツインテールが背後に立って
いた。まさか、今の今までずっと後をつけてたのか?
「……………。橘さん、一応聞くけど…その中には何が入っているのかな?」
「もちろん佐々木さんと同じものを入れてあるのです!」
「……………何だって?よく聞こえなかったわ。もう一回言ってもらえないかしら?」
「またまた、しらばっくれちゃって。知ってるんですよ?昨晩、これでもかってくらいやってたじゃないですか。」
まさか、このツインテール…また私の部屋にカメラを!?この間取り除いたばかりだったから油断してたわ。
「ななな何のことかしら?ささっぱり分からないわ。」
「愛ですよ、あ・い。」
「……………はぁ?」
「だって佐々木さん、お守りを持って長い間ごそごそやってたじゃないですか~。照れなくて
もいいんですよ。キョンさんのために愛を込めてたんでしょう?妬けちゃいますね~。」
そうか、あの時はカメラに背を向けてたんだな………ってことは、カメラがある位置はだいた
いあの辺ね。帰ったら取り除かなきゃ………
「分かったわ。これをあげるからキョンには黙っておいてね?」
「分かりました!たとえ拷問されようとも口を割らないのです!あっ、それとこれをどうぞ。」
「ああ、ありがとう。受け取っておくわ。」
橘さんが渡してきた自作のお守りを受け取り、これから最後の追い込みだからと適当なことを
言ってその場を離れた。もっとも、私の渡したお守りを重度の麻薬中毒者みたいにハァハァし
ながら見つめていた橘さんに聞こえていたかどうかは疑問だ。あのお守り、変なことに使われ
ないかしら………
一抹の不安はあったけど、取り敢えず私はこの場をやり過ごしたことに安心して溜息を吐いた。
ちなみに、橘さんに渡したお守りには何にも入ってないわ。もちろん、愛なんてものもね。
そうして私は帰り道を歩きながら、カメラの除去と鍵の設置を両親に要求することを心に誓っ
たのだった。