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ツガル戦術論-副題:シルヴィア地獄激闘編(中) - (2007/01/14 (日) 01:33:27) のソース
[[戻る>ツガル戦術論-副題:シルヴィア地獄激闘編(上)]] [[TOPへ>ツガル戦術論]] [[次へ>ツガル戦術論-副題:シルヴィア地獄激闘編(下)]] 「あなたですね。ツガルタイプのシルヴィア。先日の大会で優勝なさった」 不思議な物腰の男。敵対心等は無いようだが、かといってとっつき易い雰囲気でも無い。 「非常に個性的な戦い方をしていましたね。相手の隙を突いてアウトレンジからクロスレンジへの迅速な移行と離脱。欠点を逆に利用する戦略性。上位のバトルでもなかなか見れるものではありませんでした」 この男の発言の節々から、前大会での戦略はチェックされ尽くされてると言った雰囲気が読み取れた。 「そして決勝戦での鬼気迫る熾烈な接近戦。正直、感動しました!」 しかしよく喋るこの男、何者なんだ――― 「―――だが、それだけではこの先生き残れない」 ………!? 突然、低く無機質な神姫の声が会話に割り込んだ。 身構えるおれとシルヴィア。 ---- *ツガル戦術論-副題:シルヴィア地獄激闘編(中) ---- 「こら、あれほど口を挟むなって言ったじゃないか」 男のサイドポーチから一体の神姫が飛び出した。アーンヴァルタイプ。 天使型MMSを印象付ける軽やかな金髪ではなく、深夜の積雪を連想させる銀髪である事が、彼女をアーンヴァルタイプだと認識させるのを一瞬遅らせる。銀髪のアーンヴァルは低音の機械的な声で続ける。 「キョウジ、我々は自己紹介がまだだ。その点を指摘するために会話に参加させてもらった」 キョウジと呼ばれた男はああ、そうだった。と言う表情。 「紹介が遅れまして。私は御影恭二。こちらはアーンヴァルのマスターミラー。セカンドリーグ所属のバトルマスターです」 ばつが悪そうな表情で、最後によろしく、と付け加えられた。 「こっちの紹介は… いらないな。こちらこそ、よろしく」 よろしくと言われれば、こちらもよろしくと返す。一応の自己紹介は済んだ。だが気になるのは彼の神姫、マスターミラーの先ほどの発言だ。おれの不信な心境が顔に出てたのか、キョウジの肩に乗るマスターミラーは口を開いた。 「これから対戦を挑もうと言う相手に自己紹介も無しでは、《ミラー・オブ・オーデアル》の二つ名が傷つくであろう?」 やはり、そういう展開か。 キョウジは自分の神姫の口調に対し、仕方ないな、と言う表情。 「実は私も次回の大会に出場するのですが、偵察も兼ねてあなたにバトルを申し込みに参りました」 ツガルタイプのシルヴィアと、そのマスター。受けていただけますでしょうか? 帰り支度を始めてたところだ。このまま断ったって文句は言われないだろう。しかし、 「良いだろう。受けて立つ」 このまま家に戻っても名案が浮かぶとは思えない。正直、二進も三進も行かぬ状態なのだ。二つ名を持つマスターは個性的な戦術を持つ者が多い。彼らの戦術から学ぶ点があるかもしれない。と言う期待もあった。 そして、何より、 「名指しで挑戦されたとあっては、断るわけにいかないもんな」 「忙しいところありがとうございます」 「いいって事。うちのシルヴィアよりもマスターミラーの方が上位ランクのようだ。胸を借りるつもりでやらせてもらうよ」 「私の名前はシルヴィア。シルヴィでいいわ。よろしく、マスターミラー」 「ミラーでいい。こちらこそよろしく、シルヴィア」 マスター同士で話をまとめてるうちに、神姫同士でも自己紹介を始めていた。 「ツガルタイプだからと思って甘く見てると痛い目に合うわよ? むしろ合わすわ」 「望むところだ。私は敵を過小評価しない。全力で戦わせてもらうぞ」 自己紹介は宣戦布告へと姿を変え、お互いの闘志を大いに燃やした。 ---- 神姫バトル。形式は標準的な1on1。ルールはセカンドリーグ基準。即ちバーチャル空間で行われる。 神姫のデータを仮想空間に反映させるローディング時間を利用して戦術の打ち合わせ。いつも通りのパターン。 「マスター。相手の、マスターミラーの二つ名だけど」 「ミラー・オブ・オーデアル」 「直訳すれば鏡の試練、と言う意味みたい。マスターは彼らのデータをご存知?」 「いいや。まったく」 「データ無しの戦闘…。 あなたの観察眼が頼りね、マスター。情報支援をよろしく」 「任せな」 メインモニターは神姫のデータコンバートが終えた事を示していた。 続いてサブモニターに表示される敵神姫のデータ。おれの領域の戦いはここから始まっていた。数少ない情報から相手の得意とする戦略を割り出す。 敵神姫の武装した姿は一見、アーンヴァルの高機動ユニットを背部に背負った、何の変哲の無い標準の天使型MMSに見える。だが、注目すべき点を三つ発見出来た。 ・高機動ユニットにレドーム等の情報戦用装備が備えられている点。即ち、遠距離戦に重きを置いたタイプである事が予測出来る。 ・武装の組み合わせは腕に機関銃と盾を装備、背部高機動ユニット翼部に長距離ミサイルを抱えている。盾を除外すれば武器が二種しか搭載しておらず合計攻撃力が低めにまとめられている点。しかし機関銃とミサイルの相性は悪くない。遠距離において高い誘導性と攻撃力を誇るミサイル、これを嫌い接近してきた敵を機関銃で追い払い、アーンヴァル特有の機動性で間合いをコントロールし続ければ戦闘のイニシアチブを握る事が出来るだろう。脅威の度合いは高い。 ・盾によってアーンヴァルの低い防御力を補ってる点。距離減衰によって銃器の攻撃力が低下しやすい遠距離戦ではあの盾によって有効打を与えられない可能性がある。 もちろん相手のサイドボードに副兵装が仕込まれてる可能性もあるが、この時点ではそこまで見る事は出来ない。相手の総合火力を踏まえた上で予測するなら、弾切れを懸念して予備のミサイルを仕込んでいる可能性がある。と言う所だろうか。 以上のデータから、さらに敵アーンヴァルの戦闘行動パターンを予測。 戦闘開始直後に遠距離へ離脱。こちらの有効射程外からミサイルによる遠距離攻撃を仕掛けてくる。遠距離からのこちらの攻撃は高い機動と盾による防御力でほとんど通用しないだろう。有効打を与えようと接近すれば機関銃による攻撃が待っている。その隙に再度距離を取られる。つまり間合いを遠距離に保ち、一方的に攻撃するタイプだと予測。さらにミサイルと言う誘導兵器を搭載している敵の最大有効射程は長い。このバトルで待ちの姿勢は通用しない。 そして忘れてはいけないのが、敵はシルヴィア対策を行っているであろうと言う事。中距離が苦手と言う欠点を長所に活かす戦術は通用しないだろう。 即ち、シルヴィアが取る戦略とは。 相手の有効射程の切れ目、ミサイルと機関銃の隙間である中距離に飛び込み、出来る限り強力な攻撃をお見舞いしてやる。 もちろん相手もそれを隙として狙い近距離に接近、機関銃による攻撃を行う可能性というのもあるが、距離感の把握についてシルヴィアが劣るとは思っていなかった。 と、そこまで考えて、ある事に気が付いた。これは形こそ変わるが、今までのシルヴィアの戦略に酷似している。 ミラー・オブ・オーデアル。鏡の試練。それはひょっとして、相手と同じ戦略を用いるスタンスを示しているのではないだろうか。 以上の考えを、手短にシルヴィアに伝えた。 「私の得意とする戦法を、相手も使ってくるかもしれない。ね」 ロマンチックじゃない。とシルヴィアはあくまで余裕。 「それなら私達の戦略を客観的に捉えるチャンスじゃない。思惑通りってところかしら?」 シルヴィアの言う事は正しい。今回のバトルは予想以上の収穫がありそうだ。 やがてバトルの準備が完了した。 ---- サンタ型MMSツガルタイプ シルヴィア #center(){V.S.} #right(){天使型MMSアーンヴァルタイプ 《ミラー・オブ・オーデアル》 マスターミラー} #center(){ルール:セカンドリーグ基準 バトルフィールド「ゴーストタウン」 Get Ready? 3... 2... 1... GO!} 周囲索敵。まずは敵影無し。 私はスラスターを噴射。 ヘッドセンサーをフル回転させ、敵の初撃に備える。 #center(){続く} [[戻る>ツガル戦術論-副題:シルヴィア地獄激闘編(上)]] [[TOPへ>ツガル戦術論]] [[次へ>ツガル戦術論-副題:シルヴィア地獄激闘編(下)]]