喫茶店でのお知らせ ◆xzYb/YHTdI


 Ⅰ

ぼくは逃げ切ったようだ。
あの化物から。化物のような人間から。
イエイ。
まぁとはいってもあっちから退け言われたから追ってくる可能性も少なかった訳だが。
けど、ぼくは九死に一生を得れたみたいだ。
まだどうなるかわからないけどね。
―――それにしても、ぼくは何だってあんな『異端』。それも二人と出遭ってしまったのだろうか。
ぼくは自慢にもならないが、一般人のつもりだ。
いかれた偽物と称されようが、ぼくは力も知恵も財力も何もない。非力な一一般人だ。
偽物は本物に勝ることは無い。
愛情に包まれようが、本物と騙されようが、量産できようが、偽物は偽物。
ぼくに負かされる人間などいるのだろうか。
そんなことを思うことを許されるぐらいぼくは弱い。脆い。儚い。醜い。
まぁそれを本気で思っているかは別として。
なんて前置きなのかが不明だけど、喫茶店にぼくは到着した。
おや、明かりがついてる。
―――ぼくの他にここに誰かいるのかな?
異端異端と来て、ぼくもさすがに学習する。
武器なんて無いから、どうしようか。
もう、人に会うのは避けたいところだ。
ならば簡単だ。
違うところに行こう。
そう思い振り返ったとき。

チリンチリン

ファミレスや喫茶店独特の鈴の音がぼくの耳に響いた。
ということは―――まさか………。

「ん?おや、君は誰だい。何でもいいんだけどねちょっと話を聞きたいんだ」

少し痩せたような長身の男がそこにいた。
後で聞いた話だと、黒神真黒という人物だった。

 Ⅱ

その後ぼくは流されるままにとりあえず喫茶店内に入っていった。
………だって、この人敵意は無いからって言って、
ディパックをぼくに渡し、服を脱ぎだしたんだよ。
信じるかどうかは別として、――――まぁ害は無いのかな?服も調べて見たが武器になりそうなものは入っていなかったし。
そしてそれ以上に明らかに先ほどまでの二人と違った。勘に近いものなんだけど。
そんな感じでグダグダだけど、今の今までお互いのこれからの情報を交換していたところだった。

「ふむ中学生か。なら妹じゃないな」
「何の話ですか」
「いや、何でもないよ、串中君」

そこで、真黒さんは嘆息し、

「しかし僕の妹の世話になったようだね。本当に申し訳ない」

ぼくの撮影した写真を見つめながら、真黒さんは、そう言った。
ぼくにカメラを返して、そしてこうとも言った。

「本来はあんな子じゃないんだよ。正義感の塊で、主人公の鑑ともあれた子なんだ」

とてもじゃないが説得力の欠片もないよ。
なにせさ、

「殺されかけたんですけどね」
「――――黒神めだか〈改〉。やっぱりまだ人吉君も直せてないみたいだね。仕方ない気もするけど」
「その善吉君とは?」
「うん?あぁ、人吉善吉。『普通』の男の子。―――そしてめだかちゃんのもはや故意に恋すら通り越した間柄の子だよ」
「そうですか」

ダジャレ?
この場面で?――――わざとじゃないんだろうね。きっと。そう思いたい。
―――まぁいいや。
しかしその善吉さんは何をやっているのやら…………。
まさか女の子といちゃいちゃでもしてるのかな?――――何てね。

「――――それはそうとして、僕もそろそろ動かなきゃ。いたら人吉君とか探さなくちゃね。あぁそうだ、ここには誰もいないよ。僕が隅々まで調べておいたから」
「そうですか、ではぼくはもう少しここにいようと思います。疲れましたし」

そして真黒さんは服を着て(今まで脱いでた)、ぼくからディパックを求める。
別に拒否する理由もないし、渡す。
その代わり、

「真黒さん。突然で申し訳ありませんが、写真を撮らせていただいてもいいですか?」
「ん?あぁいいよ!さぁ!思う存分僕の華麗なる姿を撮ればいいよ!!」
「………では」

パシャ

顔以外撮らない。
せっかく着ていた服を脱いでくれたけど、撮らない。というかいらない。
それにブーブー文句も言われた気がするが生憎ぼくの耳に届かなかった。
しかしこの人。―――――妹があんななのにどうしてこんなに元気なのだろうか。
ぼくも、こぐ姉が死んだ時、一週間閉じ籠ったのに。記憶までもが飛んだというのに。
――――――いや、逆か。こういうときだからこそ、落ち込んではいられないのだろう。
ぼくが自発的ではなかったが犯人捜しを試みたように、真黒さんは今自分がやるべきことが見通せている。
だから、めそめそ落ち込んではいられなかったんだろうな。
ぼくみたいなのがこんな風に解説キャラをやれるわけないのでおおよそ外れているのかもしれないけど。
解説って難しいな。
病院坂先輩はよくこんなことできたものだ。あんな分かりやすい図まで用意できるくらいだったもんなぁ。
到底及ばないな。
そこで、一旦思考を止める。
真黒さんが出かける準備ができたようだから。

「じゃあ僕はもう行くね。仮にここに人吉君、阿久根君、喜界島さんが来たら、伝えてやってくれ。
―――――うーん、そうだなぁ。まぁ、三人とも敵意を向けなければ攻撃をしてこないだろうから」
「分かりました」
「あぁあと僕のことは気にせずめだかちゃんを戻してやってくれ。とも伝えてくれない?」
「いいですよ。そのぐらいなら。ただしそれ以外はぼくはやる気はありませんよ」
「いいよ、それで。――じゃあ僕は行くから」
「そうですか。では、また会えることを祈ります。現世で」
「物騒な事言わないでよね。―――――でさ、ずっと気になっていたんだけど」
「何ですか」
「何で女装してるの?」

「…………禁則事項です」

ぼくは某未来人の仕草をしながら、某未来人のセリフを吐く。
その姿に、

「萌えッ!」

真黒さんはそう叫んだ。
………ふや子さんごめん。こんな気持ちだったんだね。
心からそう思った瞬間だった。

 Ⅲ

真黒さんが去って、数十分。ぼくは今厨房にいる。

武器が多そうだからね。
その予想通り、いいものがあった。

「包丁か………」

そう言えばさっきの刀はどうなったんだろうか。
まぁ、奪われたものは仕方ない。ほら、ぼくもそんな執念深い方じゃないし。
未来を見据えないと。
………というかぼく、さっきから現地調達が多すぎるな。
思ったところでどうしようもないことだけど。
だって二つの支給品どちらも奪われたんだよ?どうすることもできないじゃん。
そして、この包丁をディパックに入れる。
次に手にしたのは、鍋のふた。
…………ゲームじゃないんだから……。
そりゃ、まぁガタイが良ければ、盾にならなくもないけれど………。
いいや、もっておいて損は無いかな。
その時。

チリンチリン

再び、喫茶店の鈴が鳴る。
あれぇ?意外と繁盛するなぁ。場所変えて見るか。
うん、そしてみようか。

「おーい!誰かねぇのか!」
「全く、そんなこと叫んで後ろからズガンとされるのが落ちよ」
「ちょっと叫んだだけだろうがっ!!」

何やら賑やかだった。
けど油断はしない。
…………けどいつまでもここでうろうろする訳にはいかないだろう。
これが人吉さんだったり、阿久根さんだったり、喜界島さんだったり(それにしてもなんか聞いたことのあるような名字だなぁ)したら、
ぼくもさすがに頼まれた以上、気が引けるだろう。
まぁしかし、どっちにしたって出るには、あそこの鈴の鳴るドアからしか出入りはできない。
窓は、ぼくの手の届かない部分にある。台などを使ってもきっと無理な位置にある。
だから、ぼくは、厨房から飛び出して、

「こんにちわ、いやこんばんわ。初めまして。串中です。殺し合いには乗ってません」

できるだけ自然を装って、邂逅する。
それは二人組だった。
一人は、茶髪の目つきの悪い男性。
一人は、紫がかったロングの髪をした女性だった。
どっちも高校生ぐらいな感じだった。

「女装………?まぁいい。俺は人吉善吉。殺し合いには乗ってねぇ」
「私は戦場ヶ原ひたぎよ。人吉君と同じって言うのも嫌だけど殺し合いには乗ってないわ」
「何でだよ!」
「あら?じゃあ殺し合いに乗りましょうか」
「そっちじゃねぇよ!というか目の前に思いっきりいじってくださいって感じの奴がいるだろうが。何でそっちには何も言わないんだ!」
「そういうのはほっとくのが一番の攻撃なのよ」
「最悪だ―――――――――!」

そうしてなんか弾丸のように言葉が炸裂し合う。
大概どうでもいい話だったけど。
――――――さて、さっそく来たか。人吉さん。
ならばぼくは仕事を果たさなきゃね。

「さっそくですが、人吉さん。ぼくはあなたに話さなければいけないことがあります」


「おぅ。なんだ串中」


「――――めだかさんを止めてください」


それはぼくとしても切実な願いだった。
それに、人吉さんは、

「は?めだかちゃんが何だって?」
「だから〈改〉を取り払ってください。無印めだかさんにしてください」
「〈改〉って何よ。まさか自分が特別なんて思っている中二とかそんな感じなのかしら」
「いや、ちょっと待てよ串中。俺にはもちろん思い辺りはある。―――が何故お前がそれを知っているんだ?」

まぁその問いは来るだろうなぁと予想は安易にできたので、ぼくはポケットからデジカメを取り出す。

「これを見て御覧。二人の人間がいるはずだよ。――――もう分かってくれたかな?」
「えぇ。包帯に巻かれた変態に、裸の変態に、そして目の前には女装の発展途上の変態が確認できたわ」
「触れないんじゃなかったんですか」
「人には約束を破らなければいけない時もあるのよ」
「約束軽過ぎだな、おい」

人吉さんが突っ込む。
その顔は青ざめていた。

「な、なぁ。串中。お前、めだかちゃんに襲われたのか?」
「はい、何故だか切れない刀を奪われましたが」
「よかった、無事で」
「はい――――いきたいところなんですが、ぼくは既に学ラン男に襲われましたし、途中死体を見かけました」
「――――――っ!ど、どんな奴だった!?」
「黒髪にアホ毛があった男の人です。隣には金髪の美女が死んでいました」

と。
ここで。
今度は。
戦場ヶ原さんが。
青ざめていった。――――いや、それを隠そうと必死になっていた。

「―――――そう、それはどの辺にあったの?」

声は震えている。―――もしかしなくても知り合いだったのか?

「地図にすればB‐2です」
「ありがとう、串中君。人吉君行くわよ」
「お、おい!ちょっと待て。まだこいつに聞きたいことがある」
「――――分かったわ。すぐに終わらしなさいよ。向こうに行ってるわ」

というとスタスタと奥の方に歩いて行った。
それを目で追って見えなくなった辺りで人吉さんは話し始める。

「―――そうか、で、だ。あんまり中学生かな?にこういう話持ち込むのもなんだがな」
「仕方ありませんよ」
「そう言ってくれると助けるよ。――――でだ、真黒さんは何て言ってたんだ」

「僕に構わずめだかちゃんを解放してやれ。とのことだよ」
「そうか。分かったありがとよ」

といって、戦場ヶ原さーん。と呼びかけ、出ていく準備を始める。

「ん?ここに何しに来たんですか?」
「いや、ただ人がいるか確認しにきただけだ」
「そうですか」

と、ここで、戦場ヶ原さんが帰ってきた。

「ごめんなさいね。私としたことが少し取り乱したわ。行きましょうか」
「――――――あぁ。串中はどうする?一緒に来るか?……いや、来ない方がいいか」
「えぇ、元からそのつもりです」

もう二度と会うか。あんな化物に。

「じゃ、俺たちは行くな。生き残れよ串中」
「もちろんです」
「串中君、じゃあね」
「はい」

そして二人は立ち去った。
………ぼくも行くか。
そうだなぁ――――展望台かな?
うん、行こう。ぼくの知らない物語に関与しないために。


【1日目/早朝/A‐3】
【串中弔子@世界シリーズ】
[状態]健康
[装備]三徳包丁@現実、鍋のふた@現実
[道具]支給品一式、、小型なデジタルカメラ@不明、応急処置セット@不明
[思考]
基本:できる限り人と殺し合いに関与しない。
1:展望台に行く。…というか人が集まらければどこでもいい。
[備考]
※デジカメと応急処置セットは現地調達です。
※デジカメには黒神めだか、黒神真黒の顔が保存されました。


◇ ◆

めだかちゃん。
俺にとって大事な人だ。
殺したくない。ころしたくない。コロシタクナイ。
どうして。どうして。どうして。
そして―――――


俺はどうすればいいのだろうか。


再び俺はこの疑問が脳裏に蔓延る。
だけど向こうは俺を殺しにかかるだろう。
俺はそれをどう対処するのか。


俺は
俺は
俺は
おれは
おれは
おれは
おれは
オレハ
オレハ
オレハ
オレハ
めだかちゃんと対峙した時、どんな反応を見せるのか。分からない。
そして戦場ヶ原さんも、危ない。
あの反応は、もしかしなくてもあれだろう。
知り合いが死んだんだ。
それもかなり重大な位置に君臨していたもの。


例えば、恋人とか。


俺は、どうすればいいのか
戦場ヶ原さんはどうするのか
俺は



―――――――――。



【1日目/黎明/A-3 喫茶店内】
【人吉善吉@めだかボックス】
[状態]球磨川に対する恐怖(抑えている)、精神疲労(中)
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:不知火理事長を止める。
 1:………戦場ヶ原とともに行動。
 2:………B-2に向かう。
 3:………箱庭学園にも行ってみたい。
 4:………もしまた球磨川に会ったら…?


【戦場ヶ原ひたぎ@物語シリーズ】
[状態]右足に包帯を巻いている 、精神疲労(小)
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:とりあえず殺し合いには乗らない。
 1:………人吉君と行動。
 2:………万が一阿良々木くんが殺されるようなことがあれば、
  殺した奴を殺す。
 3:B‐2に行く


◇ ◆

僕は歩く。
皆を探しに。
妹を戻す為。
だけども道中誰とも会うことは無かった。
……。
箱庭学園に行こう。
誰かいるかもしれないし


【一日目/早朝/A‐3】
【黒神真黒@めだかボックス】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:めだかちゃんを改心させ、不知火理事長に会う。
 1:めだかちゃんを直すために、人吉君、阿久根君、喜界島さんのうち一人でもいいので仲間にする。
 2:もし誰もいなかったらその時は…?
[備考]
 ※「十三組の十三人」編のめだかちゃん(改)と人吉善吉が戦っている途中からの参戦です。


障り猫逆怨み 時系列順 天災一過
障り猫逆怨み 投下順 天災一過
+から堕ちた者と-に認められなかった者 串中弔士 狐のきまぐれ
異常(アブノーマル)の思考、そして考察 黒神真黒 魔のつく二人の人探し
+と-、二人の考え方 人吉善吉 オオウソツキ
+と-、二人の考え方 戦場ヶ原ひたぎ オオウソツキ

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最終更新:2012年10月02日 08:34