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第11話:海だ山だ温泉だ(その5) - (2007/11/25 (日) 01:45:46) のソース
*鋼の心 ~Eisen Herz~ **第11話:海だ山だ温泉だ(その5) 大宴会場『葛の葉』 「おお~、豪華メニュー♪」 マヤアが驚嘆の声を上げるのも無理は無い。 テーブルを埋め尽くさんばかりに広げられた料理の山を見れば、無反応でいる事の方が難しい。 「当館では海の幸、山の幸を季節に合わせたアレンジでご提供しております。メインディッシュには―――」 季州館の女将である藤堂奈津子の説明は、誰に聞かれる事も無く続く。 「お母さん、誰も聞いてないみたいだけど?」 「―――なお、料金は晴香のお小遣いから天引きとなっておりますので、お替りはご自由にどうぞ」 「は~い♪」 間髪居れずに返事をする雅。 「ちょっと、お母さん!? そんな話聞いてないわよ!?」 「あら? だって、無料で招待したのは晴香でしょう?」 「それはそうだけど……」 「因みに、宿泊費も晴香のお小遣いから天引きよ?」 「……あ、あたしの来月のお小遣いって……」 「ええ~と」 袖から電卓など取り出す奈津子さん。 「ポンポンポン、と。ざっと3年間はお小遣い無しね」 「まいがーっ!?」 「いや、自業自得だと思うけど?」 女将母娘の会話を他所に、テーブルでは酒宴が始まっていた。 「よーし、盛り上がってきた。誰か、歌え~。あはははは~」 部屋の隅に設置されたカラオケセットを指差し、いい感じに酒の入った雅がケタケタ笑う。 「あんたが歌え、一番上手いだろ」 妙にハイテンションな悪友に、疲れた表情で浅葱。 因みに、これがこの後の惨事の発端である。 「ふむ、よ~し分かった。一番、島田雅!! “鼻から牛乳”を歌います!!」 「ぶぼぉ!?」 雅の上げた曲名に浅葱がビールを吹き出した。 「ぶぱぁ!? 浅葱汚い~!?」 直撃を受けたマヤアが浅葱の浴衣の袖で顔を拭く。 そうこうしているうちに、雅の熱唱が始まった。 ……始まってしまった。 『女と二人で僕の部屋に、 帰ってきたら留守番電話の、 ランプがチカチカ点滅している誰からだろう~♪』 「何か不穏当な歌ね……?」 眉を潜める美空。 『もしも他の女からのメッセージだとこりゃヤバい、 一か八かこりゃバクチだと再生ボタン~♪ ピーッ。「あ、あたし。最近全然逢ってくれないのね。電話まってまーす」ピーッ。 ……ジャラリィ~、鼻から牛乳~♪』 「……ナニ、この歌?」 「……嘉門達夫だな……」 雅の熱唱は続く。 因みに声質もリズムも完璧である。 プロの歌手でもここまで上手いものは数えるほども居ないだろう。 だがしかし、歌詞が嘉門達夫な時点でダメダメだった。 『~バスタオルで髪の毛拭きながら女はこう言った~。「……誰に電話してたの?」 ……ジャラリィ~、鼻から牛乳~。「いやあの、電話なんかしてないって」「うそ」「本当だって」「じゃあ、リダイヤルしてもいい?」 ……ジャラリィ~、鼻から牛乳~♪』 「あのさ、祐一」 「……なに?」 「雅んの歌がめちゃくちゃ上手いって言うのは分かったけど、……この選曲は如何なものかと……」 「それは、姉さんに直接言ってくれ」 言えたら苦労しない。 そうこうしている内に2番(女バージョン)まで熱唱しきった雅が美空を指した。 「はい、次は美空ちゃん。ノリの良いのを希望します」 「え?」 どうやら、歌い終わったら次に歌う人を指名できるルールが、いつの間にか出来ていたらしい。 「えっと~。……」 美空は曲目リスト等を見ながら首を捻る。 「よし、これ行こう……。フェータ、協力して頂戴!!」 「え?」 ちなみに美空の選択は……。 『我は延髄突き割る 我は延髄突き割る ROLLING ROLLING 延髄突き割る~♪』 “ROLLING1000tOON”だった。 「どうしてまともな歌が出ないかな……」 頭を抱える祐一。 その後も、“Neko Mimi Mode”“もってけ!セーラーふく”“ねぇ…、しようよ!”と留まる所を知らない典雅の面々。 だがしかし、この状況を打開するべくアイゼンが立ち上がる。 (アイゼン、流れを変えるんだ…。まともなノリに戻すんだ) (……了解。……任せて) と、頼もしいパートナーのアイコンタクトに祐一は状況の変化を確信する。 そしてアイゼンの歌が始まった。 『おらは死んじまっただ~♪』 「ダメじゃん!!」 アイゼンの選曲は“帰ってきたヨッパライ”。 どう考えてもアイコンタクトは成立していなかった。 「いえ、さらに盛り上げろとアイコンタクトが……」 「そんなメッセージ送ってねぇ!!」 「あの~、そろそろボクの番で良いですか?」 控えめなセタの声に振り向く祐一。 「……真面目なセタならまともな歌が―――」 『あ~る日金太が歩いていると~♪』 「―――所詮は姉さんの犬か……」 よりにもよって“金太の大冒険”。 もちろんセタは歌詞の裏の意味は分かっていない。 教えられたとおりに歌っているだけだ。 『~金太、負けるな。金太、負けるな。金太、負けるな~♪』 元気いっぱいに熱唱するセタは、ケタケタ笑う雅の声を声援に10番まで全部歌いきる。 そして、やり遂げた表情でマイクを置いた。 「マスター、これでよかったですか?」 「ええ、完璧よセタ。貴女は最高のパートナーだわ」 「……ますた~」 「セタぁ~」 ひっし、と抱き合う二人。 「あ~、もうどうでもいいや。次、誰だよ?」 「あ、じゃあ。あたしが歌うわ」 髪をかき上げ颯爽と立ち上がるリーナ。 (……リーナなら変な歌は歌わないと思うが……、と言うか日本語で歌、歌えるのか?) 祐一の心配を他所に、軽快なギターが流れ出す。 「……あ、意外。ロックンローン………?」 前奏だけを聞けば極めて普通のロックミュージック。 『私はメイド、あなたのメイド♪』 (あ、村上さんか。この歌教えたの……) ロクな事しない人だなと思いつつ祐一はグラスをあおる。 『炊事、洗濯、お料理、セッ〇ス~♪』 「―――ぶぼぉっ!?」 そして即座に吹き出した。 「リ、リーナ?」 『あなたが望めばなんだってしちゃうわ~♪』 絶対歌詞の意味など欠片も分かってない。 時々、英語の歌を歌いつつも、意味を聞かれると分からない日本人が居るが、それの真逆の現象が今、目の前に発生していた。 雅と同じく、覚えるつもりで見聞きした事は絶対に忘れないリーナであるが故に、意味など分からずとも完璧な歌唱が可能。 そして、まだ11歳のリーナが、そのテの単語(しかも外国語)を理解できないのも無理は無い。 ゆえに発生したこの状況に雅は大ウケ。 「ぐっ、くくく……」 机などバンバン叩きつつ、声を殺してのた打ち回る。 『何だって 何だって 何だって出来るわ~♪』 リーナの熱唱が終わり、祐一と浅葱が立ち上がった。 「……先生?」 「ええ、島田君」 頷き合う教師と生徒。 「あ~、斉藤センセがメイド服に着替えてる~っ!!」 ………。 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド………ッ!! 大地を揺らす地響きが急速に近づいてくる。 「何処ですか!? 浅葱さんのメイド姿はっ!?」 村上衛が現れた。 「……二度と地上に戻ってくるな~っ!!」 そして炸裂する浅葱の全力アッパー。 「あぽろわぁ~~~~~~~~~~~~~ん!!」 村上は縁起でもない叫び声を上げながら空高く打ち上げられ。 キラリン。 星になった。 前回と全く同じオチで、続く。 [[第11話:海だ山だ温泉だ(その6)]]につづく [[鋼の心 ~Eisen Herz~]]へ戻る ---- 今回は個人的にイマイチ。 ネタは悪くないんだけど、SSだと“歌をBGMにしての会話”が成立しないのが敗因かも……。 まあ、面白ソングの紹介だと思ってお読みくださいな。 以下歌った歌リスト。 ◆祐一 &bold(){エクセレント・チェンジ!究極戦隊コウガマン} 究極超人あ~るの作中作。究極戦隊コウガマンのOP。 後にイメージソング集の中で実際に作成された。 昭和時代の戦隊ヒーロー風味な曲が意外にカッコ良い。 ◆アイゼン &bold(){帰ってきたヨッパライ} オラは死んじまっただ~。で有名なあの歌。 何故か脱力感に襲われる迷曲。 ◆美空&フェータ &bold(){ROLLING1000tOON} アニメ『エアマスター』のED。 日本語の歌詞なのに英語っぽく聞こえる不思議ソング。 googleで『エアマスター ED』でクグると一番上に出てくるので、興味ある人はどうぞ。 一番最後にドアップで出てくる崎山香織が良い味出してます。 因みにフェータは『スキップを100歩宙吊りで…』の辺りを担当。 ◆リーナ &bold(){メイドさんロックンロール} 今回の問題作。 ああ、石を投げないで…!! ◆レライナ &bold(){もってけ!セーラーふく} レライナさんがこれをノリノリで歌っている所を、ALCは見たかった。 ◆雅 &bold(){鼻から牛乳} こうしてリストにしてみると、実はマトモな部類の歌。 ◆セタ &bold(){金太の大冒険} 返す返すもセタは意味を分かってません。 だってお馬鹿なわんこですから…。 ◆浅葱 &bold(){ねぇ…、しようよ!} KOTOKOさんの歌。 キャンディソフト(現みなとソフト)の『姉、ちゃんとしようよ2』のOP。 登場人物の内、女性は例外なく姉キャラという素敵ゲーム。 もちろん18禁。だが歌は普通にGOOD。 ◆マヤア &bold(){Neko Mimi Mode} 月読というアニメのOP。 ネコミミモードで~す。 ◆村上 &bold(){アポロ1~} 歌じゃねぇっ!! ◆デルタ &bold(){人食い土人のタムタム} みんなの歌で凄く昔に歌われていたシュールソング。 お腹が空いた挙句に友達食べちゃう吃驚の歌詞。 最後は自分を食べて消滅すると言う器用な死に方。 これがNHKで流れていた時代もあったのですね……。 当然、今では入手不可能。 ネットで調べると主人公がサムサムで友達がタムタムという記述もあるが……。 あたしの記憶だと主人公タムタム、友達はカムカムだったような気が……? まあ、いずれにせよ。 差別用語使わなきゃ差別じゃないと言う考えは嫌いです。 差別用語だけ設定して、差別根絶した気になるな。って事で一つ。 因みに『悲惨な戦い』はネタとしてあんまりなので封印。 ……いつもこんな電波ソングばかり聞いてる訳じゃありませんよ? ちゃんと妖精帝国とか聞いてます……。 でもここ数年、『もってけ~』と『妖精帝国』以外では『CHA-LA HEAD-CHA-LA』(古っ)しか買ってない? 音楽だったら東方とか、ロックマンとか……、ゲーム系のを幾つか。 SS書くときにBGMとして流している事もありますが、ALCは基本的には歌ではなくBGMしか聞きません……。 昔のアニメのOPは作品の内容を盛り込んだ歌で面白かったんだけど、最近のアニメのOPはタダの歌だからなぁ……。 記憶薔薇園みたいなよほどいい歌がないと……。 ともあれ次回で旅行編初日終了。 二日目はさっさと進めて早くバトル展開に戻そう……。 ALCでした~♪