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10話 もうひとつの戦い - (2007/03/22 (木) 00:48:16) のソース
*10話 もうひとつの戦い バトル予選が終わり、係りの人から明日の簡単な説明を受けて、会場を見て回ることにした。 アールとエルを肩に乗せ、とりあえず物販コーナーへと。 すると、ある店舗で人だかりが出来ていた。なんだ?と気になって近寄ってみる。 「フォルテストラーフセット1つ!」 「こっちは、フォルテ2個とラルナーヴヘッド1個」 「フォルテ2こ!!」 そこは、フォルテとラルナーヴを開発したブースだった。 「押さないで下さい! 在庫はまだ有りますので、押さないで下さい!」 店員が殺到する客の整理をしている。 「あの、これって……あたいが、活躍したから?」 エルが人だかりを見ながら呟く。 「注目を集めたことはたしかですね」 アールも同じ方向を見ている。 「元から人気商品だし、どうなんだろうな」 俺は、人だかりを避けるようにその場所を離れた。 企業ブースを回って新型の展示をみたり、その他いろいろと見て回り、いよいよ國崎技研のブースへやって来た。 「いよいよです」 アールがまた妙なオーラを出し始めました。 「大丈夫かな……」 エルもアールを見て心配している様子。 ブースでカタログを貰い、ヘンデルとグレーテルの説明を受けて、体験とお菓子作りの参加登録をした。 「では、マスターさんはこちらでお待ち下さい」 そういって、待ち合い場所と休憩場所を兼ねているであろうスペースへ案内された。 残念ながらここからは、体験キッチンは見えない。 見えないが……アールがどんなことをしているかは、想像がついた。 『きゃぁぁぁ!! え、えっと!』 そう……この、悲鳴のような叫び声で……… 『あわわわ! 大変!』 『あ、あの、落ち着いて。落ち着いて火を消してください』 『あ! 入れすぎです! 半分取り除いてください』 『は、はい! きゃぁぁ!!』 ガシャーン! 「え…っと、マスター……」 「言うな……」 エルが俺のほうを見ている。 確かに、アールが料理をするのは初めてだが、こうなるとは思わなかった。 他のテーブルでは、自分の作ったお菓子を食べて貰って喜んでいる神姫の姿が見える。 微笑ましいその光景は、羨ましかった。 そして、待つことしばし、ついにやって来た。 「ますたぁー、お待たせしましたぁ」 カートの上に銀色の蓋がついた容器を乗せ、さらにアールがその上に乗って、係りの人に押されてやってきた。 係りの人が容器をテーブルに移す。 「さあ、食べてください」 満面の笑みでこっちを見ているアール。 「あ、うん」 覚悟を決めて、蓋を取る。 「お?」 「あれ?」 俺とエルは拍子抜けの声をだした。そこには、まともな出来のクッキー。 「もう! なんですか、その表情は」 腰に手を当ててプリプリ怒るアール。 「あ…ああ、がんばったな」 よしよしと頭を撫でてやる。 「はい……」 ぽっと頬を染めてはにかむアール。 クッキーをひとつ摘んで食べてみる。 「お! うまい」 ふつうのバタークッキーだが、アールが一所懸命作ったものだから、さらに美味しく感じた。 サービスで出されたコーヒーと一緒に、三人で全部食べきった。 ブースから出るとき、体験キッチンを見ると料理指導のハウリンが、非常に疲れた様子をしていたのが目に止まった。 そして、アールの方を見ると 「はい?」 と首を傾げた。 何となく、このことは触れてはいけないと悟った俺だった。 [[戻る>アールとエルと]]