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黒い符術師

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黒い符術師 ◆lDtTkFh3nc



夜の闇の中に、真っ黒な男が立っている。
佇まいからして普通ではない事が伝わってくるようだった。
黒い帽子に黒いスーツ、靴、髪…合間に見える肌の色以外、全てが黒かった。
細く鋭い眼光が、周囲を見渡す。
周囲は闇。灯の類は見当たらない。森の中か何かだろうか。目が慣れていない状態では何も見えない。
だが男の蒼い右目は、その違和感を見逃さなかった。


「…妖精か。」
「あれ、オレが見えるの?」


男の目が捉えた違和感、それは空中をゆらゆらと、遊覧飛行のように飛び回る小さな光。
そこには人形のように小さな体に、昆虫のような小さな羽根を携えた「生物」が浮いていた。


「この右目は『浄眼』と呼ばれ、あらゆるあやかしを見通すことができる。さすがにお前の様な妖精を見るのは初めてだがな。」


そう言うと男はスタスタと空中に浮かぶ「生物」に近づく。


「わー!ちょっと待った!別に悪さしようなんて思ってるわけじゃないって! 善良でかわいいただのエルフだってば!!」


妖精であるというソレはわめき散らす。
男は構うことなく手を伸ばし、見事に妖精を捕まえた。


「ぎゃーー!エルフ殺し!ば、バチがあたるぞォ!」
「大声を出すな、死にたいのか。」


涙ながらに抵抗する妖精とは対照的に、男は冷静に言葉を放った。


「貴様もあの場で、あの娘の話を聞いたのだろう?」
「ふぇ?あぁ、さっきのアレ?うん、聞いたけど…」


男の右手に捕らえられつつも、妖精は相手がいきなり何かをしてくるわけではないと気がつき、少し落ち着いて答える。


「オレにもよくわかんないけどさ、おじさんもこれに巻き込まれたの?」
「そういう事だ。わかるだろう。周辺に危険な人間がいれば呼び寄せるかもしれんぞ。」


そう言われ妖精はハッと両手で口を塞いだ。その可能性は考えていなかったらしい。
今度は小声で話しかけてきた。


「…もしかして、俺を殺す気?」
「お前次第だな。」


冷たい返答に、妖精はがっくりとうなだれ、しかしすぐに顔を上げ、暴れて叫びだす。


「やれるもんならやってみろォ!その時はエ、エルフ次元流が火を吹く…」
「静かにしろ。私の質問に対する答え次第だ。お前、目に隈取のある、長い髪の化け物を知らないか?」
ぎゅう、と握り締められ、ぐぇぇ、と妖精が妖精らしからぬ呻き声をあげる。


「じ、じらないよォ…」
「そうか。」


ぱっ、と今度はあっさりと手が開かれ、不意に開放された妖精は地面に落下した。


「ぷぎゃっ!」


またしてもらしからぬ声をあげ墜落する。
男の方はもう興味はないというように近くの石に腰掛け、荷物の確認を始めていた。
あっさり信じてもらえたのはいいが、扱いに不満がある。
頭をこすりながら妖精は体を起こし、勢いよく飛び上がると両手を振り上げて抗議を始めた。


「なんだよォ!ちゃんと答えてやったのにその態度!」
「だから殺しはしなかったろう。」


妖精の抗議を流しつつ、男はかばんの中からランタンを取り出した。


「灯は…危険かもしれんな。お前もあまり光っていると目立つぞ。」


その言葉に、妖精ははっとして周囲を見渡すと、そろそろと男の方に近づいていく。
心なしか、頭身が縮んだように見える。


「ね、ねぇねぇ…これ、本当に殺し合いなのかな?」
「わからん。見た事も無い奴らだったが、この首輪のこともあるし、嘘だと考えて行動するには少々危険だろう。」


先ほどまで目の前に迫った危険ですっかり忘れていたが、妖精はどこかの大広間で行われた説明を思い出していた。


「どの道、私のすることは変わらない。化け物の存在を禁ずる。それだけだ。」


自分もある意味化け物に属する為、むっとした表情を浮かべる妖精。


「じゃあなんでオレは殺さないのさ。」
「依頼も受けていない、私が狙う化け物でもない。…子供を喰うようにも見えない。だからだ。」


暗くて男の表情は見えないが、なんだか先ほどまでとは声色が違う気がした。


「さっきも聞かれたけどさ、なんでその化け物探してるの?」
「お前に話す必要は無い。」


無愛想な男に妖精はちぇーと口を尖らせ、手を頭の後ろで組んだ。


「あ、オレはパックって言うんだ。おじさんは?」
「…ひょうという。字だ、本名は捨てた。」



荷物の確認を済ませると、ひょうはパックに顔を向けた。


「…なに?」
「私はこれから人を探す。あの場で知った声を聞いた。いることは間違いないだろう。」
「あの場でって…もしかして…」
「詮索は無用だ。」


言われるまでも無い。あの説明の時の喧騒の中で、確実に知り合いだと判断できた声なんて限られている。
そのほとんどは、悲劇に巻き込まれた声だった。


「それで、会ってどうするのさ。」
「情報を交換し、場合によっては同行する。」
「その後は?」
「人を襲う化け物がいれば、それを殺して糧を得るのが符術師だ。先ほども言ったが、それはここでも変わらん。
…それに、このような下卑た事を考える輩に心当たりが無いわけでもない。もしかすると…」


そこで一瞬顔を伏せたひょうに浮かんだ表情は、暗闇でありながらなぜかはっきりと見えた気がした。
背筋に冷たいものが走るのを感じる。


「私が探す化け物もここにいるかもしれん。ヤツを倒せるなら、この場で朽ち果てようと構わん。どんな手段を使ってでも…」


笑み、ともとれた。しかし幸せだとか、楽しさなんて微塵も感じさせない、凄まじい憎悪の表情。


「必ずその存在を滅してやる……!」


見覚えのある表情だった。だからこそ、パックにはすぐにそれとわかった。


この男は、復讐者だ。


「お前はどうする?」


表情を戻し、ひょうが尋ねてきた。腕を組み、うーんと首をひねるパック。その様子は、人間以上に人間らしかった。


「オレは知り合いがいるかどうかわかんないんだけどさ…とりあえずおじさんについていこうかな。1人でいるのもヤダし…」
「生憎と、守ってやるほどお人よしでもないぞ。」


別にぃ、そんな目的じゃないよ、と呟き、パックは飛び上がった。


「オレの燐粉って怪我の治療ができるんだ。役に立つだろ?」


どうやら本気でついてくるつもりのようだと判断し、別に追い返す理由も浮かばなかったひょうは無言で立ち上がった。
右肩からタスキのように何かを巻いている。


「なにそれ?」
「私の支給品に付いていた。普段使う武器に似ているのでな、使わせてもらう。」


それはナイフの収められたベルトのようなものだった。
タスキのように肩に掛ける部分と、腰に巻く部分が繋がっている。腰のベルトには短刀と鞄がついていた。
それを見て、パックはため息をつく。なんとか律とかいうやつだろうか。これは間違いなく、あいつの持ち物だ。


「なんだ?」
「べっつにぃ」


似ているんだ、この男は。
最初に見かけた時、どうして不用意に近づいてしまったのか。その理由がここにあった。
この男は相棒(向こうは相棒だなんて決して思っていないだろうが…)とよく似ている。
漆黒を身に纏い、右目を失って、ついでにフケ顔だ。だが、外見だけの問題ではない。
生きる全てを復讐に捧げた復讐者…滲み出るような殺意、憎悪…それが最大の共通点。


(危なっかしくて、なーんかほっとけないんだよなァ…)


それがパックの行動の理由だった。
相棒が見せた、復讐者としての危うい側面。それを知っているから、この男の未来にも不安を感じる。
何かが出来るからついて行くわけでもない。それは、興味なのか、思いやりなのか。あるいは別の何かか…
どこまでもおせっかいなエルフは、この殺し合いの場でも黒衣の復讐者の側にいることを選んだ。


「あ、その鞄みたいなトコ、オレの指定席だから使わせてもらうよ。」
「おい…やれやれ…」


暗闇を、奇妙な二人(?)組が行く。


【C-8/森の中/1日目 深夜】
【ひょう@うしおととら】
[状態]: 健康
[服装]:ガッツの投げナイフ(6/6)@ベルセルク 短刀@ベルセルク
[装備]:
[道具]:支給品一式 ガッツの甲冑@ベルセルク 不明支給品1つ
[思考]
1: 符術師として、人にあだなす化け物を殺す。
2: 蒼月潮を探す。場合によっては保護、協力。
3: 目に隈取のある、長い髪の化け物を見つけたら、何に変えても殺す。
4: 子供を襲うなら、人間であっても容赦はしない。
[備考]
※ガッツの甲冑@ベルセルクは現在投げナイフと鞄と短刀がついたベルトのみ装備。甲冑部分はデイバックの中です。
※参戦時期は少なくとも潮を知っている状態です。とら、紅蓮についてどこまで知っているかは、後の書き手さんにお任せします。



【ガッツの甲冑@ベルセルク】
オフィシャルページの甲冑考察の「黒い剣士Ⅲ」、つまり断罪の塔の頃の物です。
投げナイフ、短刀はありますが、炸裂弾が入っているかは不明。
狂戦士の甲冑ではありません。



【パック@ベルセルク】
[状態]: 健康
[服装]:
[装備]:
[道具]:支給品一式 不明支給品2つ
[思考]
1: ひょうについて行く。
2: ひょうが復讐の為に無茶をしないか気がかり。
3: アイツもいたりして…
[備考]
※浄眼や霊感に関係なくパックが見えるかどうかは、後の書き手さんにお任せします。
※参戦時期は少なくともガッツと知り合った後、ある程度事情を察している時です。
※バックの大きさはパックに合わせてあります。中身は不明。


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