武装神姫SSまとめ@wiki内検索 / 「あなたのかなでたい音色3」で検索した結果
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あなたのかなでたい音色3
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-3 air そびえ立つ高層ビル群の合間に、チカとゼリスは降り立った。 バトルステージ『スカイスクレーパー(摩天楼)』。 種型ジュビジーの標準武装に身を包んだチカは、慣れていない様子でおっかなびっくりフィールドの周囲をキョロキョロと見渡している。 ジュビジーの特徴的な多形成装甲を纏った手や腰を動かしてみては、その表情が不安そうだったり驚いたり緊張したりと繰る繰る変わるのは、ひょっとしたらバトルどころか武装すること自体が初めてなのかも知れない。 慣れた様子で街路の先に佇むゼリスとは対照的だった。 そのゼリスは仮想現実世界で再現された建造物のせめぎ合う交差点の中ほどで、チカに向き合う形で立っている。専用の天馬型武装、蒼と白を基調にした流線的なフォルムに身を包み、トレードマークのポニ... -
あなたのかなでたい音色4
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-4 gavotte 「ヒューマノイド・インタフェイス?」 「そう。人によって呼び方は様々だが、ようは人体を模した駆動義体の総称さ」 現在の2030年代に入ってから、人は様々なロボットを実用化してきた。 武装神姫もそうしたロボット開発の中で創り出された、人のパートナーとしてのアンドロイドの一種だ。 武装神姫は日常生活におけるマスコットとしての要求から、その大きさは14から15センチとなった。その一方、医療における義肢・義体の研究、純粋労働力としての可能性の研究としてのロボット開発も行われていた。駆動義体とは、そうした目的で作られた人体、もしくはその部分的な要素を模した機器のことを指す。 「でも、等身大の駆動義体なんて存在するのかしら?」 ふたり仲良く首を傾げる伊吹に、神楽さんが... -
あなたのかなでたい音色1
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-1 ouverture アナタノネイロヲ、キカセテ ♪♪♪ 六月といえば梅雨だ。ところであれだけ雨が降る月の呼び名が「水無月」というのはどういうことだろう? そんなことを思った有馬駿(アリマ シュン)がゼリスにふと尋ねてみると、彼女は手にした大判の書籍を抱えたまま返事を返してきた。 「旧暦では水無月は現在でいう7月に相当しますから、梅雨明けというところから『水の無くなる月』という呼称がつけられたそうですね。また、その由来から外れることとなった現在においては、降水によって天の水が無くなるという解釈が適用されると言われます」 すらすら答える彼女――背丈14cmほどの小さな自動人形(オート・マタ)の少女はシュンの武装神姫、ゼリスだ。 「けどさ、今年なんかはホントに水... -
あなたのかなでたい音色2
SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-2 rondo 「本物のヴァイオリンかぁ……」 校庭を眺めながら、シュンは人知れず呟いた。 日曜の昼から降り出した雨は、結局今日も降り続いたままだ。 「どうしたのよ、シュっちゃん。ため息なんかついて?」 向かい合わせた机ごしに、幼馴染の伊吹舞が覗き込んでくる。 「別に、なんでもねーっすよー」 肩をすくめながら、シュンは机の上に広げた弁当をパクつく。 また誤魔化そうとしてる――その様子を見て伊吹はピンときた。 「それって今日、ぜっちゃんが一緒じゃない事と関係ある?」 「ぶほっ!?」 「シュン、汚いの~」 むせて目を白黒させるシュンを見て、ワカナがサンドイッチを抱えながら伊吹の肩に飛び乗った。 (図星か……ホントにシュっちゃんて... -
二アー・トゥ・ユー
SHINKI/NEAR TO YOU 『神姫』。 それは自らの心を持ち、自らの意思で行動する全高15センチ程度のフィギュアロボの総称である。 様々な分野で活躍するロボットが存在する西暦2036年において、多様な機能、機構、機器を持ちオーナーである人間をサポートする、最も我々に身近な存在。 いつしか人々はそんな彼女たち神姫の中で誰が最も美しく、優れ、そして強いかを競い合うようになった。 『武装神姫』。 様々な武器を駆り、装甲に身を包み戦う彼女らを人々はそう呼んだ。 CHAPTER MENU 君の隣に[Near to you] movement 『神姫センターで会いましょう』Phase01 Phase01-1 Phase01-2 Phase01-3 Phase01-4 Phase01-5 ... -
第七話 あなたの街を宣伝!
第七話 「あなたの街を宣伝!」 五月二十八日、午前十一時五十八分。 そろそろその時がやって来る。 俺もおやっさんも神姫達も、そして店の常連達も緊張した面持ちでテレビ画面を見守っている。 ただ、健五とクレアだけが状況を飲み込めていないようだった。 「あの、輝さん、どうしたの?」 「しっ。静かにしてろ」 「?」 しばらくして、時計の針が十一時五十九分を指す。 同時に画面が、CMから別の物へ変わった。 『この後はmotto!サーチング!』 『今週のグルメコーナーは下町特集! おしゃれなバーから、なんと神姫がいる食堂まで!?』 「「おおーっ!」」 店の中が沸き返る。 「って、ええ!? 今、このお店映ったよね!?」 健五が驚いてこちらを見る。無理も無いだろう。 「どうして!?」 「いや、前に取材された... -
なぜあなたはにゃあと鳴くの
6匹目 『なぜあなたはにゃあと鳴くの』 「そう慌てるにゃ。 近頃の神姫はにゃんでもかんでもバトルで解決しようとするから困るのにゃ。 そんなヤンチャが許されるのはビーダマン全盛期だけにゃ」 その場に座り込んでM字開脚をした馬鹿の 「キャノンショットォ!」 意味不明な叫びが夜空に虚しく消えた。 望楼の欄干を踏みしめていた足からカクッと力が抜けて、頭のネコミミがへにゃんと萎れた。 せめて気力だけは削がれまいとヘルメットの位置を整えて脱力の波に抗ったけれど、その頑張りも虚しく、マオチャオを威嚇するために鋏のように展開させていたスカートが、ネコミミと同様にへにゃんとお辞儀をしたまま持ち上がってくれない。 このマオチャオは夜が明けるまでこんな調子で私を付き合わせるつもりだろうか。 もしそうならば、今度は立ち上がって 「よーし行くにゃハンティングリンクス! オマエの命中精度があれ... -
幻・其の十七 ~cogito ergo sum~
ここに来るまでは我慢できていた涙が、「ネロ」という言葉を口にしたとたん、溢れ出した。 落ち着くまで、梓は何も言わず、待っていてくれた。 詳しいことは、僕自身よくわからない。ただ、出口で出くわしたあの人が言った「イヴ」という言葉、その後のネロに起こったこと、かすみさんの推測、落ち着いて考え合わせると、その男性がネロの――ネロの主人格を持った神姫のオーナーだった、ということになる。 そんな内容を、梓に話した。 「……矛盾してた。僕とネロの関係」 仮に普通にネロのオーナーが見つかったとして、その後のことを僕は考えていなかった。 「ごめん……。私のせいだよね、それって」 「ううん……」 たしかにオーナーを探そうと言い出したのは梓だけど、それを了承したのは僕だ。梓が悪いわけじゃない。 そもそも、ネロは本来、何処にいるべき子なんだろうか。 ついさっきは、幻でもいいか... -
Phase01-7
SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-7 筐体を囲むギャラリーの歓声が木霊する。 シートの向こうでは番長治が嘲け笑う。 隣に立つ伊吹が叫び、ワカナが両目を覆う。 その横で戦いを見守っていた桜花とショウが目を背けた。 フィールドでは壮絶な笑みを浮かべるベガの拳が、ゼリスの眼前へと迫る。 その最中――。 シュンはスッと自分に向けられる視線に気がついた。 その目、上目使いに覗き込む、そのエメラルドの瞳に一瞬吸い込まれそうになり……彼の脳裏にある言葉が響く。 ――緊張する必要など皆無です。安心して私の戦いを見ているだけで結構。 唐突にシュンは理解した。言葉の先に隠された本当の言葉を。 ――あなたが見ていてくれるから、私は戦えるのです。 全く。こいつと来たら、本... -
背比弧域様
零話 『背比弧域様』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 拝啓 突然手紙を渡されて「なんのこっちゃ」と思われたかもしれませんが、こうして今、私の手紙を読んでくれていることを嬉しく思います。 私からこの手紙を受け取った時、あなたは私の表情や仕草、そしてメールというお手軽な手段がある今時になって手紙を渡すという状況から何かしらの思惑を読み取られたことでしょう。 何気ない風を装って渡すつもりなのですが、手紙をあなたへ渡した時の私はヘンテコリンな顔をしてはいなかったでしょうか? もしそうであっても、切羽詰まっていたから仕方なかったと言い訳をさせて下さい。ここまでの文章を書くだけでも手が震えて何度も修正したくらいです。手紙を手渡すその時を想像するだけでも卒倒してしまいそうになります。 でもあなたがこれを読んでいるならば... -
対決、黒のシュートレイ 其の二
対決、黒のシュートレイ 其の二 正月休みも終わり、私、都村いずるはホーリーの身体を診てもらうために、恒一に案内されて神姫センターに行く事にした。この前の事もあって、恒一に言われたとおり検査してもらう事にしたのだ。 「ねえいずる、どうしても行かなくちゃだめ?」 不安そうにポケットの中でふるえるホーリーを見て、私は慰めるように優しい言葉で彼女を落ち着かせた。 「大丈夫さ、検査といっても別に怖がる事はないんだよ。それにセンターにいる人は優しいから心配しなくてもいいんだ」 ホーリーは安心したのか、少し落ち着いた顔になった。 「…分かったよ、検査を受けるよ。ホーリー、いい子にしてるから…」 よかった、検査の事で不安がって、受けたくないって言い出すのかと思った。これで安心して彼女を検査に出せる。 電車に40分ほど乗り、バスで20分ほど乗り継いだところにそれはあった。 ... -
バトルをしようよ
ヘンゼルはまたあなたとバトルがしたいからずっとがんばってきたのだわ。自分から今まで迷惑をかけた人達に謝りに行ってね。 あだじね、たぐざんおこらでたけどあやばったよ。まげでもぐやしくでも、ちゃんどがまんできるようになっだよ。 もうヘンゼルは筐体を壊したりしない。普通の場所でバトルができるのだわ。あなたのおかげね。 だがら、だがらね。 あたぐじともういちどバトルじでくだざい!! おでがいじます!! 連続神姫ラジオ 浸食機械 最終回:バトルをしようよ いまコウガは僕たちの手の中で意識を失っている。だが修復不可能なまでに壊れている訳じゃない。デルセトナはコアであるコウガと切り離されたことで崩れ去った。他の神姫達も解放された。そして何より今回の事件が終わったと思えたのは奥からある人物が出てきたことだった。よろけながらもしっかりこちらに歩いて... -
双子神姫側・エピローグ
{エピローグ} 「ご主人様、クリナーレ達を後部座席に移しました」 「サンキュー、アンジェラス」 愛車を運転しながらアンジェラスに言う。 都と別れてから数分が経った頃。 いつの間にか、頭にいるクリナーレや左右の肩にいるルーナとパルカが寝息をたてて寝てしまったのだ。 寝ているからバランスをとれずそのままズルリと落ちてしまっては可哀想なのでアンジェラスに運んでもらった訳よ。 「フゥー、これで一段落ですね」 「そうだな。後は家に帰って姉貴の会社にハックして寝るだけだ」 「バレちゃうとマズクないですか?」 「不味いに決まってるだろ。不正アクセスは立派な犯罪なんだから…確かそうだったはず」 「じゃあ私も手伝いますよ」 「手伝うって…お前に出来る事と言えば俺の隣で見ている事ぐらいしかないぞ」 「それだけでも良いです。私はどんな時でもご主人様と一緒ですから」 ... -
その名はシュートレイ 前編
その名はシュートレイ 前編 「隊長、いよいよ決勝戦ですね」 傍らに座っているフィギュアが装備の準備をしていた恒一に話しかけた。 「そうだな。もうすぐだな」 彼はフィギュアの頭を指で撫でた。 「もう、いつもこんなことするんですから…。でも、嬉しいです」 フィギュアの子は少し迷惑そうな顔をしていたが、本当はこうしてもらうのが嬉しかったのだ。 「あ、もう時間ですよ。早く行かないと失格になってしまいますよ」 「ああ、じゃ行くぞ、シュートレイ」 彼はシュートレイと呼ばれたフィギュアを肩に乗せると、控え室を後にした。 …彼女、シュートレイは武装神姫と呼ばれるヒューマノイドタイプのロボットである。ロボットといってもただのロボットではない。ちゃんと喜怒哀楽を持ち、自分の意思で考え行動する、最先端のロボットなのだ。 そんな彼女が恒一とどのように出会ったのか、そし... -
CL:第十一話 決意
前へ 先頭ページ 次へ 第十一話 決意 ティルトローターから下ろされると、強い潮のにおいを含むべたついた風が吹き付けた。 それで、理音はここがどこかの島であることを知った。ヘリポートの周囲は真っ暗で、植物からどの辺の緯度にある島なのかは推測できなかったが、どうやら断崖絶壁の岬のような土地にヘリポートは建設されているらしかった。 手錠は外されたが、そのまま兵士達に囲まれ、ヘリポートの隅にある地下への入り口から中へ通される。地下道は広かった。かなりの手間をかけて建造された軍事基地のようだった。 すれ違う人間は揃って武装した兵士達だったが、奥に進むにつれて白衣を着た科学者らしき者たちが増えてきた。なんと、あの一つ目ども、ラプターも普通に飛び回っているではないか。 通路は入り組んでいて、駅のような案内板はほとんど無かった。そんな通路を右へ左へくねりながら、理音... -
武装神姫のリン 鳳凰杯篇その5
武装神姫のリン 鳳凰杯篇 その5 あちらはマスター同士、こっちは神姫同士ということで私は部屋から逃げ出てしまったミカエルを追います。 互いに死力を尽くした(精神的に言えば彼女はもっと苦しかったと思います…)バトルの直後で"疲れ"が出ている頃。 それほど遠くには行けないと解っていてもミカエルとの距離が一向に縮まらないことでやはり私は焦りを感じてしまいます。 身体の状態など気にしないほど悲しみは彼女の心を支配しているはずです。 なぜなら、その悲しみは想像しただけでも恐ろしく神姫にとっての絶望そのものなのですから。 彼女をそのままで終わらせるのは"約束"をした仲の自分が許せない。だからこそ私ももう一度気を引き締めて必死に彼女を追います。 とその瞬間ミカエルが通路を横切ったスタッフにぶつかりました。 「うわ!」 そ... -
インターバトルO「アーキタイプ・エンジン」
先頭ページへ 次へ インターバトル0「アーキタイプ・エンジン」 涼しい秋の風が網戸を通って、彼の頬をなでた。 私はたわむれに彼の頬をなでていた空気の粒子を視覚化して追う。 くるりと彼の頭の上で回転した空気は、そのまま部屋に拡散して消えた。 彼はもう一時間ほどデスクに座りっぱなしで、ワンフレーズずつ、確かめるようにキーボードを叩く。彼の指さばきが、ディスプレイに文字を次々と浮かべる。浮いている文字。 その後ろの、ベッドの上に座りながら、彼の大きな背中を見ている。これが私。 私は武装神姫。天使型MMSアーンヴァル。記念すべき最初のマスプロダクションモデル。全世界に数千万の姉妹がいる、そのうちの一人。 パーソナルネームは、マイティ。彼が一晩考え抜いて、付けてくれた名前だ。 私はこの名前に誇りを持っている。 うーむ、と、彼がパソコンチェ... -
アイドルは神姫を救う? 前編
アイドルは神姫を救う? 前編 あの試合から1ヶ月がたった。恒一はいずると話すことが少なくなり、毎日のように研究所に通っていた。 (恒一、シュートレイがやられたダメージが大きいのが相当ショックだったんだろう…) いずるは彼の姿を見て心配になっていた。 あの試合の後、シュートレイは集中治療室に運ばれた。一命を取り留めたものの、彼女の精神的ダメージは思ったよりも深刻だった。あれ以来、虚ろな状態で何も反応を見せなくなってしまったのだ。おそらく自分が破壊されるイメージが脳裏に焼きついて、トラウマになっているのだろう。日常生活もままならない状態なので、、シュートレイは今もリハビリを続けている。 今日も恒一は小百合の下へ足を運んでいるのだろう。いずるはそんな彼のことを気にかけていた。 「どうしたのいずる、そんなに深刻な顔して」 家に帰ってきたいずるを、ホーリーが出迎えた。彼... -
<朝霧の紅眼>
凪さん家の十兵衛さん 第六話<朝霧の紅眼> それは誰も知らなかった。 それはついに姿を現した。 しかしそのすべてを見た者はいない。 残るのは、紅き殺意の記憶のみ…。 <凪さん家の十兵衛さん第六話『朝霧の紅眼』> 「全小隊!第三小隊の活路を開け!今日で決めるぞ!」 『了解!』 私達は進撃を始める。 既に敵は大軍勢で待ち構えていた。 『ふふふ…待っていたわよ…さぁ、踊りなさい…私の歌で』 「くっ!」 私達の前に立ちふさがった神姫達がいっせいに同じ単語を発する。 私達は身構え、覚悟を決める。 「皆!行くよ!」 『ラジャー!!』 私達の勢いが増す。今日はいける。絶対にやれる!今日こそ終わらすんだ! 迫りくる操られた神姫達。手には今までの戦いで奪ってきたであろう様々な武器が装備されていた。 「はぁぁぁ!」 私はそれらを電磁警棒の一撃で黙らせる... -
キズナのキセキ・ACT1-3:かりそめの邂逅
キズナのキセキ ACT1-3「かりそめの邂逅」 □ 「その時から……菜々子は以前の明るさを取り戻していったのよ。わたしにも謝ってくれた。 頼子さんもつらかったのに、わたしばかりわがままでごめんなさい、ってね」 頼子さんはそう言って、目尻を拭った。 頼子さんによれば、菜々子さんは学校の友人たちにも謝って、また仲間の輪に戻ったのだそうだ。 自分の過ちを素直に謝ることができるのは、菜々子さんの美点だと思う。 間違いを認め謝罪するのには、誰しも少なからず臆病になるものだ。 彼女はそれを素直にやってのける勇気を持っている。 その勇気を呼び起こしたのは、間違いなく、桐島あおいという人だった。 「わたしは今でもあおいちゃんに感謝しているわ。あの子に会わなければ、菜々子はどうなっていたか、わからない」 「……その、桐島あおい、という人は... -
愛と情熱のタッグバトル 前編
愛と情熱のタッグバトル 前編 『やったー、今回も來華選手の大勝利だーっ!!』 とあるバトル会場、竜崎賢市率いる『チームフレグランス』は経験値稼ぎと言わんばかりに地域大会に出場、堂々と勝利をつかんだのだった。 「おつかれ來華、今日もいいファイトだったよ」 カプセルから出てくる來華を賢市は迎えてあげた。 「もち、楽勝だったよ。必殺の『六方爪激斬』、見てくれた?」 「ああ、ここ数ヶ月お前も腕を上げたようだ。僕もお前の事を誇りに思ってるよ」 しかし賢市の側で思わしくない顔で見ている人、いや神姫がいた。 「あ、あれ?凛花姉、嬉しくないの?」 來華の質問に凛花は何食わない顔で答えた。 「さっきの試合を見ていたけど、あなたは相手に突っ込み過ぎる癖がありますわね」 あくまでも冷静な視線でバトルを見ていた凛花は、妹に対して冷たい言葉を発した。そのような態度を見... -
ACT 1-34
ウサギのナミダ ACT 1-34 ■ 「……不器用な人、かな」 わたしの答えに、三人とも、「え~?」と不満の声を上げた。 「不器用なマスターじゃ、メンテナンスも満足にしてもらえないんじゃない?」 「あ、そうじゃなくて……手先は器用なの」 一四番さんの言葉に、わたしは説明する。 「手先じゃなくて……こう、気持ちとか、感情を外に出すのが苦手な人なの。 でも、本当は、とても優しくて……」 わたしは内心驚いている。 自分の説明がなぜかやたらと具体的だったから。 「いつも仏頂面だったり、怖い顔だったりするけど、笑顔が素敵で。 好きな女の子の前では、照れ屋さんで。 口に出しては言わないけど、わたしのことを一番に考えてくれていて。 わたしをいつもまっすぐに見てくれる……」 三人とも、わたしの言... -
2話 好きなものは?
第2話 好きなものは? それまで武装神姫というものを知らなかった俺は、あちこち調べてみた。 神姫にも好き嫌いがあり、バトルしたがるのとか、服で着飾りたいのとかが居ること。 それらの性格の違いが、本体に登録されている基本性格とCSCの組み合わせで生まれるということ。 驚いたことに、食事もできるらしいということ。 そして、しばらくたったある日のこと。 その日、俺は予定よりも早く帰ってこれた。 手にはアールが好きだと言った食べ物の入った袋がある。 自室の前に立つと、中から音楽が流れているのが聞こえてくる。 アールが音楽が好きなことが分かり、プレイヤー類は自由に使っていいと言ってある。 せっかく楽しんでいるアールを邪魔しないように、ドアをそっと開けて中に入る。 俺の机の方に目をやると、そこで釘付けになった。 歌を聴いていると思っていたのだが、現実は予想のはるか上... -
ACT 1-9
ウサギのナミダ ACT 1-9 ◆ ミスティは神姫サイズのソファに座って、テレビを見る振りをしながら、自分のマスターを観察している。 久住菜々子はベッドの上で、うつ伏せになって、枕に顔を埋めている。 今は微動だにしていないが、ときどき思い出したようにじたばたする。 ここ三日ほど、ずっとこんな調子だ。 ミスティは自らのマスターが深く悩んでいるにも関わらず、我関せず、という態度を貫いていた。 菜々子が悩んでいる理由はよくわかっている。 先週末、親しくしている神姫プレイヤーの遠野貴樹と、その神姫ティアに、あるスキャンダルが持ち上がった。 それは、ティアが売春をしていた決定的な証拠が公に明らかになってしまったのだ。 行きつけのゲームセンターで、他の常連達から噂を聞き、その雑誌も見た。 正直、女性であれば、いや良識ある武装紳士であ... -
幻・其の十九 ~価値、そして代償~
「……どうして、ですか?」 「そうしないと、そもそもあなたは戻れないのよ。抽象的な話になるけど、ここは今、私とあなたが同時にいる事で、バランスがとれた状態になっちゃってる。どっちかが消えてバランスを崩さないと、どうにもできない」 「そんな……!」 「……気にすることなんかないわよ。初対面だし、私は一度死んでる。遠慮なく刺して頂戴」 確かに、生みの親ともいうべき存在ながら、イヴと私は今まで出会うことはなかった。でも、 「……そうしたら、あなたはどうなるんですか?」 「完全に消えるでしょうね。そもそもが、データの屑だし。文字通り跡形もなく、きれいさっぱり消えるはず」 「……」 「ああでも、運がよければ、あなたに私の記憶データが引き継がれるかもね。まあ、あなたは自分の物じゃない記憶に苦しむかもしれないけど」 いずれにせよ、本来生きているはずのイヴは、完全にいなくなってしまう... -
ドキドキハウリン その2
いつもどおりの帰り道。 「静香……」 私はトートバッグのポケットから顔を出し、斜め上に見える主へと声を掛けた。 「なぁに? ココ」 戸田静香。 この私。武装神姫『ハウリン』タイプ、個体名ココのマスターだ。 いつも通りの帰り道。 いつも通りの静香の笑顔。 いつも通りじゃないのは、多分、私だけ。 「何か言いたそうね?」 どうやら、静香は全てお見通しらしい。 「どうして、マイティにライダーシステムを?」 多段変身装甲『キャストオフシステム』 超高速化駆動プログラム『クロックアップ』 ぷちマスィーン専用オプション『ゼクター』 そして全てを統括する『ライダーシステム』 どれもデータだけの代物ではない。バーチャルファイトの時にはポッドの中に追加装備として一緒に設置する、紛う事なき現物だ。 マスクドフォームの追加装甲には制御用のぷちマスィーン... -
無頼5、歌詞一覧
このページには無頼5「熱唱! 武装神姫」にて使用した各曲の歌詞を掲載します。 ご自由に使用してよろしいですが、使った後に掲示板で報告していただけるとありがたいです。 輝けバトルロンド! 作詞・作曲、歌:零牙 光り輝くステージライト 広がる無限のバトルフィールド 武装を身につけ 大地に立て! 戦闘開始だ 武装神姫 (Fight!) 火花散る 光が舞う 刃がぶつかり音立てる 戦え 戦え! ジャッジが下るまでが戦いだ! 信念ぶつけ舞いあがれ 戦う姫 その名は神姫 ○この歌は本来大会のオープニングとして使われるはずでしたが、当初と書き方を変えたために零牙の持ち歌となりました。 零牙は武人然とした性格ながらも、意外とこうゆうのが好きなのです。 偽りの声 作詞・作曲:A88(風間健人) 歌:グレース ... -
ACT 1-27
ウサギのナミダ ACT 1-27 □ ゲームセンターは大歓声に包まれた。 東東京地区チャンピオンが繰り広げた死闘に誰もが興奮していた。 純白の女王が、醜聞にまみれた神姫をうち負かした。 ギャラリーの多くは、そんな英雄譚を目の当たりにしたと思っているのだろう。 観客達の興奮をよそに、俺も高村も呆然としていた。 あまりに劇的な結末に、思考がおいつかない。 フィールドの映像が消える。 死闘の舞台となった廃墟は消え去り、無機質な筐体の姿に戻る。 アクセスポッドが軽い音を立てて開いた。 「……ティア」 俺は自らの神姫に声をかける。 ティアは立派に戦った。 全国大会でも優勝候補と名高い、あの『アーンヴァル・クイーン』をあそこまで追いつめたのだ。 せめてねぎらいの言葉をかけようと、アクセスポッドをのぞき込む。... -
光と影のクリスマス 後編
光と影のクリスマス 後編 一試合の制限時間は僅か30分…しかし今回の試合はその30分ですら長く感じた。Bクリスマスとの攻防戦は最初こそ互角だったが、次第にホーリーの方が追いつめられていった。 「きゃああああッ!!」 受け止められたトンファーブレードが折れて、蹴りを入れられたホーリーは、そのまま市街地の壁に激突した。 「大丈夫か、まだいけるか?」 「うん、大丈夫…、まだ負けたわけじゃないもの…」 じりじりと近づいてくるBクリスマス。その両腰には8枚のブレードが怪しく輝いていた。 「まだ…まだまだ!!」 至近距離でハンドマシンガンを連射するホーリー。しかしそれはブレードで撥ね返されてしまった。 「ホーリー、今はここから離れる事を考えるんだ。あれが間に合うまでなんとか時間を稼ぐんだ」 「このまま逃げてもどうにもならないよ。だって、あんなことするのに、こ... -
ツガル戦術論:鏡の試練1
戻る TOPへ 次へ ツガル戦術論 鏡の試練 前編1 地区大会で優勝を収めたおれ達は、次の大会開催までの一週間を利用してトレーニングに励んでいた。 家からあまり離れていない行きつけのセンターには、始めたばかりの初心者から、ファーストリーグで鳴らしている猛者など幅広いユーザーが集まっており、戦術研究の場としては打って付けだった。卓上で考案した戦略が初心者に通用しても、上級者には通用しない。というのは勿論の事だが、その逆のケースも存在するのだから面白い。 最良の上達方法が実戦というのはどんな世界でも変わらないのだ。 前大会で披露した、中距離攻撃力が低いと言う欠点を逆に利用する戦術に対してやはり対策が立てられており、腕のある神姫とのバトルではこちらが劣勢。贔屓目に見て五分の勝負に持ち込まれる事となった。対策に対する対策が必要だ。が、さりとて、そんなに早く新戦術が思い付... -
100質簡易編集所
武装神姫SS総合掲示板にて企画中の 武装神姫に100の質問 コーナーにおける最新版確認用のページで~す。 このページは勝手にALCが作成いたしました。 全ての咎はALCにありますが、使用権、利用権、閲覧権はすべてのオーナーさま方にあるものとします。 見て楽しむなり、書き込むなり、改変するなり色々やろうぜ(←何に影響受けているのか丸分かり)。 なお、100質が本格稼働し次第、このページはALCの作品ページにリサイクルされ消える予定です。 なんてエコロジー。地球に優しいALCを目刺しま~す。 ページの都合上、履歴に上がって上がりまくるので、読者さま方には『ウザッ!?』と思われる方もいらっしゃると思いますが、広い心で許して下さい。 作者さま方一同の創作意欲を刺激する可能性を信じましょ~。 ではれっつらGO~。 更新履歴 ... -
ネコ日記:第十六話
追っかけとか弟子入りは大抵追いかけられる側が迷惑してる お兄ちゃんがタマちゃんとオイルちゃんを連れて大会に行ったから、私はキルケとお留守番。 キルケにもう少し実践経験があれば、私達も付いてったんだけど・・・ 「はぁ~、暇だなぁ・・・」 思わず溜息ひとつ。 今日は大学もお休みで、物凄く暇。 「鍵かけてけば出掛けてもいいよね?」 「どこかへ行くんですか?」 「暇だからさ、オリュンポス行こっかなって」 神姫センター「オリュンポス」。私とキルケの初戦の場所だ。もちろん、今も時々行ってるけどね。 「いいですね、行きましょう!」 キルケも賛成したから、私達はオリュンポスに行く事にした。 オリュンポスは休日って事もあって、凄い人だった。肩の上に乗ってるキルケの声でさえ聞き取りにくいくらい。 「マスター、折角来たんですから、バトルして行きましょう!」 「うん、暇だから初... -
ツガル戦術論-副題:シルヴィア地獄激闘編(上)
戻る TOPへ 次へ ツガル戦術論-副題 シルヴィア地獄激闘編(上) 地区大会で優勝を収めたおれ達は、次の大会開催までの一週間を利用してトレーニングに励んでいた。 家からあまり離れていない行きつけのセンターには、始めたばかりの初心者から、ファーストリーグで鳴らしている猛者など幅広いユーザーが集まっており、戦術研究の場としては打って付けだった。卓上で考案した戦略が初心者に通用しても、上級者には通用しない。というのは勿論の事だが、その逆のケースも存在するのだから面白い。 最良の上達方法が実戦というのはどんな世界でも変わらないのだ。 前大会で披露した、中距離攻撃力が低いと言う欠点を逆に利用する戦術に対してやはり対策が立てられており、腕のある神姫とのバトルではこちらが劣勢。贔屓目に見て五分の勝負に持ち込まれる事となった。対策に対する対策が必要だ。が、さりとて、そんなに早... -
幻・其の十六 ~在処~
「どう……なんですか、かすみさん?」 メンテベッドに繋がれたコンピューターを操作する私の耳に、不安そうな慎一君の声が、さっきから断続的に入る。 ネロの状態は、表面上、安定していた。 ただ。 「……まったく、反応がありません。AIの処理がループしているか、あるいはAI自体が反応を拒否しているか……は、わかりませんが」 「そうですか……」 そう答える慎一君の顔は、私を見ていない。ネロを見ている。けど、ここにいるネロじゃなく、動いていた時の彼女を。 「はやて、慎一君を送って行って」 「え、あ、お、おう!」 あんまり、はやてを外へは出したくなかったし、なにより私自身、はやてに傍にいてほしかったのだけれど、今、適任者ははやてしかいない。 ここからの話は、今の慎一君に聞かせられる話じゃない。 二人が部屋から出たのを見届けて。 「……話して、くれますね?」 自分... -
ヤイバと白い馬 前編
ヤイバと白い馬 前編 「ヤイバ、今日は元気か?」 「はい主、私は元気です」 いつものように私は主に、自分の思っていることを応えます。あのとき以来、主は穏やかな表情になりました。そのようになってくれたのも、勝てば良いという考えを捨てたからです。私は主の事を信じて今まで闘ってきました。でも、それは主にとっては勝つための手段でしかありませんでした。そのことが無意味だと知ったとき、主は勝ち負けにこだわるのを捨て去る事ができたのです。 今日も私は茶室でお茶を立てて心を落ち着かせます。この時間が私にとって裕福な時でもあるのです。 「ヤイバ、ここにいるか」 茶室の外から主に声が聞こえました。何か用事でもあるのでしょう。 「どうしました、主」 お茶を飲み干した私は、茶室から出て主の前に向かいました。 「実はお前に会いたいという方がいてな、ぜひ会って欲しいんだ」 ... -
ドキドキハウリン 外伝5
ヒュゥン……。 軽やかな作動音と共に、私の意識は覚醒した。 機体各所の動作チェックの終了を受けて、ゆっくりと視覚素子を起動させる。 目の前にあるのは、人間の顔。 性別は女性。まだ少女と呼んだ方がいいのか、幼さの抜け切らないあどけない表情で、こちらをにこにこと見つめている。 「おはよう。気分はいかが?」 「あなたは……マスターですか?」 いきなりの問いに少女は面食らったのか、軽く目を見開いた。 「あの……」 けれど、マスターの認証は私達神姫にとって一番大事なこと。マスターを定めなければ、私はどう振る舞えばいいのかさえ分からないのだから。 「ふふ、せっかちなコね?」 艶やかな長い黒髪を揺らし、少女はくすりと笑う。 「……申し訳ありません。慣れていないもので」 「いいわ。考えたら、あたしも初めてだもの」 少女の手が私の方へ伸びてくる。色白の細い指が、... -
コッペリアの棺
確かに購入された神姫がどのような扱いを受けたり使われ方をされるかは個人の問題となります。また弊社は利益を上げることを目的としない範囲で神姫の二次利用も許可しております。しかしそれも無制限ではありません。今回の場合該当神姫の声優から自分の声がいわゆる成人向け同人作品に利用されているとの訴えを受けて発覚しました。これは彼女が仕事を続けていく上での大きな障害になりかねない事態であります。また、該当作品はもはや小規模とはいえない発行部数を誇り、当社キャラクターのイメージを著しく損なう利用に当たる可能性もあります。よって我々は氏を名誉毀損等で訴えることとします。 -2036年、史上初の神姫利用のあり方に対する訴訟裁判が行われた 連続神姫ラジオ 浸食機械 15:コッペリアの棺 「くうぁあ」 プルミエが苦しげな声を上げる。ステルス・バイパーにライドした楓が体を締め上げているのだ。... -
良きかな
「勝ったのにゃ……ワガハイ達の完全勝利にゃ」 「なにを誇らしげに言ってるんですか、私死にかけたんですよ。 あなたのせいで木端微塵になりかけたんですよ」 「あ、口調が元に戻ってるにゃ」 「しかし俺達はまだ生きている。 二本の足で立っている。 それ以上の何を望む?」 「いやいや、イイこと言ったつもりかもしれませんが、ほむほむもこの疫病猫と同罪ですからね?」 「ホムラと呼べ」 「誰が疫病猫にゃ! 招き猫の一億万倍のご利益があるかもしれにゃいワガハイをボンビー扱いするとは罰当たりにゃ奴にゃ!」 「じゃあ何て呼べばいいんですか。 名前は?」 「ワガハイは猫である。 名前はまだにゃい」 「やかましいです。招き猫の一億万倍のご利益なら、私の身体と装備をどうにかしてくださいよ。 傷だらけ破損上等のボロボロ、おまけに過負荷で全身ちょっと焦げ臭いんですけど。 っていうか泣きたいくらい身体が痛... -
「未熟な利己主義者」
第1幕 「未熟な利己主義者」 十一月の末―― 藤原雪那(ふじわら・せつな)とティキがシンナバーとそのマスターに敗北し、更にいわれのない悪口雑言を叩かれていたその時、結城セツナ(ゆうき・――)もその場に身をおいていた。 とは言っても、セツナがいたのは店の外で、だから雪那はセツナがそこにいることにまるで気付かなかった。 雪那とシンナバーのマスター――彼の名は木井津沙紘(きいつ・さひろ)という――の、一方的な言い争いの一部始終を、寒空の下自販機で購入したホットココアで暖を取りながらセツナは一切見逃さずに覗き見ていた。彼女の神姫、海神(わだつみ)は肩の上で上手に座っている。 やがて言いたい事を言い終わったのか、沙紘が雪那に背を向けその場から立ち去る。 余程悔しい思いをしたのか、そこに残された雪那は両の手を硬く握り締め、全身を戦慄かせていた。 だから、という訳でもな... -
CL:第六話 恐怖の正体
前へ 先頭ページ 次へ 第六話 恐怖の正体 鶴畑屋敷の客部屋に入るなり、理音は外套を脱いでベッドにダイブした。ダブルほどの大きさの客用ベッドは、金持ちらしいふかふかのやわらかい造りをしていた。飛び込んだ瞬間理音の体が半分も沈んだのである。 しっかりと手入れしてあるから、埃がたつはずもない。 「やわらかぁい」 甘くたるんだ声を出して理音はベッドの上でもがいた。きっと寝返りを打とうとしたに違いないのだろうが、部屋の宙で浮かびながらダイビングの一部始終を呆れ顔で見ていたクエンティンの頭には、もがいた、という動詞しか浮かんでこなかった。 「そんな歳にもなって大人気ない」 「いいじゃないの。ベッドダイビングはいくつになっても楽しいものよ。それに」 やっとのことで仰向けになった理音。 「こんなベッドで寝られる機会なんて、今ぐらいし... -
番外その三 にっくきむねのにく ♯1
番外その三 「にっくきむねのにく」 西暦20XX年、ある神姫センターが憎しみの炎に包まれた。 「キャーーーッッ!!」 「エレベーターだ! 下の階に逃げろ!!」 「ダメだ! 全部ふさがれてる!!」 「奴らだ! 奴らの仕業だ!!」 「お願いですマスター!置いていかないで!」 「マスターだけは見逃して! たのっ……キャアアア!!」 人が神姫を恐れ、神姫が人を、神姫が神姫を憎む。砲弾とレーザーの焦熱地獄に残された人々は逃げ惑い、退路を求め先を争う。恐怖が疑念を生み、疑念が新たな抗争の火種を生む。略奪と征服の横行。力ある者が弱者を虐げる、ここはまさに世紀末、現代に目覚めたソドムとゴモラ。人と神姫が手を取り合うべき神姫センターの姿は、もはや失われたかに見えた。 そしてここに、騒ぎの中心となった者がいる... -
引きこもりと神姫:3-2
店長たちが部屋を出るのを確認した私は、声のボリュームを少しあげました。 「えっと、それであなたの名前は?」 さっきも聞きましたが、答えてくれなかったので、もう一度。 「……データが破損していて、わかりません」 今度は答えてくれました。しかし、内容はあまり芳しくありません。 「じゃあ、憶えていることは?」 「……以前のマスターのこと……それと、見慣れないデータだけです」 見慣れないデータ、これは店長が入れたものです。あの樹羽という少女についてのものだと聞きました。 「あなたのマスターは、どんな方でした? 多分、あなたがいなくなって、心配してますよ」 「……それは無いと思います」 「なんでですか?」 「……マスターにですから、改造されたの」 「……っ」 けっこうショッキングな事実でした。 私は、マスターたち... -
『最強への道!蹴散らせ強敵達』
視界が霞む。立っている事すら苦痛でした。身を守るアーマーは失い、利腕も使 い物になりそうにありません。次に倒れたら、恐らくそれで終わりでしょう。 ですが、私はまだ勝負を諦めてはいません。自分でも不思議でした。倒れてしま えば楽になれるのに。 だけど、私は立ち上がりました。力を振り絞って、歯を食いしばって。何故なん でしょう? 『凛!最後の賭けだ!行けるか!?』 多分、隼人がいてくれるから。隼人はきっと、諦めたりしない。隼人なら、何か 勝つ方法を見付けてくれる。そう思えるから、私も立ち上がれるのだと思います 。 まだ出会って間もないというのに、おかしいですよね。でも、自然とこう思える んです。隼人と私なら、どんな相手にだって負けはしないと。 「……一目惚れっていうんですかね、これって」 誰にも聞こえない呟き。少しだけ、勇気が湧いてきました。 「もちろんです!任せて... -
ACT 1-18
ウサギのナミダ ACT 1-18 ご注意: この物語には、ツガル戦術論の若干のネタバレが含まれます。 こちらをお読みになる前に、ツガル戦術論をお読みになることをオススメいたします。 ■ 「わたしのこと、知っているのね」 『レッド・ホット・クリスマス』のシルヴィアさんは、わたしにそう言う。 わたしは素直に答える 「はい……わたしのマスターから聞いたことがあります。ツガル・タイプではとても有名な神姫だと」 「有名ね……」 シルヴィアさんがそっぽを向いた。 ミスティが吹き出した。 「そりゃ有名よね。いろんな意味で」 まわりの神姫も笑い出した。 シルヴィアさんは、ばつが悪い顔をしながらも、まんざらでもない様子。 よくわからない。 ミスティが笑いながら、わたしの肩を叩いた。 「どうし... -
番外編:その壱 アカツキの場合
偶々大学の講義も、ハッキングの仕事も無く、優一は自室でカステラをお茶受けに、紅茶を飲んでいた。 ふと、卓上の写真立てに目を移す。 そこには優一と、アカツキと違う、一体の神姫が共に写っている。 「もうあれから二年、か・・・」 瞼を閉じると、彼女と今まで紡いできた思い出が蘇ってくる。 その一:アカツキの場合 暗雲が空を覆い、天使が流す涙の如く、雨が降り注ぐ。 『ごめんなさい、他に好きな人がいるんです』 自分が思いを寄せた女性の、その一言が優一の胸に深く突き刺さっている。 ハッキングの仕事もうまく行かない。しばらく前に自分の神姫、HMT型のライデンを失ってから、失敗が重なり始めた。 どこもかしこも防衛用に神姫やアムドライバーを配置しており、いくら綿密に策を練っても容易に覆されてしまう。 「何処に行っても神姫、神姫、時代は変わったのか・・・」 頭の上にも暗雲が浮か... -
第1章 狂犬(2.5)
剛断粉砕、崩。 「・・・予想外ね。・・でも・・」 箱庭の“惨殺”、否、“破壊”。それを眺めていた闇が、呟く。 「2時・・・、アトロ達が仕事を終える頃か」 公園のベンチに独り座っていた男は、白い息を吐きながら呟く。傍らには少し薄汚れたミニバッグ。中身は、むき出しの現金に貴金属。 ・・・手口は簡単だった。論理プログラムに違法改造を施した神姫に勝手に盗みを働かせるだけ。自分は自宅にさえいればアリバイは成立。目立たない程度に少々の貴金属と紙幣だけ盗ませれば足が着く事もない。今彼は先んじて彼女らが盗んで隠していた盗品を回収し、後は隣町へ向かった彼女達を待つだけという、それはそれは優雅な時間を過ごしていた。 「そろそろ、通信を入れてやるか・・・」 通信、無音。 「・・・ん? 繋がらないのか?」 『本当に、いいご身分よねぇ』 闇... -
無頼5「熱唱! 武装神姫」
話は今から遡ること2週間前 7月に入り、形人たち学生がそろそろ夏休みに突入するころの事だった。 いつものごとくメンテナンスショップに詰めている形人とヒカル、他にやる事ないのか。 そんな二人に長瀬が話題を出した。 「そういえば再来週に『神姫のど自慢大会』をやるんだが」 「のど自慢?」 形人の疑問に、ジュラーヴリクが答えた。 「参加料500円!入場無料!! 参加特典にはオリジナルのマイクスタンド マイクをプレゼント!!」 「しかも入賞者にはフルセット神姫が商品になってるんですよ? しかも二位から限定品とかになりますし」 続けてラースタチュカが言う。 「どう?ヒカルちゃん」 「ええ、まあ」 ここで形人、意地悪そうな表情を浮かべ 「さては歌唱力に自信がないんだな? 歌ってるところ見た事無いし」 何て失礼な!?と憤慨。 「自慢だけどわたしを... -
Gene6おまけ
Gene6の男女共同参画推進部隊(大嘘) トゥールー:天使型アーンヴァル(電ホビ限定カラー) 装備:フツーのアーンヴァル装備→??? 恐らくGene Lessでは2度と出ないであろう(うわぁ)フツーの癒し系神姫。しかしこの娘のコビが純粋に天然なのか腹黒い打算なのか不明なあたりやっぱり普通でもない(笑)。あ、それはそれで黒白子としては間違っていないのか(爆)。好きなものはスピード感のある乗り物。特技は何時何処で誰に聞いたのかさっぱりな謎のアンケート(笑) 神姫靴屋さん:24歳履物デザイナー(アパレル店勤務) トゥールーのマスター。ずいぶん過激にちょー女尊男卑オンナ(爆)。こんな性格になったのは男にこっぴどく振られたとかそういう類じゃなく素でこうなので改善の余地なし(うわぁ)。とは言え世の女性の半分はここまで極端じゃないにしろ似たような考えなので男性諸君、夢は適度にね(酷)。... -
『13km』-2/3
『13km』-2/3 「ふへへ……」 ああ、ダメだ。 ニヤけすぎた顔が引き攣って痛むのに、いくら気を引き締めようとしても昼間のことを思い出してしまう。 さっきからずっとHDDの側面の放熱するアルミに顔を押し付けて冷やしてるけど、もう顔が届く範囲で冷たい箇所がなくなってしまった。 そして再びトロ~リ緩む、私の表情。 「ふへへ……」 「なんだなんだ、気持ち悪い飛鳥型がいるぞ。HDDに頬ずりなんかして、そんなに大切なデータがその中にあるのかい」 振り向くと、いつの間にか自称神様のオールベルンが私のクレイドルに寝そべって、私以上にニヤニヤしていた。 慌ててHDDから離れた。 「君は今日、愛しの彼とその神姫に負けたんだろう。だというのにその奇行、考えられる理由は2つだな。ひとつ、帰り道で100円を拾った。ふたつ、君は想いを寄せる相手に痛めつけられることで快感を得られるマ... -
類は神姫を呼ぶ part12
「何を考えているんですか!? 神姫持ってないなんて嘘もついて」 「まあ落ち着きたまえ」 「落ち着けないですよ!……あっちは負けてもここを出ればいいのに、こっちは負けたらヤバい仕事を手伝えって言うんですよ。ハイリスク・ノーリターンじゃないですか……悪条件すぎます」 胸ポケットにいるシオンを垣間見る。不安そうな、心配そうな瞳が映る。 ……そうだ。 シオンはまだ一回も勝てていない。 悲しい現実だけどシオンはバトルで勝てない。 これじゃあ、高い確率でこっちの負けじゃないか。 今から僕があの人に誠心誠意謝って許してもらおうか。それか、説得して君島さん自身にやってもらうしか……。 「長倉君は逃げるのかね」 「それ以前に君島さんが原因でしょ!……僕に非難されるいわれは……」 「長倉君はシオンを治す為になんでもやるのだろ? だったら、キミたちが私の代わりに彼と... - @wiki全体から「あなたのかなでたい音色3」で調べる