衛とセイは迷路のような廊下を走っていた。
「夜になったみたいだ。」
能力を試しながらセイがつぶやいた。
その直後、目の前の十字路に人影がよぎる。
「
キング!」
しかし、角を曲がったとき、既にキングは消えていた。
大きな岩石がごろごろと転がる玉座の間。
そこで情はキングにストーンの攻撃を仕掛けた。
だが、キングの頭に岩石が当たる直前に、それは消えてしまう。
「ちっ!」
そして同時にその同じ岩石が情の頭上から落下してくるのだ。
避けることはできる。
しかし、銃を携えるキングに近付くことは容易くない。
不意に情の後ろで大扉が開いた。
「ジョー! もう戦ってたんだ。」
衛とセイだ。
セイはすぐさまキングに水弾を撃ち込む。
しかしキングは全く動じない。
水弾は、キングに当たろうとする瞬間軌道を変え、セイを狙ってきた。
「うわっ!」
「くそ、何でも反射されるってことか。」
セイは、とりあえずもう一度水を指先に集める。
その行動が吉となった。水玉に映って大扉の陰に男の姿を確認した。
すかさず振り返りアクアショットを放つ。
男も同時に銃を撃ってきたが、弾道が反れ当たらない。
一方セイの水弾は男の手首を掠めていった。
ところが、セイは男の顔に気付いて呆然となった。
「どうした!?」
「後ろに……キングがもうひとりいた。」
「なんだと!」
「追いましょう!」
三人は玉座の間のキングを放っておいて、とりあえずもう一人のキングを追いかけはじめた。
走りながら三人は口論を交わす。
「変身能力じゃないんですか?」
「いや、だったらキングに化けるより、俺たちの誰かに化けた方が動揺を誘いやすい。
たとえ性格も能力もコピーできなくてもな。」
このとき、セイにはキングに対して不審に思っていた点があった。
そして一つの仮説に行き着いた。
セイからその仮説を聞いた衛と情は驚愕。
「まさか……そんな能力が?」
だが。情は数秒間思考を巡らせてニィと笑った。
「オレに良い考えがある。」
「さて……。」
情のつぶやきが合図であるかのように、ふたりのキングが前後から同時に現れた。
思っていたとおりの展開だ。
「待ってたぜ、『鏡の能力者』。」
キングは戦闘の開始からそうであったように依然口を開かない。
「『同じ人間がふたりいる』、『攻撃を反射する』、そのふたつを同時に満たすエグザだ。間違いない。」
ふたりのキングはこちらに一斉に銃を向ける。
しかし情は臆することなく言葉を続けた。
「さっきの戦いを見てて分かったんだが、虚像の方は攻撃をはね返すが、本物には攻撃が届くらしいな。」
既にキングたちの頭のすぐ真上でストーンが完成していた。
「この距離なら避けるのも間に合わねえ!」
前方のキングの頭の上で岩石が落ちるそばから消えてゆく。
情はこちらが偽物だと踏んだ。
一方後方のキングはというと。
「消え……た……?」
「何っ!」
もう一人のキングは霧消していた。本物だと思っていた方がだ。
あまりの衝撃に反射の攻撃を忘れていた三人は、巨大な岩石の下敷きになった。
キングは再び玉座に腰掛けていた。
自分の平和を脅かすものなど何もない。
そろそろ操った街の人間で進軍するのもいいだろう。
大扉が開くまではそんなふうなことを考えていた。大扉が開くまでは。
「お、お前らっ!」
倒したはずの衛、セイ、情の三人がピンピンしたまま戻ってきた。
「本当の謎解きをはじめようか。」
最初に話し始めたのはセイ。
「邪魔だったんだよ、あんたの『ライトエグザ』が。だからわざと負けたふりをしたんだ。」
「くっ……!」
キングは先程の戦いとはうってかわって、明らかな同様を見せた。
「おかしいよね、変身や鏡じゃあこんなことは起こらない。
そう、僕がもうひとりのキングにつけた傷と全く同じ傷が、最初にあんたに会った時には既についていた、なんてことは。」
セイの言葉に耳を貸さず、周りを見渡して何かを期待するキング。
しかしその期待したことが起こらないことは自分がいちばんよく知っている。
「あんたのライトエグザは、『昼と夜を行き来する能力』!
だから昼のあんたに僕たちの完敗を見せて、安心して昼に帰るように仕向けたんだ。」
「……それがなんだというのだ。私には全ての攻撃を反射するダークエグザがある。」
「いや、違うな。」
ここで情が口を挟んだ。
「お前が何でもかんでも反射出来るなら銃なんていらねえんだ。」
キングはさらに後ずさる。
「お前が反射できるのは能力だけ。
ついでにもうひとつ実験させてもらった。お前の反射は自動で行われている。
オレのダークエグザは、石を生み出しているわけじゃない。石を呼び出しているんだ。
だから最初にこの部屋で戦ったとき試してみた。
お前に落としている最中の石を自分の真上に呼び出す。
これでもお前は不審に思う素振りを見せなかった。
自分で考えて反射しているなら、自分の反射じゃないって気付くはずだからな。
さっきの廊下でも同じ手を使わせてもらった。
くぼみのある石を、お前に落とすときはくぼみを上に向けて、オレたちに落とすときはくぼみを下に向けた。
助かったのはそういうことだ。」
「だからどうした! これがある限りお前たちは私には近付けまい!」
キングはいよいよ銃を構え始めた。その体は震えている。
その様子を見て衛が飛び出した。
「ひぃっ!」
ついに撃った。
いくら無敵とはいえ、自分に向かってくる銃弾は怖い。
だが衛は振り返りはしない。
今までこの能力は自分を衛るための能力だった。
しかし今、今まさにこのとき、この能力は街のみんなを衛るための大事な能力になる。
「うおおおおおおおおおおおお!」
衛は思いっきりキングをぶん殴った。
しかしキングは痛みを感じない。倒れもしない。無敵の能力が反射されたのだ。
キングはもう一度衛の頭に狙いを定めた。
その時、水の銃弾がキングの手から銃をはじき飛ばした。
「チェックメイトだ、キング。
僕の能力は人を殴ったとき一時的に能力を無くす。
全ての能力を自動で反射しているお前なら、この無効化をも反射せざるを得ない。」
「そんな……まさか……この私が……!」
「行くよ、ジョー!」
「おう!」
容赦のない水と石の攻撃がキングに襲いかかる。
「ぐわああああああああああああああ!!」
今度こそ決着はついた。
キングは熱い心を持った彼らの前に完全に敗れたのだった。
夜明けが近い。
二台のバイクが、ふたりを乗せて、荒れた大地を行く。
「本当に僕たちがついてなくて大丈夫だったのかなぁ。」
「大丈夫だ、衛ならな。」
「ねぇ、ジョー。僕、ずっと前から言いたかったことがあるんだ……。」
一方、街の住民を率いてきた衛は久々にあの大きな壁を目にしていた。
「もしもし、
東堂衛です。
はい、みんな無事です。
テレポート系の能力者を手配してくれると助かります。
はい、じゃあ待ってますね。
壁の向こうで。」
おわり
登場キャラクター
最終更新:2010年07月08日 02:48