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『南十字星』とは、沖縄県那覇市よりも南側で見られる一番明るい星と三番目に明るい星、二番目に明るい星と四番目に明るい星をそれぞれ線で結んだ時に十字架に見えることから名付けられた、正式名称『南十字座』です
少佐率いる『南十字隊』はそれにちなんで名付けられ、少佐のコードネームである『α』もまた、『星座の中で一番明るい星』という意味でつけられています
「・・・『α』は、あくまでコードネームであって、本名ではないからな」
「自分の『β』もだ」
「私の『γ』もでありますよ?」
・・・あの・・・少佐、大尉、曹長・・・わたしのモノローグに語りかけないで下さいませんか?
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第一話 ようこそ、南十字隊へ
前述の通り『南十字座』は四つの恒星で構成された(シャレじゃないですよ?)星座ですが、少佐率いる『南十字隊』には隊員は三人だけでした
ムルメルティア型でコードネーム『α』の少佐
フォートブラッグ型でコードネーム『β』の大尉
ゼルノグラード型でコードネーム『γ』の曹長
・・・あ、先程からコードネームやら階級やらでお呼びしていますが、お三方ともちゃんとした本名があるのですよ?(わたしは教えてもらってはおりませんが)
それに階級の方も士官階級ばかり並んでいるのですが、特に深い意味はないらしいです
ただ上下関係をわかりやすくしているだけ・・・という解釈をわたし個人でしています
・・・あ、申し遅れました
わたしは新しく『南十字隊』に入隊した飛鳥型で、コードネームは『δ』(「でるた」と呼んで下さい)階級は『一等兵』をいただきました
本名の方は非公開ですので、あしからず
さて、普通は「新入隊員が入ったらまずはその起動シーンから」というのが物語の『お約束』かとは思うのですが、現実はそううまく行かないようです
今回のお話は、そんなわたしが『南十字隊』に入隊するときのお話です
ぶっちゃけ面倒なセットアップのシーンとかはカットして、わたしのログに色濃く残っているところから物語を始めます
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わたしは昨日の深夜にセットアップを完了したばかりでして、高城・ミッシェル・千尋さま(皆さんが『総帥』とお呼びしているので、次からはわたしも統一しますね)にマスター登録していただいた後、「後のことは少佐達から聞いてね」とのお言葉をいただいてクレイドルの上に戻されました
わたしのマスターになってくださる方ですから、もう少しお話させていただきたかったのですが・・・
それに・・・この『体』の事も詳しく聞かせていただきたかったのですが、他ならぬマスターの命令ですのできかない訳にもいきません
次に目覚めるときに『少佐』という方から詳しく聞かせてもらえるだろうと考えながら、クレイドルに身を預けてスリープモードに入りました
次に目を覚ましたのは、スリープモードに入ってから約五時間後の事でした
クレイドル側からの起動コードを確認していないのに目を覚ました事にわたし自ら不思議がっていたのですが、その疑問は割とすぐに「あぁ、この『体』のせいか・・・」と自己解決しました
ゆっくりと目を開けると目の前にはマスターではなく、三人の神姫がわたしを見ていました
「・・・目が覚めたようだな、新兵」
真ん中にいたムルメルティア型さんが、目覚めたばかりのわたしに声をかけました
「あ、いえ、私の名前は『しんぺい』ではなく・・・」
「本名は非公開だ。貴君も、私もな」
いきなり私の事を登録された名前と違う呼び方で呼んだ事に訂正を入れようとしましたが、言い切る前に言葉を遮られてわたしは二の句を詰まらせてしまいました
「・・・あの・・・えっと」
わたしが何を話そうかと困惑していると、ムルメルティア型さんが左にいたフォートブラッグ型さんに一言言ってこの場を離れていきました
右にいたゼルノグラート型さんもそれについて行かれました
残されたわたしはどうしたら良いのかわからず、困惑は増すばかり
そこに差し伸べられたのはわたしと共に残されたフォートブラッグ型さんの手でした
「とりあえず、立て」
「・・・あ、はい、すみません」
わたしはその手を取って立ち上がり、改めて自分の『体』の状態を確認してしまいました
・・・わたしは今、『裸』なんです
通常の神姫ならば「通常素体」と呼ばれるボディなので、神姫ならばデフォルトで非武装状態でも『恥』を感じる事はありません
ですが、わたしの体の今の状態は・・・いわゆる、人間の女性でいう『全裸』と同義でして・・・
改めて体中を見直すと、MMS素体に見られる関節ジョイントが見あたりません
首のあたりを触っても、肩からなめらかなカーブを描いて首があり、その上に頭があります
これでは、まるっきり・・・
「『人間』の体と変わらないではありませんかー!」
・・・わたしの叫びから、たっぷり数秒
「・・・落ち着いたか?」
フォートブラッグ型さんは待っていてくれたようです
「・・・あ、はい、すみません」
本日二度目の同じフレーズをフォートブラッグ型さんに返しました
「では、これを着ろ」
フォートブラッグ型さんが出してくれたのは、丁寧に折り畳まれた軍服の上下と・・・
「神姫サイズの、女性用の下着、ですか・・・」
「『その体』では必要だろう」
確かに必要ですが、あまりにもサラリと言われてしまったのでわたしは返す言葉も出ないままにそれらを身につけました
「・・・様になっている」
すべて着終わったわたしを見て、フォートブラッグ型さんが一言感想を言って下さいました
「あ、ありがとうございます。それで、この『体』についてなんですが・・・」
「それについては少佐から聞くといい。あと、自分の事は大尉と呼べ」
あう・・・またセリフを途中で遮られてしまいました
聞きたいことを聞けぬままそこは次に向かう大尉について行くと、そこにはテーブルとイス、そして大きなホワイトボードが置いてありました(もちろんすべて神姫サイズです)
そこにはすでに先程のムルメルティア型さんとゼルノグラート型さんがイスに座っていました
「ようやく来たか。私はこの『南十字隊』の隊長、コードネームは『α』。階級は少佐だ」
あ、このムルメルティア型さんが少佐なのですね。しっかり登録します
「あらためて・・・自分がコードネーム『β』、階級は大尉だ」
登録済みですが、コードネームの件で上書きです
「そして、私がコードネーム『γ』、階級は曹長であります」
こちらのゼルノグラード型さんが、曹長ですね
・・・はて、わたしは?
「貴君には、コードネーム『δ』、階級は一等兵を与えるように承っている」
それがわたしの名前以外の呼び名なのですね?
しっかりと登録しました
「・・・では一等兵、貴君の我々『南十字隊』への入隊、心より喜ばしく思う」
「・・・君の入隊を歓迎する」
「これから一緒に頑張るであります!」
少佐、大尉、曹長の一言ずつと敬礼にわたしの胸はいっぱいなり、わたしも見よう見まねの敬礼を三人に返しました
「はい!至らないところだらけかと思いますが、精一杯努力して頑張ります!」
こうして、この日からわたしは『南十字隊』のコードネーム『δ』となりました
「・・・一等兵、敬礼は右手だ」
「・・・はい、すみません」
前途多難ですけど、頑張ります
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