適材を誂え、適所に与え(後半)
私・槇野晶は、当初彼女ら“槇野晶の神姫”に戦わせる気がなかった。
より正確に言えば、神姫バトルを無理強いする気は私になかったのだ。
だが、ロッテは戦いを望んだ……自らの存在意義を求めた故だったか?
そうして“誇り”を培った彼女に刺激され、アルマとクララも望んだ。
より正確に言えば、神姫バトルを無理強いする気は私になかったのだ。
だが、ロッテは戦いを望んだ……自らの存在意義を求めた故だったか?
そうして“誇り”を培った彼女に刺激され、アルマとクララも望んだ。
「さて、ロッテが“フェンリル”を気に入ったのならば次は此方か」
「あっ、はいっ!クララちゃんがまだなら、これはあたしの……?」
「そうだ、こっちも拘って作ったぞ……数が少々多いがな、ほれッ」
「あっ、はいっ!クララちゃんがまだなら、これはあたしの……?」
「そうだ、こっちも拘って作ったぞ……数が少々多いがな、ほれッ」
“客のニーズには全力を以て応える”……それが私のモットーである。
ならば“妹達”の求めにも全力を以て応じるのが、私の役目であろう?
という信念の元、アルマに用意したのは……6振りの黒い刃であった。
専用の鞘も2本セットだ。強化セラミックの輝きには、自信があるッ!
ならば“妹達”の求めにも全力を以て応じるのが、私の役目であろう?
という信念の元、アルマに用意したのは……6振りの黒い刃であった。
専用の鞘も2本セットだ。強化セラミックの輝きには、自信があるッ!
「うんと、マイスター。この柄や鞘のあちこちについてるのは……」
「気付いたかアルマや、お前達の躯にあるジョイントと同じ物だよ」
「MMS用汎用ジョイント……これは、形を組み換える剣ですの?」
「その通りだロッテ、これぞ“ヨルムンガルド”。アルマの剣だ!」
「……じゃあボクの武器は“ヘル”で決まりなんだよ、マイスター」
「気付いたかアルマや、お前達の躯にあるジョイントと同じ物だよ」
「MMS用汎用ジョイント……これは、形を組み換える剣ですの?」
「その通りだロッテ、これぞ“ヨルムンガルド”。アルマの剣だ!」
「……じゃあボクの武器は“ヘル”で決まりなんだよ、マイスター」
──────ちょっとそのツッコミは鋭すぎないか、クララや?
北欧神話のロキ神が女巨人と設けし子にして、異形なる怪物達。
即ち“フェンリル”に“ヨルムンガルド”……そして“ヘル”。
そこから銘を持ってきたのだが、博識なクララにはお見通しか。
さておきこの剣は、ギミックが命。使い分けこそが真髄なのだ。
北欧神話のロキ神が女巨人と設けし子にして、異形なる怪物達。
即ち“フェンリル”に“ヨルムンガルド”……そして“ヘル”。
そこから銘を持ってきたのだが、博識なクララにはお見通しか。
さておきこの剣は、ギミックが命。使い分けこそが真髄なのだ。
「基本スタイルは幾つかあってな、この分離状態が“スケルトン”だ」
「じゃあ、こうして……ツガルタイプのフォービドブレイドみたいに」
「それが“ウィング”形態、双振り作れる事を前提として設計したよ」
「えっと、なら……今度は大きな四振りでフブキタイプの……んしょ」
「大手裏剣だな、それが“テイル”。小型の双振りで“スケイル”だ」
「あ、ブーメランですか。うんと、じゃあ……両方を混ぜたりっと♪」
「じゃあ、こうして……ツガルタイプのフォービドブレイドみたいに」
「それが“ウィング”形態、双振り作れる事を前提として設計したよ」
「えっと、なら……今度は大きな四振りでフブキタイプの……んしょ」
「大手裏剣だな、それが“テイル”。小型の双振りで“スケイル”だ」
「あ、ブーメランですか。うんと、じゃあ……両方を混ぜたりっと♪」
がちゃがちゃと弄っている内に、この剣の面白さと性能が分かる様だ。
表面上は笑顔のアルマだが、それでいて真剣に完成した形態を構える。
用途が多ければ、組み換え自体も含め習熟が必要になってくるからな。
双振りの死神鎌である“ファング”、防御を考えた大型剣“ホーン”。
表面上は笑顔のアルマだが、それでいて真剣に完成した形態を構える。
用途が多ければ、組み換え自体も含め習熟が必要になってくるからな。
双振りの死神鎌である“ファング”、防御を考えた大型剣“ホーン”。
「そしてこれが最大形態であるツインナギナタ、“クロウ”だ」
「“爪”ですか……えっと、マイスター。あたしも試しにっ!」
「そう言うと思って、ウレタンブースに棒を数本用意したぞ?」
「あ……ありがとうございますっ!早速、試し切りしますね!」
「“爪”ですか……えっと、マイスター。あたしも試しにっ!」
「そう言うと思って、ウレタンブースに棒を数本用意したぞ?」
「あ……ありがとうございますっ!早速、試し切りしますね!」
そう言ってアルマは、林立する12本の木……その中心へと立った。
鞘から展開した柄を右手で持ち、左手を添えて長槍の様に構える。
──────静寂の数瞬、その後にアルマの裂帛の一声が響く!!
鞘から展開した柄を右手で持ち、左手を添えて長槍の様に構える。
──────静寂の数瞬、その後にアルマの裂帛の一声が響く!!
「やっ……はあっ!せい、たっ!!ふ、やぁあっ!!!」
「凄いですの、木の棒ががあっという間に細切れに……」
「……あの剣は日本刀や小太刀に見えても、実は両刃?」
「有無。だが……ここまで見事に扱いこなすと壮観だな」
「凄いですの、木の棒ががあっという間に細切れに……」
「……あの剣は日本刀や小太刀に見えても、実は両刃?」
「有無。だが……ここまで見事に扱いこなすと壮観だな」
空気を震わせる気迫の一声が響く度、棒が細切れになっていく。
爪の様に配置された、片側3つの刃が縦横無尽に振り回される!
数十秒後。昇竜を白く焼き付けた剣が止まり、演舞は終わった。
意外にも踊りを趣味とするアルマの“舞い”は、非常に……ッ!
爪の様に配置された、片側3つの刃が縦横無尽に振り回される!
数十秒後。昇竜を白く焼き付けた剣が止まり、演舞は終わった。
意外にも踊りを趣味とするアルマの“舞い”は、非常に……ッ!
「綺麗だぞ、アルマっ!初めてでそこまで使いこなすのかッ!!」
「マイスター、喜んでくれてうれしいですっ。でも、まだまだッ」
「その意気だ!……二人とも、今日はもう少し訓練するといいぞ」
「はいですのっ。サイレンサーをつけて射撃の練習しますの~♪」
「マイスター、喜んでくれてうれしいですっ。でも、まだまだッ」
「その意気だ!……二人とも、今日はもう少し訓練するといいぞ」
「はいですのっ。サイレンサーをつけて射撃の練習しますの~♪」
程なく特訓に没入し始めた二人を見て、私はクララを呼び寄せる。
これらは全形態で扱える共通装備……私は別の装備も作っていた。
それらの仕上げの為には、どうしてもクララの助言が必要なのだ。
これらは全形態で扱える共通装備……私は別の装備も作っていた。
それらの仕上げの為には、どうしてもクララの助言が必要なのだ。
「というわけで、これがお前達共通のCQB用装備の図面だ」
「デザインは共通なんだね、マイスター……足先の部品は?」
「移動装置だ。飛行能力は搭載できんからな、やむを得ない」
「デザインは共通なんだね、マイスター……足先の部品は?」
「移動装置だ。飛行能力は搭載できんからな、やむを得ない」
昨日、エルゴの日暮めからメールが来た。“魔術”用装備の指針だ。
これはクララ専用の“Valkyrja”システムに組み込む、必要な要素。
その当人から“Valkyrja”は大型過ぎると、指摘を受けたのが先日。
打開の為に、ロッテの一言を元にして別の装甲服を作っているのだ。
これはクララ専用の“Valkyrja”システムに組み込む、必要な要素。
その当人から“Valkyrja”は大型過ぎると、指摘を受けたのが先日。
打開の為に、ロッテの一言を元にして別の装甲服を作っているのだ。
「“Valkyrja”を折り込む手前重量はかさむが、お前達なら大丈夫だ」
「でもただ装甲を外すだけだと……隙が大きいかも知れないんだよ?」
「そこはしっかり考えてある。それ故に“アレ”を組み込めるのだ!」
「……戦闘にはあまり意味がない。でもボク達のスタイルには、必要」
「そうとも。お前達はこの槇野晶の“妹”なのだからな、重要な事だ」
「でもただ装甲を外すだけだと……隙が大きいかも知れないんだよ?」
「そこはしっかり考えてある。それ故に“アレ”を組み込めるのだ!」
「……戦闘にはあまり意味がない。でもボク達のスタイルには、必要」
「そうとも。お前達はこの槇野晶の“妹”なのだからな、重要な事だ」
そこには私達の趣味嗜好が多分に混ざるが、まあそれはよかろう。
最近はアルマも、恥ずかしさを残しながら慣れてきてくれたしな。
戦略的にも、この“法衣”を自由に出し入れできる機能は欲しい。
ゼンテックスマーズ社の研究理論なので少々解析に骨が折れたが、
日暮めが“魔術”のついでに手伝ってくれた、後はクララの力だ!
最近はアルマも、恥ずかしさを残しながら慣れてきてくれたしな。
戦略的にも、この“法衣”を自由に出し入れできる機能は欲しい。
ゼンテックスマーズ社の研究理論なので少々解析に骨が折れたが、
日暮めが“魔術”のついでに手伝ってくれた、後はクララの力だ!
「というわけで、解析した“アレ”を組み込む装備を今から作る」
「了解だよ……その後で、この“法衣”用に武器を作るんだもん」
「有無、時間短縮を図りたい……クララの力を、少し借りるぞ?」
「喜んで再調整するんだよ、マイスター。ボクも、楽しみだから」
「そう言ってくれるなら、妥協無く作り上げよう。待っていろッ」
「了解だよ……その後で、この“法衣”用に武器を作るんだもん」
「有無、時間短縮を図りたい……クララの力を、少し借りるぞ?」
「喜んで再調整するんだよ、マイスター。ボクも、楽しみだから」
「そう言ってくれるなら、妥協無く作り上げよう。待っていろッ」
──────腕と誇りを賭けた、私の“戦い”だから……ね?