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Beyond the wall > 4


クレーター内のほとんどの娯楽施設は廃業して何年も経つが、ここもその例に漏れない。
とある天文博物館。その中で戦いは始まろうとしていた。
「君たちがドウラクを倒した三人だね。僕はハカセ。この辺りのリーダーさ。
 ククク、ぜひ君たちを部下にしたい。」
自分の台詞だけ言い終えるとハカセはさっさと館入口の大きな天球儀の裏に隠れてしまった。
衛たちは二手に分かれすぐさま回り込む、回り込む、回り込む……。
「なんだ、どうなっている? 全然奴にたどり着けないぞ!」
必死で走っているはずなのに何故か天球儀の裏側までの半分の地点にすらたどり着けない。

ハカセのライトエグザは「円周率を変化させる能力」である。
円周率とは直径に対する円周の比。天球儀を回り込むには円周以上の距離を要する。
三人は知らずに途方もない長さを走らされようとしているのである。
「そして夜になってヘトヘトになったところを僕のダークエグぶぼげっ!」
「回り込むのが駄目なら、中を通ればよかったんだ。」
円周は変わっても直径は変わらない。衛は不干渉の能力を使って天球儀の中から向かっていった。
衛に殴られたハカセはあっさりと倒れた。

「結局ここも手がかり無しか。」
衛は未だに弟の足取りをつかめずにいた。
さらにその一方で戦闘は激化していく。ナワバリのボスを次々と倒していく三人組の噂が流れたのだ。
敵は昼夜かまわず襲ってくる。特に夜は闇に紛れて奇襲を受けやすい。
「貴様らを倒して俺たちもナワバリを持つんだ!」
「ほざけ。」
情が眼を光らせる。昼はあまり戦闘に向かない能力なだけあって、存分に暴れられる夜は楽しみらしい。
天に向かって手をかざす情。すると巨大な岩石が現れた。
直径十メートルほどの岩石が完全に姿を現すと情は思い切り手を振り下ろす。
「まさか……。」
そのまさかだった。岩石はすとーんと落下する。この能力、その名を「ストーン」という。
「ひえええええ!」
「おっと、逃がさないよ。」
ストーンから逃げた敵にはセイが追い討ちをかける。
大気中の水分を指先に集め撃ち出す「アクアショット」の能力で。
「すごい……。」
ふたりの能力に完全に打ちひしがれる衛。
衛の夜の能力。それはいかなる攻撃、事故をも防ぐ無敵の防御。
しかしそれは衛が誰にも危害を加えないことが前提だ。
もし衛が誰かを攻撃した場合、その無敵の能力は次の日没まで失われる。
衛は自身のふたつの能力をこう卑下する。「自分だけが助かるための能力」と。
いや、こんなことを考えていては駄目だ。
ネガティブな気分を打ち消そうと、衛は目を閉じた。

次の日、一行は新しい町に来ていた。
クレーターには珍しく、ちゃんとした町だ。
「それはな、エンマ様がこの町を治めておられるからじゃ。」
町で初めに出会った老人に導かれるままに、三人は階段を上っていく。
やがて高台にあるひときわ大きな建物に連れられた。

それなりに豪華な内装だ。広間では美女が玉座に座っている。
彼女こそがこの町の主、エンマだった。
衛がエンマに尋ねる。
「あなたはクレーターの外の人間を連れ去った人物のことを知っていますか?」
「おそらく隣のクレーター最大のナワバリのボス、キングの仕業だろう。
 奴め、なにやら軍隊を作るとか抜かしてやがった。」
酒を一気飲みするエンマ。
「ところで、そこの一番背の高いお兄さん。」
杯を扇に持ち替えて情を指す。
「あん?」
「死ね。」
そう言われた瞬間、情はその場に崩れ落ちた。

つづく

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最終更新:2010年06月15日 22:41
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