武装神姫SSまとめ@wiki内検索 / 「妄想神姫:第四十六章(前編)」で検索した結果
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妄想神姫:第四十六章(前編)
雷帝の御剣、神殺しの槍(前編) 松本小旅行も中盤である二日目となったこの日、私・槇野晶と従姉である 碓氷灯は、松本駅前よりほど近い繁華街ど真ん中の大規模神姫センターに 二人で入った。自身は無論、灯の服装も私がファッション専門店ビルにて 見立てたのだぞ?灯は異様に恥ずかしがっていたが、度胸を付ける為だ。 『さあ着るのだ灯ッ!神姫達が華やかなのに貴様は野暮ったいのか!?』 『ギャァー!?だ、だからってサングラスや首輪まで取らないでもッ!』 『昨日のパイプオルガンコンサート、あの衣装も良かったがまだ温い!』 『そ、そんな事言われたってこんな街でまでなんて~!?あ~れ~……』 というわけで、パステル系の華やかな服を着せてやった上で、不格好な サングラスと首輪は取り上げた。有無、可憐。女子はこうでなくては! 私も、フリルの整ったワンピースを買いこんで着る。一張... -
妄想神姫:第十六章(前編)
叡智を刃に、想いを力に(前編) “かまきりん”と称されていたフォートブラッグは、本人の意思によって 外道・猪刈久夫の手を離れ、今は私のスーツケースで眠りに付いている。 前回の事もあった為か、それを咎める者は誰もいなかった。まあ恐らくは 彼奴めの事だ。懲りもせずに再び神姫を虐げるのだろうが……今はいい。 偽善だろうが見栄だろうが、私達に出来る事をしただけだ。悔いはない。 「さて……騒がしかったが、これでクララのバトルも出来るか?」 「そうですの。今日はアルマお姉ちゃんだけじゃないですのッ!」 「頑張ってくださいね、クララちゃん?あたし達、応援しますッ」 クララにも専用の“Heiliges Kleid”と変身道具の“W.I.N.G.S.”を 装備させてやる。その腰はやはり、他の“姉達”と比べ些か寂しい。 彼女に欠けている物……普段から全形態で使う為の、彼... -
妄想神姫:第四十章(前編)
蒼天にて、星を描きし者(前編) そしてその日はやってきましたの。わたし達三姉妹がセカンドに向けて、 ついに扉を通る日がッ!……あ、申し遅れましたの~♪わたしはロッテ。 “マイスター(職人)”槇野晶お姉ちゃんと共にある、神姫が一人ですの♪ 今は皆、準備でてんてこ舞いですの。武装は用意出来たんですけど……。 「クララや、躯の洗浄が終わったなら服を選んでおくれ!時間がない!」 「分かってるんだよマイスター、ボクのは決まってるけど……大丈夫?」 「あうぅ……これも可愛くていいんですけど、こっちも棄てがたいです」 「わたしの予定時刻まで、もう一時間弱ですのアルマお姉ちゃん~!?」 わたし達は“服を着る神姫”、素体のまま外に出る習慣はないですの。 だから今日は下着と戦闘用補助アーマードレスに、お気に入りの一着を 着込んで、近所の秋葉原神姫センターに赴く事になった... -
妄想神姫
妄想神姫:メインメニュー 注意 本作品は“突飛な設定”の類を多分に含有しております。 意図的に行っているので、その手の要素を苦手とする方は 閲覧に細心の注意を払って下さいます様、お願いします。 あらすじ 登場人物紹介 本編 外伝 後日談 各種解説 おまけ 協力・引用 あらすじ アキバの隅にMMSショップを構える幼女店長、槇野晶。 彼女の側には“妹”と言うべき、三人の武装神姫がいた。 長女“アルマ”と、次女“ロッテ”に、三女“クララ”。 これは、そんな姉妹のマッドで百合気味な日常とバトル、 更に武装神姫を逸脱気味なメカを、妄想のみで綴るお話。 登場人物紹介 登場人物MMSショップ“ALChemist” ライバルの神姫達 黄昏よりの使者+α(ネタバレ有り) 本編 序章 「苛烈なる少女?と、目覚めし神の姫」 第一章 「晴れた日には、2... -
妄想神姫:第四十二章(前編)
翠の月を越え、天翔る者(前編) ロッテとアルマ、二人のお姉ちゃんは苦戦しながらもセカンドへの切符を 見事に掴んだ……後はボクだけ。ボクさえ勝機をもぎ取れば、上がれる。 そんな重責を背負った戦いを控えて、つい緊張してきちゃうんだよ……。 あ、ボクの名前はクララ。“マイスター(職人)”達・最後の妹なんだよ。 「さぁクララよ。後はお前一人だ……だがな、気負う事はないのだぞ?」 「マイスター?……そうだね、今日だけがチャンスじゃないもん。でも」 今日掴めたのに、ボクの所為でお預け。これはちょっと頂けないもん。 だからこそ、信じる人の喜びを失いたくないからこそ……ボクは戦う。 そして、抱き合うんだよ。お姉ちゃん達と……マイスターと一緒にね? 「……頑張ってくるんだよ、皆。必ず、この喜びを完全にするもん!」 「クララちゃん、頑張って下さいですの♪大丈夫、き... -
妄想神姫:第四十一章(前編)
紅き星の下、月を臨む者(前編) まずは“妹”のロッテちゃんがセカンドへの昇格権をゲットしましたッ! こうなると三姉妹の“長姉”であるあたし・アルマも負けてられません。 心の奥では不安と期待に闘志でいっぱいですけど、まずはそれを押し殺し 勝利の凱旋をしてきたロッテちゃんを、皆で労う為に出迎えてあげます。 「ロッテ、見事だっ!これで一歩上に望めるな、良い働きだぞ有無ッ!」 「……正直ヒヤヒヤしたけど、あの逆転劇とかかなり出来過ぎなんだよ」 「みんな、ありがとうございますの~♪でも、まだ気は抜けませんの!」 「そう、ですね……皆で上に行かないと意味はないですからね、うんッ」 『槇野晶さん、アルマのバトルが開始出来ます。オーナー席までどうぞ』 あたしとマイスターの名前が喚ばれました。マイスターが作っている、 “Electro Lolita”製のジャンパースカ... -
妄想神姫:第四十六章(中編)
雷帝の御剣、神殺しの槍(中編) それはアルマにとっても、私にとっても予期していなかった奇襲。ミラの 籠手はこの為にあったのだ。即ち、蛇腹部から伸展させての遠距離打撃。 見ればミラの脚部装甲はパイルバンカーになっており、腕の反動を完全に 受け止める土台を作っている。それを確認してか、籠手が更に変形した。 神姫の細腕より一回り大きかった掌はさらに巨大化し、巨大な拳となる! 「さぁ、思いっきり叩きのめしてあげるわ!私は“力”の象徴よッ!!」 「ち、力?……きゃぁああっ!?」 『アルマッ!?』 壁に投げつけられたアルマは、すんでの所で翼をはためかせて制止した。 だが、ミラの剛腕は凄まじく躯の各所にも影響が残っている……拙いな。 ミラの方は止める筈もなく、伸びた腕を縦横無尽に振り回して薙ぎ払う! 「いたたた……これ、リーチが長いのにストラーフよりも柔軟... -
妄想神姫:第四十六章(後編)
雷帝の御剣、神殺しの槍(後編) 仲間の姉妹を全て失い、万策尽き果てたかに見えたイリン。ロッテ一人と 戦うのならば単独でもまだ戦えたのだろうが、アルマとクララの加勢をも 凌ぎきるには、不十分……だからこそ、彼女は奇策を残しておいたのだ。 「私達は、負けられないの!姉様にぎゅって抱きしめてもらうのッ!」 「まさか──────いけない、皆迎撃してくださいですのっ!」 「……ダメだよ、もう間に合わないッ!」 即ち、自らの強化パーツを姉妹に分割する事……そう、ミラとティニアが 残したあのパーツは、イリンが本来扱う強化パーツという事になる……! そのパーツへと、ガンランスの反動で跳んだイリンは一直線に飛び込む。 「“花(フルール)”行くわよ……!さぁ、邪魔よッ!!!」 「ティニアさんの装甲スカートを装着して……更に変形しますの?!」 「“エアリアルフェザ... -
妄想神姫:第十五章(前編)
暗き過去に、深き眠りを(前編) 爽やかに晴れた日曜日。今日は一月に一度の“週末の定休日”である。 普段は毎週水曜日に休みをもらうMMSショップ“ALChemist”なのだが、 私・槇野晶は勿論、“妹達”にも週末をいっぱい満喫してもらいたい。 というわけで、今日は久しぶりに秋葉原神姫センターへ行こうと思う。 その為にはまず、身だしなみからちゃんと整えねばならんな……って。 「ほら、初舞台に出るのだ。今日は入念に躯を磨かねばならんぞ」 「きゃうっ……ま、マイスター!シャンプーが目に沁みますっ!」 「すぐ流してやるから、少しだけ耐えてくれんかアルマや?ほら」 「ロッテお姉ちゃん……そこ、少しかゆいかもしれないんだよ?」 「こうですの?ん、クララの緑色の髪ってやっぱり綺麗ですの♪」 今すぐ後ろを向け。3秒で応じたなら赦してやる……そう、それでいい。 普段か... -
妄想神姫:第五十一章(前編)
猛り狂いし、地を灼く竜(前編) その日、私・槇野晶は神姫達が目覚める前から大忙しであった。何しろ、 彼女らが重量級ランクに挑む日なのだ。リサーチしたデータと自己鍛錬の 経験……そして私自身と彼女らの“技術”が、勝敗の全てを握っている。 ノウハウなど存在しないも同義。正直、全員未知の荒野へ旅立つ気分だ。 ならば、出来る準備を可能な限り行うしかない。それが明暗を分けるッ! 「充電完了、システム起動──ふぁ……おはようございますですの~♪」 「む、起きたかロッテ。アルマとクララも、起こしてやってくれんか?」 「はいですの!マイスター、寝ないでずっと準備していましたの……?」 「……仮眠は少々取ったが、結構ギリギリだな。しかし頑張らねばッ!」 そして朝日を迎える内に、前日まで練習尽くしだった“妹”達も次々と 目覚めてくる。それと前後して、“プルマージュ”の最... -
妄想神姫:第五十二章(前編)
天より降りし、白霜の竜(前編) まずは順調な滑り出しと言えた。私・槇野晶の前で簡易充電を受けている “妹”達の長女、アルマの話だ。剣の神姫を、先程見事に撃破せしめた! この快挙は、ロッテとクララ達にも非常によい刺激となっている様だな。 「──と……射撃管制プログラム、アジャスト完了ですの。準備OK!」 「こっちも“魔術”用アーカイブのチェック完了、問題ないみたいだよ」 「すぅ……すぅ……えへへ、マイスターそんな所なでなでしちゃ……♪」 「そうか。にしてもアルマめ、どんな“夢”を見ているのか……むぅぅ」 幸せそうな寝顔を浮かべて簡易クレイドルに身を任せているアルマを、 私はそっと撫でてやる。流石に初めてだけあって、意識していない所で アルマに負荷が掛かったらしい。健気な娘……と、放送が聞こえるな。 『槇野晶さん。ロッテの対戦相手が見つかりました、... -
妄想神姫:第三十三章(前編)
約束されし、王妃の宝剣(前編) いよいよその日がやってきた。覚悟を決めたアルマが、前回敗北を喫した 兎型の軍神・“隻腕の”ティールに申し込んだ指名再戦。その受理通知が 私のPHSに届いたのだ。これを乗り越えねば、アルマのセカンド入りは 恐らく成し得ないだろうな。私・槇野晶は、深夜彼女にこの旨を伝えた。 “ヨルムンガルド”での剣術練習をしていたアルマの面も、引き締まる。 「ついに明日、ですか……マイスター。兼ねてのお願い通り、明日は!」 「有無。シルフィードに“レーラズ”と幾多の剣、か……良いのだな?」 「ええ……それこそが、あたしが今為すべき戦いなんだと思いますから」 「一応アルマのオーダー通りに剣を改良し、“マビノギオン”もあるが」 「“マビノギオン・アサルト”ですね?……これで、準備は万端ですっ」 そう言って私は、改良が終わったばかりの“ヨルムン... -
妄想神姫:第二十五章(前編)
舞い踊る、白鳥の乙女達(前編) GWには遠い休日。私・槇野晶と三人の神姫は、秋葉原の神姫センターへ 足を運んだ。目的はただ一つだけ……3on3形式バトルでの勝利である! 武装運搬専用ケースも三人分の重量となり、この小さな躯には少々辛いが ロッテは無論の事、アルマとクララも三人共に戦う事を望んでいるのだ。 そうとなれば、“姉”たる私は全力で応えねばならない。そう言う物だ! 「あ、マイスターお帰りなさいですの~。参戦申請通りましたの?」 「有無、軽量級ランクの確認だけだったぞ。対戦ナンバーは、18」 「うんと……17番目との対戦ですね。えーと、相手の名前は……」 「……あれかな。“黒鳥の戦鬼”って登録ネームになってるんだよ」 そう言って武装を着込んでいるクララが示した電光掲示板には、確かに “黒鳥の戦鬼”なるユニット名と、所属神姫タイプが表示されていた。... -
妄想神姫:第五十三章(前編)
樹海の如く、業の深き竜(前編) アルマ・ロッテと勝ち上がり、残る挑戦者はクララ一人となった。私達は 持参の簡易クレイドルで充電を受ける二人を眺めつつ、思いを巡らせる。 私・槇野晶が最も憂慮しているのは、他でもないクララのバトルなのだ。 「むにゃ……マイスター、寒いからだきしめてくださいですの~……♪」 「ぅぅん、そッ!そんな所だめですマイスター……ふにゅ……んんぅっ」 「……なぁ、クララや。この二人は何を夢見ているのだ?私は不安だぞ」 「多分、マイスターにご褒美をもらってる夢なんだよ。そう解釈すべき」 淡々とクララは告げる。確かにこれは……深く考えない方がよいのかも しれん、というか考えてはならない。私の本能は、そう警鐘を鳴らす。 と……思考が脱線し掛かった所で、係員のアナウンスが聞こえてきた。 『槇野晶さん。クララの対戦相手が見つかりました、... -
妄想神姫:第五十七章(前編)
光の刃と、真心の白き翼(前編) 大惨敗より、約束の一週間が過ぎた。今日、フリッグのマスターと連絡を とった私は神姫センターに来ていた。普段以上に気合いを入れた服装に、 私とアルマ・クララは身を包み、ロッテは“シルフィード”姿で迎える。 そして程なく、賢者たる騎士はやってきた。鋭く深遠な眼差しと共にな。 「久方ぶりだな、ロッテ。そしてその姉妹と……槇野殿。答えは……?」 「……それは、戦いの中で見せますの。貴女なら、それを望むかなって」 「読まれていたか、にしても今日はいい目をしている。初戦以来の眼だ」 「全く、難しい“宿題”をふっかけてくれた物だ。だが感謝もしている」 「では何を掴んだのか、実戦の中で貴女の妹から聞かせて頂きましょう」 不敵に笑うフリッグは、無口なマスターを促して受付の方へ向かった。 彼女からの指名戦という形で戦う事になっていた為だ。... -
妄想神姫:第四十五章(前半)
山と森の台、響く神の音(前半) 結論から言えば、相変わらずであり同一ではなかった。従姉・碓氷灯だ。 人目を気にするが故の“奇行”は全く治っていないが、そもそもからして 奴は一人でハンバーガー屋に入る様な性格ではない。待ち合わせでもだ。 その細かい変化に、私・槇野晶も少々驚いている。色々と聞いてみるか。 「で、だ。引っ込み思案の田舎娘な貴様が、どういう風の吹き回しだ?」 「い、田舎などと馬鹿にせんでほしいですぞ?!……で、ええぇーと?」 「貴様は用がなければ、決して表に出んだろう?学業等、最低限以外は」 「あー……これでありますか?はは、私も偶にはハン……ギャアー!?」 「貴様正直に吐かぬとためにならんぞっ!さぁ何があった、さぁさぁ!」 躊躇無く私は、灯のコメカミに拳を当ててグリグリと捻る。梅干しだ! だが、そんな私の横暴を止めたのは六人・十二本の神姫... -
妄想神姫:第四十八章(前半)
遙かに見据えし巨神の宴(前半) 息抜きとしては十全たる小旅行も一段落して暫く。私・槇野晶は神姫達の アルマ・クララとロッテのHVIF・葵を引き連れて外出する事とした。 ……こう書くと遊び歩いてばかりの様に見えるが、店は毎週営業中だぞ! 依って今日は折角の定休日まで裂いて、わざわざ外出している事になる。 というのもだ、試験運用中の“重量級クラス”に関する依頼が増えてな? 「何時までも私達自身が実践せぬ訳には、行かなくなったという事だな」 「それに……多少ですけど実力も付いてきましたしね。自信ないですが」 「大丈夫ですの!でもだからこそ、重量級の壁にも参戦したいですの♪」 「というわけで今、ボクらは試作部品を持ってエルゴへ移動中なんだよ」 「クララ、何処を見て会話している?……まぁ、実際その通りなのだが」 そんな会話をしながら、最早見知った商店街へと入る... -
妄想神姫:第三十六章(前半)
禍つ刃を抜き、競う白日(前半) 北欧神話の亡霊戦士・エインヘリヤル。彼らは日中殺し合って腕を磨き、 夜は生き返って戦乙女との酒宴に興じたという……“終末の日”までな。 アルマ・ロッテ・クララの三姉妹。戦乙女であって、エインヘリヤルでは ない彼女らだが……その実践トレーニング風景は、まさに亡霊のそれだ。 私・槇野晶はいつも彼女らの“訓練”を見て思う。心臓に悪いな、有無。 「──────“刺し”“穿ち”“抉れ”、ライナストッ!!」 「きゃっ!?雷撃の三点バースト、完全に物にしましたね……」 「速射性能を補う為ですの。さ、クララちゃんにもっ!」 「ッ!?……弾速は相当な物、避けるだけでも一苦労なんだよ……!」 今日は、皆が“魔剣”の力を何処まで引き出せているか……が課題だ。 一足先に三人分完成した、“マビノギオン”と“レーラズ”のテストも 兼ねている。そ... -
妄想神姫:第四十九章(前半)
騎士姫と、覚醒せし鋼竜(前半) 意識が闇の淵よりゆっくりと引き揚げられていく……嗚呼、この様な事が 前にもあったな。あれはそう、私・槇野晶が“アルファル”を作った時。 そして今宵もまた徹夜を重ねて、『新製品のテストベッド』という建前の 装備を、我が“妹”達を重量級ランクへと送る為の“相棒”を創造した。 彼女らの挑戦を支えるだけでなく、我がMMSショップ“ALChemist”の収益 拡大という意味でも、この徹夜は極めて重要な……むぅ、意識がッ……。 「お姉ちゃん、お姉ちゃんっ!もう朝ですの、起きてくださいですの!」 「……う、む?葵か……ふぁ、あぁぁ……いかん、寝てしまう所だった」 「全く、日暮さんの所から帰ってきてから根詰めっぱなしで……もうっ」 「すまんな、つい興が乗ってしまった。もう朝か、アルマとクララは?」 「御飯食べて、今はお風呂ですの。わたしも元... -
妄想神姫:第四十章(後編)
蒼天にて、星を描きし者(後編) 対戦相手である所の神姫・狛恵さんは、邪魔になる砲を全てパージして、 大剣と四脚を活かした高速突撃を仕掛けてきましたの。わたしは宙に飛び そこから降下の勢いを利用して、決闘に応じるべく斬りかかりますのッ! 左手で展開した“マビノギオン・ガード”の斥力場が、瞬時に撓みます。 「はぁぁっ!!……ぬう、うっ!バリア如きにぃぃっっ!!」 「くうっ……この圧力、ただの砲撃型神姫じゃないですの!?」 「当然!サードから抜け出す為、砲撃も剣技も学んだのですッ!」 「ぐ、っ……!こ、これはちょっぴりキツいですの……」 楕円状のシールドと“マビノギオン・ガード”の斥力場の二重防壁、更に アルファルに備わった『一定レベルまでの衝撃を減殺する』特性によって 狛恵さんの斬撃を、一合……二合、三合まで受け止めましたの。ですけど このままではジリ... -
妄想神姫:第十六章(後編)
叡智を刃に、想いを力に(後編) “Heiliges Kleid”の武器は弾切れを読みとられて、そして今もまた “ぷちマスィーンズ”達が、決定打を与える前に沈黙してしまった。 誰が見ても、クララの不利と見ただろう。そんな状況を物ともせず、 クララは抱えていた本を展開し、花弁状の盾として左腕に装着した。 「……どういう事だ、魔術などと非科学的な物をここでやるのか」 「科学的だから、出来る事なんだよ……ライデンシャフト、起動!」 「光……光の環?いや、これは……魔法陣か!?」 「これが、銃を使えないボクにマイスターが与えてくれた、力だよ」 数日程前だが、私・槇野晶のMMSショップ“ALChemist”に客が訪れた。 外国人のディープなオタクと、肩に乗る氷の様なサイフォスタイプだ。 一見してカタギの者でないと分かったが、これでも私の目は確かでな? しっかり... -
妄想神姫:第四十章(中編)
蒼天にて、星を描きし者(中編) 会話によって、敵神姫……狛恵さんの砲撃は、一旦止みました。ここから わたしは反撃を開始しましたの!腰のジャマダハル・ライナストを抜き、 片膝立ちのポーズで構えて……じっくり狙いを、定めますの。そしてっ! 「“放て”、ライナストッ!」 「うぁっ!?ぷ、プラズマライフル……まさか、あのサイズで!?」 「ただの剣だと思っちゃいけませんのッ、フィオナ!」 『Yes,sir(了解しました)』 わたしの剣から放たれた雷撃は、手にあった銃器を吹き飛ばしましたの。 その隙にフィオナはUFOの様な姿から、銃を持つ騎士の姿になります。 この銃は、“ジェスター・フィギュア”の背部ブースターが変形した物。 あくまでも“アルファル”は、己の躯のみで神姫を助ける存在ですのッ! 「さぁ、撃ち合いといきましょう。お互い全力ですの、ね?」 「... -
妄想神姫:第十六章(中編)
叡智を刃に、想いを力に(中編) 目測0.24ミリのワイヤーで作られた檻。その中にクララが封じられた。 藻掻けば、防御力に富む“Heiliges Kleid”といえどズタズタだろう。 だが、クララは自らの腕から引き抜いたダガーを軽く構え……投げる。 その軌道は、一見するとアラクネーとは完全に違う方向を狙っていた。 「……そなた、ハウリンタイプの癖に体力や汎用性もないのか?」 「そうだよ。ボクは同型の姉妹と比べても貧弱……だけどッ!」 「なっ……!?く、ぅうあああぁっっ!?」 だがその直後に、檻の監守・アラクネーは閃光で目を塞ぐ格好となった! 同時に鋼の糸で作られた“蜘蛛の巣”を覆う形で紫電が奔り、銀糸を壁に 固定していたアンカーボルトが、壁を破壊する形で次々と抜けていくッ! 莫大な電力が流されて、ワイヤー全体が必要以上の破壊力を持ったのだ。 そして糸... -
妄想神姫:第四十三章
晩夏の空に響くは、遙かなる凱歌 私・槇野晶と“三姉妹”たる神姫三人の戦いは、無事に終わった。無論、 ロッテ達がこれで引退と言う事ではない。むしろ今以上の激戦が行く手に 立ちはだかるだろう。だが、セカンドに昇格出来たという喜びに浸るのも 今だけならば悪くはない。そう想い、皆と連れ立ってセンター内を歩く。 ただ“アルファル”のギガノイド・フィギュア……合体形態を試す機会は 訪れなかった……当然の話だがな?……のでそれが今後の課題か、有無。 「大儀だ……本当に、本当によく頑張ったぞ皆ッ!凄い娘達だ、有無!」 「も、もうマイスターこれで何度目ですか~?はしゃいじゃってますよ」 「アルマお姉ちゃん……これはこれでこれでいいんだよ。喜んでるもん」 「そうですの♪マイスターに笑顔が灯せれば、それだけで誇りですの!」 「お、お前達ってば……本当にこのこのっ!私を狂喜させる... -
妄想神姫:第四十七章
変わり往く者達、帰り往く少女達 盛大にして此処最近で一番の大勝負を追えた翌日。私・槇野晶と神姫達は 帰り支度を進めていた。旅行の宿としては、従姉たる碓氷灯の家に泊めて 頂いたのでな?チェックアウト等の手間が不要なのは楽だ。何より……。 「ではこれにて失礼する、伯母貴に伯父貴。その……料理、旨かったぞ」 「あらそぉ?晶ちゃんにそう言ってもらえると嬉しいわぁ、伯母さん♪」 「灯!ちゃんと晶ちゃんを送ってやるんだぞ。最近お前も変わったしな」 「だ、大丈夫ですぞパパッ!……コストはかかったけど、その色々とっ」 家庭の味。というより家庭そのものか、私達の住む秋葉原にはイマイチ 不足していた要素である。こういう雰囲気を“妹”達に味わわせるのも 良かれと思い、日程調整の時に言われた伯母貴の申し出を呑んだのだ。 「本当においしかったです、あの辛味噌とかも御飯に... -
妄想神姫:第四十四章
旅立ちて、待つは永き野の松が本 窓の外を流れていく防音壁と、その隙間に見える風景。格別な物がある。 そう……これは高速自動車道を走る、電気駆動バスからの光景なのだな。 即ちコレを見ている私・槇野晶は、車に揺られて小旅行の途上にあるッ! 「あ、マイスター!お山が見えますの、お山!おっきぃですの~……♪」 「何処までも続く田圃も、澄んだ秋の空も、東京じゃ見ない景色ですね」 「……どうでもいいけど皆、周りのお客さんも考えないとダメなんだよ」 「クララの言う通り……なのだが!この光景はいつでも心躍るな、有無」 無論私が、可愛い“妹”達を残して旅立つ訳はない。三連休が続くのを 良い事にその内の一週分、我が侭を言って臨時休業とさせてもらった! そして神姫バトル用の装備と私達“四人の”旅装を携え、東京を出た。 無論、これには理由がある。そう、あれは先週の……とある... -
妄想神姫:第四十一章(後編)
紅き星の下、月を臨む者(後編) 光弾でボロボロになり、蛇の尻尾と獣の頭部を失ったティテュスさんが、 自らの装備を組み換えて最期の姿を形取ります。それは、神姫の躯をほぼ 覆い隠した、鳥の脚と巨大な走行用バックパックを備えた騎士の姿です。 飛行能力まで棄てた様で、エウクランテの翼も先端部がパージされます。 その姿に、マイスターが驚いています……新商品のアイデアでしょうね? 「今まで、この姿を取ったのは数える程しかありませんわ!屈辱……!」 「ならば戦って、その汚名を殺いでください……あたしもそうします」 「言われなくてもッ!この槍で串刺しにしてあげますわ、小娘ッ!!」 「モリアン、ここが正念場です──────“アクセプト!”」 『No problem(ロック解除。“アクセプト・フィギュア”承認します)』 槍を構えて地を蹴る彼女を見て、あたしもモリアンに檄... -
妄想神姫:第四十二章(中編)
翠の月を越え、天翔る者(中編) アルサスの光刃・角……そして電撃“スプライト・ボルト”のコンボと、 ボクの一撃によって、リュミエールさんは大理石の床に叩き付けられる。 鎧の所々にクラックが入り、ダメージ量が少なくない事を物語るんだよ。 でも……相手は秋葉原・サードリーグ数千名の首座に在る神姫。まだまだ 仕留めるに至らないもん。案の定、彼女はゆっくり身を起こしたんだよ。 「く……非力とは言いつつも、タイミングは的確……なかなかですね」 「ボクが貴女の様な神姫に勝つならば、真正面以外からも攻めないとね」 「なら……回り込む隙も与えない程に、攻め立てればいいのです!」 「え──────?」 そして彼女が吼えた時、壊れ掛かっていた鎧は弾け飛び……羽が舞う。 その一瞬で姿を見失ったボクは、低空・真正面から突撃してくる彼女に 対応しきれず、コライセルの斥力場を... -
妄想神姫:第四章
私と彼女、小さな小さな“幸せ”を 対戦相手に名刺を渡して意気揚々と帰る、私・槇野晶と神姫・ロッテ。 とは言えそろそろ、夕食の時間であるな……。買い物を手早く済ませ、 外食へ赴く事にしようか。たった2人のささやかな祝宴だが、十分だ。 「マイスターっ、わたしチキンのサンドが食べたいですの♪ねっ?」 「む?遠出になるが……よし、今日は頑張ったからな!いいだろう」 「やった!マイスター、マイスター、大好きですの。えへへ~……」 「わぷ、こらっ。すりすりするなっ!?うぅ、しょうがない娘だッ」 我々が帰りの足で向かったのは、神田神保町にあるサブウェイである。 少し秋葉原からは離れているが、ロッテの好物なのだ。仕方あるまい? 何、「神姫の食事って電気じゃないか」だと?……その筈、なのだが。 「いっただ~きま~すの~、マイスターっ!!チキン、チキンっ」 「冷... -
妄想神姫:第四十一章(中編)
紅き星の下、月を臨む者(中編) 海中に潜ったティテュスさんの姿は見えないまま、相変わらずミサイルが 驟雨の如く降り注ぎます。海上基地の床は爆風で徐々に破壊されていき、 あたし達が避ける空間もそれに伴って狭まっていきます……不利でした。 「おお~っほっほっほっほ!そのままスクラップにしてあげますわ!!」 「……そんな事。あたしのちっぽけな誇りでも、許しませんッ!」 『No problem(その意図は叶えられます)』 「モリアン……有り難うございます、行きましょうッ!」 『アルマよ!水中では剣のみが頼りだ、気を抜くなよッ!』 マイスターの助言に肯いて、あたしとモリアンは海上に飛び出します。 そのまま疑似重力に沿って堕ちて、その間に“レーラズ”のスカートが 窄まる様に変形します。同時に腰には“ヨルムンガルド”が装着され、 それと同時に、あたし達……ううん... -
妄想神姫:第二十六章
職人気質は遺伝か、努力の賜物か 初めての3on3は見事“私の妹達”が勝ち星を収めた。実にめでたいな。 そう言う訳で、近所の天丼屋にて本日は祝勝会だ……『豪華だな』だと? いや、仕方有るまい。私達四人だけならもっと適当な場所があるのだが、 今日は遠方の親戚も同席するのだ。しかもあろう事か、今日の対戦相手。 「というわけでだ……まずは公約通り、これをくれてやるぞ灯ッ!」 「うあうあ、痛い痛いですがッ。ギャアー、そここめかみーっ!?」 「灯さん……そのボイスチェンジャーはオフにしてほしいですの~」 そう。渋いバリトンで喚くこの幼女・碓氷灯が、一応私の従姉である。 人が怖いと言って声を変えたり大きなサングラスを常に装備する変人、 山奥に年中引っ込んで、こんな所になど来るはずもないと思っていた。 だが現に此奴めはアキバの神姫バトルランキングに、名を記している。... -
妄想神姫:第五十六章
そして大切な物と、見出したる光 あの大敗より三日目の夜……わたし・ロッテは、この暗い店舗に居ます。 手にマイスターが以前くれたペンダントを握りしめ、ずっと考えますの。 『自分は果たして何の為に戦って、誰の為に一体何をするべきなのか』? これはわたしだけの事じゃなくて、アルマお姉ちゃんとクララちゃん…… そしてマイスター自身にも突きつけられた、フリッグさんの問いですの。 「今日はここか、ロッテ。そろそろ寝ぬとバッテリーが切れてしまうぞ」 「……大丈夫ですの。ちゃんと御飯も食べましたから、多少保ちますの」 「そうは言っても、普段より摂取量が少ないだろう……皆、そうだがな」 「あれから、わたしはずっと考えますの。考えきれない位、想いますの」 背中に感じる、マイスターの吐息。多分、さっきまで騒がしかったのは わたしを探していた所為ですの。でも、今は……貴女の... -
妄想神姫:第六十六章
過去と流血に囚われし、嘆きの姫(その三) 第六節:感触 ハンカチで止血されつつ、私は外神田の古びた外科医へと運び込まれた。 幸いにも目立った患者はおらず、すぐに処置室での治療が行われたのだ。 消毒液やガーゼによる激痛は、筆舌に尽くし難い。だが私は幸運だった。 「お~、晶ちゃんよぅ来たのう。今度は何をしたんじゃ?……おお?」 「先生、外傷と火傷があるみたいですの。出血は酷いですけど~……」 「ほうほう。こりゃまた派手じゃのぅ。ハンダごてでも掴んだかの?」 「痛たたたた!?そ、そう言う事にしといてくれぬか藤村先生……ッ」 好々爺の藤村先生は、私が店を開くよりも前から度々世話になっていた 熟達の外科医だ。私がロッテを受け入れて、彼女の為にと物を作る様に なってから、未熟や油断故に生傷を作った私を的確に治療してくれる。 喰えない所もあるが、その腕は確か... -
妄想神姫:第四十二章(後編)
翠の月を越え、天翔る者(後編) 右腕に“鬼の手”を身につけたボクは、左手にコライセルを構えたまま、 その巨大な爪を使って、空に印を描くんだよ。そう、この腕は白兵戦より 魔術のブーストに適した物なんだよ。ボクが強く意思するまま、禍々しい 指は前方に複雑な制御用環状魔法陣を描き出して、準備は整ったんだよ。 「彼方の城より疾く来たれ剣王の宝具よ、超越せし力を顕現せよ!」 「な、光球が幾多も生まれて……剣ッ!?剣が光球から生えた……!?」 「これが“呪法錬成宝剣群”……“スペリオル・イグナイト”、だよ」 「……くッ!しかし、そんな十数本も貴女が振るうのですかッ!!」 羽根の様な刃を持った、優雅な光の剣を幾つも周囲に展開する。そう、 この姿のボクは“剣の巫女”。剣型に圧縮した攻撃魔法を産み出す事に 特化した、特殊攻撃モードなんだよ……それは、こうして七種類もあ... -
妄想神姫:第十章(前半)
再誕せし、哀しき神の姫(前半) 常連・田中の車に乗る事、およそ数十分。着いたのはM市である。 ロッテ及びクララ用の保全用部品一式を店から担ぎ出して、猪刈に 破壊された神姫の修復を手伝ってもらおうと、ここを訪れたのだ。 無論金は掛かるが、そんな物を惜しんで彼女を死なせはせんッ!! 「電話をした槇野だ!夕方なのにすまんが、頼めるか!!」 「はいっ、おにーさまが待っています!はやくはやくっ!」 「つ、ツガルタイプ?……分かった、案内してくれんか?」 そうして2人と3体の神姫で飛び込んだ先は、あの東杜田技研。 出迎えてくれたのは、レインディア・バスターに跨ったツガル。 話を聞くに、Dr.CTa女史は本業の方がアップアップ気味らしい。 女史の……会社の専門分野はマイクロマシン系。神姫ばっかりを 面倒見ている訳にはいかんしな……我が侭を、心中で詫びよう。 そ... -
妄想神姫:第三十六章(後半)
禍つ刃を抜き、競う白日(後半) それは一瞬の出来事だ……クララを中心にして解放された巨大な紫電は、 柱の影にいたアルマとクララを呑み込もうと蠢きだした。そこにアルマが “ヨルムンガルド”を数本投げ込んで、避雷針代わりとして電気の流れを 阻害した。白熱化させる関係から、“ヨルムンガルド”のセラミック刃は 電気を通す構造なのだ。そして出来た大きな風穴に、ロッテが撃ち込む! 奇襲を受けて不発に終わった紫電が、虚空に散るのは数秒も掛からない。 「ぅ……既知現象の再現をベースにする“情報魔導学”の弱点かな……」 「ですけど紫電の壁に遮られて、雷撃も十分な打撃になってませんの」 「かといってあたしの突撃では反撃のリスクもありますし……さてと」 「……そろそろ〆に行くんだよ。アルマお姉ちゃん、ロッテお姉ちゃん」 「望む所ですの♪現時点で最大の一撃を、お見舞いしますの……... -
妄想神姫:第三章(前半)
戦乙女は、かく降臨せし(前半) ヒートアイランド現象の所為であたたかいと言え、今は冬真っ只中。 流石に冷えるが、ここは今日も賑やかで熱気に満ちているな。有無。 秋葉原神姫センター3階、ヴァーチャル式バトルフィールド装置前。 ここではサードリーグとセカンドリーグの試合を、年中やっている。 設置台数は、両リーグを合わせて凡そ……16基という所だろうか? 「お兄さんお姉さん達でいっぱいですの~、それとわたしの妹達もッ」 「そうだぞロッテ。今日はここで初バトルをやるんだ……大丈夫か?」 「はい。ちょっぴり緊張しますけど……精一杯がんばってきますの♪」 「良い娘だ~……こほん、勝ったらご褒美も考えてやろうか、有無?」 「むむむっ。そう聞いたら、もっとも~っと頑張っちゃいますの~♪」 そう、我々は先日“解除”と並行してサードリーグに登録したのだ。 草リーグとは... -
妄想神姫:第四十八章(後半)
遙かに見据えし巨神の宴(後半) ロッテの“心”を持つ葵の言葉に、目前の日暮はふと疑問符を浮かべた。 此処までの評価は良好。とすれば次に何を相談されるのか、という事だ。 私も少々方針に悩んでいた所であったので、神姫たる彼女らに言わせる。 「えと……あたし達が悩んでいるのは、二つです。一つ目は武装の傾向」 「もう一つは、生まれ来る“相棒”の傾向なんだよ……結構、大事な事」 「武装の傾向、というと……ああ、種類とか数の話かいアルマちゃん?」 日暮の言葉に、アルマが何度も肯く。それは、私の生来の性分だけでは フォローしきれない、新たな戦い方の模索であったのだ。同時にそれは その戦法を体現する“相棒”の模索でもある。皆が矢継ぎ早に語った。 「今の重量級ランクは、バイザー派と神姫パーツ派が主流です……が」 「それと別に、“重武装派”と“単武装派”という区分... -
妄想神姫:外伝・その十六半(前編)
零より来る者──あるいは準々決勝(前編) ボク・クララ……槇野梓と晶お姉ちゃんの神姫・ロッテお姉ちゃんは “鳳凰カップ”の、ついに準々決勝まで勝ち上がったんだよ。でも、 これが最後の戦い……ここで勝っても負けても、ボクらは進まない。 それは晶お姉ちゃんと会った時、改めて確認した“約束”なんだよ。 そう言えば、その時に“面白い賭けをまた行った”って言ってたね。 『という訳で、勝った暁には改めて私の言う通りにしてもらうと』 『千空さんに詰め寄ったんだね、晶お姉ちゃん。でも負けたら?』 『……む、そこまで決めていなかったな。まあ勝てば問題ない!』 『マイスターってば、変な所だけアバウトですの~……全くもう』 『大丈夫ですよ、対戦するまでに相手が負けた場合も……ですし』 敗北を認める為、渡瀬美琴さん達“黒葉学園神姫部”の面々がブースを 訪れた時のやり取りら... -
妄想神姫:外伝・その十五(前編)
激烈なる拳──あるいは決勝その一(前編) “鳳凰カップ”二日目。ボク達ロッテお姉ちゃんとクララ……梓は、 神姫バトルの決勝ブロックまで、進める事になったんだよ。サードの ロッテお姉ちゃんが何故……とか色々言われるけど、こればっかりは 運とロッテお姉ちゃんの弛まぬ努力、としか言えないもんね。うん。 でも此処からは、本当に強い人しか残れない。気が抜けないんだよ。 「んしょ……梓ちゃん、そう言えば最初の相手はどなたですの?」 「誰、だったかな……オーナーは、柊咲矢さんって言う男性だよ」 「柊さん?それって確か“神姫部”の……って、あれですのッ!」 “フィオラ”姿のロッテお姉ちゃんが指さした先から駆けてくるのは、 渡瀬美琴っていう部長さんが率いる“黒葉学園神姫部”の面々、数名。 一回戦は個室の控え室じゃないから、こうして他の人と話す事もOK。 でもその手に... -
妄想神姫:第九章(前半)
哀れなる傀儡に、祝福を(前半) 日曜日。クララのサードリーグ登録を済ませ、私・晶が向かう先は 秋葉原神姫センター3階にある、ヴァーチャルバトルフィールド。 今日はここで、ロッテの二戦目を実施しようかと思っているのだ。 クララの装備は開発中だ。あの日暮にも助力を頼んでいるが……。 「アレス・グリューン──────マイスター、今日も快調ですの♪」 「有無、何よりだ。クララ、ロッテのこの装備を土台にする予定だが」 「……マイスター、綺麗だけど少し大型。CQBでは大きすぎるもん」 「ふむむ?そうか。この翼に負けぬ様、自然と重装化しているからな」 この通り“ゲヒルン”の効能もあり、分析能力では私を越えている。 確かに軽量級ランクの水準よりも多く、吟味して武装させたからな。 何らかの方法で、CQB……戦略的近接戦闘も考慮せねばいかんか? 何せバトルフィールドは... -
妄想神姫:第八章(前半)
総てを司る、脆き神の姫(前半) 我がMMSショップ“ALChemist”は、平日はそう多く客が来ない店だ。 かといって、店長が店を閉めずに勝手にぶらついてる訳にも往かぬ。 そこで今日は、神姫カスタマイズ用パーツの準備を行っている所だ。 何せ今日は、あの娘の帰ってくる日であるからな。有無、腕が鳴る。 と、準備を進めているとドアの開く気配がした。どうやら来た様だ。 「……ここか。ちわっす~、シロネコですよっと」 「おお、何時もすまない……って、お前は誰だ?」 「お嬢ちゃんこそ、ここの店長さんって何処さ?」 「待て、お嬢ちゃん言うな!私が店長・槇野だッ」 私の答えに目を丸くしているのは運送屋の兄ちゃん等ではなく、 見た事もない若い女性であった。手に箱を持ってきてはいるが、 一体人をなんだと思っているのだ。……しかしこの箱のロゴは。 「へぇ~。てっ... -
妄想神姫:第四十五章(後半)
山と森の台、響く神の音(後半) まずは信州名物・蕎麦を昼食に供する為、国宝・松本城の方へと赴いた。 流石に他の有名な城程ではないが、なかなか風情があって良い天守閣だ。 その正門近くには、よい蕎麦屋が幾つか有ると聞く。その一店を訪ねた。 人当たりの良さそうな所謂“おばちゃん”が、私達を座敷へと案内する。 「もし、ざるを……二人前もらおうか。出汁は小分けに、四人前頼もう」 「四人……?そっちのお人形さんまで食べるのかい、こりゃ珍しいねぇ」 「まぁ、普通ではないがな……?それより灯、お前は何を食べるのだ?」 「あ、ええと……ミニセット一つ。この娘らの分は、いらないのですな」 「あら、可哀想じゃない~?ああいいのよ、ここはおばさんに任せてっ」 灯が『ぅ゛ぁ゛~……』と止めるのも聞かず、おばちゃんは勝手に注文を 書き換えて、厨房へと入っていってしまった。肝心な... -
妄想神姫:外伝・その十二(前編)
白鳥の乙女──あるいは予選その二(前編) “鳳凰カップ”一日目も大分過ぎて、予選Hブロックも決勝戦の時。 ここに至るまでお昼休みの懸念通り、ファーストランカーとも一度は 戦火を交える事になった。でも“油断”もあり、ロッテお姉ちゃんは ボク・槇野梓の想像以上に良く戦い、そしてここまで残れたんだよ。 準決勝、相手はスナイパー型のヴァッフェバニータイプだったかな? 『きゃあっ!?……く、精度が高いですの……このままじゃッ!』 『何処に隠れていますか、小鳥さん……さあ、出ていらっしゃい』 場所はショッピングモール風の建物。遮蔽物を巧く利用した狙撃技能は 流石、ファーストランカーとも言うだけある精度と威力だったもんね。 勿論近~中距離気味の“フィオラ”及び“フェンリル”では、役不足。 近付く前に、どうしても敵のビームスナイパーライフルを破壊しないと ロッテお... -
妄想神姫:第四十九章(後半)
騎士姫と、覚醒せし鋼竜(後半) USBを経由し、三機の“竜”に0と1で出来た魂が刻み込まれていく。 既に充電を済ませてあるそれは、超AIのデータ焼き込みさえ完了すれば 私のキータッチ一つで起動するのだ……皆が動向を、固唾を呑み見守る。 「80……90……よし、完了だ。これから起動する、気を付けろよ?」 「え、え?気を付けるって……ちょっと不安です。でも、分かりました」 「どんな性格になるかは私も分からぬ。襲いかかる事はないだろうがな」 アルマが少々怯えているので、私は彼女の頭を撫でつつ……キーを押す。 それと同時に、乱雑に分解されていたフレームにエネルギーが満ち渡り、 程なく“己の形”を取り戻すべく変形を開始したッ!紅い塊は、爬虫類を 想像させる四肢を持った、二足歩行の獣……恐竜の様な形態へと変じる。 「まずは一体。これがアルマの“竜”だ……と... -
妄想神姫:第六章
世に一人しかいない、あなただから エルゴから帰ってきた私達は、シャッターの前で待っていた常連客の 応対を終えて、預かった“ツガルタイプオプション付きハウリン”の チェックをしている。研鑽中の情報処理技術も総動員しての作業だ。 その傍らでは私服のロッテが心配そうに、眠る神姫を見つめている。 ちなみにこの神姫、昨日買われていったばかりなのだが、有無……。 「ふむ。むぐ……むむ、これはどうにも深刻かもしれんな」 「マイスター。この娘は治せませんの?火器管制システム」 「うむ。論文で読んだ事も、日暮に聞いた事もあるのだが」 「だが~……?だがってどの事なんですの、マイスター?」 「所謂あれだ、“ワン・オブ・サウザンド”という奴だよ」 銃器職人の伝説であるそれは、千挺に1つの偶然の産物を意味する。 微細な部品加工時のミスや、手作業による部品同士の相性。これら... -
妄想神姫:第十三章(前半)
適材を誂え、適所に与え(前半) 密かにビル屋上へ作った集光タワーが、光を地下に運ぶ……眩しい。 平日だが“ALChemist”は定休日、そして現時刻は東京の騒がしい朝。 恐らく昭和通り等は大渋滞だろうが、それも関係のない事であるな。 「……ん、マイスターってばもう起きたんだよ」 「って……え、うわっ!?梓何をしているッ!」 「何って、添い寝だよ。昨日からの当番だもん」 意識を取り戻したその先にいたのは、ブロンドの短い髪をシーツへ 投げ出した美しい少女……クララのHVIFである所の梓である。 白く柔らかい腕が私の躯を優しく抱きしめて、実に心地よい……。 その姿は私と同じく、一糸纏わぬ……って、貴様何を見ている!? いいだろう私の癖なのだから!分かったら視線を逸らせぇッ!?! 「そ、それもそうだが……身を整えたら素体に戻っておくれ」 「分かった... -
妄想神姫:第十一章(前半)
神は降りて、姫とならん(前半) アルマも落ち着き、暫く経ったある冬の日。私達は四人連れ立って とある場所を目指し電車を乗り継いでいた。ロッテとクララは肩、 アルマは白衣の胸ポケットだ。何れも掴まりやすく改造してある。 しかし何だ。アルマは意外な側面を、先程から見せつけてくれた。 「はぐはぐ……マイスターおいしいです、はいっ……♪」 「アルマや、コンビニのおにぎりを1つ丸々喰うのか?」 「うぐ、んっ……はい、だって食べ物がこんなにっ……」 この通りアルマにも食事機能があるのだ。しかもこの娘は大食い。 恐らくあの大修理時にMk-Z氏が仕込んだのだろうが……侮れぬな。 というわけで三人に昼食を与えながら、私達は電車を乗り継いだ。 「けふっ。ごちそうさまでした、マイスター……えっとぉ」 「そうか……では、そろそろ指定された駅だ、降りるぞ?」 「はい... -
妄想神姫:第五十章(前半)
そして姫を護る、神竜へ(前半) 奇妙な住人が増え、数日。私・槇野晶は日々彼女らのアップトゥデートに 追われていた……ロッテ達“妹”を護る竜、“プルマージュ”の三機だ。 “アルファル”と同じくぷちマスィーンズの超AIを使用した彼女らには 宵闇を翔ける者“星龍姫(ライナー)”という称号まで与えた物の、難題が 山積していた。見るがいい、今日も作業台の上で皆の挑戦が続いている! 「ほら、大丈夫。飛べますの♪ゆっくり羽ばたいて~……わ、わわっ!」 『キュ、キュィ……ッ』 「……大丈夫ですの~、わたしが側にいますの。それとも重いですの?」 『キュイ、キュィッ!?』 「有り難うですの♪でも、困りましたの。怖がってばかりじゃ、ね……」 『キュイィィ……』 そう、ロッテの“霜天龍ウィブリオ”からしてコレだ。何をやるにも怯え 自信の無さを露呈させている。無論の事、戦... -
妄想神姫:第三十五章(前半)
疲れた時は、玉を磨いて(前半) 意識が闇の淵から、ゆっくり浮上していく。同時に、己の置かれた状況も 徐々に認識していく……そうだ、私・槇野晶は“アルファル”を製作中。 百枚近い設計図を引き終わり、コストも含めた要求に合致する電装部品を アキバ全域のパーツ屋から調達……構造部品は自分でも作成していたな。 そして、そうだな。パーツを揃えた直後に朝六時の時報を聞いて……ん? 「し、しまった寝坊したッ!?今日は定休日じゃないぞロッテ!!」 「マイスター、落ち着いてくださいですの~っ!今日は定休日ッ!」 「な、何……ふ、うぅぅぅ……寿命が縮むかと思ったぞ。おはよう」 「おはよう、じゃないですよ!もうとっくにお昼過ぎですよ?全く」 「……それに、目の下にすごい隈。この三日間、根詰めすぎだよ?」 「む、むぅ……すまん。アイデアが大凡固まったので、つい……な」 半... - @wiki全体から「妄想神姫:第四十六章(前編)」で調べる