魔のつく二人の人探し ◆mtws1YvfHQ


 男と少女は出会った。
 それだけに過ぎない。
 共通点なんて何もない。
 無理にあると考えれば、それは別称ぐらいのものだろう。



 出会ってからしばらくの間、どちらも口を開かなかった。
 男はじろじろと無遠慮に少女を観察し、少女は威嚇するようにカッターナイフの刃を出したり戻したりしていた。
 殺伐とした、とまでは行かないまでも、馴れ馴れしいには程遠い雰囲気。
 重いとも軽いとも言い難い空気の中で、それを打破する為か、まず男の方が口を開いた。

「きみは何処から来たんだい?」

 少ししてから少女は口を開いた。

「クラッシュクラシックの方からなの。あなたは?」
「喫茶店の方からさ」

 少女はカッターの刃を出し、納めて、後ろ手に回すと、男を見据えた。
 それに対して男も、人が良さそうに笑って見据える。

「そうなの。聞きたい事が少しあるけど良いの?」
「構わないよ、こちらも聞きたい事があるからね」

 そんな風に、普通に会話は進んで行く。
 異常な状況下の筈なのに、異常な状況下に置かれた人間とは思えない、異常に冷静と言うべきか、異常に淡々とした調子で、会話は進んで行く。
 どちらも相手を信用しているから、なんて、甘い考えが元になっている訳がない。
 どちらもいざという時には逃走経路と方法を、確認して、あるいは確保して、会話しているのだった。
 例えば男の方は、何通りもの遮蔽物を利用した逃走経路を確認済み。
 例えば少女の方は、何時でも腕を切れるようにカッターナイフの刃を出していた。
 つまりどちらも逃げられる、逃げ切れる自信があっての会話だった。

「まずは名前を言って置こう。僕の名前は黒神真黒だ、よろしく」
「よろしく。水倉りすかなの」
「ああ、よろしく。早速だけど今まで誰かしら見なかったかい?」
「見たの。クラッシュクラシックって言う所と箱庭学園って言う所で見たの」
「どんな人を?」

 間髪を入れず、真黒は聞き返した。
 だが、りすかは首を振ってそれ以上は答えない。

「残念だけど、わたしの質問を答えて貰ってからがそれからなの」

 少し焦り過ぎたかと思わず舌打ちしそうな顔を一瞬したが、何事もなかった様に、唸る。

「むむむ…………まあ良いけどどんな?」
「簡単なの。わたしぐらいの男の子を見なかったか聞きたいのが質問なの」
「君ぐらいの年の子かい? 見なかったね」

 条件反射のような速さで、真黒はその質問の答えを返した。
 僅かに経ってから言ったのは、

「本当なの?」

 と言うまるで、一応聞いて置きますね、と言うような実に在り来たりでやる気の感じられない言葉。
 対して、真黒は誠意を見せる為なのかしっかりと答える。

「見たのは健全な中学生男児一人、妹一人だけさ。あとは死体を二つばかり見たけど、幸いきみの言った条件には合致してないよ」

 嘘を混ぜていない真黒の答えに、納得したように、ただし期待外れかと言うような顔をしてりすかは頷いた。
 少し待ってから、無言で真黒は見返りを求める視線をりすかに向ける。
 軽く肩を竦めはしたものの、出し惜しみする様子もなく、りすかは口を開いた。

「男に会ったのは、クラッシュクラシックと箱庭学園なの」
「どんな?」
「えっと、男が燕尾服を着た人と上半身裸の人なの」

 期待外れかと溜息を付きそうな顔をした真黒だが、ふと何か思い至ったのか口を開ける。

「髪の色は?」
「んー……黒なの」
「そうかい、ありがとう。助かったよ」
「助かったのはわたしなの」

 そしてあっさりと別れる。
 と、思いきや、それぞれ別々の方向へと向かおうとする途中で、真黒が思い出したように声を掛けた。

「ところで、人探しなら端の方に行くよりも中央に方に行くのをお勧めするよ?」
「分かってるの」
「なら一緒に行かないかい? 一人より二人ってよく言うだろう? 単純な人探し以外にも色々してあげるよ?」

 良いアイディアだろうと言わんばかりの真黒。
 それにりすかはあっさりと首を振った。

「悪いけど、あなたみたいな怪しい人の怪しいセリフに乗って付いて行く趣味はないから遠慮だけするの」
「そうかい……残念だ」

 何気にひどい事を言われた真黒。
 にも関わらず、特に残念さを感じさせない口調で真黒は軽く笑って、

「それじゃ、探し人が見付かる事を祈ってるよ」
「祈っててあげるのが、わたしなの」

 りすかも小さく笑い、お互い軽く手を振り合って、二人は、名残惜しさを欠片も残さず、何事もなかったような顔をして、別れた。
 その二人が内心に思う事は一緒だった。
 襲って来ずに良かったと、逃げる手間がなくて良かったと、そう思いながら、二人は各々の人探しを再開した。
 片や、愛妹を救うために。
 片や、命じられるために。
 何処に居るかも分からない探し人を探し続ける。
 二人の運命を変えるかも知れない放送が間近に迫っていても、関係無いと、その程度些事だと、探し人が簡単に死ぬかと、そう言わんばかりに歩き続ける。
 急がば回れと言うように。



 別称。
 片や、『解析』の異常を持つ黒神真黒は、『理詰めの魔術師』。
 片や、何れは時間を操る魔女水倉りすかは、「赤き時の魔女」。
 『魔術師』と「魔女」。
 魔のつく二人。
 偶然出会っただけの二人。
 この出会いに何か意味があったのかどうか。
 それはまだ、分からない。



【一日目/早朝/B‐3】
【黒神真黒@めだかボックス】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:めだかちゃんを改心させ、不知火理事長に会う。
 1:めだかちゃんを直すために、人吉君、阿久根君、喜界島さんのうち一人でもいいので仲間にする。
 2:とりあえずは箱庭学園を目指す。
 3:もし誰もいなかったらその時は…?
[備考]
 ※「十三組の十三人」編のめだかちゃん(改)と人吉善吉が戦っている途中からの参戦です。



【一日目/早朝/B-3】
【水倉りすか@りすかシリーズ】
[状態]健康 、腹七分目、出血(極小)
[装備]カッターナイフ
[道具]支給品一式×2(片一方の食糧、乾パンは食べました)、ランダム支給品(0~2)
[思考]
 1:まずは、相棒の供犠創貴を探す。
 2:この戦いの基本方針は供犠創貴が見つかってから決める。
 3:今は黒神真黒の言っていた事を信じておいて、西東診療所の方を見に行く。
[備考]
※新本格魔法少女りすか2からの参戦です。
※治癒時間、移動時間の『省略』の魔法は1時間のインターバルが必要なようです。(使用可能)
 なお、移動時間魔法を使用する場合は、その場所の光景を思い浮かべなければいけません。
※大人りすかについての制限はこれ以降の書き手にお任せします。


鷹と剣士の凌ぎ合い 時系列順 オオウソツキ
鷹と剣士の凌ぎ合い 投下順 あの人ならきっと
喫茶店でのお知らせ 黒神真黒 多問少択
時、虚刀、学園にて 水倉りすか 疑心暗鬼(偽信案忌)

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最終更新:2012年10月02日 08:44