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スロウ・ライフ 3話 - (2007/11/17 (土) 06:52:11) の1つ前との変更点
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}}}
空を仰げばまだ暗く、西はまさしく宵闇で。
だが一方、東の空は薄らと朝日の光が垣間見える。
頬を撫でる風は、朝の冷えた風だ。
がたがたと揺れる自転車のかごの上、山と詰められた新聞紙の上に座りながら、秋の早朝を堪能する。
「パーシ、次はどこだ?」
後方から声がした。私のオーナー、宗太だ。
「ん~……三丁目のぉ水野さんちかなぁ」
インストールされたナビシステムが示す場所を答える。
遥か彼方には薄明が見えた。
「三丁目か……ちょっと急ぐか」
宗太が呟くのとほぼ同時、自転車がガクリと大きく揺れて、頬を撫でる風が強くなった。
ちょっと振り返ると、宗太がいわゆる立ち漕ぎの状態になっていた。
周囲の風景が早く流れていく。まるで、飛んでるみたいだ。
「宗太ぁ、5m先、目的地ぃ」
「おう」
閑静な住宅街。普段からあまり人通りの多くない場所で、早朝の今は動くモノは皆無だ。
その中にある、立派な二階建ての民家が今度の目的地。
そこは私も、宗太も良く覚えている。
何故なら、こんな時間にも関わらず、朝刊をわざわざ受け取る代わり者がいるからだ。
「おはよーございます」
宗太は眠そうな声を隠しもせず、そこに居る人物の前で自転車を止めそう言った。
「毎朝ごくろうさま」
眼鏡をかけた、細長い男性。この家の人だ。
この人は何が楽しいのか、毎朝私達から朝刊を受け取っている。
「今日の朝刊ッス」
足元が大きく揺れた。私が立っている新聞の山から新聞が一つ引き抜かれた。
「どうも。若いのに大変だね」
少し低い、優しげな声。
「仕事ですからぁ」
宗太の代わりに私が答える。このやりとりも毎朝の事だ。
宗太が高校に入り、学費+αを稼ぐために始めたバイトの一つであるこの新聞配達。
その初日、偶然知り合った私達はそれから毎日、このやりとりをしている。
「そんじゃ、次があるんで」
「最近冷えるから、気を付けてね」
その声を受け、宗太は自転車を走らせた。
「……兄ちゃん、新聞来た?……」
「……最近良く読むね、ア……」
空は明るさを増している。町が、動きだす。
空は青く、海の様に蒼く。
雲は波の様に漂い、流れて行く。
人が溢れかえるこの道。人が雲の様に、波の様に流れて行く。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
その中を、まるでマグロの様に?き分ける者が、一人。
白く息を吐き、だらしない制服をはためかせ、人の波を潜る者が一人。
肩から下げた鞄は不規則に揺れ、中身は滅茶苦茶に……。
「宗太ぁ、急ぐのは良いけどぉ鞄は揺らさないでくれる?」
「やかましい!」
切羽詰った形相で宗太は怒鳴った。
遅刻しそうで焦る気持ちも分るけど、そう言われるとカチンと来る。
「良い詩が浮かびそうなのに、それを台無しにする気ぃ!?」
「おめぇの詩なんてどうでもいいだろうが!」
全力疾走に近い速度で走りながら怒鳴れるその体力にはほとほと呆れ返る。
何より、私の詩を馬鹿にする事が頭に来る。
「どうでも良くないわよぉ! もしかしたらぁ月刊・詩で取り上げられるかもしれないじゃない!」
「んなわけありえーねってーの!」
走る速度が一段上がった。
学校までは残り2,3分で到着だろう。
だが、そんな事よりも大事な事がある。
「何であり得ないって言いきれるのよぉ!?」
「んなもんどう考えたってそうだろーが!」
もう学校の校門だ。周囲の生徒の大半は走っているが、宗太程では無い。
というか、宗太程の速力があったところでバカだったら台無しなのだが。
「何がどう考えたらそうなのよぉ!」
「第一、詩を書くサイフォスなんて聞いた事ねーだろ!」
下駄箱に着き、一瞬で靴を履き替える。下駄箱を出て直ぐ左に曲がり、その先にある階段を駆け上がる。
階段を三段飛ばしで上がるたびに私が入っている鞄が大きく揺れる。
こういうトコに宗太のバカっぷりが表れている。
「私が第一号になるわよぉ!」
「あーそうかい、そいつは良かったな!?」
三階に到着すると、靴底がゴムの上履きがキュルキュル鳴った。
人間ドリフトをしながら廊下に躍り出て、教室を一目散に目指す。
幾ら運動神経が良くても頭が回らなきゃ動物と一緒だ。
「この馬鹿オーナーぁ!」
「うるせぇこのアホ神姫!」
扉を半ば蹴破る様に教室に入り、宗太を席に着く。
と、言っても担いだ鞄を机の上に叩き付けるだけだ。
鞄の中に入っていた私は、当然今の衝撃で外に投げ出された。
一応、投げ出される角度を計算修正して馬鹿宗太の隣の加奈美の机に降りる様に投げ出される。
「聞いてよぉ加奈美ぃ! この馬鹿、私の詩を馬鹿にするのよぉ!」
宗太の幼馴染にして馬鹿宗太に代わる私の唯一の理解者、加奈美。
きっと加奈美なら私の気持ちを分かってくれる筈だ。
「あら、酷いわね」
宗太のぼさぼさ頭とは違う、綺麗で長くて艶やかな黒髪。
まさに女の子、って感じだ。オーナーなら加奈美の方が良かった。
「詩を書くサイフォスが可笑しいとか言うのよぉ!」
「神姫が詩を書いても何も問題無いのにね」
ああ、やっぱり加奈美は解ってくれている。
それに比べて宗太の馬鹿っぷりと言ったら……!
「ったく、ぎゃあぎゃあうっせぇな……」
「何よこの馬鹿宗太ぁ」
男の癖に影でこそこそ言うなんて、最低だ。
加奈美のこの態度を見習えこの馬鹿。
現にこうやってお行儀よく椅子に座って、ちゃんと鞄は机の脇にかけてあって。
机の上には一時間目の用意がしてあって。その上には神姫が座ってて。
「……誰?」
エウクランテ。
私の少し後に発売された武装神姫。
空中戦闘に秀で、アーンヴァルの対抗馬として開発された武装神姫。
そして、今私の目の前にいる武装神姫。
「でさぁ、宗太ったら変な武器ばっか買ってくるのぉ。アニメに出てきそうなバカでかい剣とかぁ変な棒とかぁ」
「そうなのか」
「そうなのよぉ。私は使わないって言ってるのにこの馬鹿ぁ剣ばっか買ってくるのぉ」
「しかし、それは宗太殿がパーシ殿の為を思ってではないのか?」
「それなら私の希望を聞いてくれても良いと思わないぃ? あ、私の事はパーシで良いわよぉ」
「む、確かにそれでは自分の希望を押し付けるだけだ」
「でしょぉ! 流石は加奈美の神姫ねぇ。話が分るわぁ」
時は昼休み。場所は食堂。 学生が唯一学校に楽しみを見出す時間と場所であるここは、当然の如く混み合っている。
学校の食堂にしてはかなり広い方にも関わらず、人口密集度は恐ろしい。
そんな真っ只中、二人掛けのテーブルに陣取り、私達四人は優雅な昼食を楽しんでいた。
「……たく、飯時くらい静かにしろっての。飯が不味くならぁ」
前言撤回。
この馬鹿、生意気にも大盛りC定食を食べながら水をさして来る。
馬鹿は馬鹿らしくヤキソバパン食べてれば良いのに。
「加奈美ぃ、この馬鹿黙らせてよぉ」
「ん~……お昼御馳走になってる身としては難しい質問ね」
加奈美はと言うと、馬鹿宗太のお金で買ったA定食を食べている。
すこし困った様に笑っているが、加奈美はもっと良いモノを食べてもバチは当たらない。
だけど確かに、確かにそれはそうでもある。人道的観点と義理人情的観点から言って加奈美はパーフェクトに正しいと思う。
ただ一つ、宗太が勝ち誇ったように笑ってること以外は。
「加奈美はこの馬鹿にノート見せてんだからもっと強気になっても良いのよぉ?」
「そうなのか?」
「そう、そうなのよぉ。あの馬鹿、授業なんか聞かないで寝てばっかなの。だからって加奈美にノート見せて貰ってるのよぉ」
「ノート見せるくらい御馳走してくれるなら安いくらいよ?」
そう加奈美は言うけど、授業中寝るのは馬鹿の自己責任だ。
責任は自身が取るべきであり、人にノートを見せて貰うなんてのは真面目に授業受けている人間に対して失礼だ。
「……宗太殿、授業を受けずに寝るというのは学生として如何なものかと思うが」
シルフィは本当に良い子だ。
加奈美に似て真面目で礼儀正しい。
そして、加奈美が切り分けた豚肉の生姜焼きを丁寧に食べている様にお行儀も良い。
「シルフィよぉ、そうは言うけどな。俺は朝は新聞配達、夜はコンビニでバイトしてんだ」
「む。その歳で仕事に精を出すのは宜しい事とは思うのだが、学生の本分は学業であると、私は考えるのだが」
「その本分を受けるために、バイトしてんだよ」
「そうなのか……成程。それなら仕方ない……訳では無いな。しかし、学校の為に働くのであれば……」
シルフィはいい子だけど、物事を論理的に考えすぎだ。
目には目を、論理の通じない馬鹿に論理を通す義理は無い。
「シルフィ、騙されちゃダメよぉ。この馬鹿は稼いだバイト代は全部神姫関係につぎ込んでるのよぉ」
「宗太殿……」
「四面楚歌ね、宗太」
「……うるせー」
今日この日、宗太に対する攻撃布陣が完成したと言っても過言ではないだろう。
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空を仰げばまだ暗く、西はまさしく宵闇で。
だが一方、東の空は薄らと朝日の光が垣間見える。
頬を撫でる風は、朝の冷えた風だ。
がたがたと揺れる自転車のかごの上、山と詰められた新聞紙の上に座りながら、秋の早朝を堪能する。
「パーシ、次はどこだ?」
後方から声がした。私のオーナー、宗太だ。
「ん~……三丁目のぉ水野さんちかなぁ」
インストールされたナビシステムが示す場所を答える。
遥か彼方には薄明が見えた。
「三丁目か……ちょっと急ぐか」
宗太が呟くのとほぼ同時、自転車がガクリと大きく揺れて、頬を撫でる風が強くなった。
ちょっと振り返ると、宗太がいわゆる立ち漕ぎの状態になっていた。
周囲の風景が早く流れていく。まるで、飛んでるみたいだ。
「宗太ぁ、5m先、目的地ぃ」
「おう」
閑静な住宅街。普段からあまり人通りの多くない場所で、早朝の今は動くモノは皆無だ。
その中にある、立派な二階建ての民家が今度の目的地。
そこは私も、宗太も良く覚えている。
何故なら、こんな時間にも関わらず、朝刊をわざわざ受け取る代わり者がいるからだ。
「おはよーございます」
宗太は眠そうな声を隠しもせず、そこに居る人物の前で自転車を止めそう言った。
「毎朝ごくろうさま」
眼鏡をかけた、細長い男性。この家の人だ。
この人は何が楽しいのか、毎朝私達から朝刊を受け取っている。
「今日の朝刊ッス」
足元が大きく揺れた。私が立っている新聞の山から新聞が一つ引き抜かれた。
「どうも。若いのに大変だね」
少し低い、優しげな声。
「仕事ですからぁ」
宗太の代わりに私が答える。このやりとりも毎朝の事だ。
宗太が高校に入り、学費+αを稼ぐために始めたバイトの一つであるこの新聞配達。
その初日、偶然知り合った私達はそれから毎日、このやりとりをしている。
「そんじゃ、次があるんで」
「最近冷えるから、気を付けてね」
その声を受け、宗太は自転車を走らせた。
「……兄ちゃん、新聞来た?……」
「……最近良く読むね、ア……」
空は明るさを増している。町が、動きだす。
空は青く、海の様に蒼く。
雲は波の様に漂い、流れて行く。
人が溢れかえるこの道。人が雲の様に、波の様に流れて行く。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
その中を、まるでマグロの様に?き分ける者が、一人。
白く息を吐き、だらしない制服をはためかせ、人の波を潜る者が一人。
肩から下げた鞄は不規則に揺れ、中身は滅茶苦茶に……。
「宗太ぁ、急ぐのは良いけどぉ鞄は揺らさないでくれる?」
「やかましい!」
切羽詰った形相で宗太は怒鳴った。
遅刻しそうで焦る気持ちも分るけど、そう言われるとカチンと来る。
「良い詩が浮かびそうなのに、それを台無しにする気ぃ!?」
「おめぇの詩なんてどうでもいいだろうが!」
全力疾走に近い速度で走りながら怒鳴れるその体力にはほとほと呆れ返る。
何より、私の詩を馬鹿にする事が頭に来る。
「どうでも良くないわよぉ! もしかしたらぁ月刊・詩で取り上げられるかもしれないじゃない!」
「んなわけありえーねってーの!」
走る速度が一段上がった。
学校までは残り2,3分で到着だろう。
だが、そんな事よりも大事な事がある。
「何であり得ないって言いきれるのよぉ!?」
「んなもんどう考えたってそうだろーが!」
もう学校の校門だ。周囲の生徒の大半は走っているが、宗太程では無い。
というか、宗太程の速力があったところでバカだったら台無しなのだが。
「何がどう考えたらそうなのよぉ!」
「第一、詩を書くサイフォスなんて聞いた事ねーだろ!」
下駄箱に着き、一瞬で靴を履き替える。下駄箱を出て直ぐ左に曲がり、その先にある階段を駆け上がる。
階段を三段飛ばしで上がるたびに私が入っている鞄が大きく揺れる。
こういうトコに宗太のバカっぷりが表れている。
「私が第一号になるわよぉ!」
「あーそうかい、そいつは良かったな!?」
三階に到着すると、靴底がゴムの上履きがキュルキュル鳴った。
人間ドリフトをしながら廊下に躍り出て、教室を一目散に目指す。
幾ら運動神経が良くても頭が回らなきゃ動物と一緒だ。
「この馬鹿オーナーぁ!」
「うるせぇこのアホ神姫!」
扉を半ば蹴破る様に教室に入り、宗太を席に着く。
と、言っても担いだ鞄を机の上に叩き付けるだけだ。
鞄の中に入っていた私は、当然今の衝撃で外に投げ出された。
一応、投げ出される角度を計算修正して馬鹿宗太の隣の加奈美の机に降りる様に投げ出される。
「聞いてよぉ加奈美ぃ! この馬鹿、私の詩を馬鹿にするのよぉ!」
宗太の幼馴染にして馬鹿宗太に代わる私の唯一の理解者、加奈美。
きっと加奈美なら私の気持ちを分かってくれる筈だ。
「あら、酷いわね」
宗太のぼさぼさ頭とは違う、綺麗で長くて艶やかな黒髪。
まさに女の子、って感じだ。オーナーなら加奈美の方が良かった。
「詩を書くサイフォスが可笑しいとか言うのよぉ!」
「神姫が詩を書いても何も問題無いのにね」
ああ、やっぱり加奈美は解ってくれている。
それに比べて宗太の馬鹿っぷりと言ったら……!
「ったく、ぎゃあぎゃあうっせぇな……」
「何よこの馬鹿宗太ぁ」
男の癖に影でこそこそ言うなんて、最低だ。
加奈美のこの態度を見習えこの馬鹿。
現にこうやってお行儀よく椅子に座って、ちゃんと鞄は机の脇にかけてあって。
机の上には一時間目の用意がしてあって。その上には神姫が座ってて。
「……誰?」
エウクランテ。
私の少し後に発売された武装神姫。
空中戦闘に秀で、アーンヴァルの対抗馬として開発された武装神姫。
そして、今私の目の前にいる武装神姫。
「でさぁ、宗太ったら変な武器ばっか買ってくるのぉ。アニメに出てきそうなバカでかい剣とかぁ変な棒とかぁ」
「そうなのか」
「そうなのよぉ。私は使わないって言ってるのにこの馬鹿ぁ剣ばっか買ってくるのぉ」
「しかし、それは宗太殿がパーシ殿の為を思ってではないのか?」
「それなら私の希望を聞いてくれても良いと思わないぃ? あ、私の事はパーシで良いわよぉ」
「む、確かにそれでは自分の希望を押し付けるだけだ」
「でしょぉ! 流石は加奈美の神姫ねぇ。話が分るわぁ」
時は昼休み。場所は食堂。 学生が唯一学校に楽しみを見出す時間と場所であるここは、当然の如く混み合っている。
学校の食堂にしてはかなり広い方にも関わらず、人口密集度は恐ろしい。
そんな真っ只中、二人掛けのテーブルに陣取り、私達四人は優雅な昼食を楽しんでいた。
「……たく、飯時くらい静かにしろっての。飯が不味くならぁ」
前言撤回。
この馬鹿、生意気にも大盛りC定食を食べながら水をさして来る。
馬鹿は馬鹿らしくヤキソバパン食べてれば良いのに。
「加奈美ぃ、この馬鹿黙らせてよぉ」
「ん~……お昼御馳走になってる身としては難しい質問ね」
加奈美はと言うと、馬鹿宗太のお金で買ったA定食を食べている。
すこし困った様に笑っているが、加奈美はもっと良いモノを食べてもバチは当たらない。
だけど確かに、確かにそれはそうでもある。人道的観点と義理人情的観点から言って加奈美はパーフェクトに正しいと思う。
ただ一つ、宗太が勝ち誇ったように笑ってること以外は。
「加奈美はこの馬鹿にノート見せてんだからもっと強気になっても良いのよぉ?」
「そうなのか?」
「そう、そうなのよぉ。あの馬鹿、授業なんか聞かないで寝てばっかなの。だからって加奈美にノート見せて貰ってるのよぉ」
「ノート見せるくらい御馳走してくれるなら安いくらいよ?」
そう加奈美は言うけど、授業中寝るのは馬鹿の自己責任だ。
責任は自身が取るべきであり、人にノートを見せて貰うなんてのは真面目に授業受けている人間に対して失礼だ。
「……宗太殿、授業を受けずに寝るというのは学生として如何なものかと思うが」
シルフィは本当に良い子だ。
加奈美に似て真面目で礼儀正しい。
そして、加奈美が切り分けた豚肉の生姜焼きを丁寧に食べている様にお行儀も良い。
「シルフィよぉ、そうは言うけどな。俺は朝は新聞配達、夜はコンビニでバイトしてんだ」
「む。その歳で仕事に精を出すのは宜しい事とは思うのだが、学生の本分は学業であると、私は考えるのだが」
「その本分を受けるために、バイトしてんだよ」
「そうなのか……成程。それなら仕方ない……訳では無いな。しかし、学校の為に働くのであれば……」
シルフィはいい子だけど、物事を論理的に考えすぎだ。
目には目を、論理の通じない馬鹿に論理を通す義理は無い。
「シルフィ、騙されちゃダメよぉ。この馬鹿は稼いだバイト代は全部神姫関係につぎ込んでるのよぉ」
「宗太殿……」
「四面楚歌ね、宗太」
「……うるせー」
今日この日、宗太に対する攻撃布陣が完成したと言っても過言ではないだろう。
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