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**戦うことを忘れた武装神姫 その34
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「うにぁ~~~! くやしいのだー!!!」
わんわんと泣きじゃくるエルガと、困惑した表情を浮かべ猫じゃらしで必死にあやそうとするコリン。
「まぁ、装備の差もあるかr・・・い、いででっ!! 腕毛をむしるなって!」
「うにゃぁ~! やだやだ、にゃーも負けたくないのだー!!! にゃああぁぁ~~~!!!」
いつになくじたばたと暴れるエルガに、さすがの久遠も困り果てた。 右の腕毛をむしらせつつ、久遠は財布をとりだしてまだ装備状態のままのイオにお札を渡し一言二言。 イオはいつもの笑顔で頷くと、ふよふよと店の外へと出ていった。
「もう泣くなって。 今、イオが下にたい焼き買いに行ってくれたから。」
頭をなでながら久遠が言う。
「にゃうぅ・・・? たいやき・・・?」
「今日は特別に一匹食べていいぞ。」
その言葉に、ぱっと明るい顔に切り替わり、まだ涙の残る目で久遠を見つめた。
「いっぴき、たべてもいいの?」
「一匹ぜ~んぶ食べて、いっしょに厄も食べちゃおう。な。」
「ふぇ・・・うにゃぁん。 ありがとなの、にゃーさん!!」
「泣いた子猫が、もう笑った。 ったく、もう。」
笑顔でエルガを突付く久遠の指に、エルガもじゃれ付く。 まもなく、入り口からイオが戻ってきた。手にはコンビニの袋、中には・・・特大のたいやき。
「ふぅ、もどりました~。 はい、エルガ。」
がさがさと袋からたいやきを取り出し、渡そうとしたが・・・エルガに届かなかった。
「なんだ、やっぱり久遠たちだったんか。 どこかで見た事あるアーンヴァルだと思ったよ。」
上階の東杜田アンテナショップのエプロンをつけたCTaが間に割って入り、たいやきを取り上げていた。
今にも泣き出しそうなエルガに気づいた久遠は、ひったくるようにCTaから取り返した。
「これはエルガの。 ・・・なんだお前、こっちの勤務になったのか?」
「違うわ! 新製品の取り扱い説明に来ただけだ。 ・・・昼飯抜きで仕事してたから腹減って。 悪いけど、それ半分もらうわ。エルガなら半分で十分だろ?」
CTaはそう言うが否や、久遠が手にしたたい焼きの頭側ほぼ2/3をちぎって、あっという間に食べてしまった。
「もっふもっふ・・・ コンビニたい焼きだけど、やっぱうめー! 」
呆然とする久遠の手に、涙目のエルガがよじ登った。 残されたたい焼きはしっぽ側1/3、しかも餡少なめ。
「にゃーの・・・ にゃーのたいやき・・・ にゃーさんが買ってくれた、イオが持ってきてくれた・・・ にゃーのたいやきが・・・」
我に返った久遠、腕に乗るエルガにようやく気づいた。
「お・・・おい、エルガ・・・」
声をかけるも、うなだれたまま返事をすることもなく、小さく震えるエルガ。
「・・・ゆるさにゃい。」
ぴくり。 エルガの尻尾が小さく動いた。
「ぜったいに、ゆるさにゃい!!」
顔を上げると同時に、久遠の腕から飛び降りて傍の卓上にちらばる自らの装備を瞬時に装着し、
「ゆるさにゃいんだからぁあぁっ!!!」
普段の姿からは想像もできない大きな叫びを上げると、ありったけの跳躍力で筐体よりも高く飛び上がり、びくりと驚いたCTaに向かってヤンチャオを振りかざした。
「きゃっ!!!」
なんとか身を引いてかわすCTaだったが、髪の毛が数本、鮮やかに斬られ宙を舞う。
「もう、いくらCTaのねーさまとはいえ、やっていいことと悪いことがあるの! 今日は、絶対に許してあげにゃいんだからぁっ!」
着地したエルガは止めようとする久遠を巧みにかわし、再び大きく跳躍して逃げるCTaに斬りかかる。
「ちょっと! エルガ、やめてっ・・・痛っ!!!!」
CTaが思わず顔の前に出した腕に3本の爪痕が走り、血がにじみ出た。 慌てたコリンが、緊急用神姫捕獲ネット射出機を持ち出してイオと共にエルガを狙い数発打ち出すも、エルガはCTaを追いかけつつ鮮やかにかわし、切り刻み。 あとを追う久遠が、電撃ネットを被ってしまい頭がチリチリになってしまった。 CTaが出入り口まで来たとき。
「ふーっ!ふーっ!!!」
しっぽの毛を逆立てて怒るエルガは、受付カウンターを足場にCTaを大きく飛び越すとCTaの前に立ちはだかった。
「わ、悪かった! あたしが悪かったよぉ!!!」
久遠にも滅多に見せる事のない、今にも泣き出しそうなCTa。 しかしエルガは、
「謝ってももう遅いのだ! にゃーの怒りの一撃を受けるのっ!」
CTaの顔に狙いを定めて飛びかかった。 エルガのあまりの様子に硬直したCTa・・・
ざく。
・・・ヤンチャオは、腕に・・・
間に入った久遠の左腕に、深々と刺さっていた。
「いい加減にしろ、エルガ!!!」
すぐさまがっちりと右手でエルガを捕獲。
「はーなーせー!! はなすのだーー!! はなせーーー!!」
久遠の手の中で暴れに暴れる。 なんとか抑える久遠だったが。
「うにぁ~!!!」
がぶっ!!
そんな久遠の手に、エルガは容赦なく噛みついた。
「ふーっ! ぐるるる・・・!!」
久遠の右手に噛み付くエルガの眼は普段とは似ても似つかない鋭く深い翠色に。
「うるるぅぅぅ・・・ ぐるるる・・・」
噛みついている部分からたらりと血が流れるも、久遠は払いのけもせずにそのまま噛み付かせている。 CTaは手を出すことができず、彼らを冷や汗混じりで見つめるだけ。 騒ぎを聞きつけ他のフロアから集まった野次馬たちの視線も彼らに集まる。
数分の後。
「・・・エルガ・・・。」
久遠が噛み付いたままのエルガの頭をそっとなでた。
「・・・うみぃ?」
はっと我に返ったエルガ。 目の前には血だらけの久遠の手。
「落ち着いたか? ・・・今日は厄日だな、おまえ。。。」
叱ることもなく、そっと血の付いたエルガの頬をぬぐう久遠。 ようやく我に返り、目の前の惨状に自分が何をしたのか理解したエルガは、瞬時に泣き顔になった。
「ふぇ・・・」
「泣くんじゃない。ちょっと野生が顔を出しただけだろ?」
・・・「野生の力」。
猫爪型の持ち味でもあり欠点でもある「野生」。
普段バトルをする猫爪であれば、バトルにて「野性」を発散させることもできようが、久遠の元ではなかなかそういう機会も少ない。加えて、今日のように色々と積み重なってしまうと・・・マイナス方向に爆発してしまうことも。。。
もっとも、付き合いも長く、猫爪・・・いや「エルガ」をよく理解している久遠は、こういうことがあってもむやみに叱る事はしない。なぜなら猫爪のアイデンティティを否定してしまうから。。。
「イオに聞いたよ。 朝から大変だったみたいだね。 ウチも気づいてあげられなくて・・・ごめんね。 気持ちは良くわかるよ。でも、女の子の肌に、まして顔に傷つけようとするのはいけないよ。」
涙目で頷くエルガ。
「ごめんにゃさい、にゃーさん・・・。」
「はは、俺は大丈夫だから。 それよりも、CTaに謝ろうか。」
「うにゃん。。。」
エルガを血の流れる右手から左手に乗せ変え、CTaの方へと振り返ると、先にCTaが口を開いた。
「ごめんな・・・。 エルガ、イオ・・・久遠。。。」
素直に頭を下げるCTa。 エルガもまた、久遠の手の上で頭を下げる。
「にゃーこそ、ごめんなさいなの。 飛びかかって、怪我させて、ホントごめんにゃさいなのっ!」
その光景に、周囲の人だかりから何故か拍手が沸き起こる。どうやら、センターのアトラクションと勘違いされてしまった模様。
一瞬どうしていいか迷う久遠の足元でイオが目で合図を送っている。
「とりあえず・・・場に合わせればいいのかな?」
久遠はエルガを手にしたまま、血だらけの手を振って野次馬改めギャラリーにこたえる。 CTaもとりあえず手を振ってみる。
より大きな拍手が沸き起こった。
・・・この出来事は、後に神姫とマスターの深い絆を示した、東杜田技研のアトラクションとして随所で取り上げられたと言う・・・。
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**戦うことを忘れた武装神姫 その34
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「うにぁ~~~! くやしいのだー!!!」
わんわんと泣きじゃくるエルガと、困惑した表情を浮かべ猫じゃらしで必死にあやそうとするコリン。
「まぁ、装備の差もあるかr・・・い、いででっ!! 腕毛をむしるなって!」
「うにゃぁ~! やだやだ、にゃーも負けたくないのだー!!! にゃああぁぁ~~~!!!」
いつになくじたばたと暴れるエルガに、さすがの久遠も困り果てた。 右の腕毛をむしらせつつ、久遠は財布をとりだしてまだ装備状態のままのイオにお札を渡し一言二言。 イオはいつもの笑顔で頷くと、ふよふよと店の外へと出ていった。
「もう泣くなって。 今、イオが下にたい焼き買いに行ってくれたから。」
頭をなでながら久遠が言う。
「にゃうぅ・・・? たいやき・・・?」
「今日は特別に一匹食べていいぞ。」
その言葉に、ぱっと明るい顔に切り替わり、まだ涙の残る目で久遠を見つめた。
「いっぴき、たべてもいいの?」
「一匹ぜ~んぶ食べて、いっしょに厄も食べちゃおう。な。」
「ふぇ・・・うにゃぁん。 ありがとなの、にゃーさん!!」
「泣いた子猫が、もう笑った。 ったく、もう。」
笑顔でエルガを突付く久遠の指に、エルガもじゃれ付く。 まもなく、入り口からイオが戻ってきた。手にはコンビニの袋、中には・・・特大のたいやき。
「ふぅ、もどりました~。 はい、エルガ。」
がさがさと袋からたいやきを取り出し、渡そうとしたが・・・エルガに届かなかった。
「なんだ、やっぱり久遠たちだったんか。 どこかで見た事あるアーンヴァルだと思ったよ。」
上階の東杜田アンテナショップのエプロンをつけたCTaが間に割って入り、たいやきを取り上げていた。
今にも泣き出しそうなエルガに気づいた久遠は、ひったくるようにCTaから取り返した。
「これはエルガの。 ・・・なんだお前、こっちの勤務になったのか?」
「違うわ! 新製品の取り扱い説明に来ただけだ。 ・・・昼飯抜きで仕事してたから腹減って。 悪いけど、それ半分もらうわ。エルガなら半分で十分だろ?」
CTaはそう言うが否や、久遠が手にしたたい焼きの頭側ほぼ2/3をちぎって、あっという間に食べてしまった。
「もっふもっふ・・・ コンビニたい焼きだけど、やっぱうめー! 」
呆然とする久遠の手に、涙目のエルガがよじ登った。 残されたたい焼きはしっぽ側1/3、しかも餡少なめ。
「にゃーの・・・ にゃーのたいやき・・・ にゃーさんが買ってくれた、イオが持ってきてくれた・・・ にゃーのたいやきが・・・」
我に返った久遠、腕に乗るエルガにようやく気づいた。
「お・・・おい、エルガ・・・」
声をかけるも、うなだれたまま返事をすることもなく、小さく震えるエルガ。
「・・・ゆるさにゃい。」
ぴくり。 エルガの尻尾が小さく動いた。
「ぜったいに、ゆるさにゃい!!」
顔を上げると同時に、久遠の腕から飛び降りて傍の卓上にちらばる自らの装備を瞬時に装着し、
「ゆるさにゃいんだからぁあぁっ!!!」
普段の姿からは想像もできない大きな叫びを上げると、ありったけの跳躍力で筐体よりも高く飛び上がり、びくりと驚いたCTaに向かってヤンチャオを振りかざした。
「きゃっ!!!」
なんとか身を引いてかわすCTaだったが、髪の毛が数本、鮮やかに斬られ宙を舞う。
「もう、いくらCTaのねーさまとはいえ、やっていいことと悪いことがあるの! 今日は、絶対に許してあげにゃいんだからぁっ!」
着地したエルガは止めようとする久遠を巧みにかわし、再び大きく跳躍して逃げるCTaに斬りかかる。
「ちょっと! エルガ、やめてっ・・・痛っ!!!!」
CTaが思わず顔の前に出した腕に3本の爪痕が走り、血がにじみ出た。 慌てたコリンが、緊急用神姫捕獲ネット射出機を持ち出してイオと共にエルガを狙い数発打ち出すも、エルガはCTaを追いかけつつ鮮やかにかわし、切り刻み。 あとを追う久遠が、電撃ネットを被ってしまい頭がチリチリになってしまった。 CTaが出入り口まで来たとき。
「ふーっ!ふーっ!!!」
しっぽの毛を逆立てて怒るエルガは、受付カウンターを足場にCTaを大きく飛び越すとCTaの前に立ちはだかった。
「わ、悪かった! あたしが悪かったよぉ!!!」
久遠にも滅多に見せる事のない、今にも泣き出しそうなCTa。 しかしエルガは、
「謝ってももう遅いのだ! にゃーの怒りの一撃を受けるのっ!」
CTaの顔に狙いを定めて飛びかかった。 エルガのあまりの様子に硬直したCTa・・・
ざく。
・・・ヤンチャオは、腕に・・・
間に入った久遠の左腕に、深々と刺さっていた。
「いい加減にしろ、エルガ!!!」
すぐさまがっちりと右手でエルガを捕獲。
「はーなーせー!! はなすのだーー!! はなせーーー!!」
久遠の手の中で暴れに暴れる。 なんとか抑える久遠だったが。
「うにぁ~!!!」
がぶっ!!
そんな久遠の手に、エルガは容赦なく噛みついた。
「ふーっ! ぐるるる・・・!!」
久遠の右手に噛み付くエルガの眼は普段とは似ても似つかない鋭く深い翠色に。
「うるるぅぅぅ・・・ ぐるるる・・・」
噛みついている部分からたらりと血が流れるも、久遠は払いのけもせずにそのまま噛み付かせている。 CTaは手を出すことができず、彼らを冷や汗混じりで見つめるだけ。 騒ぎを聞きつけ他のフロアから集まった野次馬たちの視線も彼らに集まる。
数分の後。
「・・・エルガ・・・。」
久遠が噛み付いたままのエルガの頭をそっとなでた。
「・・・うみぃ?」
はっと我に返ったエルガ。 目の前には血だらけの久遠の手。
「落ち着いたか? ・・・今日は厄日だな、おまえ。。。」
叱ることもなく、そっと血の付いたエルガの頬をぬぐう久遠。 ようやく我に返り、目の前の惨状に自分が何をしたのか理解したエルガは、瞬時に泣き顔になった。
「ふぇ・・・」
「泣くんじゃない。ちょっと野生が顔を出しただけだろ?」
・・・「野生の力」。
猫爪型の持ち味でもあり欠点でもある「野生」。
普段バトルをする猫爪であれば、バトルにて「野性」を発散させることもできようが、久遠のところでは発散させる機会も少ない
。加えて、今日のように色々と積み重なってしまうと・・・マイナス方向に爆発してしまうことも。
しかし付き合いも長く、猫爪・・・いや、「エルガ」をよく理解している久遠は、こういう時でもむやみに叱る事はしない。
-なぜなら、「猫爪」のアイデンティティを否定してしまうから。。。
「イオに聞いたよ、朝から大変だったみたいだね。」
理解しているからこそ、今、エルガが何を求めているのか- 。 血が付かないように気遣いながら、久遠はエルガを手で包み込む
ように抱き上げた。今はただ、エルガを、ココロで包み込んであげたい- 。
「ごめんな、気がついてあげられなくて。」
「ううん、にゃーさん。 ・・・にゃーさん、ありがとなの。」
エルガは久遠の指にぎゅっと抱きついた。
「でもね。女の子の肌に、まして顔に傷つけようとするのはいけないよ。」
穏やかに語りかける久遠の手の中で、涙目で頷くエルガ。
「うみぃ、ごめんにゃさい・・・。」
「はは、俺は大丈夫だから。 それよりも、CTaに謝ろうか。」
「うにゃん。。。」
エルガを左手に乗せて振り返ると、先にCTaが口を開いた。
「ごめんな・・・。 エルガ、イオ・・・久遠。。。」
素直に頭を下げるCTa。 エルガもまた、久遠の手の上で頭を下げる。
「にゃーこそ、ごめんなさいなの。 飛びかかって、怪我させて、ホントごめんにゃさいなのっ!」
その光景に、周囲の人だかりから何故か拍手が沸き起こる。どうやら、センターのアトラクションと勘違いされてしまった模様。
一瞬どうしていいか迷う久遠の足元でイオが目で合図を送っている。
「とりあえず・・・場に合わせればいいのかな?」
久遠はエルガを手にしたまま、血だらけの手を振って野次馬改めギャラリーにこたえる。 CTaもとりあえず手を振ってみる。
より大きな拍手が沸き起こった。
・・・この出来事は、後に神姫とマスターの深い絆を示した、東杜田技研のアトラクションとして随所で取り上げられたと言う
。
>>[[久遠の怪我は・・・?(その34.5へ)>戦うことを忘れた武装神姫-34.5]]>>
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