千尋の理想 - (2011/05/19 (木) 21:47:28) の1つ前との変更点
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……戻ったか、一等兵
あの後か……お前の想像通りだよ
データは充分だとのことだ
……ああ、やはりお前にはまだ早い内容だったよ
……自分たちの部屋の隅で簀巻きにされてる少佐か?
放っておくと危険なんだ
「リア充爆発しろ」と言いながら『無の部屋』に突撃しかねんからな
……少佐の扱いが酷い? 上官不敬?
…………ふふ、気にするな
実は自分と少佐、BとDは同期なんだ
ただ、少佐の方が自分より先に起動しただけなんだ……特殊部隊の二人は知らん、同期というだけは聞いているがな
実際の話…少佐と自分は、上官と部下というより……そうだな…『姉妹』みたいなものかな
----
第五話 探偵猫の未来
砂木さんたちが来社したのが午前九時……今はもう、窓の向こうには真っ赤な夕焼けが見えてます
『無の部屋』にいるお二人に声をかけて、今は最初の第二応接室
私は一人、ソファーに深く座って七杯目のカフェオレに口を付けてます
……あ、『無の部屋』というのは私が研究に息詰まったときに入る壁も床も天井も継ぎ目無く真っ白な部屋なんです
本来はベッド何もなくて、ただ白いだけの部屋なんです……「私」が「私」を自覚して自我を保てるように、何も考えずに部屋の中心に座っているだけの部屋です
今回はお二人がお互いのみを意識できるように、特別な計らいをしたんだけど……成功したのは半分だけ
……貴重なデータ入手のチャンスだったのになぁ……
…………あ、Bに連れられてお二人が戻ってきたみたい
扉を開けて入ってきたのは……なんだか若干やつれた気がする砂木さんと、その右腕をしっかりと抱きしめてくっついているルルコさんです……なんだか微笑ましいね
今度は私が何も言わなくてもお二人は向かいのソファーに座りました
……あれ? Bは?……部屋に入らずに帰っちゃったのかな?
まぁいいや、とりあえず私はもう一口カフェオレを口にしてからお二人に軽く頭を下げた
「お疲れさまです、先ほどでテストとデータの採取は一部完了しました……何か、ご不明の点はありますか?」
「質問は後でさせてもらう、その前にルルコの身体についての説明を貰えるか?」
砂木さんの言葉に私は軽く返事をして頷き、テーブルの上に準備してあったファイルの中から関連する資料を取り出して砂木さんに手渡し、説明を始める
「今ルルコさんの身体になっているのは、型式番号Michelle-002X、商品名Forbidden Fruitです
神が創りたもうた『ヒト』に似せて造った、神への冒涜とも言うべき『ヒトもどき』……まさに『禁断の果実』です
……さしずめ、私はアダムとイブに知恵の実を口にするようそそのかした蛇といったところでしょうか?」
……あんまり洒落とか上手く言えないなぁ
「基本的な性能は手元のカタログ通りです
ただ神姫と違う点は、身体機能を維持するために呼吸と食事が必要な事です
神姫は一日一回の充電が必要ですが、Michelle-001及びMichelle-002Xは呼吸と食事もしくは充電によってエネルギーを補充できるハイブリッド仕様になってます
充電もしくは食事ができない状態でも、最低限の水分さえ補給して、充分に呼吸ができる環境ならば、だいたい一週間は不眠不休無食で連続行動が可能です……しかし、できればさせないであげてくださいね?」
ここまで一気に説明してから一呼吸……うん、説明漏れは無いね?
「……以上です、何かご不明の点はありますか?」
「いや、大丈夫だ」
見ると資料を見ながら頷いている砂木さんの右で、ルルコさんは眠っていました……なんだか幸せそう
「次は俺から質問させてもらうぞ……今回の件とはあまり関係ないが、いいか?」
私が頷くと、右肩にルルコさんを寄りかからせたまま砂木さんは続けた
「まず一つ目……お前はまだ子供だろう? 何故会社の経営なんぞしている? 他にもやりたいことの一つや二つあるだろう?
二つ目、会社を経営するに当たってのお前の本当の目的は何だ?
最後に三つ目、いくつか流れているミッシェルの『黒い噂』について、真偽を問いたい」
……さすが探偵さんといったところかな、着眼点が一般の方々とは違うね
普通の人は私が会社経営をしてても「凄いな」程度の感想しか無いけど……
砂木さんを見ると、射抜くような視線でまっすぐに私を見てる……仕方ないなぁ
「……お答えしましょう……恐らく、貴方にごまかしは通じなさそうですから」
私はぬるくなってしまったカフェオレを一口飲み、ゆっくりと頭の中を整理しながら話し始めた
「まず、一つ目を答えましょうか……会社経営は、堂々と研究するための看板みたいなものです。
『私のやりたい事』と仰いましたが、私のやりたい事は『ヒト』と『神姫』の『ココロ』の研究です
人によっては神姫の事を『ただの玩具』や『所詮は機械』と言い切ってしまう人もいます、それは決して間違いではなく、むしろ正しい見方でしょう
……しかし、彼女たち神姫は私たちと同じように『ココロ』を持っています
大切な何かを得て喜び
大切な何かを守るために怒り
大切な何かを失えば哀しみ
大切な何かと共に在ることを楽しく思います
……それは、私たち『ヒト』とどこが違うというのでしょう?
ただ、神が創ったヒトである事と、ヒトが作った神姫である事……それだけなのではないのでしょうか?
……その違いについて知りたい、それが私のやりたい事であり、研究課題です」
ひとしきり言い切ってから、残っていたカフェオレを飲み干して続ける
「では、二つ目……会社経営の本当の目的でしたね
今話したように私は『ココロ』について研究をしています
私は特に神姫たちが感じる幸せに着眼しました
神姫がヒトと関わり合うことでどんな幸せを感じるか、それが知りたいんです
そのために私はできる限りの力を使って、幸せを得るためのお手伝いをしたいんです
幸せを感じる方法は神姫一人一人違います
戦いに明け暮れ、相手を打ち倒す事に喜びを感じる神姫もいれば、ルルコさんのようにマスターと深い繋がりを得ることで幸せを感じる神姫もいます
そんな数々のパターン全てに、できる限り力を貸してあげる事……それが、この会社の存在理由の七割です」
そこまで言い切ってから私はソファーから立ち上がった
「三つ目に関しては、大半がただの噂に過ぎません……しかし、中には『地下室に対神姫用兵器実験場があり、そこには今まで犠牲になった神姫の残骸が転がっている』というものがありましたね」
……今思えば、かなりホラーチックだなぁ
「……ついてきて下さい、その目で確かめる方が確実ですから」
私が言うと、砂木さんは眠っているルルコさんをそっとソファーに横たえさせ、自分の上着を掛けてあげた……優しい人だなぁ、本当に微笑ましい
「……こちらです、行きましょう」
出入り口とは逆にある、第二応接室と私のラボを繋ぐ扉を抜け、さらにラボの奥にあるエレベーターに乗る
このエレベーターはラボと地下室を繋ぐだけのものだから、ボタンで操作しなくても自動で動いてくれる
……地下室に着いて真っ先に目にはいるのはおびただしい数の白い箱の山
「なんだこりゃ?」
素直に疑問符を出す砂木さんに説明を入れる
「この子たちはちょっと訳有りの神姫たちです……マスターに捨てられたり、酷い扱いや虐待を受けたり……戦争の兵器として扱われた子もいます
そんな神姫たちを回収して完全に修復し、再び誰かの元へ行くのを待っている子たちです
記憶のリセットも終了済みですから過去に捕らわれることも無く、幸せにしてくれるマスターの所に行けるといいなぁ……と、願っています
……では、次に行きましょう」
説明を終えて、次に向かった先にあったのは……
「なっ……こ、これは……!」
砂木さんも驚いているみたい
……それもそのはず……なぜならそこには、噂通りの壊れた神姫の残骸が山となっているから……
「……これは、私が救えなかった子たちです
……全ての神姫を救うだなんて……そんな事、どんな凄腕のメカニックにもできません
……だからせめて、腕がなくなってしまった子の為に代わりの腕を……足がなくなってしまった子の為に代わりの足を……
せめてそんな形でも、まだ救える子を救う手助けをしてもらうために、ここにいてもらってます」
砂木さんは言葉が出てこないみたい
「……以上です……さて、戻りましょうか」
……帰り道は一言も会話がなかった
ラボを抜けて応接室に戻ってきたとき、ちょうどルルコさんが目を覚ましていた
「どこか行ってたの?」
「……ああ、ちょっとな」
……さすがに、地下で見たことはルルコさんには言いづらいよね
「……さて、これからルルコさんを幸せに出来るかは砂木さん次第です……私としては、良質なデータを得るために幸せにしてあげてほしいんですが」
半ば無理矢理雰囲気をねじ曲げ、明るく振る舞って話す
砂木さんも乗ってくれたみたいで、不適な笑みを浮かべながらルルコさんを胸に抱き寄せた
「データ云々に関係なく、俺はルルコを幸せにしてやるつもりだ」
「……ジョースケ……」
ルルコさんがうっとりしてる……既に幸せそうだなぁ
「期待してますね。……あ、そうだ。月に一回は検診に来て下さいね? まだデータが足りないんです」
砂木さんは「おう」と返事をしながら上着を着てる……どうやら、帰る準備をしてるみたい
「……それでは、本日はお疲れさまでした」
「ああ、また来る」
「ちひろ、またね!」
私が深く一礼すると、お二人は腕を組んで帰って行った
----
……お二人が帰って10分くらいしてから、途端に訪れる脱力感
「……ふぅ、疲れたなぁ……」
……キュウゥゥゥゥゥ……
大きな仕事を成し遂げ、緊張の糸が切れた瞬間にやってきたのは強烈な空腹
……おなかすいたぁ……そう言えば朝から何も食べてないなぁ
今から用意するのも疲れるし、外食しようかな
……そうだ、折角だからみんなで一緒に食べに行こう
私は、みんなを呼びに行くために応接室の扉を開けた……
[[戻る>Forbidden Fruit]]
……戻ったか、一等兵
あの後か……お前の想像通りだよ
データは充分だとのことだ
……ああ、やはりお前にはまだ早い内容だったよ
……自分たちの部屋の隅で簀巻きにされてる少佐か?
放っておくと危険なんだ
「リア充爆発しろ」と言いながら『無の部屋』に突撃しかねんからな
……少佐の扱いが酷い? 上官不敬?
…………ふふ、気にするな
実は自分と少佐、BとDは同期なんだ
ただ、少佐の方が自分より先に起動しただけなんだ……特殊部隊の二人は知らん、同期というだけは聞いているがな
実際の話…少佐と自分は、上官と部下というより……そうだな…『姉妹』みたいなものかな
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第五話 千尋の理想
砂木さんたちが来社したのが午前九時……今はもう、窓の向こうには真っ赤な夕焼けが見えてます
『無の部屋』にいるお二人に声をかけて、今は最初の第二応接室
私は一人、ソファーに深く座って七杯目のカフェオレに口を付けてます
……あ、『無の部屋』というのは私が研究に息詰まったときに入る壁も床も天井も継ぎ目無く真っ白な部屋なんです
本来はベッド何もなくて、ただ白いだけの部屋なんです……「私」が「私」を自覚して自我を保てるように、何も考えずに部屋の中心に座っているだけの部屋です
今回はお二人がお互いのみを意識できるように、特別な計らいをしたんだけど……成功したのは半分だけ
……貴重なデータ入手のチャンスだったのになぁ……
…………あ、Bに連れられてお二人が戻ってきたみたい
扉を開けて入ってきたのは……なんだか若干やつれた気がする砂木さんと、その右腕をしっかりと抱きしめてくっついているルルコさんです……なんだか微笑ましいね
今度は私が何も言わなくてもお二人は向かいのソファーに座りました
……あれ? Bは?……部屋に入らずに帰っちゃったのかな?
まぁいいや、とりあえず私はもう一口カフェオレを口にしてからお二人に軽く頭を下げた
「お疲れさまです、先ほどでテストとデータの採取は一部完了しました……何か、ご不明の点はありますか?」
「質問は後でさせてもらう、その前にルルコの身体についての説明を貰えるか?」
砂木さんの言葉に私は軽く返事をして頷き、テーブルの上に準備してあったファイルの中から関連する資料を取り出して砂木さんに手渡し、説明を始める
「今ルルコさんの身体になっているのは、型式番号Michelle-002X、商品名Forbidden Fruitです
神が創りたもうた『ヒト』に似せて造った、神への冒涜とも言うべき『ヒトもどき』……まさに『禁断の果実』です
……さしずめ、私はアダムとイブに知恵の実を口にするようそそのかした蛇といったところでしょうか?」
……あんまり洒落とか上手く言えないなぁ
「基本的な性能は手元のカタログ通りです
ただ神姫と違う点は、身体機能を維持するために呼吸と食事が必要な事です
神姫は一日一回の充電が必要ですが、Michelle-001及びMichelle-002Xは呼吸と食事もしくは充電によってエネルギーを補充できるハイブリッド仕様になってます
充電もしくは食事ができない状態でも、最低限の水分さえ補給して、充分に呼吸ができる環境ならば、だいたい一週間は不眠不休無食で連続行動が可能です……しかし、できればさせないであげてくださいね?」
ここまで一気に説明してから一呼吸……うん、説明漏れは無いね?
「……以上です、何かご不明の点はありますか?」
「いや、大丈夫だ」
見ると資料を見ながら頷いている砂木さんの右で、ルルコさんは眠っていました……なんだか幸せそう
「次は俺から質問させてもらうぞ……今回の件とはあまり関係ないが、いいか?」
私が頷くと、右肩にルルコさんを寄りかからせたまま砂木さんは続けた
「まず一つ目……お前はまだ子供だろう? 何故会社の経営なんぞしている? 他にもやりたいことの一つや二つあるだろう?
二つ目、会社を経営するに当たってのお前の本当の目的は何だ?
最後に三つ目、いくつか流れているミッシェルの『黒い噂』について、真偽を問いたい」
……さすが探偵さんといったところかな、着眼点が一般の方々とは違うね
普通の人は私が会社経営をしてても「凄いな」程度の感想しか無いけど……
砂木さんを見ると、射抜くような視線でまっすぐに私を見てる……仕方ないなぁ
「……お答えしましょう……恐らく、貴方にごまかしは通じなさそうですから」
私はぬるくなってしまったカフェオレを一口飲み、ゆっくりと頭の中を整理しながら話し始めた
「まず、一つ目を答えましょうか……会社経営は、堂々と研究するための看板みたいなものです。
『私のやりたい事』と仰いましたが、私のやりたい事は『ヒト』と『神姫』の『ココロ』の研究です
人によっては神姫の事を『ただの玩具』や『所詮は機械』と言い切ってしまう人もいます、それは決して間違いではなく、むしろ正しい見方でしょう
……しかし、彼女たち神姫は私たちと同じように『ココロ』を持っています
大切な何かを得て喜び
大切な何かを守るために怒り
大切な何かを失えば哀しみ
大切な何かと共に在ることを楽しく思います
……それは、私たち『ヒト』とどこが違うというのでしょう?
ただ、神が創ったヒトである事と、ヒトが作った神姫である事……それだけなのではないのでしょうか?
……その違いについて知りたい、それが私のやりたい事であり、研究課題です」
ひとしきり言い切ってから、残っていたカフェオレを飲み干して続ける
「では、二つ目……会社経営の本当の目的でしたね
今話したように私は『ココロ』について研究をしています
私は特に神姫たちが感じる幸せに着眼しました
神姫がヒトと関わり合うことでどんな幸せを感じるか、それが知りたいんです
そのために私はできる限りの力を使って、幸せを得るためのお手伝いをしたいんです
幸せを感じる方法は神姫一人一人違います
戦いに明け暮れ、相手を打ち倒す事に喜びを感じる神姫もいれば、ルルコさんのようにマスターと深い繋がりを得ることで幸せを感じる神姫もいます
そんな数々のパターン全てに、できる限り力を貸してあげる事……それが、この会社の存在理由の七割です」
そこまで言い切ってから私はソファーから立ち上がった
「三つ目に関しては、大半がただの噂に過ぎません……しかし、中には『地下室に対神姫用兵器実験場があり、そこには今まで犠牲になった神姫の残骸が転がっている』というものがありましたね」
……今思えば、かなりホラーチックだなぁ
「……ついてきて下さい、その目で確かめる方が確実ですから」
私が言うと、砂木さんは眠っているルルコさんをそっとソファーに横たえさせ、自分の上着を掛けてあげた……優しい人だなぁ、本当に微笑ましい
「……こちらです、行きましょう」
出入り口とは逆にある、第二応接室と私のラボを繋ぐ扉を抜け、さらにラボの奥にあるエレベーターに乗る
このエレベーターはラボと地下室を繋ぐだけのものだから、ボタンで操作しなくても自動で動いてくれる
……地下室に着いて真っ先に目にはいるのはおびただしい数の白い箱の山
「なんだこりゃ?」
素直に疑問符を出す砂木さんに説明を入れる
「この子たちはちょっと訳有りの神姫たちです……マスターに捨てられたり、酷い扱いや虐待を受けたり……戦争の兵器として扱われた子もいます
そんな神姫たちを回収して完全に修復し、再び誰かの元へ行くのを待っている子たちです
記憶のリセットも終了済みですから過去に捕らわれることも無く、幸せにしてくれるマスターの所に行けるといいなぁ……と、願っています
……では、次に行きましょう」
説明を終えて、次に向かった先にあったのは……
「なっ……こ、これは……!」
砂木さんも驚いているみたい
……それもそのはず……なぜならそこには、噂通りの壊れた神姫の残骸が山となっているから……
「……これは、私が救えなかった子たちです
……全ての神姫を救うだなんて……そんな事、どんな凄腕のメカニックにもできません
……だからせめて、腕がなくなってしまった子の為に代わりの腕を……足がなくなってしまった子の為に代わりの足を……
せめてそんな形でも、まだ救える子を救う手助けをしてもらうために、ここにいてもらってます」
砂木さんは言葉が出てこないみたい
「……以上です……さて、戻りましょうか」
……帰り道は一言も会話がなかった
ラボを抜けて応接室に戻ってきたとき、ちょうどルルコさんが目を覚ましていた
「どこか行ってたの?」
「……ああ、ちょっとな」
……さすがに、地下で見たことはルルコさんには言いづらいよね
「……さて、これからルルコさんを幸せに出来るかは砂木さん次第です……私としては、良質なデータを得るために幸せにしてあげてほしいんですが」
半ば無理矢理雰囲気をねじ曲げ、明るく振る舞って話す
砂木さんも乗ってくれたみたいで、不適な笑みを浮かべながらルルコさんを胸に抱き寄せた
「データ云々に関係なく、俺はルルコを幸せにしてやるつもりだ」
「……ジョースケ……」
ルルコさんがうっとりしてる……既に幸せそうだなぁ
「期待してますね。……あ、そうだ。月に一回は検診に来て下さいね? まだデータが足りないんです」
砂木さんは「おう」と返事をしながら上着を着てる……どうやら、帰る準備をしてるみたい
「……それでは、本日はお疲れさまでした」
「ああ、また来る」
「ちひろ、またね!」
私が深く一礼すると、お二人は腕を組んで帰って行った
----
……お二人が帰って10分くらいしてから、途端に訪れる脱力感
「……ふぅ、疲れたなぁ……」
……キュウゥゥゥゥゥ……
大きな仕事を成し遂げ、緊張の糸が切れた瞬間にやってきたのは強烈な空腹
……おなかすいたぁ……そう言えば朝から何も食べてないなぁ
今から用意するのも疲れるし、外食しようかな
……そうだ、折角だからみんなで一緒に食べに行こう
私は、みんなを呼びに行くために応接室の扉を開けた……
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