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なんだかんだで第一印象は結構大事

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なんだかんだで第一印象は結構大事 ◆xmpao6V6sI


月光の下、住む者のいない街に一匹の獣がいた。
銀色の髪をときおり吹く夜風に揺らしつつ、彼は人気の無い街を闊歩する。

ある者は、獣をこう称した。

壤夷戦争に臨した修羅、白夜叉と。

獣が、足を止める。
その鋭い視線の先、遥か前方に獲物を見つけたのだ。
あまりに無防備な獲物の姿に、彼は微かに笑みを浮かべる。
息を潜めて、彼は一歩一歩、動かない獲物へと近付いていく。
駆ければほんの数秒で詰まる距離ではあったが、そうはしない。
周囲に気を配りつつ、ゆっくりと、じっくりと、しかし確実に獲物との距離を詰めていく。

彼は、よく理解していた。
これから自らが行う行為が、罪であると。
このような状況であれど、決して許されるものではない、罪であると。
故に、誰にも見られるわけにはいかない。
間違っても、知り合いに見られるなんてことは絶対にあってはならない。

もしも見られたのなら――全ておしまいだ。

二度と、今までのような関係には戻れないだろう。

そう、彼は理解していた。
そして、理解していてなお、獲物へと進む足を止めていない。
彼の本能が、彼に足を止めることを許さないのだ。

手を伸ばせば触れられる距離にまで、獲物へと近付く。
この期に及んでも微動すらしない獲物へ向けて、彼の腕が徐徐に伸びていき、そして――――






「……あの、何してるんですか?」

彼女にとっての開始地点であった書店の中から出てきた沙英が、
街に人が一人としていないので、ここぞとばかりに書店へ向かい、(男の)本能のままに獲物(であるエロ本)を、
(店員がいないのをいいことに)思う存分貪りつくす(ように熟読する)という罪を犯していた獣(というかケダモノ)こと坂田銀時におそるおそる声をかけたのは、その直後のことだった。

「…………」

なお、沙英の頬が微妙に赤く染まっているのは、銀時が熟読していた、
書店の入口に平積みにされていた、やたらと不埒な写真とともに『団地妻』だの『未亡人』だの『熟女』だのといった文字が表紙に踊っている書物を、不可抗力ながら目撃してしまったからである。

「…………」
「…………」

互いに、沈黙。
無理もないことである。
銀時からしてみれば、エロ本を読んでいる最中という、誰にも見られたくないであろう姿を少女に目撃され。
沙英からしてみれば、このわけのわからない状況にて、本来頼れる存在であるはずの大人が、緊迫感の欠片もなくエロ本を立ち読みしている姿を目撃してしまった。

お互いにとって、この上なく最悪なファースト・コンタクトであった。

いつの間にやら出ていた銀時の鼻血が、ぽたりぽたりとアスファルトに落ちる以外は、完全な沈黙。
お互いに何と言えばいいのかわからないまま、無情にも時間は過ぎていき、
永い永い沈黙を経て――沙英が、口を開いた。

「あ、あの、私、何も見てませんから!」

考え抜いたすえに――沙英は、目の前の現実からの逃避を選択した。
銀時の手には相変わらず書物がある以上、何も見ていない、などと白々しいにもほどがある台詞であったが、

「そ、そうか! いやあ、お互い災難だなあこんな変な場所に連れてこられて!」
「そ、そうですね!」
「よ、よし、とりあえず今の状況について話し合ったりしてみないかお嬢ちゃん」
「わ、わかりました!」

まあ、そんな感じで。
少なくとも二人の間では『何も見なかったし、何もしていなかった』と、そういうことになったとさ。




「つまり、お嬢ちゃんはヒロって友達を探している、と」
「はい……坂田さんはヒロを見ていませんか?」

少しだけ、時間が経過して。
軽い自己紹介を終えて、沙英は何よりも気にかかっていることを――自分の親友、ヒロを見ていないかと、銀時に尋ねる。
最初の場所で、姿こそ確認できなかったものの、沙英はヒロの声を聞いていた。
聞き間違いであってほしいと願いつつも、その願いはおそらく叶わないことを沙英はわかっている。
ひだまり荘で、長い間家族同然に過ごしてきた友人の声である。
彼女の声を聞き間違えるなんて、あるはずがなかった。

「……悪いが、見てねーな。お嬢ちゃんに会うまで、ここに来てから誰一人見かけちゃいねえ」

故に、その答えに、沙英は肩を落とす。
もちろん、たまたま出会った男が、たまたまヒロを見かけていたなんて、そんなうまい話があるとは思ってなかったけれど。
それでも僅かな期待を込めていたのは事実であり、銀時の否定の言葉に、目に見えて落ち込む沙英。
慌てて、銀時が助け舟を出す。

「あーあー、ガキがそう落ち込むんじゃねえよ。どうせ行く場所もないんだ、その人探し、手伝ってやるよ」
「え……?」

銀時の言葉に、顔を上げる沙英。
そこには、先刻までとはうって変わって、凛々しい顔付きをした銀時の姿があった。
まるで――侍のような。

「まあ、これも万事屋の仕事のうちってことだ。ただし後でお代はきっちり頂くけどな」
「坂田さん……」
「坂田さんだとどこかの猫耳思い出して不愉快だ。銀さんでいい」
「あ、あ――」

ありがとうございます、銀さん。
そう礼を言おうとして――つい先程エロ本を読んで鼻血を出していた銀時の顔を思い出し、
そのギャップが何だかおかしくて、思わず沙英は吹き出してしまう。

「オイィィィ!? 何で笑った!? 今の流れの何処に吹き出す要素があった!?」

銀時が憤慨しているのが耳に入るものの、余程ツボにはまったのか沙英の笑いは止まらない。

軽く溜め息を吐きながら、銀時も笑い続ける少女を見て――少しだけ、笑った。

「さーて……忙しくなりそうだな、こりゃ」

【I-8/書店/1日目 深夜】

【沙英@ひだまりスケッチ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、不明支給品(0~2)
[思考・備考]
1:銀さんと協力して、ヒロを見つけたい。


【坂田銀時@銀魂】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 、大量のエロ本、不明支給品(0~2)
[思考・備考]
1:とりあえずヒロを探すのを手伝う
2:ヒロを見つけた、その後は……

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