武装神姫SSまとめ@wiki内検索 / 「妄想神姫:外伝・その三十(前半)」で検索した結果
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妄想神姫:外伝・その三十(前半)
曙の女神達──あるいは新年三ヶ日(前半) い、いた……頭が痛い……私は、わたしは……ああそうだ、槇野晶。 今日は、確か……えと、そうだ。一月一日、新年を迎える頃か……。 しかし、なんかこう胸の辺りがスースーする様な……な、何ぃッ!? 「うわぁっ!?な、なんだこの格好は!それに……お前達何をッ!?」 「わふぅ……ん、んんぅ~……あったかいんだよぉ、マイスター……」 「はぁ~♪……う、うわわ!地震、地震ですのぉ~!?わきゅっ!?」 「痛たたぁ、えと……朝、ですか?マイスターおはよ……きゃっ!!」 「お、おはよう!というか明けまして、いやあっちを向いてくれッ!」 私は……正確に言うと私達は、主に私のあられもない艶姿に赤面した。 ブラウスは大きく乱れ、その……見えていた。貴様は見ていないな?! 『何を』だと!?聞くな、神田川に沈めてやるぞ!あっちを向けッ!?... -
妄想神姫:外伝・その十(前半)
麗しき戦い──あるいは予選その一(前半) “鳳凰カップ”は周辺イベントやブースの賑わいも勿論目玉だけど、 一番のウリはやっぱり“聖杯”を目指した、神姫達の戦いだもんね。 だから今年は、ボク達MMSショップ“ALChemist”の面々も全力全開。 その一環としてボク……クララである所の“槇野梓”は、この会期中 お姉ちゃん・槇野晶の全権代理人として、バトルを担当するんだよ? 「梓ちゃんっ、わたしもなんだか“ニキニキ”してきましたの♪」 「……どこで覚えたのかな、ロッテ……ちゃん?それはさておき」 「うん。極力“コレ”を脱がない様に、頑張って戦ってきますの」 「でも、いざって時は迷わず脱いで本気を見せてね。相手も必死」 「もちろん分かっていますの。でも、やっぱりスタイルも大事!」 “神姫”として戦いに出るのは、次女でありボクらの精神的支柱である ロッテお... -
妄想神姫:外伝・その七(前半)
特殊戦闘訓練──あるいは神姫無双(前半) そこは、荒野というよりも砂漠という形容詞がしっくりくる場所だ。 不毛の大地には一つの高層ビルと、荒れ果て放棄されたハイウェイ。 朽ちたビルの一室に、“Heiliges Kleid”姿のロッテが佇んでいる。 彼女の周囲には、無数のぷちマスィーンズと無地の神姫素体が数体。 「よし、ではこれから集団戦闘の訓練と“SSS”の試験を行う」 「はいですの、マイスター!……この訓練用ポッドも久々ですの」 「大規模集団戦闘に対応するタイプへと買い換えたからな、有無」 「うんと、ロッテちゃん頑張ってくださいね?数は……108機」 「……ぷちが100機にネイキッドタイプが8機。物量は多いよ」 無論何の脈絡もなく、こんな世紀末的な状況に陥ったのではないぞ? “鳳凰カップ”に備えて、私はロッテ用に追加武装を用意したのだ。 加えて今... -
妄想神姫:外伝・その三十(後半)
曙の女神達──あるいは新年三ヶ日(後半) 雪は無くとも、元日の空気は刺す様な冷たさを以て私達四人を襲う。 真っ白い息を吐きながら、私は大切な“妹”達を抱えて歩を進めた。 その行き先こそ“狛犬はうりん”が居るという、近所の神社が一つ。 「こういうのは久しぶりだな、有無……お前達、寒さは問題ないか?」 「あ、大丈夫です。特に関節の動きも悪くないですし、平気ですよっ」 「……それにしても、ハウリンタイプの娘に逢うのが楽しみなんだよ」 「クララちゃんはやっぱり、どんな感じか気になっちゃいますの~?」 私の腕の中で、クララが肯く。やはり情報を知っていただけあってか、 その“狛犬はうりん”とやらに酷く強い興味を抱いているらしかった。 今が元日である事も考えると、忙しくて逢えぬかもしれないが……だが それでもなお、クララは『行ってみたい』欲求を隠さなかったのだな。... -
妄想神姫:外伝・その十三(前半)
熱気の坩堝──あるいは初日その三(前半) 予選を無事勝ち上がり、我が“妹達”が意気揚々と引き揚げてくる。 予選各ブロックは館内のミニFMでダイジェスト紹介されているが、 この電脳時代に、ラジオを聴取する者は決して多数派ではない為に、 全国中継される明日の決勝ブロック実況程には、注目されていない。 とは言え私は、作業しながら楽しめるラジオや音楽が大好きなのだ。 「よく戻ったな、ロッテに梓。勝ったという放送だけは聞いたぞ」 「ただいまですの~、マイスター♪物凄く、手強い人達でしたの」 「……あの“光の舞い”も、色々と改良点が見えてきたんだよ?」 「だろうな。明日はこれを持っていけ、どちらを使うかは任せる」 そう言い私が梓に握らせたのは、マイクロミサイルランチャーである。 コンテナタイプのそれは2~3種の弾を併用出来る。煙幕弾も然りだ。 インパクトカノン... -
妄想神姫:外伝・その二十五(前半)
水辺に泳ぐ女神達──あるいは入水(前半) 2037年の夏もピークを過ぎ、秋の気配が密かに忍び寄っている。 私・槇野晶も稼ぎ時に働き、また“妹”たる神姫達と共に様々な所へ 物見遊山に出かけたが……思えば“夏らしい事”は余りしていない。 そこで、私は彼女らにこんな提案をしてみる事としたのだな。有無。 「なぁ、皆……八月最後の定休日、ここは一つ泳ぎにでも行かぬか?」 「え?!い、いいんですかマイスター?でも、水着なんてあります?」 「案ずるな、ちゃんと作っておいた。だからこそ、今日しかないのだ」 「……塾の宿題も終わったし、それならボクらも安心して行けるかな」 「でも……マイスター、本当に……ほんっとうに“大丈夫”ですの?」 ロッテが、何度も念を押す様に私を見上げて問い掛ける……そう言えば あの事を知っているのは彼女だけだったか。心配するのも無理はない。 ... -
妄想神姫:外伝・その二十三(前半)
誇り──あるいはちょっとした挑戦(前半) さて、随分と面白い事になってきた。國崎技研の香田瀬と言ったか? 私・槇野晶の事を随分おちょくったあの技術者風の男が持ってきた、 一つの“仕事”。そのサンプルと仕様書に契約書が、目の前にある。 ふと視線をずらせば、それに応じて私が作り上げた“解答”が3つ。 「“アルファル”製作の息抜きに丁度良かったな。これで完成だ」 「でもマイスター、なんでこのお仕事を受ける気になったのかな」 「ん?確かに香田瀬とやらは好かぬ方だ。ワッフルは旨かったが」 「あう……ま、マイスターあの時の事まだ根に持ってるんです?」 「無論ッ!この私を餓鬼扱いしたのだ、一発程度では物足りんぞ」 あの時、奴は『仕事に私情を挟まぬのが職人』と言った。私からすれば 『仕事に私情を挟むのが職人』である……いや、厳密には少々違うな。 己の誇りと拘りに欲... -
妄想神姫:外伝・その三
姦し神姫──あるいはトレーニング 長女アルマと次女ロッテ、更に三女クララ。賑やかになった物だ。 だがこれ以上養い切れぬし、事実上私達はこの四人で生きるのだ。 そうと決まれば拘りたいのは……衣装だな。ツッコミは禁止だぞ? 「というわけで、今日はお前達の基本姿を整えようと思うッ!」 「はいですの~♪でもマイスター、これ脱いじゃうんですの?」 「機能性も十分だし、重ね着も出来て……勿体ないと思うけど」 「うんと。そ、そうですよっ。あたしは別にお下がりでも……」 皆が不平を言うのも無理はない。私がロッテに元来与えていたのは 万能アンダースーツとしては勿論、夏場はジャケットとして使える 少々SF気味なデザインの、神姫専用アーマージャケットなのだ。 既存・自作を問わず大半の戦闘用アーマーと併用可能である上に、 MMS用共通ジョイントを20%程増やす効果もある、... -
妄想神姫
妄想神姫:メインメニュー 注意 本作品は“突飛な設定”の類を多分に含有しております。 意図的に行っているので、その手の要素を苦手とする方は 閲覧に細心の注意を払って下さいます様、お願いします。 あらすじ 登場人物紹介 本編 外伝 後日談 各種解説 おまけ 協力・引用 あらすじ アキバの隅にMMSショップを構える幼女店長、槇野晶。 彼女の側には“妹”と言うべき、三人の武装神姫がいた。 長女“アルマ”と、次女“ロッテ”に、三女“クララ”。 これは、そんな姉妹のマッドで百合気味な日常とバトル、 更に武装神姫を逸脱気味なメカを、妄想のみで綴るお話。 登場人物紹介 登場人物MMSショップ“ALChemist” ライバルの神姫達 黄昏よりの使者+α(ネタバレ有り) 本編 序章 「苛烈なる少女?と、目覚めし神の姫」 第一章 「晴れた日には、2... -
妄想神姫:外伝・その二
神姫たちの夜──あるいはその本性 夜。作業も一通り終わって、私・槇野晶はそ~っと我が寝床に入った。 隣には神姫・ロッテとクララのクレイドルがある。起こす訳には……? いや、耳を澄ますと何か聞こえてくる様な。耳を峙てて聞いてみるか。 ──────それを後悔したのは、時間にして数秒後の事だったがな。 「ん……っ。クララ、そんな所なでちゃだめで……んっ!」 「でもロッテお姉ちゃん、これに反応っておかしいもん?」 「だって、マイスターがする時も……メモリが溢れそうで」 やたら甲高いロッテの声。そして好奇心を隠そうともせぬクララの声。 その、だな……えっと、あの。これってもしかして、アレなのかッ!? ううッ、迂闊に振り向けん。これを見てしまってはならん気がする!! 「メモリが……?ただ撫でているだけなのに、そんな現象が?」 「はいですの。その、あまり嫌... -
妄想神姫:外伝・その九
上がる緞帳──あるいは初日その一 “鳳凰カップ”初日を迎えるこの日。前々からの準備が奏功したのか 単に運勢が良かったのか、あるいはフェレンツェめの手引きなのか。 ともあれ、私と梓……クララのHVIFは、会場前の大群衆を後目に 悠々と会場へ入る事が出来た。無論神姫素体のロッテとアルマもだ。 背後には休日繁忙期のアキバも比較にならない、異様な行列がある。 「ううむ、実際に訪れるのは初めてだが……物凄い人の群れだな」 「マイスター……これ全部“鳳凰カップ”のお客様なんですか?」 「その表現は正しくないなアルマや。こういう時は“参加者”だ」 「……皆で群体となってイベントを構成し、成功に導くんだよ?」 「その為には何よりも、精一杯楽しんじゃうのがいいですのっ♪」 私と梓の二人は、予め製作した自前のトータルコーディネイトで望む。 アルマとロッテはその土台とな... -
妄想神姫:外伝・その四
眠れない夜──あるいは清らな誓い フェレンツェめからHVIFを3体“借り受けた”、その帰り道。 私・槇野晶は彼女らに服を買ってやる事とした。何せな、そのな? ……私と大きく変わらぬ外見年齢の、少女達の裸体を曝せるかッ! 鳳条院グループから女性社員用のスーツを借りたが、それだけでは 少々生活に苦慮するだろうし、彼女らの望む服を着せてやりたい。 「そう言うわけでだ、お前達三人には渋谷で服を買ってやろう」 「有り難うございますですの、マイスター♪服、ですかぁ……」 「うんとっ……マイスター、どんな服でも大丈夫なんですか?」 「勿論構わん。制服はいずれ返さねばならんしな、必要な事だ」 「……注目集めてるけど、ボク達大丈夫かな……マイスター?」 電車に乗る者が、珍しげに私達を眺める。原因は三人の造作だな。 アルマ・ロッテ・クララのHVIFは、何故か北欧系の躯... -
妄想神姫:外伝・その一
新製品レポート──あるいは惚気話 初戦も終わり、直後の祝勝会もささやかながら楽しく終了したその夜。 MMSショップ“ALChemist”に帰った私・槇野晶は、包みを開いていた。 “神姫”専用のデラックスタイプクレイドル「ふたごのおひめさま」。 これが、出てきた外箱に大きく書かれていた。東杜田技研の最新作だ。 「わぁぁ~……マイスター、これって、クレイドルなんですの?」 「有無。いくら飾っても純正クレイドルでは味気ないと思ってな」 「早く開けて、セットしてくださいの~!見てみたいですの~♪」 神姫・ロッテに急かされるままに、箱を開けてやる……お、重いッ!? 読めば“天然素材をふんだんに使用”とあるが、この木も石もそうか? 定位置にはどうにか置けそうだが、これは設置に一苦労するぞッ……。 「ふぅ、どっこらしょ……っと。よしっ、ちゃんと収まったか」 ... -
妄想神姫:外伝・その六
燃ゆる聖杯の誘い──あるいは姫君 三月。“冬”を衣服以外で殆ど実感する事のないまま、私・槇野晶は 春を迎えた。とは言っても何が変わるわけでもない、今まで通りだ。 ……私の神姫、“妹達”に対する仕込みが着々と進んでいる程度で、 特に何もイベントは無い。その筈……だったのだが、今年は違うな。 「“鳳凰カップ”だと?……そう言えば例年はスルーしてきたな」 「マイスター、今回は出る気ですの?わたし達がいますけど……」 「バトルはどうも気が引ける。お前達も頂点に興味はなかろう?」 「……そう、ですね。うんと、なんていうか……荷が、重いかも」 「だろうな。“選手として”無理に出場させる気は私にもないぞ」 橘明人めが女子同伴で持ってきたチラシには、無駄に大きなロゴがある。 なんでも、実家……つまり鳳条院グループ主催の神姫バトルイベントで、 企業やショップも“店”... -
妄想神姫:外伝・その八
晴れの舞台へと──あるいは内職業 “鳳凰カップ”への参加を決めた私・槇野晶だが、少々ピンチだッ! のっけから怒鳴りつけて済まない。だが、欲張るべきではなかった! レーダーリボンに帽子、ジャケットとスカート、ベストとブラウス。 更にアンダーやネクタイ、コードタイなど……品数が多すぎるのだ。 いずれも各々50個程と搾ったのだが、それでも家内制手工業の身だ。 「こ、これで開催までに間に合うか葵ッ?!レーダーリボンは?」 「ここまで241個動作確認が終わってますのッ!もう少しッ!」 「コードタイの強化ワイヤーは、強度試験は済んだかアルマや?」 「え、えっと……こっちは全数強度試験クリアです、エラー0!」 「梱包作業の準備はどうか、クララや?……よし、箱はOKだな」 運悪く“HVIF”当番だったロッテ……葵をも動員して、下準備は 本日24時間全てを使い、突貫... -
妄想神姫:外伝・その十四
熱き心魂──あるいは二日目その一 さて、“鳳凰カップ”という祭りもいよいよ折り返しを過ぎ二日目。 今日も昨日同様……いや、それ以上に私・槇野晶と“妹”のアルマは 出典ブースの準備に余念がない。何せクララ……もとい梓とロッテの “大番狂わせ”は、良かれ悪しかれ多少の注目を集めてしまう物だ。 MMSショップ“ALChemist”のホームページにも、問い合わせが幾つか 寄せられていた。恐らくブースへの来客数も微増するだろう、有無。 「というわけでだアルマや、今日は朝からかっ飛ばして良いぞ?」 「え、ええっ!いいんですか!?……レパートリー無くなりそう」 「一向に構わん。全力全開、魂の限りを込めて唱い上げるのだ!」 「……はいっ、精一杯……唱える限り、あたし……唱いますね?」 本当は誰かに手伝ってもらいたかったが、梓とロッテは決勝ブロックの 説明を受けねば... -
妄想神姫:外伝・その十六
折り返し──あるいは二日目その二 “鳳凰カップ”は二日目の中天を過ぎ、流石に客足は決勝ブロックの ギャラリーへと流れつつあった。私・槇野晶は必死で客を捌き続け、 神姫たる“妹”のアルマも、数時間に及ぶゲリラライブをこなした。 あれ程の大群衆を引きつけてくれたのは、彼女の功績に他ならんな。 故に、遅めの昼食を摂る事とした。アルマも空腹だろうしな、有無。 「アルマ、よく頑張った。あれ程歌い続けて、ヘトヘトだろう?」 「あ、はい……ちょっとだけバッテリー残量が心許ないですけど」 「ならば昼食をたっぷりと食べて、午後のライブまで休むと良い」 「えっと……すみませんマイスター、本当はお手伝いの時なのに」 構わぬ、と言って私は彼女の躯を軽くチェックし、着衣の乱れを正す。 しっとり風のラブソングから熱血の極みと言えるファンファーレまで、 アルマは実に、アルバム1... -
妄想神姫:外伝・その十九
歌声、響いて──あるいは茜の日常 こうして手を動かしメロディを口ずさんでいると、時間を忘れます。 ふぇ……あたしですか?ええっと、マイスター・槇野晶の“妹”たる 神姫のアルマですッ……と言っても今日はHVIF当番の日なので、 “茜”として台所に立ち、お姉ちゃんが起きるのを待ってるんです。 あ、目が覚めたみたいです……もう、武装作るのに根詰めちゃって。 エアコンで冷えない様に、設定温度を上げて毛布も掛けたんですよ。 「ん、むぅ……くしゅっ。くそ、冷えてしまった様だな……む?」 「ふんふふんふ~ん……♪あ、起こしちゃいましたマイスター?」 「いや、構わぬ茜。ロッテとアルマは、今はどうしているのだ?」 ずれた眼鏡を掛け直しつつ整った黒髪を手櫛で直し、毛布を畳む少女。 これが、あたし達の“姉”である晶お姉ちゃん。“職人”を名乗るのは ハッタリじゃないんです... -
妄想神姫:外伝・その五
聖者バレンタイン──あるいは歓喜 二月ともなり、アキバの外はすっかり甘い香りで満ちあふれていた。 そう、バレンタインデー。とは言え日本のそれは些か好きになれん。 私・槇野晶はそう思う。甘い物は大好きなので、チョコは構わない。 “チョコを渡す日”という宣伝も菓子職人の妙案とは認めるが……。 「どうにもそれに乗る気にはなれぬのだな、なぁ……ってそうか」 「お嬢ちゃん、暇なの?なんならオレが新宿案な──────!」 「失せろ下郎がッ!ナンパしたいなら、乗ってくる女を捜せ!!」 「い、いてぇぇぇ!?なんだこのガキなめやが……ゲボッ!!?」 ニヤケていた変態を飛び膝蹴りで轟沈せしめ、私は寂しさを覚える。 別に彼氏がいない事自体には、何の感慨もないぞ?その様な魅力在る 男に出会った事は一度たりとてないし、今後も恐らく無いだろうな。 では何かというと、外出時はい... -
妄想神姫:外伝・その二十
楽しい、来客──あるいは葵の日常 今日もMMSショップ“ALChemist”は大盛況~♪……と言いたいですが 地下にある玄人向けのお店ですから、平日は割と静かな環境ですの。 あ、申し遅れました。わたしは神姫三姉妹の次女・ロッテですの~♪ ……マイスターが忙しい時は、レジでお留守番するのが日課ですの。 それはHVIFを使って“葵”となっている日でも、代わりません。 「消化不良には大根ですか~……晶お姉ちゃんにも実践ですのッ」 「……や。見るからに外国人の少女が、主婦御用達の情報番組ね」 「ふぇぇぇっ?!あ、お客様……い、いらっしゃいませですの♪」 にゅっと顔を出したお客様に突っ込まれましたの……一応接客業ですし 実際の昼食は遅めにしているので、ついついテレビを見てしまいます。 そのお客様は、ラフな服装の男性とハウリン……に限定版ストラーフ。 ハウリン... -
妄想神姫:外伝・その十八
引き続いて羽休め──あるいは叙情 神田明神を後にした私・槇野晶と愛すべき三人の神姫達は、その脚で 良さげな蕎麦屋へと入る事にした。普段通り、洋食やジャンク系でも 構わぬのだが折角の和装だ、それに見合っただけの立ち居振る舞いを してみたい。それが人情って物だろう?何より蕎麦を希望したのは、 神姫・クララなのだ。彼女は辛味を好む以外は、割と淡白なのでな。 「へいらっしゃい!……うん?おい、嬢ちゃん一人で食事かい?」 「文句あるか!?見ろ、身分証明書だ……私とこの娘らに蕎麦を」 「へぇ~、最近は人形まで食事でき……ああ悪ぃな。口が滑った」 「……オヤジ、二度と“妹達”をそう喚ぶな。味で、評価したい」 「ヘッ。どうも石頭はいけねぇや……座んな、旨ぇの茹でてやる」 何の気なしに入ったその店は、路地裏の奥にある鄙びた蕎麦屋だった。 このご時世でもアキバ……地勢... -
妄想神姫:外伝・その二十七
舞い踊る秋──あるいは少女の危機 長かった2037年の夏も、俄に秋の様相を呈してきた。しかしだ、 当代に於いて人々の情熱が冷えていくのかというと、そうではない。 むしろ踊り明かす事で自分達を体現し、エネルギーを発散させる者も 存在する。私・槇野晶と“妹”の神姫達は、今“それ”を見た所だ。 『はい、香耶!皆、いいね!行くよッ!それそれそれそれぇぇっ!!』 『エト!遅れないで、あたい達の“魂”を人に見せつけるんだよッ!』 『は、はいっ!そ、そぉーれっ!!それそれそれっ!……ととっ!?』 その名は東京よさこい。2000年に入るか否か、という所で始まった 一種の“ダンスフェス”とでも言うべき新しき祭りだ。私は本来、全く この手の催しに興味がなかったのだが……第三十八回を数えた今年は、 神姫を愛するマスターとして、そしてMMSショップの店主として、是非 見て... -
妄想神姫:外伝・その二十八
隣は何をする姫ぞ──あるいは晩秋 秋である。景色がセピア色からモノトーンへと遷移し、人々や神姫の “心”にも変化をもたらす時期である……そして、『何とかの秋』と 散々使われるフレーズが示す通りに、その変化は様々なアクションを 行わせる不思議な力を持っている。何故、わざわざ秋なのだろうか? MMS部品を買いこんだ客を見送りつつ、私・槇野晶はそう考える。 「はむはむ……やっぱり焼きたてが一番おいしいですの~♪あむあむ」 「こらこらロッテ、食べすぎると……ガスは出ぬが、腹に溜まるぞ?」 「今なら大丈夫ですの!食事機能のエネルギー変換効率がいいですの」 「……そう言う物なのか?さしずめロッテは“食欲の秋”という所か」 そう。人と若干異なるとは言え、“心”を備える神姫も例外ではない。 流石に普通の神姫であれば有り得ぬが、ロッテが発現させたのはまさに 人で言う... -
妄想神姫:外伝・その十七
久方ぶりの羽休め──あるいは啓示 えー……その、なんだ。世の中は、昨日までゴールデンウィークか? その様な気楽な休日を謳歌していたそうだな。だが、私・槇野晶には そんな物は無関係だッ!……否、別の意味では関係あったのだがな。 矛盾の答えは、目の前にあるモニターに全てが映っている訳で……。 ちなみに今日は定休日だが、“これ”を処理する為に朝から缶詰だ。 「うーむむむ……これが、昨日の伝票の最後で……結果はこうか」 「あの……マイスター、お茶でも如何です?麦茶いれたんですよ」 「む。すまんなアルマ……有無、キンキンに冷えていて旨いぞ!」 「あ、ありがとうございますっ!それで……えと、どうでした?」 「売り上げか……流石に祝日を全て潰しただけあって、多少はな」 そう。あくまでもこのMMSショップ“ALCemist”は、客商売である。 諸処のイベントも多く... -
妄想神姫:外伝・その十(後半)
麗しき戦い──あるいは予選その一(後半) マオチャオのミモザさんは、此処に至って漸くぷちマスィーンズ達を 指揮して、ロッテお姉ちゃんを射止めようと射撃を開始したんだよ。 その間に、腕の“研爪”をドリルの“旋牙”に換装するみたいだね。 ボクはそれを見て、咄嗟に指示を下すんだもん。このままは拙いし。 「ロッテちゃん、ぷちを急いで迎撃して。“ターザン”だよ!」 「わかりましたの、梓ちゃん!なら、これを利用してッ!」 『ビビ?』 ボクが“お姉ちゃん”と声に出さないのは、周囲に不審がられない為。 少々辛い事だけど、コレ位は我慢しなくちゃいけないもん。そして今、 そのロッテお姉ちゃんは、ホール脇にある大きなカーテンの奥に退避。 もちろん賢いAIを搭載したぷち達も、その隙を狙って集中砲火開始。 でも賢いなら、尚更ちゃんとした指揮をしてあげないとダメなんだよ? ... -
妄想神姫:外伝・その二十六
最新の技術──あるいは公式の武装 さて、我が店“ALChemist”はMMSショップである。ともなれば、当然 一般流通している神姫や、時には一部の限定品も販売せねばならん。 が、ただ売るだけでは面白くない。客のオーダーに合わせて、武装を 寄せ集めて全く別の神姫に見立てたり、改造や調整もこなしている。 『というわけで、晶さんにはウチのサオリに着せる第六弾の装甲を!』 『公式の武装をメインフレームにしつつ戦闘法に合わせた調整を、か』 『そそ。そもそもサオリ自身を調整してくれたのも晶さんだしね……』 こういう経緯で私・槇野晶が引き受けた仕事も、その一環である。一応 アフターケアの意味も兼ね、私に武装調整のお鉢が回ってきたのだな。 そして眼前には、梱包から取り出した第六弾の武装パーツが存在する、 今からコレを、神姫・サオリに適したデザインと能力に改造するのだ... -
妄想神姫:外伝・その十三(後半)
熱気の坩堝──あるいは初日その三(後半) 魔剣匠工房“鬼奏”とは、此処より遠い片田舎にある刀剣専門店だ。 中でも“魔剣”等と呼ばれる異能の刃を……しかもMMS用のそれを 打ち出す事へと特化しており、その経営実態にも色々と秘密が多い。 それ故なのか私は工房専属の刀匠と出会って以来、親近感を覚える。 刀匠の名は、神浦琥珀。琥珀色の瞳が愛らしい、年齢不詳の女性だ。 ……お前もだろう、とか言った奴は後で八つ裂きにしてやるからな? 「しかし、まさか琥珀がこの“鳳凰カップ”に出典するとはな?」 「何よ、出て来ちゃいけないっての!穴蔵暮らしの癖してっ!?」 「そうは言っておらぬ、エルギール。非礼は、これで免じてくれ」 「……“フィオラ”。ふ、ふんっ!そんなインチキしていいの?」 私に突っかかってきたのは、ジルダリアタイプの神姫・エルギールだ。 無口な琥珀に変わり... -
妄想神姫:外伝・その二十一
叡智、輝いて──あるいは梓の日常 Σはつまり……あっ、気付かなくてごめんなさいなんだよ。ボクは、 犬型神姫のクララ……と言っても、この姿じゃ全然説得力無いかな? 今ボクは人型神姫インターフェイス・HVIFを装着して、学習塾の “一応塾”って所に、女子高校生・槇野梓として通っているんだよ。 「講義をおわーるッ!はい君達、次の時間まで自習しなさーい!」 「……ん。相変わらず、金鉢先生のは歯応えがある授業なんだよ」 「ん~……ねえ、もう出ていいでしょ?はぁい皆、そして梓さん」 「そっちも結構お疲れみたいだね、ジュピジーの“綺羅”さん?」 「あら分かる?神姫だって、ずっと同じ姿勢は大変なのよね……」 隣の友達が持つバッグから這い出してきたのは、種型神姫の綺羅さん。 この塾では、神姫等の“ホビー”を持ち込んでも講義中に使わなければ お咎めはないんだよ……流石... -
妄想神姫:外伝・その十一
誠意の返礼──あるいは初日その二 “鳳凰カップ”初日も昼を迎え、長大な客足もやっと途切れた所だ。 小型のブースなのだが、それでも我がMMSショップ“ALChemist”には 多数の方々が噂を聞きつけて、一目展示物を見ようと訪れてくれた。 やはりアキバの地下ではなかなかこれだけの集客は出来ぬ……だが! 「ふぅぅ……なんなのだ、この大群衆は。PRは控えめの筈だぞ」 「そうですねぇ。マイスター、やっぱりあたしもHVIFの方が」 「否、それには及ばん。お前はその姿でしか為しえない事がある」 「は、はい……でも少し汗だくですよ?今が暖冬だからって……」 1ステージ終えたアルマが、心配そうに楽屋のコンテナから見上げる。 確かに私・槇野晶は、結構疲労していた。白衣を脱ぎ捨て、小さな躯を “フィオラ”のそれに包んで、たった一人で客を捌き続けているのだ。 だが、それ... -
妄想神姫:外伝・その二十四
現(いまどき)の神姫──あるいは祭 世間では、物の見事にお盆である。一般の人々は行楽の時だろうが、 接客業となれば暇か忙殺か、どちらかしかない。さて、私・槇野晶が MMSショップ“ALChemist”を置く秋葉原はと言うと、表通りを中心に 何処から集まったのか……とボヤきたくなる程の混雑を見せている。 「と言っても分かってるんだよ、マイスターもさっき行ってきたもん」 「これクララや、人の思考を勝手に継ぎ足すでない……とはいえ、な」 「ぁ、あぅぅう……鳳凰杯の比になりませんよぉ~……有明と幕張~」 「アルマお姉ちゃん、すっかり熱がこもっちゃってますの~……もう」 「やむを得まい。日中“行軍”して、これから店を開けるのだしな?」 そう。今年は久しぶりに、皆を連れて“祭典”へと行く事にしたのだ。 察しのいい諸兄なら分かるだろう、欲望渦巻く夏冬二回の“アレ”... -
妄想神姫:外伝・その二十二
星に、願いを──あるいは七夕の夜 本日最後の客も帰り、どっと疲れが沸く。私・槇野晶の一日が終了、 となる所なのだが……今日はこれからが本番だ。何故なら七月七日。 そう、七夕である。昼の内に、我が“妹”たる三人の神姫には準備を お願いしてあるがどうなっているだろうか。居住スペースに向かう。 「ふぅ。待たせたなお前達、準備は……おお。しっかり出来ているな」 「がんばりましたの~♪飾り付けもばっちり完成してますのっ……♪」 「……千羽鶴まで。有無、無駄に豪勢だな……再生紙故問題はないが」 「竹じゃなくて中古の釣竿なのは勘弁してほしいんだよ、マイスター」 「しょうがないですよ。環境問題もありますし、この辺から……ね?」 テーブルの上にあったのは、リールの付いていない古い釣竿1セットに 釣り糸に結ばれた紐。更にそこに繋がった無数の短冊や折り紙などだ。 ……更... -
妄想神姫:外伝・その七(後半)
特殊戦闘訓練──あるいは神姫無双(後半) 実際の“鳳凰カップ”では、予選リーグから一貫してクララが代理の オーナーとして……HVIFを使い“梓”として……ロッテを導く。 とは言え今日は当番日ではない為、実際に“コレ”をサイドボードに セットするのは、私の役目だ。その形状は……大きな“弾”だった。 厳密にはその上に、白鳥を模したぷちマスィーンズがセットされる。 「サイドボード、クローズ。これから転送するんだよ……座標は?」 「東南東に5sm……ハイウェイの上にお願いしますの!」 「了解。カウント5で転送されるから、気を付けて……ゲーン(発進)」 「く……ッ!5……4……!」 『ギギィー!!!』 ロッテは落下する様に高度を下げ、ハイウェイを滑る様にして奔る。 飛行能力を備えているぷちマスィーンズがそれを追い掛け、飛べない 6機のネイキッドタイプは、全... -
妄想神姫:外伝・その二十九
大切な人に──あるいは粉雪の聖夜 時は2037年のクリスマス・イヴ。温暖化が進んだ東京に、ようやっと 今シーズン初の粉雪がちらつき始めた日の事。私は一人、春に向けた 新作“Electro Lolita”の試作材料を補充する為、渋谷に来ていた。 当然だが、周りはカップルだらけである。居心地の悪さは拭えぬな。 「ふぅ……材料も揃ったし資料も集めた、今日は早めに帰るとするか」 ふと隣を見て、そして私・槇野晶は自嘲する。今日は、神姫が居ない。 無論、私は誰か連れてこようかと声を掛けたぞ。しかし、ダメだった。 『ロッテや、渋谷にでも出ぬか。少々買い物をしようと思うのだがな』 『え、えと……ごめんなさいですの、仕入れ先の人がこの後来るって』 『むむ、では店番を任せるぞ。アルマや、お前は……って“茜”か?』 『はい。ちょっと夕飯の買い物をしないといけないので... -
妄想神姫:外伝・その十五(前編)
激烈なる拳──あるいは決勝その一(前編) “鳳凰カップ”二日目。ボク達ロッテお姉ちゃんとクララ……梓は、 神姫バトルの決勝ブロックまで、進める事になったんだよ。サードの ロッテお姉ちゃんが何故……とか色々言われるけど、こればっかりは 運とロッテお姉ちゃんの弛まぬ努力、としか言えないもんね。うん。 でも此処からは、本当に強い人しか残れない。気が抜けないんだよ。 「んしょ……梓ちゃん、そう言えば最初の相手はどなたですの?」 「誰、だったかな……オーナーは、柊咲矢さんって言う男性だよ」 「柊さん?それって確か“神姫部”の……って、あれですのッ!」 “フィオラ”姿のロッテお姉ちゃんが指さした先から駆けてくるのは、 渡瀬美琴っていう部長さんが率いる“黒葉学園神姫部”の面々、数名。 一回戦は個室の控え室じゃないから、こうして他の人と話す事もOK。 でもその手に... -
妄想神姫:第八章(前半)
総てを司る、脆き神の姫(前半) 我がMMSショップ“ALChemist”は、平日はそう多く客が来ない店だ。 かといって、店長が店を閉めずに勝手にぶらついてる訳にも往かぬ。 そこで今日は、神姫カスタマイズ用パーツの準備を行っている所だ。 何せ今日は、あの娘の帰ってくる日であるからな。有無、腕が鳴る。 と、準備を進めているとドアの開く気配がした。どうやら来た様だ。 「……ここか。ちわっす~、シロネコですよっと」 「おお、何時もすまない……って、お前は誰だ?」 「お嬢ちゃんこそ、ここの店長さんって何処さ?」 「待て、お嬢ちゃん言うな!私が店長・槇野だッ」 私の答えに目を丸くしているのは運送屋の兄ちゃん等ではなく、 見た事もない若い女性であった。手に箱を持ってきてはいるが、 一体人をなんだと思っているのだ。……しかしこの箱のロゴは。 「へぇ~。てっ... -
妄想神姫:外伝・その十二(前編)
白鳥の乙女──あるいは予選その二(前編) “鳳凰カップ”一日目も大分過ぎて、予選Hブロックも決勝戦の時。 ここに至るまでお昼休みの懸念通り、ファーストランカーとも一度は 戦火を交える事になった。でも“油断”もあり、ロッテお姉ちゃんは ボク・槇野梓の想像以上に良く戦い、そしてここまで残れたんだよ。 準決勝、相手はスナイパー型のヴァッフェバニータイプだったかな? 『きゃあっ!?……く、精度が高いですの……このままじゃッ!』 『何処に隠れていますか、小鳥さん……さあ、出ていらっしゃい』 場所はショッピングモール風の建物。遮蔽物を巧く利用した狙撃技能は 流石、ファーストランカーとも言うだけある精度と威力だったもんね。 勿論近~中距離気味の“フィオラ”及び“フェンリル”では、役不足。 近付く前に、どうしても敵のビームスナイパーライフルを破壊しないと ロッテお... -
妄想神姫:第十章(前半)
再誕せし、哀しき神の姫(前半) 常連・田中の車に乗る事、およそ数十分。着いたのはM市である。 ロッテ及びクララ用の保全用部品一式を店から担ぎ出して、猪刈に 破壊された神姫の修復を手伝ってもらおうと、ここを訪れたのだ。 無論金は掛かるが、そんな物を惜しんで彼女を死なせはせんッ!! 「電話をした槇野だ!夕方なのにすまんが、頼めるか!!」 「はいっ、おにーさまが待っています!はやくはやくっ!」 「つ、ツガルタイプ?……分かった、案内してくれんか?」 そうして2人と3体の神姫で飛び込んだ先は、あの東杜田技研。 出迎えてくれたのは、レインディア・バスターに跨ったツガル。 話を聞くに、Dr.CTa女史は本業の方がアップアップ気味らしい。 女史の……会社の専門分野はマイクロマシン系。神姫ばっかりを 面倒見ている訳にはいかんしな……我が侭を、心中で詫びよう。 そ... -
妄想神姫:第三章(前半)
戦乙女は、かく降臨せし(前半) ヒートアイランド現象の所為であたたかいと言え、今は冬真っ只中。 流石に冷えるが、ここは今日も賑やかで熱気に満ちているな。有無。 秋葉原神姫センター3階、ヴァーチャル式バトルフィールド装置前。 ここではサードリーグとセカンドリーグの試合を、年中やっている。 設置台数は、両リーグを合わせて凡そ……16基という所だろうか? 「お兄さんお姉さん達でいっぱいですの~、それとわたしの妹達もッ」 「そうだぞロッテ。今日はここで初バトルをやるんだ……大丈夫か?」 「はい。ちょっぴり緊張しますけど……精一杯がんばってきますの♪」 「良い娘だ~……こほん、勝ったらご褒美も考えてやろうか、有無?」 「むむむっ。そう聞いたら、もっとも~っと頑張っちゃいますの~♪」 そう、我々は先日“解除”と並行してサードリーグに登録したのだ。 草リーグとは... -
妄想神姫:第三十五章(前半)
疲れた時は、玉を磨いて(前半) 意識が闇の淵から、ゆっくり浮上していく。同時に、己の置かれた状況も 徐々に認識していく……そうだ、私・槇野晶は“アルファル”を製作中。 百枚近い設計図を引き終わり、コストも含めた要求に合致する電装部品を アキバ全域のパーツ屋から調達……構造部品は自分でも作成していたな。 そして、そうだな。パーツを揃えた直後に朝六時の時報を聞いて……ん? 「し、しまった寝坊したッ!?今日は定休日じゃないぞロッテ!!」 「マイスター、落ち着いてくださいですの~っ!今日は定休日ッ!」 「な、何……ふ、うぅぅぅ……寿命が縮むかと思ったぞ。おはよう」 「おはよう、じゃないですよ!もうとっくにお昼過ぎですよ?全く」 「……それに、目の下にすごい隈。この三日間、根詰めすぎだよ?」 「む、むぅ……すまん。アイデアが大凡固まったので、つい……な」 半... -
妄想神姫:第九章(前半)
哀れなる傀儡に、祝福を(前半) 日曜日。クララのサードリーグ登録を済ませ、私・晶が向かう先は 秋葉原神姫センター3階にある、ヴァーチャルバトルフィールド。 今日はここで、ロッテの二戦目を実施しようかと思っているのだ。 クララの装備は開発中だ。あの日暮にも助力を頼んでいるが……。 「アレス・グリューン──────マイスター、今日も快調ですの♪」 「有無、何よりだ。クララ、ロッテのこの装備を土台にする予定だが」 「……マイスター、綺麗だけど少し大型。CQBでは大きすぎるもん」 「ふむむ?そうか。この翼に負けぬ様、自然と重装化しているからな」 この通り“ゲヒルン”の効能もあり、分析能力では私を越えている。 確かに軽量級ランクの水準よりも多く、吟味して武装させたからな。 何らかの方法で、CQB……戦略的近接戦闘も考慮せねばいかんか? 何せバトルフィールドは... -
妄想神姫:外伝・その十六半(前編)
零より来る者──あるいは準々決勝(前編) ボク・クララ……槇野梓と晶お姉ちゃんの神姫・ロッテお姉ちゃんは “鳳凰カップ”の、ついに準々決勝まで勝ち上がったんだよ。でも、 これが最後の戦い……ここで勝っても負けても、ボクらは進まない。 それは晶お姉ちゃんと会った時、改めて確認した“約束”なんだよ。 そう言えば、その時に“面白い賭けをまた行った”って言ってたね。 『という訳で、勝った暁には改めて私の言う通りにしてもらうと』 『千空さんに詰め寄ったんだね、晶お姉ちゃん。でも負けたら?』 『……む、そこまで決めていなかったな。まあ勝てば問題ない!』 『マイスターってば、変な所だけアバウトですの~……全くもう』 『大丈夫ですよ、対戦するまでに相手が負けた場合も……ですし』 敗北を認める為、渡瀬美琴さん達“黒葉学園神姫部”の面々がブースを 訪れた時のやり取りら... -
妄想神姫:第三十八章(前半)
成長、戦乙女を護る騎士(前半) 新たなる力“アルファル”を与えてから数日。私の“妹”たる神姫達は、 模擬戦のみならず普段の手伝いにまで、騎士を動員する事が多くなった。 マスターの“クセ”を学習して成長する以上、確かにこれはいい選択だ。 私・槇野晶もそれを容認し、微笑ましく見ている。今日も……の様だな。 ちょっとした用事から帰ってきた私は、その様子を暫し眺める事とする。 「その湯飲み持ってくださいですの、フィオナ~♪んしょ、んしょ……」 『Yes,sir(重いですが、やります)』 「あれ……も、モリアン?三月分のレシートはこれで全部なんですか?」 『Negative(他にもありますよ)』 「……ん、それ位で拭き掃除は十分なんだよアルサス。指令は以上かな」 『Ja(お疲れ様でした)』 ん?『受け答えしているではないか』だと?有無、妹達が少し寂しいと ... -
妄想神姫:外伝・その二十三(後半)
誇り──あるいはちょっとした挑戦(後半) 物の十分もしない内に、周辺は予想以上の騒ぎとなっていた。曰く、 『あの香田瀬に隠し子が居た』だの『実は浮気までしていた』だの。 そんな私達と、私刑場に引きずり出されるが如き香田瀬を見ようと、 僅かでも暇を持っている社員全てが、その視線を一点に向けている。 青ざめた顔で香田瀬がやってくるのに、そう時間は掛からなかった。 ……にしても、広大な敷地なのに集合が早いな。香田瀬も野次馬も。 「あ、晶ち……さん、いきなり乗り込んでくるなんて。しかも、それ」 「何か文句あるか?こちらとて本気なのだ。それに、アポは取った筈」 「た、確かに……とりあえず一課の研究棟に!あーもう、散れ散れッ」 「ふふん。子供だと侮る貴様に、それなりの報復をしてやったまでよ」 そう、私とて自分の容貌と性格位は承知の上だ。なればそれを逆手に、 香... -
妄想神姫:外伝・その二十五(後半)
水辺に泳ぐ女神達──あるいは入水(後半) 人が大幅に減っているとはいえ、まだまだ気温は泳ぐにふさわしい。 しかも閑散と言う程でもない程々の喧噪は、のんびり皆で水辺遊びを 楽しむには、最適な環境と言えた。早速、造波プールの側を陣取る! 「海だぁッ!……いや、気分だけだがそれでいいのだ!どうだ、皆?」 「きゃははっ♪湯船以外で大きな水辺は、わたし久しぶりですの~♪」 「あたしとクララちゃんは初めてです……本当、海みたいですよねぇ」 「……以前に水上バスから見たけど、こうして触れるのは初めてだよ」 パレオを腰に纏ったロッテ達は、心地よい音を奏でている水辺に立ち、 その感触を確かめている。そう、離れた所で見たりヴァーチャル空間で 感じた事はあっても、リアルに泳ぐ為の水辺は初めてなのだ……まぁ、 アルマはよく湯船で泳いだりするのだが。それはそれ、これはこれだ。... -
妄想神姫:第三十一章(前半)
剣の目覚めは、未だ遠く(前半) 神浦琥珀嬢に“妹達の魔剣”を仕立ててもらってから、暫くが経過した。 それぞれの練度にも、若干の違いが出てきている様でなかなか興味深い。 例えば、今ここで模擬戦を行っているロッテとクララの方を見てみよう。 敢えて今回“Valkyrja”は装備せず、基本武装と魔剣のみで戦っている。 「まだまだ行きますの♪……“放ち刺し穿て、ライナスト”ッ!!」 「くっ……不可視の傘、疾く来たれ!“ソニック・アンブレラ”!」 「う、うわ……あの雷撃が三つも一遍に出ましたよ、マイスター」 「有無。だが、クララの防御も……いや、防御とは呼べんがな」 並みの装甲を射抜く、ロッテの雷撃。クララが“魔術”とコライセルに 備わる防御障壁を駆使しても、超音速のそれを凌ぐのは非常に厳しい。 そこで彼女は、受けきらず……己が避ける為の時間稼ぎを行っている。 ... -
妄想神姫:第五十章(前半)
そして姫を護る、神竜へ(前半) 奇妙な住人が増え、数日。私・槇野晶は日々彼女らのアップトゥデートに 追われていた……ロッテ達“妹”を護る竜、“プルマージュ”の三機だ。 “アルファル”と同じくぷちマスィーンズの超AIを使用した彼女らには 宵闇を翔ける者“星龍姫(ライナー)”という称号まで与えた物の、難題が 山積していた。見るがいい、今日も作業台の上で皆の挑戦が続いている! 「ほら、大丈夫。飛べますの♪ゆっくり羽ばたいて~……わ、わわっ!」 『キュ、キュィ……ッ』 「……大丈夫ですの~、わたしが側にいますの。それとも重いですの?」 『キュイ、キュィッ!?』 「有り難うですの♪でも、困りましたの。怖がってばかりじゃ、ね……」 『キュイィィ……』 そう、ロッテの“霜天龍ウィブリオ”からしてコレだ。何をやるにも怯え 自信の無さを露呈させている。無論の事、戦... -
妄想神姫:第十一章(前半)
神は降りて、姫とならん(前半) アルマも落ち着き、暫く経ったある冬の日。私達は四人連れ立って とある場所を目指し電車を乗り継いでいた。ロッテとクララは肩、 アルマは白衣の胸ポケットだ。何れも掴まりやすく改造してある。 しかし何だ。アルマは意外な側面を、先程から見せつけてくれた。 「はぐはぐ……マイスターおいしいです、はいっ……♪」 「アルマや、コンビニのおにぎりを1つ丸々喰うのか?」 「うぐ、んっ……はい、だって食べ物がこんなにっ……」 この通りアルマにも食事機能があるのだ。しかもこの娘は大食い。 恐らくあの大修理時にMk-Z氏が仕込んだのだろうが……侮れぬな。 というわけで三人に昼食を与えながら、私達は電車を乗り継いだ。 「けふっ。ごちそうさまでした、マイスター……えっとぉ」 「そうか……では、そろそろ指定された駅だ、降りるぞ?」 「はい... -
妄想神姫:第三十六章(前半)
禍つ刃を抜き、競う白日(前半) 北欧神話の亡霊戦士・エインヘリヤル。彼らは日中殺し合って腕を磨き、 夜は生き返って戦乙女との酒宴に興じたという……“終末の日”までな。 アルマ・ロッテ・クララの三姉妹。戦乙女であって、エインヘリヤルでは ない彼女らだが……その実践トレーニング風景は、まさに亡霊のそれだ。 私・槇野晶はいつも彼女らの“訓練”を見て思う。心臓に悪いな、有無。 「──────“刺し”“穿ち”“抉れ”、ライナストッ!!」 「きゃっ!?雷撃の三点バースト、完全に物にしましたね……」 「速射性能を補う為ですの。さ、クララちゃんにもっ!」 「ッ!?……弾速は相当な物、避けるだけでも一苦労なんだよ……!」 今日は、皆が“魔剣”の力を何処まで引き出せているか……が課題だ。 一足先に三人分完成した、“マビノギオン”と“レーラズ”のテストも 兼ねている。そ... -
妄想神姫:第五十九章(前半)
主の無き華と、新しき風(前半) まただ。私・槇野晶はMMSショップ“ALChemist”の扉を開き入ってきた、 招かざる客共へと相対する。この時節、歳末となると勘違いして迷い込む “二人連れ”が必ず居てな。毎年追い払うのに苦労する物だ……しかも、 今年は何故か、こういう連中を見ていると苛立たしい。“告白”以来だ。 「ええい!ここは喫茶店ではない、見せつけんでさっさと帰らぬかッ!」 「見せつけてるってー☆ケンジあたし達お似合いかもよー?ふふふ……」 「だな、子供にはまだ早いかもな。行こうぜユリ♪じゃあなお嬢ちゃん」 横に積んでおいた塩を撒いて、『一文字多い』カップル共を追い出す。 そして店の方を振り返ると……なるほど、白壁と木目調ドアのシックな 装いに私は一人肯いた。この外観、オープンカフェに見えなくもない。 尤も、こんな地下でオープンもクローズもあっ... -
妄想神姫:第四十八章(前半)
遙かに見据えし巨神の宴(前半) 息抜きとしては十全たる小旅行も一段落して暫く。私・槇野晶は神姫達の アルマ・クララとロッテのHVIF・葵を引き連れて外出する事とした。 ……こう書くと遊び歩いてばかりの様に見えるが、店は毎週営業中だぞ! 依って今日は折角の定休日まで裂いて、わざわざ外出している事になる。 というのもだ、試験運用中の“重量級クラス”に関する依頼が増えてな? 「何時までも私達自身が実践せぬ訳には、行かなくなったという事だな」 「それに……多少ですけど実力も付いてきましたしね。自信ないですが」 「大丈夫ですの!でもだからこそ、重量級の壁にも参戦したいですの♪」 「というわけで今、ボクらは試作部品を持ってエルゴへ移動中なんだよ」 「クララ、何処を見て会話している?……まぁ、実際その通りなのだが」 そんな会話をしながら、最早見知った商店街へと入る... - @wiki全体から「妄想神姫:外伝・その三十(前半)」で調べる