遠くから見てもはっきりと分かる、西洋風の城のような建物。
それが
キングの本拠地である。
今そこに、二台のバイクに乗った三人の若者が向かおうとしていた。
「いよいよだね。」
五メートルはあろうかという巨大な扉を前にしたときだった。
「危ないっ!」
上から降ってきた物体が地面に突き刺さる。それは紙ヒコーキだった。
空を見上げると男が空を気ままに舞っていた。
男はだぶだぶのストリートファッションに身を包んでいる。
そして先ほど落ちてきたのと同じ紙ヒコーキに男は乗っているのだ。
「ちっ、仕留めそこねたか。まあいい、俺は『人事部長』
パイロットだ。冥土の土産に覚えときな。」
パイロットがパーカーを開くとそこには大量の紙ヒコーキが納められていた。
それを両手で六つくらい持ち、投げる。すると紙ヒコーキは紙ヒコーキと思えない速さで急降下を始めた。
避けても地面に落ちるまでおおざっぱに追ってくる紙ヒコーキたち。
「くっ! それなら!」
と、情が落ちている紙ヒコーキをパイロットに向かって投げた。
しかしその紙ヒコーキはまともな放物線を描いて落ちてゆく。
「馬鹿かテメェ? 俺のエグザの影響から離れたヒコーキはただの紙切れに決まってるじゃねえか。」
その一言で情は気付いた。この飛行能力の攻略法を。
「衛っ!」
まずは衛に紙ヒコーキを投げる。
そしてバイクまでダッシュ。トランクからロープを取り出すとそれを今度はセイに投げた。
「了解!」
セイは落ちている紙ヒコーキをひとつ拾い、ロープを紙ヒコーキにくくりつけた。
そして紙ヒコーキを透明の拳銃にセットする。
逃げ回っているせいで狙いがつけにくい。
「くそっ……。」
あと三センチ……一センチ……。
「今だっ!」
紙ヒコーキは勢いよく離陸した。そしてパイロットの股下をすり抜けていった。
「ひゅー、惜しいねー。」
「衛、今だよ!」
待っていましたと言わんばかりに衛がロープを掴んだ。
「あん? な、なんだよこれ!」
パイロットは、気付いた時には裸で空中にいた。離れてゆく自分の服に慌てて手を伸ばすが触ることができない。
奇妙な声を上げてパイロットは落ちていった。
パイロットに何が起きたのか。
服装というものは体を覆っているものである。それぞれのパーツは大抵触れ合っているものだ。
そこに、足に引っかかったロープを通して衛の不干渉の能力を発動させたのだ。
するとパイロットは自分の服と紙ヒコーキに触れていられなくなり落ちるしかなくなるのである。
この作戦を思いついた情が二人にマイルストーンで作戦を指示したのだった。
「空を飛ぶ能力者、か。」
考えていることは三人とも同じだ。あの能力なら壁を容易に越えることができる。
「さて、虎穴に入るとしますか。」
そして重い扉が開かれた。
「ようこそ、私の城へ。」
エントランスホールでは手首に傷を負ったダンディな男が待ち構えていた。
「おいおい、『私の城』ってことはまさかお前がキングなのか?」
「その通りだ。」
三人は一斉に身構えた。
「お前が、街の人たちを連れ去ったのか!」
「……私は忙しいので君たちと遊んでいる暇は無いのだよ。」
「おい、待てっ!」
奥の部屋に去ろうとするキングを追おうとしたが、ホール二階から飛び降りてきたマッチョな男に足止めされた。
「がははははは、ワシは『教育部長』
キューピッドだ。これ以上貴様らの好きにはさせんぞ。」
つづく
登場キャラクター
最終更新:2010年06月23日 01:58