武装神姫SSまとめ@wiki内検索 / 「『13km』-2/3」で検索した結果
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『13km』-2/3
『13km』-2/3 「ふへへ……」 ああ、ダメだ。 ニヤけすぎた顔が引き攣って痛むのに、いくら気を引き締めようとしても昼間のことを思い出してしまう。 さっきからずっとHDDの側面の放熱するアルミに顔を押し付けて冷やしてるけど、もう顔が届く範囲で冷たい箇所がなくなってしまった。 そして再びトロ~リ緩む、私の表情。 「ふへへ……」 「なんだなんだ、気持ち悪い飛鳥型がいるぞ。HDDに頬ずりなんかして、そんなに大切なデータがその中にあるのかい」 振り向くと、いつの間にか自称神様のオールベルンが私のクレイドルに寝そべって、私以上にニヤニヤしていた。 慌ててHDDから離れた。 「君は今日、愛しの彼とその神姫に負けたんだろう。だというのにその奇行、考えられる理由は2つだな。ひとつ、帰り道で100円を拾った。ふたつ、君は想いを寄せる相手に痛めつけられることで快感を得られるマ... -
『13km』-1/3
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『13km』-3/3
『13km』-3/3 取り決めのあった通り、ギンが選んだステージはハルが一人で戦った時と同じ、規則正しく縦横に走る道路の中に高層ビルが立ち並ぶ、しかし人の姿がない箱庭。 目前にコンクリートの巨木のようにそそり立つビル群の反対側、あいつらのいる場所まではかなりの距離がある。 この距離すべての物を、さも障子紙を破るかのように薙ぎ払い襲い来る神殺槍に改めて戦慄しそうになるけど、長く伸びる『ただそれだけのもの』であれば、何も恐れる必要なんてない。 「……とはいえ、やっぱりちょっと心配になってきた、かも」 「私の太鼓判では不安か? ホノカ」と茶化すように言うハル。 「ううん、そういうんじゃないけど」 「ネタさえ分かれば、あとは恐れず戦うだけだ。さあ、始まるぞ」 私達はまだ、ギンの武装をこの目で見ていない。 だからこれから1つずつ、推理が正しいことを証明していかなきゃいけな... -
15cm程度の死闘
15cm程度の死闘 作;にゃー 与太話15で「15cm程度の死闘」本編・外伝を一区切りとしてみました。 最悪夢オチで……とも考えてましたが、それ以下になってしまいました。 勝手に始めたものであるにもかかわらず、ままならないものです。 ※注;一部の神姫に対して偏見が含まれています。言い訳はしません。ご勘弁願います。 ※注;コラボ大歓迎です。事前報告はノーサンキューです。 ※注;ご意見、ご感想をお寄せくださると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 < 第一部 戦乙女の憂鬱 > 『戦乙女の憂鬱』登場キャラ達 PROLOGUE 『もうやだこんなマスター』 1st RONDO 『どいつもこいつも神姫マスター』 2nd RONDO 『そうだ、神姫を買いに行こう ~1/4』 ... -
『大魔法少女』-2/3
『大魔法少女』-2/3 「ご大層な教義の後でスマンけど、ソッコー終わらせてもらうで!」 開始のコールの音がまだ鳴り止まないうちに、ギンの神殺槍の口から赤い光が迸った。 反動がかなり重いのか、腰を落としてしっかり構えていても伸びたブレードは大きく暴れた。 細く、一見すると頼りなさそに見えるビームソードだが、ギンの位置からステージの反対側の端まで軽々と届くそれを見た観衆はどよめいた。 察しの良い者ならばすぐに見当がつくだろう。 これだけ長い距離でもソードとしての形を保っていられるならば、その威力たるや尋常ではないと。 そして、性格はともかくとしても、誰もが認める強者であるアリベも、神殺槍の性質を見違えることはなかった。 「危ない、アリベ!」 肩の使い魔が叫ぶと同時、あらぬ方向を向いていたレーザービームがアリベのほうへと走った。 いや、正確に私が見たものは赤い光が走... -
『マッドサイエンキャット』-2/3
『マッドサイエンキャット』-2/3 寝心地の悪さを感じて目を覚ますと、私は祭りの【みこし】のように担がれていた。 成句に「御輿を担ぐ」とあるようにヨイショされているわけではなく、ハチマキとフンドシを締めた益荒男達が肩に乗せて運ぶあの【みこし】のように、忍者二人の肩の上に乗せられていた。 手足を縛られて、口には猿ぐつわをかまされている。 右腕と右足がそれぞれ黒い忍者、白い忍者の肩に乗っていて、二人は「えっさ」「ほいさ」と言いながら早足で進んでいる。 二人が歩くのに合わせて振動が伝わってきて痛い。 私達はどこかの民家と民家の隙間を通っていた。 人一人が通れるくらいの幅だが、この道と呼ばない道を使っているのは恐らく猫くらいのものだろう。 長い間雨風にさらされ続けてきたような箒やバケツを、ホノカみこしは避けていった。 両側のそそり立つ壁だけではどんな家だかは分からないけ... -
与太話12 : 人間になるには
与太話12 : 人間になるには 注意! TVアニメ武装神姫、第七話(と次回予告)のネタバレを盛大に含みます。 もう一度言いますが、 TVアニメ武装神姫、第七話(と次回予告)のネタバレを盛大に含みます。 紳士皆様方、おはようございます。 アニメを見終えた直後の方々はおやすみなさい。 ホノカです。 簡単に自己紹介をしますと、私は髪の長い飛鳥型です。 主武装の機関砲『セイブドマイスター』(今は訳あって故障中)をそのまま通名として、ご近所ではそれなりに有名だったりします。 つい最近など非公式ファンクラブが作られ、自らの手で壊滅させたりもしました。 ちょっぴりお茶目かもしれません。てへ。 私は今、七人の神姫を倒すミッションに挑戦中です。 それというのもホノカさんは難儀なことに、友... -
『大魔法少女』-1/3
『大魔法少女』-1/3 「君は暇人だな」と神様が唐突に吐いた暴言に、すれ違う他人に舌打ちをされるくらいムカついた。 いつのことだったか、バトル観戦していた時に通りがかったウェスペリオーの武装が肩に当たり、文句を言ったら舌打ちされてリアルバトルに発展したことがあったけど、今のムカつき度合いはその時くらいのものだ(ケンカ両成敗で神姫センターを1ヶ月出入り禁止になったけど、高級そうな武装をセイブドマイスターでブチ抜いてやって大満足だった)。 漫画をめくる手を止めず、私のほうを見向きもしないくせに、暴言は確実に私をターゲットにしていた。 「なによ、藪から棒に」 「藪から棒も蛇もあるもんか。僕がこうして暇つぶしに来てやった時は必ず漫画を読むか二度寝してるじゃないか。生きてて楽しいのか」 確かに私は今、漫画を読んでいる。 先週マスターが買ってきた『ストライクウィッチーズ』は私と... -
『大魔法少女』-3/3
『大魔法少女』-3/3 「二年前のあの日は、空が晴れることはもう二度とないんじゃないかなって思ってしまうくらい、黒い雲に押し潰されてた。なのに雨が全然降ってこなくて、町の外れのゲームセンターに向かっていた時から胸騒ぎがしてたの。そのゲームセンターには何度か来たことがあって、私の覚えてる限りじゃあまり流行ってなかったのだけど、店の外には自転車やバイク、車がたくさん停まってた。中に入ると―― (割愛) 『こいつらのこと、頼む』 それが最後の言葉だった。火の中に飛び込んでいって帰ってくることはなかった。残された私達にできることは、名前も知らないゼルノグラード型がどこかで無事でいることを祈るだけ。力なんて、勝利なんて、正義を貫き通すひとつの手段でしかないことを教えてくれた彼女への、それが精一杯だった」 ◆――――◆ アリベの魔法少女としての覚悟... -
『マッドサイエンキャット』-1/3
『マッドサイエンキャット』-1/3 ※ 念のための注意書き ※ 第二章でも同じ注意書きをしましたが、インダストリアル・エデン社製神姫をご存知ない方はおりますまい。 ◆――――◆ バトルをするわけでも、他に用事があるわけでもなく、私はオンラインの茶室を借りることがあった。 月に一度か二度、お金はかからない。 静穏な雰囲気を壊さない程度の和風にしつらえられた四畳半で、ただ時間の過ぎるままにまかせる。 ちゃぶ台を部屋の隅によせて、部屋の中心に仰向けに寝転がって、小窓から、あるいは壁を伝って聞こえてくる自然の音に耳を澄ませる。 竹林を撫でるように流れる風に揺れる音。 絶え間なく水が溢れる池では時々、魚が跳ねた。 私の知る限りここは、最も贅沢に時間を使うことのできる場所だった。 勿論、ここはディジタル信号によって作られた場所であり、本物の自然とは真逆... -
愛しています、私のバカマスター ~2/3
7th RONDO 『愛しています、私のバカマスター ~2/3』 「あの、マスター?」 「ん、どうしたトイレか。 そういうことはバトルの前に済ませておけと――」 「違います! 神姫はトイレなんて行きません! 相手の武装を見てください!」 「武装? ――ふむ、大剣を持っているな。 一応ハンドガンも用意はしているようだが、どう見ても近接格闘型だ。 エル、ここは距離を取っていけ」 「なるほど。 で? どうやって距離を取ればいいんですか?」 「どうやってもなにもあるもんか。 近づかなければいいだけだろ」 「なるほどなるほど。 で? 距離を取ったまま、どうやって攻撃すればいいんですか?」 「お前のその武器は飾りか? 投げるなり接近するなりして攻撃しろ」 「武器! 今 『これ』 を指して 『武器』 と言いましたか!」 「それは俺の財力をバカにしているのか? 確かにまともな装... -
100質簡易編集所
武装神姫SS総合掲示板にて企画中の 武装神姫に100の質問 コーナーにおける最新版確認用のページで~す。 このページは勝手にALCが作成いたしました。 全ての咎はALCにありますが、使用権、利用権、閲覧権はすべてのオーナーさま方にあるものとします。 見て楽しむなり、書き込むなり、改変するなり色々やろうぜ(←何に影響受けているのか丸分かり)。 なお、100質が本格稼働し次第、このページはALCの作品ページにリサイクルされ消える予定です。 なんてエコロジー。地球に優しいALCを目刺しま~す。 ページの都合上、履歴に上がって上がりまくるので、読者さま方には『ウザッ!?』と思われる方もいらっしゃると思いますが、広い心で許して下さい。 作者さま方一同の創作意欲を刺激する可能性を信じましょ~。 ではれっつらGO~。 更新履歴 ... -
『マッドサイエンキャット』-3/3
『マッドサイエンキャット』-3/3 天気が悪いわけでもなく、まだ正午を少し回った土曜日だというのに、城尊公園のだだっ広さは空きベンチの数に比例するように寂しいものだった。 公園の北端にある水飲み場から見渡す限り子供の姿はなく、弓道場へ向かうご老体が一人とマラソンマンが一人いるだけだった。 マラソンマンは、貯めこんだストレスを振り切るかのようにかなり速いペースで周回している。 薄い長袖の白いシャツにショートパンツ、刈り上げた髪の下で輝くサングラスという格好がサマになっていた。 年齢は四十を過ぎたくらいだろうか。 日焼けした太股に年季が入っている。 コースに沿って遠ざかっていくマラソンマンを目で追っていると、ふと、自分が【走る】という動作をほとんど行ったことがないことに気がついた。 私はマスターに起動された時から飛ぶためのストライカーを買い与えられていた。 両足にレ... -
第11話:海だ山だ温泉だ(その3)
鋼の心 ~Eisen Herz~ 第11話:海だ山だ温泉だ(その3) 「ふぅ…」 美人は何をやっても絵になるが、ビールをジョッキで一気飲みとかはどうなんだろう? そんな事を考えさせられる飲みっぷりを披露するのは、高校教師斉藤浅葱。 枝豆食べつつビールをもう一杯。 「……ああ。和みますわね~」 「浅葱、浅葱~」 「何ですの? 今良い気分なので邪魔しないで頂きたいですわね」 浅葱は、自らの所有するネコ型神姫、マヤアの声に気だるげに答える。 一緒に居ると退屈はしないが、平和とも無縁になるトラブルメーカー、腐れ縁の幼馴染、島田雅は席を外していた。……多分、トイレか何かだ。 「雅が居ると、風情や情緒とは無縁になりますもの。鬼の居ぬまに何とやら、短いながらも平和を堪能したいものですわ」 「うん、でも……」 マヤアはそう言って、浅葱の持つジョッキを指差した。 ... -
明日の為に、其の8!(前編)
<明日の為に、其の8!(前編)> 『西暦2036年、世界は神姫ブームに包まれた。』 「って声が聞こえて来そうな感じだよな。」 流れている神姫のCMを見ながら、あながち間違いじゃないよなとか思う。 「ついに師匠が見えてはいけない妖精さんと会話しちゃってます…」 「エストよ、気付かないフリをするのも優しさだぞ?」 神姫と似非猫が勝手な事言いやがって。 『さーて、来週のサザエさんは?』 『ハーイ、チャーン、バブー、の3本でお送り致します。』 現在まで続いている国民的超長寿アニメが終了したようだ。 「そこの馬鹿ーズ、そろそろ約束の時間だし出かけるぞ。」 「はーい。」「うむ。」 否定しないのかよ。 「やっとアンも自由に動けるね。」 「あれはあれで居心地は良かったのだが、自分の意思で動けるのは格別だ。」 例によって困ったときの悪友頼み、アンを拾った経緯を適当に... -
神姫長屋の住人達。
神姫長屋の住人達。 お品書き。 おおまかすぎるあらすじ。 東京西部に居を構える木造平屋建て一軒家に住む、売れない作家と難アリ品の神姫達とその他諸々の日々。 クロスオーバー大歓迎。更新頻度は低め(マテ 住人達。 ・人間サイド ・神姫サイド 設定とか。 どうぞご自由にお使い下さい。 ・ホビーショップ『165-DIVISION』 ・本編登場オリジナル(?)神姫 本編。 ・第0話 長屋のとある日常。または家主からのご挨拶。 ・第1話 夕焼け侍。 SIDE-A SIDE-B エピローグ。 (『HOBBY LIFE,HOBBY SHOP』より、若干お名前を拝借しています。) ・第2話 土砂降り子猫。 Track-1 Track-2 ... -
ホビーショップ『165-DIVISION』
ホビーショップ『165-DIVISION』 都内某駅前の古いビルの地下にある、武装神姫中心の公式公認小売店舗。 店の雰囲気及び商品は、全体的に暗黒系でまとめられている。 店員の格好なども似たり寄ったりなのでおそろしくとっつきにくいが、初心者にも親切に対応し、購入後のサービスも行き届いている。 純正パーツは大手店舗には及ばないものの、基本的なメンテや簡単な修理に使う部品は一通り揃っている。 年に2回、割引セールがある。 リアルなら1対1。バーチャルなら2対2まで対応可能なバトルフィールドあり。時折、小規模ながら大会も開いている。 店長は大概あまり表におらず、ほとんど店員2名で対応している。 交通手段は周辺ではJR線一本のみで、更に休日は各駅停車しか停まらない、駅周辺に駐車スペース、駐輪スペースがないなど交通の便はイマイチ良くない。 しかも店のある場所が目立たず、先述... -
愛しています、私のバカマスター ~1/3
6th RONDO 『愛しています、私のバカマスター ~1/3』 携帯電話には携帯ショップがあるように、武装神姫にも神姫専門ショップが存在する。 神姫センターと呼ばれる店舗だ。 そこでは神姫やパーツの購入、検査、修理を行うことができ、またバトル用の筐体を初めとして様々な設備 (神姫 “で” 遊ぶためだけでなく、神姫 “が” 遊ぶためのものまである) が揃っている――らしい。 竹さん曰く、とにかく神姫のことで困ったらとりあえずここに立ち寄ればいいのだとか。 しかし、俺が神姫を購入する店としてボロアパートから比較的近いヨドマルカメラを選んだように、近所に都合よく神姫センターがある、なんてことはなかった。 (ヨドマルを選んだ理由は他に、姫乃と同じ場所で買いたかったとか、ポイントが貯まるとかそんなものだ) いくら神姫がそこそこの人気を誇るとはいえ、携帯ショップのようにど... -
登場人物紹介
《登場人物紹介》 橘 明人(アキース・ミッドナイト) CV 杉田智和 本編の主人公 数年前までは擬人体感戦闘プログラム、通称『レスティクラム』の世界大会にアキース・ミッドナイトと名乗りチャンピオンの座に君臨していたネット会のカリスマ そのときの異名『死の恐怖-スケイス-』は(数十年前の某RPGゲームからの由来)今だネット界に多くのファンを残している しかし、5年前に祖父である鳳条院 兼房の差し金でノアールのマスターとなってからは神姫のマスターとしての生活を始める 現在ランキング13位の凄腕マスターでメディアに出ることもしばしば 生計はランカーとしての収入や臨時で神姫バトルレクチャー教室などを行っている しかし平日でも暇なので商店街やエルゴ周辺にはよく出現する 最近なぜだか何でも屋みたいになってきているが… 基本的にめんどくさがり屋に見えるがなんだかんだで面倒... -
ACT 1-25
ウサギのナミダ ACT 1-25 ◆ 高村がCSCをセットし、目覚めたその日からすでに、雪華の目標はバトルロンドで頂点に立つことだった。 高村自身もバトルロンドに参戦するつもりでいた。 しかも相当本気でやるつもりでいたから、有名な神姫ショップにフルチューンを依頼し、素体ではほぼ最高レベルのパフォーマンスが出せるアーンヴァルを手にした。 素体が神姫の性格に影響したのか、CSCの組み合わせの問題なのかはわからない。 目覚めた雪華は誇り高く、バトルに勝利することを一番とした。 ただし、卑怯な振る舞いはしない。あくまで正々堂々、実力で勝つ。それが雪華の誇りであった。 しかし、それは茨の道だ。どんな神姫でも不得手な相手はいる。卑怯な戦い方をする奴もいる。真っ向勝負で勝とうというのは、なかなか難しい。 それでも、雪華は卑怯な真似は一切しなかった。... -
ACT 0-2
ウサギのナミダ ACT 0-2 ■ バッテリーがフル充電になり、わたしは覚醒を促される。 ゆっくりと開く瞳。 目覚めたわたしは、眩しさに目を細めた。 ……ここはどこだろう? お店にいたときは、こんな眩しさを感じたことはなかった。 やがて瞳が光量を調節し、周りが認識できるようになってくる。 眩しく感じたのは、白い壁だった。 白い壁、白い部屋。 実際の明るさはそれほどでもないけれど、薄暗いお店しかしらないわたしにとっては、とても明るい部屋だった。 やわらかな光に満たされていた。 わたしはクレイドルの上に寝かされていた。 まだ真新しいことが肌触りでわかる。 わたしの上には、白く清潔な布が一枚かけられている。 白無地のように見えるが、同じ色の糸でシンプルな模様が入っている。 男性用のハンカチのようだ... -
ACT 1-2
ウサギのナミダ ACT 1-2 ■ 休みの日、マスターは朝早く起き、天気が良ければ近くの公園まで散歩に連れていってくれる。 わたしはこの朝の散歩が大好きだ。 ぴんとはりつめたように澄んだ空気、ひんやりと頬をなでる風、そして蒼く遠い空。 世界はこんなにも広く、きれいなのだと実感できるから。 そして、いつもは厳しい表情のマスターも、このときは少し優しい表情で一緒にいてくれるから。 わたしは、マスターの上着の胸ポケットから顔を出し、朝の世界を眩しく見つめた。 マスターの住まいから歩いて五分ほどで、目的の公園に到着する。 マスターによれば、この界隈では一番広いのだそうだ。 公園内は遊歩道が整備されており、昼間は散歩する人や、走り回る子供たち、のんびりと歩むご老人のみなさんなどがやってくる憩いの場だという。 わたしもジョギングをする... -
ACT 1-23
ウサギのナミダ ACT 1-23 □ 「雪華さんとの対戦、受けてください……お願いします」 「なぜだ? 今俺たちがバトルしたって……ろくなことにはならないぞ」 「だって、こんなチャンスは滅多にないじゃないですか……秋葉原のチャンピオンと戦うなんて」 そういうおまえは、なんで今にも泣き出しそうな顔してるんだ? なんでそんなに必死そうなんだよ。 「お願いします、マスター……お願いします……」 何度も俺に頭を下げて頼み込むティア。 ティアが相手とのバトルを望むなんて、滅多にないことだ。 だからこそ、理由が分からない。 なんでそんなに雪華と戦いたがる? 東東京地区代表という肩書きが、ティアにとってそんなに魅力的だとは思えないのだが。 「……走れるのか?」 「はい」 結局、折れるのは俺の方だった。 肩を... -
ACT 1-24
ウサギのナミダ ACT 1-24 ◆ 雪華の持つ武器は唯一、その黄金の錫杖だった。 彼女の背丈よりも長いその錫杖は、様々な武器の集合体だ。 錫杖の頭はビームガンであり、その柄に伸びるのは二本の剣である。 他にも様々なパーツが組み合わされている。 この錫杖を様々に組み替えて、状況に応じた武器にカスタマイズし、対応する。 この錫杖こそが、雪華のオールラウンダー・スタイルを支えている。 □ 戦闘は雪華の射撃で開幕した。 錫杖の頭をはずし、ビームガンを握る。間髪入れず、断続的な斉射がティアを襲う。 ティアはそれをかわす。 フィギュアスケートのような小刻みなステップでかわしきる。 視線は雪華に固定したまま。 まるで舞うような回避。 舞手にリズムを送る楽士は、拍子を早めていく。 ビームガンの射出音と着弾音は... -
ACT 1-20
ウサギのナミダ ACT 1-20 ◆ 月曜日の夜、九時閉店少し前に現れた客は、息を切らして店に入ってきた。 端正であろう顔には疲労が濃く、目は赤く充血している。 徹夜明けであろうか。 夜通し楽しくフザケていたわけではないようだ。 その証拠に、疲れ切ったその顔の、両の瞳だけが、意志の光を強く放っている。 もちろん、今彼の置かれた状況を考えれば、楽しくフザケる気分ではないわけだが。 右手には痛々しい包帯。デイバッグを担いでいる。 シャツの胸ポケットからは、うさ耳の神姫が顔をのぞかせていた。 息を整えている、その青年に声をかける。 「いらっしゃい……遠野くん、だったかな?」 「はあ、はあ……店長……ご相談が、あります」 「……自分の中の整理はついたのかい?」 「……はい!」 迷いのない返事だった。 すべてを決... -
ACT 1-28
ウサギのナミダ ACT 1-28 ■ マスターは家に帰るまで、ずっと無言だった。 胸ポケットの中で、やっと落ち着いたわたしは、マスターの顔を見上げる。 マスターはいつも真剣な表情の人なのだけれど、なにかいつも以上に脇目も振らない様子だった。 すでに夕闇が迫っている。 足早に帰宅を急ぐ。 マスターが何をそんなに急いでいるのか、このときのわたしにはまだ分かってはいなかった。 家に着いて、マスターがまずしたことは、わたしをクレイドルに座らせることだった。 わたしは素直にクレイドルに座った。 わたしは少し沈んだ思いで、マスターの指示を待つ。 今日のわたしを、マスターはどんな風に思っただろうか。 雪華さんとの試合の後、なし崩しに騒ぎになってしまって、マスターとお話する時間もなかった。 あの時、わたしは感情の高ぶるまま... -
ACT 1-29
ウサギのナミダ ACT 1-29 □ 結論から言うと、雪華とティアのバトルは、伝説になった。 別に、俺や高村、ティアと雪華がそう望んだわけではない。 これはある意味、雑誌記者の三枝さんの、俺に対する報復と見ている。 あのバトルから数日後、「バトルロンド・ダイジェスト」の記者である、三枝めぐみさんから、直接俺に電話があった。 どこから俺の電話番号を入手したのだろう? そう尋ねると、 「情報源に対する守秘義務があるので、答えられないわん♪」 と、はぐらかされた。 三枝さんという女性は、終始こんな風にふざけたような口調で話す。 三枝さんの用件は、先日の、ティアと雪華のバトルを記事にさせて欲しい、ということだった。 「その件は、最初に断ったはずですが」 「だから、直談判するために、電話したのよぅ」 ... -
ACT 1-22
ウサギのナミダ ACT 1-22 ◆ ギャラリーにはどう見えているだろうか。 おそらくは、力と技がぶつかり合う、真っ向勝負に見えているだろう。 確かに、雪華は正々堂々、真っ向勝負を挑んできた。 逃げない。揺らがない。 ミスティ得意のレンジに踏み込んでまで勝負を挑んでくる。 その姿勢を貫き、勝利を目指す。 それこそが『クイーン』の二つ名の由来であり、神姫プレイヤーから人気を集める理由だった。 だが、バトルの当事者は思い知る。 真っ向勝負? とんでもない。 劣勢とか、そう言うレベルじゃない。 『そこでリバーサル! 二連撃!!』 菜々子の指示が飛ぶ。 もう何度目かの得意技。 この間合い、このタイミング、この速度、そして身体をロールさせながら繰り出す二連撃。 熟達したアーンヴァルでも、このリバーサル・スク... -
ACT 1-27
ウサギのナミダ ACT 1-27 □ ゲームセンターは大歓声に包まれた。 東東京地区チャンピオンが繰り広げた死闘に誰もが興奮していた。 純白の女王が、醜聞にまみれた神姫をうち負かした。 ギャラリーの多くは、そんな英雄譚を目の当たりにしたと思っているのだろう。 観客達の興奮をよそに、俺も高村も呆然としていた。 あまりに劇的な結末に、思考がおいつかない。 フィールドの映像が消える。 死闘の舞台となった廃墟は消え去り、無機質な筐体の姿に戻る。 アクセスポッドが軽い音を立てて開いた。 「……ティア」 俺は自らの神姫に声をかける。 ティアは立派に戦った。 全国大会でも優勝候補と名高い、あの『アーンヴァル・クイーン』をあそこまで追いつめたのだ。 せめてねぎらいの言葉をかけようと、アクセスポッドをのぞき込む。... -
ACT 1-21
ウサギのナミダ ACT 1-21 ■ ……これは、どういうことなのだろうか。 マスターは映し出された朝のニュースを、チャンネルを変えては見直している。 同時に、PCを立ち上げて、ネットのニュースサイトも激しくチェックしていた。 いずれも、同じ出来事を伝えている。 『金曜日の夜、全国の盛り場などで、いわゆる神姫風俗の摘発が一斉に行われました。 これは警視庁主導による、初の大規模摘発となります。 警察によると、今回の摘発により、神姫風俗の経営者、その時風俗店を利用していた客など、検挙者は約四百人。 これは深夜の発表時の集計で、最終的には千人を超えると見込まれています』 『最近、ネットを中心に、神姫を虐待する映像が多数出回っており、社会問題となっていました。 こうした世論の声の高まりにより、今回の一斉摘発が行われたと見られて... -
ACT 1-26
ウサギのナミダ ACT 1-26 ■ 雪華さんが最大攻撃を展開しようとしたとき、わたしは再び走り出そうとしていた。 あの人は強い。 強いに決まっている。 わたしたちが出場することのかなわない、公式大会の優勝候補なのだから。 武装も、技も、経験も、すべてわたしを上回る。 でも、勝ちたい。 勝たなくてはならない。 雪華さんと戦う機会なんて、今を除いて他にない。 わたしの望みを果たす、最初で最後のチャンス。 すべてを上回る敵に勝つためには。 わたし自身が限界を超えなくては、勝ち目はない。 それはマスターの言いつけに反旗を翻す行為だ。 マスター、ごめんなさい。 わたしはやっぱり、だめな神姫ですね。マスターの言いつけ一つ、守れません。 でも、どうしても、このバトルに勝ちたいんです。 勝利をマスターに捧げたいんです... -
・第13話 「雷兎」
第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 ・第13話 「雷兎」 全身、砲弾や斬撃の攻撃を受けボロボロになった戦艦型MMSのスーザンは、横にあるハッチから煙草を取り出す。 マッチで煙草の火をつけると一服する。 スーザン「ふう・・・・」 西野「おい、スーザン!何をのんびり一服してんだよ」 スーザン「オレの仕事は終わったのさ・・・見て分かるだろ?主砲は全損、機関砲もいかれて、ミサイルも吹っ飛んだ。副砲は斬り飛ばされてエンジンはおしゃか、もうオレはただのでかい的だ」 目を細めて気持ちよさそうに煙草を吐くスーザン。 ズン・・・ズズズン・・・ガキン・・・バキン・・・ズゴン・・・ドム・・・・ スーザンの目の前では、敵味方乱れての神姫が激しいバトルを行っていた。 スーザン「そんなオレが出来ることといえば、あいつらの戦いを煙草を吸いながら眺めるだ... -
Gene13おまけ
Gene13の老舗の味を守り隊(そもそもお好み焼きって歴史浅いぞ) なな子:種型ジュビジー 装備:受け継がれた技術と伝統と殺人コテ投げ術(笑) 読者もギャラリーフェイクで美味しんぼで鉄板少女る天の道を行く調理技術を誇る(爆)鉄板焼屋「ニラ玉」の看板神姫。趣味は哲学。ナリは小さく態度はでかいが腕はいい、おまけにヒメガミ神姫センターのはす向かいなのでセンターに来る神姫ユーザーも抱え込んでお店は大繁盛中。ちなみに店名は初代店長がニラ玉大好きだったから(メニューにも載ってます)。普段は店長のパパさんとなな子でお店回してます(ママさんは学校の先生)。 たま子:15歳中学生 顔が小さくて力が小さくて技術が小さくて年齢が小さくて口が小さくて背が小さく成功の小さい鉄板焼屋「ニラ玉」の一人娘で看板娘その2。本編中で言ってる通りパパさんママさんとは血が繋がってなく、実は捨て子で拾われてきたっ... -
週刊少年ジャンプのように
与太話7 : 週刊少年ジャンプのように 「マ、マママスターッ!! えらいこっちゃぁー!!」 特にすることもない退屈な日曜日。 たまには何もしないのもいいかとダラダラ漫画を読んでいたわけだが、あまりに唐突にエルが叫ぶものだから驚いた拍子に椅子ごとひっくり返ってしまった。 自画自賛したくなるほどの反応速度で後頭部へのダメージを回避した分、負荷はすべて腰に回った。これぞ今呼んでいた漫画の悪役が駆使する過負荷 『不慮の事故(エンカウンター)』 である。ダメージを押し付ける対象が他ならぬ自分であるあたり不完全ではあるが、そもそも過負荷というのは負完全なものなんだし、きっとそのへんの違いは瑣末なものだろう。 いやはや実に恐ろしい。こうもあっさりと漫画の世界の能力を再現してしまうとは、自分の才能が恐ろしい。実は俺も素敵な能力の持ち主であったらどうしよう。その素敵な能力で武装し... -
神姫たちの舞う空編・4
前へ 先頭ページへ 次へ エルゴ飛行隊(ERGO Spuadron)メンバー表 上から二体ずつでエレメント(二機編隊)、四体ずつでフライト(四機編隊)を組む。大会参加神姫のほとんどが飛行性能の高いアーンヴァルもしくはツガルであったため、本飛行隊も全二十体のうちアーンヴァルが八体、ツガルが四体も在籍している。 ヘッドフライト アイズ隊 飛行隊長(ヘッドフライト隊長) 忍者型MMSフブキ「シヅ」 (コールサイン)アイズ1/(TACネーム)マーベリック(トップガン) ファーストリーグ72位のトップランカー神姫。ファーストトップ100において片手で数えるほどしかいない公式装備主義(ノーマリズマー)神姫の一体で、彼女はその中でも最も上位に位置する。今回は飛行装備としては非常に軽装だが、それが彼女の実力を端的に表しているといえる。 ヘッドフライトは飛行隊... -
ウサギのナミダ
ウサギのナミダ 泣き虫な神姫とちょっと無愛想なマスターの、絆の物語。 著:トミすけ ○勝手な文章の改変はしないでください。大変迷惑です。 ○バトルロンドのバーチャルバトルの設定を『Mighty Magic』よりお借りしております。 ○一部、武装神姫の性能などを独自解釈している部分があります。ご了承下さい。 ○コラボ歓迎です。この作品のキャラクターや設定は無理のない限り、自由にお使いいただいてかまいません。 登場人物紹介 (本編のネタバレを含みますのでご注意下さい) ストーリー ACT0は過去編、ACT1は現在編となっています。 それぞれのACTごとの順番で、時系列順に追うことが出来ます。 お読みになる際には、下記リストの順番でお読みいただければ幸いです。 ACT 1-1 ACT 0-1 AC... -
〔登場人物紹介〕
《登場人物紹介》 草薙 蓮 CV 豊崎愛生 本編の主人公にしてセカンドランカー草薙雄也の妹 大河高校二年生 雄也の妹なだけはあり神姫関係の知識は深い 裕也が知人から譲り受けたカガリと鋼牙の面倒を見ることになる 二人のしつけ云々で悩んでいるところに転校生としてクラスメイトとなったエリー・カークランドと出会う 兄がだらしない分しっかり者の妹である。 勉強はそこそこだが運動神経がよい 彼氏を作る前に神姫を始めてよかったのかと少しだけ迷う 17歳 エリー・カークランド CV:桃井はるこ フェレンツェの娘 天才的な頭脳と金髪碧眼を父親から受け継いだ 元『八相』の『運命の預言者』-フィドヘル- 現在大河高校に通いながら父親の研究を手伝っているが蓮と出会い彼女とその神姫たちに興味を示し、同年代としては少ない友人を作ることとなる。 『... -
ACT 1-13
ウサギのナミダ ACT 1-13 ◆ 「って、菜々子ちゃん! 大丈夫なのかよぉ……」 大型筐体に一人座り、黙々と準備をする菜々子に、大城はそわそわと話しかけた。 大城の心配ももっともだ。 このゲームセンターで最強と呼ばれる三人とスリー・オン・ワン……三対一の同時プレイで対戦するというのだから。 いくら有名なエトランゼといえど、実力者三人を同時に敵にするのは圧倒的に不利だ。 「大丈夫。絶対に負けない」 菜々子ははっきり言いきった。 ミスティは菜々子を見上げた。 「……『本身を抜く』のね?」 「そうよ。わたし、キレたから。もう徹底的にやる」 「やっとキレたの? わたしはもう先週からキレっぱなしなんだけど」 無表情に話す二人に、大城は空恐ろしいものを感じずにはいられない。 「なあ……ほんみをぬく、... -
そうだ、神姫を買いに行こう ~2/4
3rd RONDO 『そうだ、神姫を買いに行こう ~2/4』 大学構内。 城尊公園。 白築通り。 町を優しく淡く包み込み、しかし鮮麗に燃える高揚感を描くような桜色。 雨よりも、雪よりも、陽光よりも軽く儚く舞う花。 人が燃え上がる火の粉に心を奪われるように。 散る桜もまた、誰の情を惹きつけて止まない。 「こうして歩いてると、なんだか物語の主人公になった気分にならない?」 くすぐったそうな笑みを零して、姫乃は俺の顔を覗き込んだ。 それが、この瞬間が、二度と訪れることのない情景であることが寂しくて。 俺は返事を返せないでいた。 「桜の魅力――ううん、魔力かな。 ずっとずっと昔から」 たくさんの人が、この魔力に魅せられてきたのよね。 姫乃はそう言って一歩先へ出て、絹のようにしなやかな身... -
ぶそしき! これから!?
ぶそしき! これから!? さびしい思いをしている少年が、ずっと一緒にいてくれる友だちを欲しがった。 友だちとして武装神姫を購入した少年とそんな彼の神姫に、とある困難が立ちはだかる。 それは―― 武装が、 ない。 2014.8.9 第4話『シッパイ』の『4-5』を更新しました。 時間を取るのが難しくなりそうなので、今回ので更新はしばらくお休みです。 ……ヒイロの武装の更新が、思ったより進まない。 第0話『トモダチ』 0-1 0-2 0-3 0-4 第1話『ハジメテ』 1-1 1-2 1-3 第2話『イキトウゴウ?』 2-1 2-2 2-3 第3話『キエン』 3-1 3-2 第4話『シッパイ』 4-1 4... -
猫と仔猫とぷち猫と……。/パート3と1/33
猫と仔猫とぷち猫と……。 パート3と1/33 見下ろせば、母なる大地は遥かに眼下。 (……私はカモメ) などと現実逃避しつつも、竜巻に巻き上げられ、遥か上空まで吹き飛ばされた事実は揺らがない。 「……はろー、すかぁい。って昔のヒーコーキ乗りは言ったもんだ」 『誰ッスか?』 「ジャック・バートレット大尉だな」 『思いっきり架空の人物ッス!! オマケに乗機がF4とF14なんで思いっきり現代人ッス!!』 「馬鹿野郎!!」 『ひうっ!?』 唐突に怒鳴られ、怯む仔猫。 「今は2036年。……30年以上前の奴なら昔でOK!!」 『そ、そんなもんッスか?』 「そんなもんさ、なぁ奈緒よう?」 「知らないわよ……」 取りあえず手足を広げてエアブレーキ代わりに、不規則にロール(回転)していた身体を立て直す。 絶妙のタイミングでスラスターを合わせてくれたのは、制御... -
師匠と弟子 明日の為に、其の13!(前編)
<明日の為に、其の13!(前編)> 某サナリィ製MSもビックリな分身をしていた鳥子のマスターの声。 それは3人が探していた人物の声ととてもよく似ていた。 唯一つ、普通と違うところがあったとすれば、それは鼻メガネだった… 「こんな感じのナレーションでOKかな?」 「わかりやすい説明をありがとうございます」 見た目は鼻メガネと距離のせいで断定できないけど、あのツッコミの態度は黒須君で間違いないと思うね。 元々彼の実家もコッチだし、エスト達には内緒だけど主任から事情は聞いてるしねっ! 面白そうなのでけしかけてみよう。うん、是非そうしよう。 「丁度今の試合が終わったみたいだし、拳で聞くのが早そうだよ」 「わかりました。特訓中のアレを試すのにも良さそうですし、当たって砕けろです」 「砕けるのはちょっと考えた方が良いのではないか?」 「それじゃ、ちゃっちゃと準備し... -
明日の為に、其の12!
<明日の為に、其の12!> 引き抜いたハグタンド・アーミーブレード×2を同軌道に時間差で投げつける。 相手のサイフォスがコルヌで1本目を弾くが、その背後にある2本目には気付いていなかった為に反応が遅れ、身体を捻って避けるので精一杯。その隙にブースターを噴かして距離を詰め、無防備な胴体にヤクザキック。 倒れたサイフォスを踏みつけ 「この写真の男の事を知っていますか?」 サイドボードより転送された、失踪中の師匠の写真を見せる。 質問が戦闘開始前か後かを除けば、ここまではビデオで予習した通りの流れで来てる。 さあ、後は相手から「知らない」と聞いて試合を終わらせるだけだ。 だったのだが、聞こえた返答は予想外のものだった。 「知ってるわ。確か先週関西に居たわよ」 「そうですか、知らないなら仕方ありません。負けてもらいます」 「ちょ、ちょっと、人の話聞いてるの!?」... -
3Sが斬る! その27
「……最後、私」 「そこはかとなく不安ですが、一応どうぞ」 「(……人の事はいえないと思いますワン)」 「……テーマは『愛』」 「愛ですか。テッコさんが?」 「……わ、ワン(微妙な表情)」 「……始める。 ある日、青年が海岸を歩いていると、防波堤の上に女が立っていた。 自殺かと思って駆け寄ると、どうやら沖で泳いでいる男を観ているらしい。 『……一体彼は何をやっているのです? 一人で海水浴ですか?』 女は答えます。 『彼は私の旦那よ。……私が海に落としてしまった10万ドルの結婚指輪を探しているの』 青年は言いました。 『10万ドルの結婚指輪も大切でしょうが、今すぐ彼を呼び戻したほうが良い。 ……この辺りの海にはサメが出るんです』 すると女は微笑んで言いました。 『大丈夫よ。だって、彼は1000万ドルの生命保険に入っているんだもの』 ... -
師匠と弟子 明日の為に、其の13!(後編)
<明日の為に、其の13!(後編)> ”WINNER 月音” ジャッジが告げる。 ギャラリー達もどうリアクションしていいのか、気まずい空気がその場を支配した。 『こっからがウチの見せ場ちゃうんか!?』 「こっちに打つ手がなくなった時点で弱い物いじめになるけど、それは望むところじゃないでしょ?」 『それはまあ…』 『そっちなんて歌っただけマシです。こっちは本当に何もしてないんですから』 負けた時でもここまで落ち込まないのに、見せ場が無かっただけでこの世の終わりみたいなオーラを出されるだなんて、はてさてどんな教育してたんだか。 「茶番も終わったんだし、戻っておいでよ黒須君」 少々飽きてきたので事態の収拾を図るべく、筐体の反対側に座る鼻メガネに声をかける。 ところが何か様子がおかしい。まるで初対面の人間と向かい合っているような不思議な感覚がある。 「確かに師匠っぽいです... -
与太話13 : あぶないマシロ刑事
与太話13 : あぶないマシロ刑事 注意! TVアニメ武装神姫、第八話のネタバレを盛大に含みます。 もう一度言いますが、 TVアニメ武装神姫、第八話のネタバレを盛大に含みます。 カウントダウンTVをご覧の皆さん こんばんは、エルです。 アニメからの情報ですがどうやら最近、神姫のアップデートと偽ったウィルスが蔓延しているそうです。 侵食された神姫は強制的にスリープモードにされ、AIを侵食されるとのこと。 MMSメーカー各社からも注意喚起のメールが届いています。 最悪の場合、二度と目を覚ますことなくマスターとお別れをしないといけないなんて、まったく恐ろしい限りです。 ですが、少なくとも私のまわりの神姫たちはこのようなウィルスには引っかかりません。 怪しげなアップデートはしない、という情報リ... -
十五センチメートル程度の死闘 ~2/2
十一話 『十五センチメートル程度の死闘 ~2/2』 エルとメルも連合軍に加わり、圧倒的な物量によるゴリ押しで瞬く間にコタマとマシロがハントされるものと、俺と貞方は見ていた。以前コタマが数多のアルトレーネを葬ったところを目撃したことがあったが、あれはアルトレーネが理性を失っていたからこその芸当で、今回は多種多様な神姫が出来合いとはいえコンビネーションを組んで襲いかかるのだ。 だが俺と貞方の予想を、神姫達によるタクティクスを、コタマは上回った。 一斉に繰り出された武器の間を、体躯が小柄になったコタマは地を這うほど姿勢を低くして走り抜けた。以前まではゆっくりと歩きファーストとセカンドを動かすだけだったコタマが、積極的に動いたのだ。言ってみれば足が早くなっただけでも、これがどれだけ脅威であるかは、コタマを知る者であれば容易に想像がつく。 「せいやっ!」 コタマは走... -
愛しています、私のバカマスター ~3/3
8th RONDO 『愛しています、私のバカマスター ~3/3』 「――やれ、エル」 「はい、マスター♪」 ガキインッ! 筐体に硬質の音が響き渡る。 食い入るように観戦するギャラリーも、冷静に見守る竹さんも、怯えるように見つめる姫乃も、当事者であるニーキでさえ――俺とエルを除く誰もが、目の前で起こったことを理解できなかったはずだ。 いや、ニーキに限っては、驚くことすら許されない。 エルが放った “銀色の一閃”。 それは、誰の目にも留まらず、ニーキを吹っ飛ばした。 エルの身長ほどの長さがある金属の棒。 それを背面から縦に円を描くように振り下ろしたまま、エルは遥か先のニーキを見据えている。 一定の長さごとに節があり、伸縮可能なそれは、俺があらかじめつまようじケースの中に紛れ込ませていた本命の武器。 「あれって、アンテナ?」 「そう... -
ドキドキハウリン その13
ふわふわと、石鹸の泡が舞っている。 「静香は、こうなることが分かってたんですか?」 「何のこと?」 私の頭にシャンプーの泡を乗せながら、静香は優しく問い返す。 「ファンホアンの事です」 今だから言うが、大型装備の使い勝手は想像を絶するものだった。ジェニーやねここは、一体どれだけの努力をして使いこなせるようになったのか……。 少なくとも、私が一朝一夕で使えるようなもので無いことだけは確かだった。 「ココは、自分で理解しないと納得しないでしょ?」 静香はくすくすと笑いながら、私の頭を泡で包んでいく。擦り合わされる指先の感触が気持ち良くて、私はそっと瞳を閉じた。 「……はい」 断じて、泡が目に入ると痛いからじゃない。 「ほらココ、腕出しな」 目を閉じていると、右手をそっと取り上げられる感触が来た。 言われるがままに腕の力を抜けば、神姫サイズに切り取られた... -
土下座その13
神姫三本勝負とはっ! とあるローカル神姫センターが発祥と言われる、 オーナー間あるいは武装神姫間で揉め事が発生した際、 三回の勝負を通じて事態の鎮静を図る、 平和的解決手段であるっ!! 「また負けちゃいましたねぇ」 「負けちゃいました」 「なかなか勝てませんねぇ」 「どうにも勝てません」 のっけから不景気な会話で恐縮です。 本日マスターさんと私は、またもや神姫センターにお邪魔しています。 過日のデビュー以来、何度かこちらに来てはその度にバトルに出場はしているのですが、結果は恥ずかしながら上記の通りでして。 デビュー以来、6回目となる本日の対戦も黒星で飾り、しかもその全てが全損敗北。 今日もまた、すっかりおなじみとなった休憩スペースに並んで腰掛けての反省会です。 「少なくとも内容は、良くなってきているように思えるのですけどね?」 「お気遣いはありがたいのですが、結... - @wiki全体から「『13km』-2/3」で調べる