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アブドゥル=アルハザード

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クトゥルー神話に語られる世界でもっとも有名なネクロマンサーの一人
ネクロノミコンの著者としても知られ、創作であるにも関わらず専門家の間では、その実在が噂されている。

【狂える詩人】あるいは【真なる久遠の戯弄】の狂名で恐れられるカゴモリの養父にして師
七人の魔法使いの一人であり、同時に最狂の魔法使いとして知られる人物。
本来、魔術系統として認知すらされることの無い禁断の魔術、死霊術を編み出した鬼才の持ち主であり、魔道書〝アルアジフ(魔物の咆哮)〟と〝ネクロノミコン(死者の掟の表象)〟の著者としても知られる。
ネクロノミコンは地獄の兵を復活させたとか、時を越えたなどという話もある。この世界に現存する魔道書の中で、間違いなく最高峰の一冊である。

年齢、実に二千三百歳にせまると言われるが、友人でもあるエンペドクレスよりは数百歳ほど若いらしい。(現在の転生後のエンペドクレスよりはやや年上ではあるが)
年齢を重ねているにも拘らず若々しく、初見であれば十七、八歳と見紛うほどだ。
その姿は端麗艶治と呼ぶに相応しいほどに、艶かしく美しい容貌、燃えるような深紅色の頭髪と同系色の真紅の瞳を持つ。
エンペドクレスの長身痩躯の貴翁ともいうべき容姿に比べ、アブドゥルの身の丈は丁度百七十ほど、容姿も若々しく正反対、例えるなら艶治の美童といったところか。
どちらにせよ、何も知らぬ者が見れば、二人が古き友と解る者はいないのだろう。
それ以前に、この少年の年齢が、まさか二千歳を超えているなどとは誰にもわかるまい。

エンペドクレスが集落の長に治まった頃に、多少は住みやすくなったとして魔法使いの集落【木末隠る語り部】フロプトメハシェファに戻ってきた。
それ以前は、エンペドクレスは【英知と探求】の空中都市エリエスファルナにて学院長をしており、アブドゥルに至っては、世界各地を渡り歩いていたことしか解っていない。

その後、しばらく集落の更に奥地に古くよりかまえる自宅、虞骸館(ぐがいかん)と呼ばれる外装の赤煉瓦を年中季節の果実が収穫できる不思議な蔦で覆われ、屋根の風見鶏が特徴的な館に舞い戻っていた。(住民には蔑みの意味を込め、嘲弄館と呼ばれていた)
その後、とある事情から一人の赤子を拾いカゴモリと名づけて自らの娘としている。

アブドゥルがこの世界で狂人と恐れられる理由は少なからず存在するが、その中でも伝統やそれに連なる古い教示に何の感慨もないどころか、笑い飛ばしてすらいたことが集落での村八分扱いの理由でもある。
魔術とは、本来、この世にユグドラシルが根付いた頃より始まったとされており、新神暦に至るまでの旧暦では、魔術を行使できるのは、この集落に住む者たちだけの特権でもあった。
その力は秘匿とされ、永きに渡り戒律をもって守られてきた。
当然、いかな赤子といえど集落の外の者を集落に入れることも戒律を破る行為だったが、アブドゥルはそんなこと毛ほども気にしていなかった。
今回のことだけに限らない。こうした態度の全てが住民の反感を買っていたのだろう。
更には、アブドゥルは未だかつて誰一人考え得なかった。或いは、考えたとしても成功し得なかった復活に連なる魔術を作り出した人物でもあるが、これも生命の醜く歪んだ結果であり、死の延長とされ蔑まれた。
もちろん、人間や動物の死体を使ったり、邪精霊や幽霊の類を弄するのだから、この意見ももっともだったのだろう。だが、アブドゥルはエンペドクレスのように万人に優しく、常に耳を傾けるような賢人ではなかった。
むしろ、自らと周り、自分が気に入った者、愛した者以外は他の無機物と大差が無かった。
故に、彼には幽霊や死体を触媒として使うことの不道徳が理解できなかったのだ。
そういった意味では、十二分に狂人と言えたろう。

カゴモリを引き取って以後は、度々集落の中心街に下りてきており、その度に他者に聞こえるほどに『あれの魔術の才は、やはり俺が見込んだとおり素晴らしいものだった』とか『拾ってやって正解だった』とか『いずれは、面白い実験に使えるかもな』とか『どれだけ痛めつけても文句も言わん、つまらん話だ』などと言った話をしながら街を歩く姿が目撃されていた。
この言葉どおり、カゴモリは五歳になる頃には、上位精霊魔術を操り、幼馴染でエンペドクレスの養女でもあったトグマの力量すら凌ぎ、集落の成人すら超えるほどの腕前だった。
だが、実際には、カゴモリに魔術の才などそれほど多くはなかった。
すべてはアブドゥルの計略だったのだ。
アブドゥルは気づいていた。コイツを引き取って育てたところで、俺の子では満足には暮らせまい。と、そこでアブドゥルは考えた。つまりは、コイツが庇護されてしかるべき条件を整えれば問題はクリアされる。そう考えたのだ。
そして、アブドゥルはその日から街へ言っては出鱈目な話を繰り返した、人々の頭から話が忘れ去られる頃には、植えつけるように現れて、また人の耳に入るように話して歩いた。
いつしか噂は一人歩きを始め、アブドゥルの狂人ぶりに尾ひれがつき、同じようにカゴモリの悲壮ぶりと魔術の才に尾ひれがついた。
その後、アブドゥルは虚偽を真実に変えるべく、カゴモリにしつこくも根気よく魔術を系統立てて教え、実演で教え、自然から教え、机上から教えた。
十を聴き十を身に付ける無茶を押し付ける傍らで、自らは百を伝え、千を理解してもらう努力をつづけた。
その結果、カゴモリは高い魔術を身に付けるに至った。
魔力の総量はトグマに遥かに敵わなくとも、研ぎ澄まし変質させる術を徹底させたアブドゥルは、カゴモリを他者よりも突出した魔術師に育て上げた。

カゴモリ曰く、アブドゥルは魔術を教える師といても父としても優しい男だったらしい。
アブドゥルにしてみれば、子供が知らないことは当然のことで叱ることで子供は思考力を落とすのだから、叱らず諭して、回り道により時間をかけて教えれば、結果習得は早まるという合理性の結論なのだそうだが、しかし、朝日と共に我が子を起こし、食事を作り、教え導き、時に遊び、そして夜は眠りに落ちるそのときまで童話を読んで聞かせた姿は、父親そのものであった。

幼少期のカゴモリには不思議に思い、憤ることが多かった。
父であるアブドゥルが集落の中で酷い扱いを受けていることが、返って自分自身の扱いは手厚いもので、集落の人々から可愛がられていることが、不思議であり怒りの対象でもあった。
小父さん(カゴモリはエンペドクレスのことをそう呼んでいた)に聞いても苦い顔をして皺を刻んだ口元を優しく歪めると彼女の頭を撫でるだけだった。
エンペドクレスはその理由を理解していた。簡単なことだったのだ。
古い思想を持ち、新神暦が始まって今だ百年、魔術師たちのプライドは高かった。
それと同時に、優れた魔術の才を持つものは、始祖の魔法使いの血統にそれだけ近いと信じられていた。
つまり、カゴモリに優れた魔術の才があるならば、よそ者であったとしても、それは集落の血身ということだ。
そして、何より、カゴモリはアブドゥルによって実験動物さながらの扱いを受け、そのためだけに拾われ生かされており、アブドゥルはカゴモリを人とは思っていないと皆が信じていた。
もっとも、すべてアブドゥルが語ったことで、同時にそう仕向けるのが目的でもあったが、集落の中では、高度な魔術を駆使し、悲劇的な生活の中でも凛と立つ悲壮感を持つカゴモリと悪魔のような狂人アブドゥルという図式が既に出来上がっていた。
エンペドクレスは、そのことを話すことが出来なかった。
今の、この誰もが真実を知らぬ状況だからこそ狂人の娘はこの集落で生きていけるのだから、アブドゥル以外が引き取っていればよかったのか? しかし、それこそ叶わぬ夢だ。
この集落には、掟に背いてまで外の捨て子を拾い育てる奇特な輩などいないのだから。

カゴモリは、幼い頃、一度父にそのことを尋ねたことがあった。
父はなんでもないことのように『それは、幸福を得るために必要なことだ』と話した。
カゴモリにとっては、この世界は生まれたときからこの形を保っており、誰かがそう仕向けているなどとは思いもしなかった。
そこにある幸福は日常であり、そして間違いなく彼女に与えられた幸福であったからだ。
だから、カゴモリは純粋に、父の言う幸福が父に繋がるものだと信じた。
カゴモリは『父様が酷い扱いを受けることが、父様の幸せにつながるの?』と尋ねた。
アブドゥルは一拍もおかず、淀みなく『ああ』と答え、柔らかく微笑した。
真実を語れば、それはカゴモリの幸せに繋がっていたのだが、今にすれば、それが当時のアブドゥルの幸せだったのかもしれない。

それ以後、カゴモリは、父の幸せに繋がるならと、住人の話に口をつぐんだ。
そして、誰よりも優れた魔術師になることに励んだ。

それから十年ほどが経ち、カゴモリの容姿が父を追い越し始めた頃、彼女は父にネクロマンシーの伝授を願い出た。
彼女にしてみれば、口には出さずとも、父が自分のために責め苦を受けていたことを成長と共に悟っていたのだろう。理解してもおかしくない年齢だった。
それでも、例え問い詰めてもアブドゥルは『知らん』とだけ答えるだろうことも理解していた。
故にカゴモリは、より優れた魔術師に、父の後継足りえるネクロマンサーにという思いを強めていった。
逆にアブドゥルにしてみれば、その魔術だけは永遠に教える気はなかったため、始めは頑なに譲らなかったが、相手は自分の娘、根競べではいい勝負だったようで、最後にはアブドゥルが折れる形で言葉を一つ授けた。
『それは永久に横たわる死者にあらねど、計り知れざる永劫の許に死を超えた者。久遠に伏す引き換えに、死ぬことはなく、その怪異の内では死ですらも終焉を迎える』
この言葉を理解するならば、多少は手解きをしてやる。と約束を交わし、それから三十年以上、カゴモリは根気よく研究を続けた。
その頃には、よく旅に出ては帰ってこなくなった父の帰りを待っては研究を披露したものだった。
そして、最後には『それは死者ではない。永遠の嘘、或いは奇妙な永劫、その内では死さえも死に至る』という結論に行き着き、研究の成果を認めたアブドゥルが死の殺し方、永遠の嘘の作り方とも呼ぶべき手法を学ぶことを許した。(一種の開き直りだったともとれる)

その後は、いかにも怪しげなカルドロン(魔術用大釜)やスクライングミラー(黒鏡)などの道具と、破壊を強化するバッドブラッド(蝙蝠の血)愛を強化するドヴズブラッド(鳩の血)能力そのものを強化するドラゴンブラッド(竜の血)などの各種血、死体と死霊の使い方を七十年がかりで教えたらしい。

エンペドクレスはアブドゥルのことをアル、アブドゥルはエンペドクレスのことをクレスと呼んでいた。(カゴモリの見た目が父を追い抜いた頃から、カゴモリもアルと呼ぶことが多かったようだ)

現在から二百年前、カゴモリが一流の魔法使いへと成長すると、古き友エンペドクレスと共に集落を旅立った。
現在は、エンペドクレス共々【果たされざる旧約】バベルの塔で暮らしているらしいが、既に死にリッチとなっているなどと言う噂もある。

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