スーパーマーケットの口戦 ◆mtws1YvfHQ


 突然だが、真庭鳳凰は食事をしていた。
 食事、と言っても何を食べているかと言えば支給された物ではない。
 地図上で言う所のG-5にあるスーパーマーケットに入り込み、そこの菓子類を色々と食べ比べしている所だった。
 と言っても己の食欲を満たす為と言う訳ではなかった。
 長期保存が効くと言う点を『忍法記録辿り』によって知り得た鳳凰が、「では味は如何ほどか」と思って食べ始めたのが切っ掛けで、

「ふむ、これもなかなか……こっちは? ――――うむ、美味い」

 と、言う具合に完全に当初の目的を忘れて菓子漁りに走っている真っ最中。
 しかも、食べ過ぎると動きが鈍くなると言う理由があるにはあるのだが、結構な量を袋に残しては床に置くを繰り返している所。
 ここに店員がいれば殴りかかって見事返り討ちにされる事だろう。

「なかなか主催者も味な真似をする……これ程の物はそうそうあるまい」

 むしゃむしゃと、誰もが一度くらいはやってみたいと思う事だろうそんな行為を平然としている鳳凰ではあったが、

「む?」

 真庭忍軍の頭領。周囲への警戒を怠ってはいない訳がなかった。
 扉が開く音がする前に、スーパーマーケットに何者かが入り込もうとしている気配をしっかりと捉えていた。
 忍びらしく静かに、床に落としていた中身入りの菓子を回収、及び見て回っていた最中に見付けた輪ゴムで音もなく封をすると、影か霞のように姿を隠した。
 後は入ってこようとする誰かが近付いて来るのを待つだけだと、そっと、二個で一対の武器を取り出す。
 それはある意味で鳳凰、及び真庭忍軍とも因縁深い物なのだが、鳳凰はそうとは知らない。
 ただそれが、かつて探し求めていた物の十二の内の一つと言う事が分かっているだけだった。



 ぼく達は今現在スーパーマーケットに到着した所だ。
 理由は真宵ちゃんの恩人の変態探しをする為に、まず一番良そうだと言う学習塾跡の廃墟に向かっている現在。
 一応その途中にある施設で会えればそこまで行く必要もないし、何か武器になりそうな物でもあれば恩の字なんだけどね。
 スーパーマーケットにそこまで期待を寄せるのも酷な話だ。スーパーマーケットだし。スーパーマーケットなんだし。
 え、何でこんなに行動が遅いのか?
 女の子二人の歩調に合わせてるのが一つ。ツナギちゃんが施設の固まっている北の方に行きたがって揉めたのが一つ。
 まあ、

「そう言う訳でスーパーマーケットにやって参った次第です」
「誰に話し掛けているんですか戯言さん?」
「いや、別に。独り言独り言」


 でもまあ、と呟き、

「予想通りかな……」

 そんな事を口に出す。軽く入り口から見ただけだけど、誰も居なさそうだし何もなさそうだ。
 予想以上にに期待外れだ。

「いーくんいーくん」
「ん、なんだいツナギちゃん?」
「おなかすいた」
「ひぃ!?」

 ツナギちゃん。真宵ちゃんに引っ付きながらのその台詞は色々と勘違いされても仕方がないと思う。
 まあ、戯言だけど。

「真宵ちゃんが急がなくても良いなら良いけど?」

 とりあえずツナギちゃんに後ろから抱き着かれている上に頭を齧られている真宵ちゃんの意思を聞いてみると、必死に頭を縦に振っていた。
 そりゃそうだ。
 その状態で拒否できる勇気は誰にもない。
 誰だってそう言う。ぼくだってそう言う。

「それじゃあ保存も効く缶詰でも探す?」
「私はお菓子の方が良いなぁ」

 手や額に口があると言っても、見た目相応の普通の女の子か。
 そう言う事でお菓子売り場に向かって進行。
 下手にはぐれると何があるかも知れないと言い含めてあるので全員一緒に。
 と言うかチームを組んだ後に別れるのって完全に死亡フラグだよね。なんて。
 そう思っていた時、

「――――ん?」

 不意に、背中に視線を感じ、振り返った。
 後ろを歩いていた真宵ちゃんとツナギちゃんが背中にぶつかっただけで、誰も居ない。

「ん? どうしたのいーくん」
「いや、何でもないよ」

 誰かに見られてる気がしたけど、気のせいか。
 それよりもさっさと貰える物を貰って立ち去る方が安全だ。
 ツナギちゃんにそう言って置く。ここで下手に不安を煽っても意味ないし。
 前を向いた。

「動くな」


 少し離れた所から、変わった形の銃を二つ、此方に向けて立つ男が居た。
 長身で、長い黒髪をまっすぐに降ろした鋭い目付きの変わった意匠の服を着た男。
 もちろん見覚えはない。
 知り合いにゴスロリ服を着ていた人は知ってるけど何処となく鳥っぽい服を着ている人は流石に。

「見知らぬ人に、ましてや初対面なのに怨みを買うような事をした覚えはありませんが?」
「怨みはないが死んでもらう」

 わーお。この人滅茶苦茶殺し合いに乗り気だ。
 首だけ後ろに動かす。
 真宵ちゃんは震えてるし、ツナギちゃんはぼくと目を合わせた。何かを訴えかけるような目。
 これはぼくが時間を稼がなくちゃ駄目な感じかな?
 仕方がないか。

「話せば分かる」
「問答無用」
「まあそう言わず。情報は入りませんか?」
「ほう…………我の役に立つ情報だろうな?」

 完全に口から出まかせだったけど、幸いにして乗ってくれた。
 その証拠に右手の銃を降ろしてくれる。
 さて、どうするか。いや、どう運ぶか。それが問題だ。

「嘘を言えばもちろん……」
「言われなくても分かってますよ。その銃でズドン、でしょ?」
「ほう……? 炎刀『銃』を知っていたとは――おぬしの言う事。嘘でさえなければ多少は信用出来そうな内容であろう」

 そう言った後、無言で先を促す動作をする。
 何やらよく分からない勘違いしてくれたおかげでぼくの利用価値が上がった。嬉しくねぇ。
 と言うか炎刀『銃』って何だよ。まあ見た目からして銃だってのは分かったけど、どんな改造施したらそうなるんだよ。
 まあいいや。それよりもまず、ここは思い切ってやってみますか。

「まずですが、この主催者は殺し合いに優勝した相手の願いを叶える気はありません」
「ほぅ?」

 よし。掴みは上々。何も言わずに威嚇射撃一発ぐらいは想定してたけど、予想以上に効果があった。
 見た目に変化はないけど、動揺している気がする。
 この調子で口先三寸で丸め込みますか。

「いきなり何を言うかと思えばそんな事……」

 さも呆れた。そう言いたげな口調。
 向こうが言い切るよりも早く、斬り込む。

「あります。なぜならぼく達もあなた……の名前は?」
「真庭鳳凰」
「ですか。鳳凰さんもこの首輪を外す手立てがありませんよね?」


 何気なく名前の情報を手に入れた。今後の役に立つかもしれないなと思いながら首輪を指先で叩く。
 爆発するのは知っている。そう、誰もが知っている。目の前で見て、知っている。
 鳳凰は降ろしていた右手の先で首輪に触れていた。
 考えれば分かる事だ。いくら優勝したとしても、この首輪が外せなければ向こうの思うまま。
 まず手始めにその現実を、突き付ける。そこから動揺を誘う。

「それでこの殺し合いの様子を楽しんだ後に、優勝者を目の前にして、バン」
「……」
「さぞ楽しいでしょうね。散々殺し合いを重ねて乗り越えて苦労して絶望して何とかして最後の一人にまでなった相手を目の前にして、その絶望の表情を眺めるのは」
「そんな事は」
「ないと?」
「…………」

 ここで押し負けるのは不味い。質問するような口調で言う。鳳凰はあっさり沈黙する。
 銃を持っている手が微かに震えているのが見て取れる。
 さて、ここからどうするか。
 口を開こうと思ったけど、何かに気が付いたように鳳凰の方が先に口を開いた。

「では何故、今まさに我に殺し合いを辞めさせようとしているおぬしの首が吹き飛ばされない? 早く殺しておかねばそれに同調する者が増えるやも……」
「はっ、そんな事――――考えれば分かる事でしょう?
 後ろの二人は不信であっても一応着いて来てるし、あなたは今この殺し合いの結末を怪しみ始めている。
 そんな状況で、そんなあなた達の目の前で、今後の弊害になるかも知れないと言う可能性のみで主催者がぼくの首を飛ばしたらどうなります?
 願いがかなうかどうかの疑いはより一層濃くなるのみでしょう。
 真実を言っているから殺されたんじゃないか? 本当は叶えるつもりなんかないんじゃないか? 『完全な人間』の創造などと言って、実は見て楽しんでるだけなんじゃないか?」
「――――――――」

 無理矢理なこじ付けだ。
 真実、本当に願いを叶えてくれるかどうかなんて知りもしない。
 けども、ぼくの言った事には、一縷の可能性を秘めているのもまた事実。
 仮にあの老人がぼくの言ってる事を包み隠さず聞いていたとしても今ここでぼくを殺せない。
 仮に、本当に、願いを叶える気が合っても、ここで殺せば逆効果だ。
 言ってるこっちとしては冷や汗ものだけどね。
 何時首が飛ばされても文句は言えないチキンレース。落ちたら死ぬ棒の上を渡っているような感覚だ。
 ふと耳を澄ませると、小さな声でツナギちゃんが何かを言っているのが聞こえるが、鳳凰はそれに気付く様子もなし。首尾は上々か。
 さて。沈黙を保つのももう良いだろう。
 あんまり長過ぎると、気付くかも知れないし。


「――そして実に運の良い事に、今ぼくの目の前に銃を突き付けているあなたが居る。
 あの老人にとっては、ぼくの口が開かなくなる願ってもない好機でしょうね?
 上手く行けば自分で首輪を爆発させるまでもなく終わりなんですから。
 まあ、もう一つとしてはこれに盗聴器が付いてないって可能性もないではありませんが」

 さり気無くもう一つの可能性を入れて置いても、鳳凰はもう聞いてない。
 もしもぼくの言っている事が真実だと考えたとすれば、首輪を爆発させるにさせられない訳には一応の納得できるはず。
 それに今は、ぼくの言った通り口を閉ざしたければ爆発させるまでもなく鳳凰が引き金一つ引けば良いのだから。
 実に簡潔。
 ここで鳳凰がぼくを殺せば今までぼくの言った事が本当か嘘かも分からないまま老人の前に立つ事になるかも知れない未来。
 しかしここで、目の前に三人も獲物が居て、その三人全員を殺す事が出来たとしたら優勝には一気に近付けるかも知れない仮想。
 無意味に終わる未来と、言う事無しの終末。
 確固たる証拠がない以上、どちらになるかも分からない。
 思考の板挟み。
 その先は、考えれば考えるほど実に明快で難解な思考の泥沼だ。
 無感動にその様子を眺めていると、後ろから服を引っ張られた。

「まあ全部」

 今まではまだ分かり難かったが、今はそれなりに動揺を見せている鳳凰を無視して後ろに振り返る。
 向こうは撃って来ない。
 相変わらず不安そうな表情の真宵ちゃんと、何かを言いながら、しかし笑みを浮かべるツナギちゃん。
 引っ張ったのはどうもツナギちゃんらしい。気付かなかった。戯言だけど。
 小さく頷いて前を向く。

「戯言だけどね」
「――しるど!」

 言ってる途中で、遮るように、高らかに、叫びながらツナギちゃんがぼくの前に飛び出した。
 一瞬鳳凰はそれに動揺したようだ。引き金を引こうとする手には迷いがあるように見えた。
 そんな中、ツナギちゃんの着ている衣服が内側から引っ張られているように収縮し、次の瞬間にはびりびりと音を立てて独りでに引き裂かれる。
 そして、

「――――!」
「な、ぁ――――!」
「ぎぎ」

 鳳凰は驚愕の声を上げた。ぼくも上げそうになったけど。
 服が破れて見えたツナギちゃんの肌には、身体には、身体中には、牙を剥き出しにした口が大量に、まるで始めから存在していたかのように、あった。
 それらは、共鳴するように。共振するように。
 全身の口が、吼える。
 全身の牙が、奏でる。


「ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
 ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ」

 貪欲そうに。強欲そうに。
 ただただ、喰ってやる、と。
 髪の毛一本から骨の髄まで余す事無く全て貪り喰らってやる、と。

「くっ――ぅ!」

 そして、真庭鳳凰は銃の引き金一本も引――かず、拍子抜けするほどあっさりと、しかし途轍もない速さで逃げて行く。
 あとには、全身の口を不気味に鳴らすツナギちゃんと、命拾い出来て一安心したぼくと、あまりにもショッキングなツナギちゃんの姿に気を失った真宵ちゃんが残った。
 手持無沙汰そうに口が、もといツナギちゃんがこちらに振り返る。

「おなかすいたわ」

 ……やべえ。その姿で言われるとまじこえぇ。
 と思った内心を毛ほど見せず、に居れたと思うが、とりあえず丁度見えている鮮魚コーナーの方を指差す。最早口の塊と表現出来そうなツナギちゃんがそちらの方へと歩いて行った。

「……さてと」

 真宵ちゃんの様子が心配だ。
 よく見なくても気絶しているだけみたいだ。
 一安心。一安心。
 ……安心。安心。安心院。

「いや、誰だよそれ。しかも読み方違う気がするし」

 自己ボケ。自己ツッコミ。まさに自給自足。
 うん。ぼくはそれに忙しいから。だから鮮魚コーナーの方からする何やら凄まじい音が聞こえる気がするけど聞こえない。
 聞こえません。聞きたくありません。
 いくらなんでも全身口だらけの女の子が冷凍マグロを骨ごと喰ってる姿は直視できません。
 勘弁して下さい。
 こればっかりは本当に、戯言じゃなくて。


「…………あ」

 そうだ。一応盗聴器とかで聞かれてた場合の対処をして置かないと。
 どうも付いてない気はするけど防衛線は張って置かないと、後々一人になった時に首輪が爆発してリタイアとかなったら洒落にならない。
 主催者側から結構ぼくって危険思考って思われてるかもだし。

「えー、今まで言っていた事は全部戯言です。信じないようにお願いします」

 これで、良し。
 これで唐突に首輪が爆発とか言う事態にはならないだろう、と思いたい。
 なっても頭と体がお別れしてたら泣くに泣けない。
 まあ、戯言なんだけどね。




 真庭鳳凰は歩いていた。
 見た目には何ら感情は見てとれないが、頭の中では先程の会話が渦巻いていた。
 あれは全てが全て否定はできない。
 しかし全てが全て公定も出来ない。
 だから全てが嘘でも本当ではない。
 混ざりに混ざってややこしい。
 どれか判明しても他の解明には繋がらない。
 そうそれはまるで、戯言のように。

「ぬぅ…………」

 一度確かに決めた事。一度夢見て終わった事。それが叶うのならと思った事。その為にあえて無視していた事。
 見たくない物を見せられ、しかし目を背けるに背けられない。鳳凰は悩む。
 しかし、呻いても、考えても、何しても、思考の沼から抜け出せない。
 思い悩んで五里霧中。
 道に迷って千里行。
 掴んでも掴んでも掴めない。
 行けども行けども行き着かない。
 どうにも、ならない。
 どうにも、できない。

「む、そうだ」

 そんな中、鳳凰は思い付いたように声を上げる。
 鳳凰の持つ技術の中に、首輪に関して深く知り得る事の出来る物があった。
 それは、


「忍法記憶巡り」

 言いながら、左手の先で首輪に触れた。
 手は時々動かす物のそれ以外は全くと言って良い程動かずに立つ事数分。

「なるほど……」

 無意識に閉じていた目を開けながら、

「…………まるで分からぬ」

 鳳凰はそう呟き、首を傾げた。
 まあ無理もない話だ。昔の技術と今の技術では差があり過ぎる。
 それは、刀鍛冶に筵を織れと言っているような物で、あまりにも違い過ぎる。
 時間があれば解決も出来るかも知れないが、生憎、時間はない。
 訳が分からないからと言って真庭鳳凰は止まれない。歩かなければならない。
 例え霧の中を進むような事でも、目的の為に。
 真庭の里復興の為。神と呼ばれたしのびの鳳凰でも今は、歩くしかない。
 例え最後に、己の首が爆ぜる結末になるかも知れなくとも、

「……………………」

 この首輪がある限り。



【1日目/黎明/G-6】

【真庭鳳凰@刀語】
[状態]健康、混乱
[装備]炎刀『銃』(弾薬装填済み)
[道具]支給品一式(食糧なし)、名簿、懐中電灯、コンパス、時計、菓子類多数、輪ゴム(箱一つ分)、ランダム支給品1~5個
[思考]
基本:優勝し、真庭の里を復興する
 1:東へ向かう
 2:本当に願いが叶えられるのかの迷い
[備考]
 ※時系列は死亡後です。
 ※首輪のおおよその構造は分かりましたが、それ以外(外す方法やどうやって爆発するかなど)はまるで分かっていません。




「う、うーん……」
「あ、起き」
「はにゃあ!?」
「あべし!」

 目覚めてすぐに真宵ちゃんは妙な声を上げた。
 まあ目の前にツナギちゃんの顔がドアップであったんだから分からないでもないけど、そこからお互いの頭をぶつけるお約束の展開まではいらないんじゃないかな。
 お約束過ぎて普通の反応しか持てない。

「おぉぉぉぉぉ……」
「おぉぉぉぉぉ…………はっ! あの人は!」

 慌てた様子で頭を抑えながら真宵ちゃんは辺りを見回す。
 しかし今のスーパーマーケーットにはぼく達以外に誰も居ない。
 そこでツナギちゃんと相談して、一計案じる事にしたのだ。

「あの人って、誰?」
「え? い、いやですねー戯言さん。あの真庭鳳凰って人ですよ」
「真庭、鳳凰? うーん……ツナギちゃんは知ってる?」
「いやー、そう言われてもね?」

 二人で首をかしげ、顔を見合わせて見せる。

「い、いやいやいやいやいや。あの、ここに入って少ししてから戯言さんに銃を向けた人ですよ!」
「……なに言ってるんだい真宵ちゃん」
「ふぇ?」
「きみはスーパーマーケットに入ってすぐに倒れたんじゃないかッ!」
「えぇ!?」

 背景に文字が浮かびそうなオーヴァーリアクションを見せる。
 その一計とは、嘘を刷り込ませる事だ。
 今の真宵ちゃんにはツナギちゃんに対してそこまで警戒はしていないようだけど、先程の全身口だらけのあれを思い出したらどうなるか分からない。
 最悪の場合はぼく達の目を盗んで逃げ出すかも知れない。
 そうなれば、こう言う状況下での死亡フラグでしかないそれを立てた真宵ちゃんは最悪見付けるまでの間に死んでしまう。
 所詮はフラグかも知れないけど、立てないに越した事はないし、本当に死んじゃったら如何にもならない。
 流石にそれはちょっと、心が痛む。
 戯言だけども。
 まあそう言う訳で、寝てる間にどうするか相談して決めたのが、嘘を刷り込む事だった。


「多分心労か何かだろうね。
 いきなりこんなのに巻き込まれたって言うのもそうだろうし。
 恩人の暦君を探さなくちゃもだしで、神経が参っちゃったんだと思うよ?」

 とりあえずもっともらしい事を言っておく。
 幸い嘘の刷り込みは成功したようだ。
 微妙に納得してない風ながらも、とりあえず真宵ちゃんは頷いた。
 ぼく達は表に出さないよう心の底で一安心する。
 真宵ちゃんの次の言葉を聞くまでの間は。

「ではなぜ戯言さんは上が裸で、ツナギさんは戯言さんの上だけ着ているんですか?」
「………………」
「………………」
「――――――」
「――――――」

 咄嗟にアイコンタクト。しかし、通じなかった。
 やべえ、それは考えてなかった。
 いや、そもそもこれはツナギちゃんが悪いんだし。
 服着たまま口だらけの姿に変身すれば服がびりびりになるのが分かってたのに脱がなかったツナギちゃんが悪い。
 その上で変身を解いてから、「服は?」って聞いたぼくの頬を引っ叩いて無言で服を脱がせたツナギちゃんが悪いんだって。
 だけどあれは夢だったって言った手前そんな事言う訳にも行かないし。
 ちくしょう。なんでスーパーマーケットには服が無いんだ。せめてパンツやらそう言う物だけでも良かったのに。
 と言うかデパートの一つや二つあってもいいだろ。主催者、何考えてやがる。

「――――男は皆、野獣なのよ」
「ちょ!」

 唐突に何を言うんですかツナギちゃん。
 誤解しちゃうでしょうが。と言うかそんな誤解は間違ってもされたくない。
 だから真宵ちゃんも無言で距離を取らない。

「戯言さんも阿良々木さんと同じなんですな……」
「ごふぁっ!」

 あまりの衝撃発言に変な声が出た。
 ぼくのハートにダイレクトアタック。いや、それどころかオーヴァーキルもいいとこだ。
 しかも追撃とばかりに、「軽蔑しました」みたいな目。
 もう止めて、ぼくのライフポイントはもうゼロです。
 何だか分からないけど許して下さい。


「気を付けなよ真宵ちゃん? 私が出来るだけ守ってあげるけどさ」
「あ、はいっ、お願いします!」

 ツナギちゃん、酷い。
 せめてフォローの一つや二つくれても良いじゃないか。
 と言うか今ぼくが精神的大打撃を受けたのってツナギちゃんが原因だよね。

「それよりも急ごう。あ、お菓子食べる?」
「おお、是非ともいただきます」
「…………………………」

 結局ぼくが悪者みたいな雰囲気でスーパーマーケットの外に向かって進み始めちゃったし。
 弁解は諦めて着いて行く。
 ぼくが後ろに立っても真宵ちゃんは何も言って来ないし、冗談って受け取ってくれたのかな?
 なら良いんだけど。っていや、良くないし。いろんな意味で不味いし。
 全く本当、

「なんて、戯言だよ……」
「どうしました戯言さん。急ぎましょう?」
「はいはい」




【一日目/黎明/G-5スーパーマーケット前】
戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康、上半身裸
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)、お菓子多数、缶詰数個
[思考]
基本:殺し合いをする気はないし、あの爺さんをどうにかする気もない。
 1:真宵ちゃんとツナギちゃんと行動
 2:暦君を探す
 3:学習塾跡の廃墟
 4:友はどうしているかな
 5:ツナギちゃんは一応信用出来そう
[備考]
※ネコソギラジカルで西東天と決着をつけた後からの参戦です。

八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:殺し合いはしない
 1:戯言さん、ツナギさんと行動。戯言さん……
 2:ここにいたら阿良々木さんを探す
 3:学習塾跡の廃墟に向かう
 4:あれは夢だったんでしょうか
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。

【ツナギ@りすかシリーズ】
[状態]健康、満腹、下半身裸
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)、お菓子多数
[思考]
基本:襲ってくる奴は食らう
 1:面白そうなのでいーくん、真宵ちゃんと行動
 2:二人との親睦を深める
 3:タカくんとりすかちゃんがいたらそっちと合流する
 4:学習塾跡の廃墟に向かう
 5:なんか食欲が落ちてる気がする
[備考]
※九州ツアーの最中からの参加です
※魔法の制限に気づいています(どのくらいかは、これ以降の書き手さんにお任せします) 
※処理能力の限度についてもこれ以降の書き手さんにお任せします



[備考]
G-5のスーパーマーケット内の鮮魚コーナーは全滅しました(品物的な意味で)。
お菓子コーナーからは多少のお菓子、それと缶詰などが持ち去られています。


+から堕ちた者と-に認められなかった者 時系列順 知られざる英雄(知られた英雄)
+から堕ちた者と-に認められなかった者 投下順 知られざる英雄(知られた英雄)
今、再び語られる物語 真庭鳳凰 骨倒アパートの見るものは
一寸先は口!? 戯言遣い いのじキャット
一寸先は口!? 八九寺真宵 いのじキャット
一寸先は口!? ツナギ いのじキャット

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最終更新:2012年10月02日 08:32