Beyond the wall > 6


遠くから見てもはっきりと分かる、西洋風の城のような建物。
それがキングの本拠地である。
今そこに、二台のバイクに乗った三人の若者が向かおうとしていた。
「いよいよだね。」
五メートルはあろうかという巨大な扉を前にしたときだった。
「危ないっ!」
上から降ってきた物体が地面に突き刺さる。それは紙ヒコーキだった。

空を見上げると男が空を気ままに舞っていた。
男はだぶだぶのストリートファッションに身を包んでいる。
そして先ほど落ちてきたのと同じ紙ヒコーキに男は乗っているのだ。
「ちっ、仕留めそこねたか。まあいい、俺は『人事部長』パイロットだ。冥土の土産に覚えときな。」
パイロットがパーカーを開くとそこには大量の紙ヒコーキが納められていた。
それを両手で六つくらい持ち、投げる。すると紙ヒコーキは紙ヒコーキと思えない速さで急降下を始めた。
避けても地面に落ちるまでおおざっぱに追ってくる紙ヒコーキたち。
「くっ! それなら!」
と、情が落ちている紙ヒコーキをパイロットに向かって投げた。
しかしその紙ヒコーキはまともな放物線を描いて落ちてゆく。
「馬鹿かテメェ? 俺のエグザの影響から離れたヒコーキはただの紙切れに決まってるじゃねえか。」
その一言で情は気付いた。この飛行能力の攻略法を。
「衛っ!」
まずは衛に紙ヒコーキを投げる。
そしてバイクまでダッシュ。トランクからロープを取り出すとそれを今度はセイに投げた。
「了解!」
セイは落ちている紙ヒコーキをひとつ拾い、ロープを紙ヒコーキにくくりつけた。
そして紙ヒコーキを透明の拳銃にセットする。
逃げ回っているせいで狙いがつけにくい。
「くそっ……。」
あと三センチ……一センチ……。
「今だっ!」
紙ヒコーキは勢いよく離陸した。そしてパイロットの股下をすり抜けていった。
「ひゅー、惜しいねー。」
「衛、今だよ!」
待っていましたと言わんばかりに衛がロープを掴んだ。
「あん? な、なんだよこれ!」
パイロットは、気付いた時には裸で空中にいた。離れてゆく自分の服に慌てて手を伸ばすが触ることができない。
奇妙な声を上げてパイロットは落ちていった。
パイロットに何が起きたのか。
服装というものは体を覆っているものである。それぞれのパーツは大抵触れ合っているものだ。
そこに、足に引っかかったロープを通して衛の不干渉の能力を発動させたのだ。
するとパイロットは自分の服と紙ヒコーキに触れていられなくなり落ちるしかなくなるのである。
この作戦を思いついた情が二人にマイルストーンで作戦を指示したのだった。

「空を飛ぶ能力者、か。」
考えていることは三人とも同じだ。あの能力なら壁を容易に越えることができる。
「さて、虎穴に入るとしますか。」
そして重い扉が開かれた。

「ようこそ、私の城へ。」
エントランスホールでは手首に傷を負ったダンディな男が待ち構えていた。
「おいおい、『私の城』ってことはまさかお前がキングなのか?」
「その通りだ。」
三人は一斉に身構えた。
「お前が、街の人たちを連れ去ったのか!」
「……私は忙しいので君たちと遊んでいる暇は無いのだよ。」
「おい、待てっ!」
奥の部屋に去ろうとするキングを追おうとしたが、ホール二階から飛び降りてきたマッチョな男に足止めされた。
「がははははは、ワシは『教育部長』キューピッドだ。これ以上貴様らの好きにはさせんぞ。」

つづく

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最終更新:2010年06月23日 01:58
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