8-88「初恋」

二人は手を繋いでいた……
その姿を見た時、自分の心がチクチクと痛んだ……
涼宮さんは少し慌てた様に手を離そうとしていたけど、キョンは手を離さなかった。
「佐々木、まぁ、アレだ……俺とハルヒは……わ、わかるよな?」
キョンは顔を赤らめながら、繋いだ手を見せた。わたしの心はまたチクチクと痛んだ……

わたしはちゃんと笑えていたんだろうか……

「くっくっ、勿論だよキョン。キミもやっと自分の気持に素直になった訳だね。
それとも、親友としてはもう少し凝っ言い回しをお望みかな?」
「勘弁してくれ……結構いっぱいいっぱいなんだぜ。なぁ、ハルヒ?」
「えっ、そ、そうね。そんなの古泉君だけで十分よ……思い出しただけで……もぅ!」
そう言いながら、涼宮さんは顔を真っ赤にしながら、キョンと繋いだ手に力を込めていた。

わたしは胸の痛みに負けそうになった……

「キョン、そろそろ行くよ。少し寄る所もあるし……これ以上キミ達の邪魔をすると馬に蹴られそうだからね。」
「あぁ、じゃあまたな」
本当は走ってこの場から去りたかった……
でも、駄目……あの角を曲がるまでは……いつものわたしで……
5m……4m……3m……たったこれだけの距離が……2m……
こんなにも遠い……1m……どうして?

角を曲がったと同時に視界がぼやけた。
そして涙が頬を伝う感触で、自分が泣いている事に気づいた。
やっと……やっとわかったよ……どうしてこんなに胸が痛いのか……
いや、本当はわかっていたのに……ただ、気づかない振りをしてきたんだ……
初めてキョンに会った時から、ずっとずっとわたしは恋の病にかかっていたんだね……
気がつくのが遅かったね……キョン……
伝えられないのがこんなに辛いなんて思わなかったよ……


聞こえないけど、伝わらないけど……これがわたしの気持ち……
わたしキョンが好き……大好き…………だったよ…………


おわり

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最終更新:2008年01月26日 20:13
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