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Overture ~序曲~

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Overture ~序曲~ ◆T0ldTcn6/s



さて、当然の話ではあるが。
 彼女は拡声器を使って参加者を募った。
 おそらく周囲にもとどろいているだろう。向かう人間もいるだろう。
 だが、いやだからこそ。即座に結果は出力されない。
 これは、そのタイムラグ……空白の時間に起きたほんのちいさな出来事である。

 かつん、かつん、かつん。
 人気もなければ生活感のない病院の廊下を少女が歩く。
 しかし、その冷たさに似つかわしくない機械的な光が床を照らしている。
 さすがに暗がりで探索すると見落としが多くなる。だが、こんな夜分に照明を点けるということは自分の位置を教えているようなもの。
 しかし、大声で病院で待つと触れ回ったのだ。気にする必要なんてあるものか。構うことなくスイッチを入れた。
 もっとも。あまり期待はしていなかったのだが、良い意味で予想を裏切ってくれた。さしもの亮子も電気が本当に供給されてるとは思っていなかったのだ。
 この分だと水道やガスといったライフラインはおそらく十全のはずだ。
 かくして彼女は手早く、そして慎重に歩を進めていく。

 やがて、亮子はある部屋の前で足を止めた。
 静かに扉を開ける。修羅場をくぐり抜けた彼女の嗅覚が誰もいないと告げている。
 だが、最大限の警戒を払った。仮に境界の先で敵が待ち伏せしていたとしても彼女を殺すことは叶わなかっただろう。
 生半可な人間なら逆に拘束、無力化されることは自明だし、彼女にもその自信はあった――もっとも、生半可でない人間も存在するのだが。
 誰もでてこないことを確認し、部屋のスイッチを入れた。そして再度、中を確認するが誰もいない。
 ここに来た目的は――医療品だ。痛み止めや消毒薬、包帯などはこれから必ず必要になってくる。
 モノはすぐに見つかった。そして同時に『痕跡』も。

 (誰だか知らないけど、先客がいたのか)

 既に物色された後のようだ。幸い、全て回収されたわけではない――いや、物理的に考えて全てを回収するのは無理だ。
 おそらく必要なものを必要なだけ持ち去ったのだろう。
 予定通り自分も『先客と同じ行動』をとる。これである程度の負傷には対処できるはずだ。
 人を殺したことこそないものの修羅場の1つや2つ、くぐりぬけている。当然、応急処置の知識もある。

 (これで、よし)

 部屋の灯りを消し、廊下へ。ここまでの経過は10分。拡声器を使ってまだ10分。結果が出るにはまだ早い。
 そこで彼女はこの病院をもう少し探索してみることにする。
 それ故の必然。データは電子化する世の中だ。あるべき所にはきちんと存在するもの。

 (パソコンか……悔しいけどあたしは詳しくない)

 この会場は主催者の用意したもののはず。あくまで可能性でしかないのだが――PCに何らかの手がかりが残っているかも知れない。
 だが、亮子にはこのような電子機器の知識は――オルゴール殺人事件では知人に頼ったことからも分かるが――薄い。
 さらには拡声器を使ったため時間的余裕もないのだ。調べるだけ無駄と判断する。
 そのときだった。いつも弟の隣にいるおさげの少女を思い浮かべたのは。
 カノンとの戦いもそうだ。彼女は弟の拉致されている場所を発信器で――本人は恋する乙女の直感と誤魔化していたが――把握していた。彼女は死ぬかも知れない無茶をやってまでカノンを足止めして、時間も稼いだ。カノンを無力化する切り札にもなった。
 そう――あの戦いは彼女なしにはあり得ない勝利だった。
 そして亮子は彼女の武器を知っている。

 (あいつなら何か分かったのかも……)

 学園でも有名な『情報通』。本来なら部活として成立しない『新聞部』を強引に認めさせている彼女。
 人捜しを有料で行っている、警察を脅迫してる、学長すら逆らえないなど黒い噂が絶えない。
 弟と関わるようになって、彼女とも関わったあたしはその噂が本当でもおかしくないと思っている。彼女の情報収集能力、行動力は常人の域を超えているのだ。
 さらに今里先生が刺されたあの事件、彼女は3日で犯人を絞ってみせると宣言したという。あたしはこの件には関わってないが、噂は学園全体に広がっていた。人づてで耳に入っている。
 そして、宣言するにたり得る能力があったのだろう。でなければあの理緒が自爆して胸部を破壊するなんて行動に出ない。
 大勢いる学園の生徒から容疑者を数人に限定する――知の部分で弟の助けがあったのだろうが、それをさっ引いても並の人間には不可能だ。

 (いるかどうかは分からないけど、いるならば合流したいね)

 あれが殺し合いに乗るとは思えないし、とここまで考えてふと時計を見やる。
 どうやらいつの間にか5分たったらしい。拡声器を使ってからおおよそ15分。
 少し早いが病院の近くにいる参加者がやってきてもおかしくない頃だ。それにもう病院での用は済んだ。
 そろそろ入り口に向かうこととする。

 (それにしてもあのメッセージ……)

 病院に入ってすぐの掲示板で見つけたものだ。曰く『――放送の度、僕は4thの所へ向かう。秋瀬 或』
 メモに記されている名前には偽りはないだろう。ここで偽名を使う意味はない。秋瀬 或という参加者を心に刻み込む。おそらく先ほど述べた先客こそこの秋瀬だろう。
 そしてメモの内容を吟味する。ここでポイントとなるのは4thの一点のみだ。「の所」に続くことから場所を示していることは間違いない。だが施設は17個。
 まず4thの意味――4番目という観点から施設を特定しようと考えた。しかし、どう視点を変えても該当する施設があるとは思えない。
 この4th、おそらく秋瀬の関係者にしか分からない一種の暗号と推測する。部外者がこのメモを見ても有益な情報にならない。
 単純ではあるが身内だけに伝えたいというなら有効な手段だ。

 (ま、考え事はここまでだね)

 現在地――病院の入り口。パニッシャー――いつでも使える、問題なし。周囲警戒――まだ誰も来ていないようだ。
 さあ、鬼が出るか蛇が出るか、それとも希望を掴めるか。
 少女が一人、立っていた。

【D-2/病院入り口/1日目 深夜】
【高町亮子@スパイラル ~推理の絆~】
[状態]:健康
[服装]:月臣学園女子制服
[装備]:パニッシャー@トライガン・マキシマム
[道具]:支給品一式、拡声器、各種医療品
[思考]
基本:この殺し合いを止め、主催者達をぶっ飛ばす
1:とにかく仲間を集める。
  現在地で、放送を聞いて集まってきた、殺し合いに乗っていない人間を待つ。
2:殺し合いに乗った連中が来たら、パニッシャーで威嚇し追い払う。
3:ヒズミ(=火澄)って誰だ? 鳴海の弟とカノンは、あたし達に何を隠しているんだ?
4:できれば香介は巻き込まれていないといいんだけど……
5:あのおさげの娘(結崎ひよの)なら、パソコンから情報を引き出せるかも。
6:そういや、傷が治ってる……?
[備考]
※第57話から第64話の間のどこかからの参戦です。身体の傷は完治しています。
※火澄のことは、ブレード・チルドレンの1人だと思っています。
 また、火澄が死んだ時の状況から、歩とカノンが参加していることに気付いています。
※秋瀬 或の残したメモを見つけました。4thとは秋瀬とその関係者にしか分からない暗号と推測しています。


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