帰り道――――120%悪巧みで書かれた小説です―――― ◆xR8DbSLW.w
◎ ◎ ◎
「過負荷って何だと思う」
「知りません、過剰な不可思議の略なんじゃないですか。
身近に一人は欲しいですけれど、そんな満足いくような人は中々いませんし。
右往左往するのも納得かもしれませんね。よっぽど大変なのでしょう」
「求めているんじゃなくて、見下したいだけなんじゃないの。だからみんな大変なんだよ。
案外みんなは自分に醜いところはないと思い込んでるし、いや思い込みたいのからかな。自分より下に人がいると、安心するからね」
「あなたは、どうなんですか?」
「ぼくは普通になりたいよ」
「よくそんなへらへらと言えるものですね」
「きみはどうなの?」
「わたしは既に手遅れですよ。何に関してもです」
「そりゃあよかったね――――いや、悪かったのかな」
「ですかね」
◎ ◎ ◎
なぜこうなった、と訊かれたらぼくが聞きたいと疑問を疑問で返す真似をするだろう。
なんでこんな真宵ちゃんは溌剌としているんだろう、とは心の中では思うけれど、やはり無茶をしているとは傍目から直ぐに分かる訳で。
けれどぼくがなにも言えないのは、真宵ちゃんが、いい意味で暦くんのことを吹っ切れた。
いや、多少なりともまだわだかまりはあるだろう、けれどそれを感じさせないほど、元気でいてくれている。
それが例え無茶でも、もしくは苦茶でも、二つ合わさって無茶苦茶でも。
いい切っ掛けだと信じて。ぼくは放置している。
「ていうわけで、コミカルにいきましょう、コミカルに。暗いのばかりでは疲れます」
「うん、そうだね。時たまには空気を読まず笑い飛ばすのもいいかもしれないね」
まあそんなかんじで、真宵ちゃんが笑いながら、
笑みを浮かべ――――貼り付けながら、喋りかけてくる。ぼくはわざわざその不自然さを指摘したりはしなかった。
「ええ、これぞコミカライズですね」
漫画化されていた。
ちなみにコミカライズにそんな意味はない。
「なんです、戯言さん。その『ぼくが本来は大先輩でアニメ化されるならぼくの方をやってほしいと願いながらも、
まさかの後輩の方に先を越されてやるせなさに暮れている中、それをさせる張本人が目の前にいてどうしようもない憤りを感じる』みたいな顔をなさって」
「十割捏造の嘘ていうのも中々珍しいよね」
漫画化の次はアニメ化だった。
「ま、それはそうとで」と、真宵ちゃんは続け、
どうやら話の続きをするよう。
今現在ぼくらは、互いの情報交換をしている最中である。
真宵ちゃんから話を初めて、放送のこと、死亡者のこと、ツナギちゃんのこと、さっきの大男――――日之影空洞と言う人のこと。
全てがつながった。なにか小規模なパズルを完成させた、そんな感覚。
で、今度はぼくが話をし始め、安心院さんのこととかを話したところで、次の言葉に行く。
「なるほど、つまりは戯言さんは、僕と契約して『主人公』になってよ! と……なんでしたっけ、そう、安心院さんと言う人に言われたんですね」
「……? まあ大体そんな感じだね。それはそうとなんかすごい似ていたね。いまの契約して云々のところ。もしかして声真似得意なの?」
「ええ、わたしはよく加藤英美里さんみたいな声だと近所から評判ですからね」
「やけに具体的だな」
「きっと戦場ヶ原さん辺りは、『その必要はないわ』とか阿良々木火憐さんていう人はきっと『あたしって、ほんとバカ』とか言ってるんですよきっと」
「ぼくはその人たちを知らないし、その人たちの正体が何であるか分かんないけれど、具体的すぎるだろ、って言うツッコミはできるからね」
「それはそうとじゃれごとさん」
「割とシンプルな噛み方だけど、ぼくの呼称は戯言で一貫してくれ」
「失礼噛みました」
まあ一回の失敗を咎めるほどぼくも人間小さくない。
ここはスルーの方向に行こうと思う。よかったね、真宵ちゃん。ぼくが大きな人間で。
「あれ、不思議と戯言さんが自分を棚に上げているような」
「おいおいおい、あらぬ理不尽な申しつけでぼくを陥れようとしないでよ。やだなあ」
「…………そう、ですか」
言い切ったぼく。
そう、後ろめたいことなんて何一つない。
戯言も程々にしてほしいよね、まったく。
「まあともあれです、戯言さん」
「ん?」
「主人公なんていうものは本来誰かがなりたくてなれるようなものじゃないんですよ」
「だろうね、ぼくもそう思う」
「つまるところ、主人公なんてものは宿命なんです。
足掻こうだなんて、それは神を冒涜するかのような行為なんですよ。
そう、言うなれば千石さんにマリオがクリボーにするかような踏みつけをするみたいな、そんな冒涜です」
わたし的には千石さんはこれから何かしでかすとみています、とのこと。
…………誰だよ、千石って。
「まあ努力云々だとかでどうこうできるものではないってことですね。
けれども、それを人為的に行おうとしている安心院さんとやらは、正直言って夢見がちな中学生的思考の持ち主で無い限り。
そんな人が本当にいれば大変危険な事態ですよ、戯言さん。理解しているだろうとは思いますが」
「……まあね」
「そしてそれを真に受けるような人も相当かと思いますが」
「……同感だね、きっとそんな言葉を真に受ける人はそうとうなキチガイに違いない。
けれどぼくはあの人の言葉には、不思議とそれすらも可能にさせる。そんな魔力っつーか魅力があると感じたからね」
もしくはぼくが無力なだけかもしれないけれど。
「ともあれ、余計な伏線はこれからのストーリー展開に支障をきたしますからね。気を付けてくださいよ」
「ダメだしっ!?」
まさかのぼくの完全なる巻き添え!
十割方安心院さんが悪いのに!? 訴訟したら今ぼくは勝てる!
「まったく、わたしという逸材を有しているんですから少しぐらい上手く事を運んでほしいです」
「さっきまで泣いていた人間の言葉じゃないよね! それ」
なんかオーバーヒートしてるけど。
大丈夫か。この子。
色々、背負いこみ過ぎてないといいけれど。
目的を追いかけ過ぎて自分に余計な負荷を与えてなければいいんだけどね。
「まったく、わたしは今度は戯言ハーレムいりですか。やれやれ、人気者はつらいものです」
「待て。なんだその不可解な悪趣味グループは。ぼくはそんなものを組織しちゃいないよ」
「初期メンバーの鳳凰さんは退会してしまいましたからね……。後継ぎを探すのは一苦労でしょう」
「鳳凰とやらはきみの夢の中の話であるし、そもそもあんな一瞬出会っただけの人を一々入れるな! 後継ぎ探すのは簡単すぎて逆に苦労するよ!」
「『あんな一瞬』……ですか。まるでわたしの夢の中をのぞいたかのような言い分ですね」
……げ。
……まあ正直言っちゃえば、暦くんの死を乗り越えれた彼女のこと。
今更あの時のことを言っても動揺はしないんだろうけど、それこそ今さらだし。
隠していたこと、っていうのがまあなんていうか釈明がめんどいし、隠したままにしておくか。
「実を言うとね真宵ちゃん…………ぼくは超能力者なんだよ」
…………。
はっきりいって反吐が出そうになった。
何が悲しくてあの島にいた、占い師とおなじ役柄に就かなければならないのか。
不条理だ。……戯言か。
「な、なんですって……っ。ならわたしたちの出会いは……」
なぜか真宵ちゃんは乗ってきた。
ノリノリだ。
まあ話を逸らす上では都合がよかったので特別何を言うわけでもない。
ぼくも話に乗っておく。
「ああ、実を言うと仕組まれたものでね。ぼくたちがこうして話すであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」
「地味にむかつきますね、その語尾」
「そうなるであろうことをこのぼくはあらかじめ予測していました」
「なんかやめてください! 気持ち悪いです」
ずいぶんな言い草だった。
本人や巫女子ちゃんあたりに謝ってほしい。
「死にたい気分ダ」
「一つのツッコミがまさかの展開に!?」
「例え相手が幽霊であろうとも、ぼくの称号は戯言使い。ぼくの前では悪魔だって全席指定、
正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討ってご覧に入れましょう」
「全面対決ですか!?」
「さあ、十全だから行くよ、お友達(ディアフレンド)。
あなたも戦う覚悟を決めたのなら、防御だの守備だの、そういう甘ったれた言葉を安易に使うのはやめたら。みっともないよ」
「わたしはそんな物理的な意味では戦いをする気はさらさらありません!」
「はぁん? 何でこのぼくがきみの命令に従事しなくちゃなんねーの?」
「ただの横暴ですよ! ていうかいよいよわたしにパクリキャラとか言えなくなってきてますよ!」
「パクリじゃないよ、オマージュだ」
「……くぅ」
あ、折れた。
まさかの展開である。
「そういえば、わたしもパクリキャラを目指そうだとかそんな設定を付け加えられてましたね」
「そうだったね、そういえば。キャラの薄い真宵ちゃん」
「……墓穴を掘りました」
しかし今思えばなんかこれも伏線に見えてくるよな。
なんていうか主人公にはキャラの濃さは付き物だし、同時に主人公と同行する人たち。
いわばパーティメンバーもキャラが濃くなきゃ面白くないからね。
「で、結局どうなりそうなの? 真宵ちゃんのキャラは」
「ふっ、戯言さん。やはりわたし思うのですよ。わたしはこのままのキャラでいようと」
「へえ」
「ですから戯言さん。わたしは貫き通す勇気をもって、これから過ごしていこうかと思っているんです」
「そりゃ御立派だね。ぼくには到底まねできない」
「まあ勇気という言葉を加味することで前向きに誤魔化しているだけで、本当はただの意地っ張りなんですけどね!」
「……」
せっかくいい言葉言ったと思ったら、ぶっちゃけやがった。
「勇気と言う言葉を最後に付ければ大抵の日本語はポジティブに置換できますよ」
「んな馬鹿な事言わないでよ。そんなわけないだろ。日本語はそんな単純なものじゃねーよ」
「……やってみますか?」
「やってみせてよ、きみの惨敗は目に見えているけどね。
そうだな、どっちかが負けたら、お互い知られたくない秘密でもバラそうか」
「秘密の暴露ですか」
「うん、結果的にどんな謝罪なんかよりも一番効率的だと思うからね。
相手の弱みを握るということは。そこから相手を一生脅し続けるのは最高だよ」
ほら。
こんな格好よく言っても言ってることがダメなら格好良くならない。
これが日本語だよ、真宵ちゃん。
「ふふ、その勝負なら……あの時みたいには、なりそうにないですね。いいでしょう、受けて立ちます」
「その無駄な度胸だけは認めるよ」
「飛んで火にいる冬の虫とはあなたのことです、戯言さん」
「なんか入る前からぼく死にかけだよね!? それ!」
「では」
こほん、と咳払いする真宵ちゃん。演出過剰だ。
「まずは小手調べから行きましょう。恋人に嘘を吐く勇気」
「お」
やるね。
やってることは普通に恋人に嘘を吐いているだけなのに、
後ろに勇気と付けるだけで、まるでそれが優しい嘘であるかのようだ――――。
そんなこと一言も言っていないのに。
「仲間を裏切る勇気」
「むむ」
わーお。
結果としては仲間を裏切っただけなのに、まるでそうすることで、
仲間を助けたような行動をとった印象が残る。
――――そんなことは、一言も言ってないのにね。
「加害者になる勇気」
「お、おお……」
唸らざるを得ない。
ただ単に人に迷惑をかけているだけなのに。
まるで自分から汚れ役を買って出たような男の中の男を見せつけられた気分になる。
――――そんなことは一言も言ってないのに。
「痴漢をする勇気」
「く……くそ」
完璧に劣勢じゃないか。
痴漢という卑劣極まりない(ちなみにぼくが崩子ちゃんを抱き枕……もとい奴隷……もとい「ともだち」にしているのはこれに含まれない)
犯罪を犯しているのにも関わらずに、まるで別の目的があって、その確固たる目的のためにやむなく冤罪を被ってあげましたよ的なものを感じる。
――――やっぱそんな事は一言も言ってないのに。
「怠惰に暮らす勇気」
「こ、これは……」
最早後がない。
何もしてなく無駄に時間を浪費しているだけのはずなのに。
わざわざあえてその境遇に身を置き、大義のため、貧窮にあえいでいるかのようでさえあった。
――――そんな事は一言も、本当に一言も言っていないのに!
「負けを認める勇気」
「…………ま、負けを」
と。
言いかけてぼくは止まる。
い、いや待ってよ。
この
戯言遣い、精々が小学生に口喧嘩に負けるのか……?
お、落ち着くんだ、ぼく。
なにかあるはずだ、なにか……。
「――――認めない」
「ほう」
自分でもそれこそたかだか小学生相手になにをムキになってんだとも思いつつ、
自分のターンへと、強引にもってった。
「じゃあぼくもちょっとはその勇気シリーズに便乗して、言ってみてもいいかな」
「ええ、どうぞお好きに。どうせ戯言さんの負けは目に見えていますけどね!」
では、とぼくも同じく咳払いをして、演出過剰に語り始める。
「一日一時間殺戮を犯す勇気」
「……はい?」
一見、殺戮を犯す上でもなにかしょうがない理由があって、殺戮をしているかのように見える。
しかし一日一時間と言う無駄に謙虚な言葉を付属させることで、その意識を薄めることが出来る。
結果的に涙ながらに、一時間だけ殺戮を犯す光景も浮かぶけれど、本当はもっと殺戮を犯したいけれどしょうがなしに一時間に抑制している。
そんな光景も同時に再生することが出来たりする。
真宵ちゃんも同じ考えに至ったのか、ガクガクと震え始めていた。
「勇気を出す勇気」
「な、なんですか……それ」
もはやこれは卵が先か鶏が先か、的なやつである。
勇気を出すのに勇気が必要であるが、その勇気がない。その勇気を生み出すためには、勇気が必要な訳で。
これは実を言うと、根暗な子を想像させる。
そう、活発な子ではありえない悩みな訳で、どう足掻いてもこれはネガティブなのだ。
たとえば一世一代の告白のをするためにこれが必要なのかもしれない。
けれど最終的に必要なのは、勇気ではなく勢いだ。
故にぼくはこれはポジティブにはならず、ネガティブになるんじゃないかと講じる。
そしてぼくは静かに言う。
「――――負けを、認める勇気」
「…………ま、負けを認めます」
実際には、負けを認めただけであり。
実際にやられると、それはどんな幻覚もなく、ただただ敗者の姿が在るだけであった。……何か悲しい。
ちなみに、真宵ちゃんは、「ああ! 言葉の格好よさにつられて言ってしまいました! 実際はただ負けを認めただけです! 日本語って難しいですね!」と、
両肘両膝と、両掌を地へと付け、頭を振り乱しながら喚いていた。
「う、うう……。まさか自分の技に溺れて逆に傷を負うなんて……」
「まあ別に秘密は今は暴露しなくていいよ。聞いてよさそうなことなんてないだろうからね」
「う、うう…………」
何ていいながらも、立ち直り始めたのか。
うろめきながらも徐々に足元をしっかりとさせてゆく。
…………そんなに負けたことショックだったのかな。
「ま、まあそれはともかくとしてですね、洒落事さん」
「なんとなくオシャレなイメージがあって、ぼくとしてもまんざらではないんだけど、
やはりその辺りはしっかりして欲しいからね。ぼくの呼称は戯言さんに一貫して」
「失礼噛みました」
「違う、わざとだ」
「噛みまみた」
「わざとじゃない!?」
「神マミった」
「神様殺しちゃダメだよ。ていうかまさかの振り出しに戻った!」
もしかしてぼくは、彼女の手のひらに踊らされていたとでもいうのか。
なんということだ。
これで某アニメのキャラ。赤い子以外全員出てるじゃないか。――――赤い子、ねえ。
「話を戻しますよ、戯言さん」
「あ、ああ、うん」
戻された。
「ともあれ、『主人公』なんてものは、目指してなれるものではありません」
「…………」
「わたしは、そう思いますよ」
「……うん、ぼくも、そう思うよ」
正直、
正義の味方になることはできても、それはイコールして主人公につながる、というのは違うのだ。
最近では、ダークヒーローなんていうものも流行っている。
暑苦しい正義が必ずしも『主人公』なんていうことでも、やっぱりないのだ。
そんな風に思っていると、彼女。
八九寺真宵ちゃんは言葉を、繋いだ。
「ですが、それでも、わたしは戯言さんを応援してみようかと思います」
「…………」
「わたしだって最低限の観察眼ぐらいありますからね、今までの触れ合いを見て、不思議とそんな風に感じます」
「……そう」
ぼくは素っ気なく返す。
けれどその言葉は、確かにぼくの胸に届いて、温かかった。
「別にそれこそ戯言ハーレムではありませんが、わたしは、あなたを信じてみたいと思います」
「……ぼくは戯言遣いだよ。きみに接してきた全てが、戯言塗れの大嘘なのかもしれない」
「それでも、ですよ。あなたの主人公の物語であれば、それはきっとハッピーエンドで、終わるんですよ。そう、思います」
…………。
この子は、強かった。
ぼくが見届けることもなく、単純に、強かった。
大切な人が死んだというのに、それでも、強く生きている。
凄いことなんだと思う。
凄まじいことなんだと思う。
……無理をしている感が、正直否めないけど。
それでも、健気に生きている。前に進んでいる。
この子は、凄かった。
「……ま、なんであれ一人ぼっちはさみしいですからね、わたしが一緒にいてあげます」
「…………」
全員でたよ。
この子凄いや。
「……そっか、ありがと。――――時に真宵ちゃん。ねえ、ひとつお願いがあるんだけど」
「はい、なんでしょう」
「一回さ、『師匠』って呼んでみてくれない?」
「はい? え、ああはい、『師匠』?」
「うん、ありがと」
……。
…………うん。
やっぱり違う。
姫ちゃんとは、やっぱり違う。
代理品は代理品でしかなくて。
もしかしたら見当違い甚だしくて、代理品ですらなかったのかもしれない。
けれども、今更ぼくの決意は揺るがなかった。
友は、勿論。真宵ちゃんも当然。
ぼくは、救ってみせよう、と。
故に、ぼくは歩く。
一歩、一歩、また一歩と。
さっさと、この物語の幕を閉じるべく。
加速していく物語に終止符を打つべくぼくは、歩く、歩く。
◎ ◎ ◎
「特別って何だと思う」
「どうでしょうね。他人と区別の略なんじゃないですか?
まあ特別って言うぐらいなんだから、おなじと言うわけにはいけませんしね。
求めることも仕方のないことなのかもしれません。右往左往しすぎだとは思いますが」
「そうだね、特別な人って言うのは欲しいものなのかもね。
とはいえ互換性と唯一性は相反するものだと思ってるからね、いや思い込みたいのかな」
「あなたはどうなんです?」
「ぼくは別に」
「さいですか」
「きみはどうなんだい?」
「さあ、そんなのはわたしの決めることではありませんよ。
他人の評価は他人が決めるものですし、同じくわたしの評価は他人が決めることですからね」
「そりゃそうだ」
◎ ◎ ◎
戯言遣いこと、戯言さんがわたしの前を歩く。
その背中は大きくて、まあ成人男性としてみれば少し小さめなのかもしれませんが、
阿良々木さんに見慣れていると、とても、とても大きな姿に見えてしまいます。
そう、今わたしの隣にいるのは、戯言さん。
最初は、なんだこの人、と本能的に、身体の奥底から湧いて出るような、そんな衝動な気がします。
けれど、今は、隣にいる。一緒にいてくれている。
実際、なんだかんだで察する能力は高そうな戯言さんのこと。
きっと、わたしが無理して元気を出していることぐらいは、察しているんでしょう。
それでも黙っていてくれている。
優しさなのかなんなのか。もしかしたらわたしが高く見過ぎて気付いていないだけかもしれませんけれど。
それを含めて、戯言さんのいいところなんでしょう。
そう思います。
わたしの空元気。
ギャグをしようと、一生懸命笑おうと、心の底から楽しもうと。
まだ少々慣れないですけど、戯言さんとの会話は、面白いですし。
そう、先ほどの通り。
阿良々木さんが、綺麗に。潔く、天国に行けるように。
そりゃ、わたし以外にも心残りな方はたくさんいるでしょう。
戦場ヶ原さんだとか。羽川さんだとか、妹さんだとか。
けれども、いえ、だから。
わたしなんかに構っていないで、大事な皆さんに、すこしでも憑いてあげたら。
そう、思うんです。
わたしは元気です。
わたしは大丈夫です。
わたしは泣きません。
わたしは喚きません。
わたしは既に一人じゃありません。
わたしはもう、一人じゃない。
もう、何も怖くない――――訳では勿論ないですが。
頑張るには、たります。
傍には戯言さんも付いていてくれます。
わたしだって、もう、弱くはないんです。
だから。
言わせて下さい。
最後に一つだけ。
まだ阿良々木さんが見ているなら、わたしに一言だけ言わせてください。
そう。
最後に、わたしは、言いたいことがあるんです。
今更過ぎるかもしれませんが、だけど遅すぎることは、何の理由にもなりません。
わたしのけじめの問題だから。決着をつけたいんです。
ゆらゆらと揺れる変幻自在のアホ毛を付けた、少し伸びた黒髪の男性。
いつでもわたしの雑談につきあって、本当に楽しそうにしていてくれたあの男性の姿を――――今でもここにいるかのように、
見ることが出来る、わたしの唯一無二の親しかった、愛しかった、小さな、だけども大きな人を思い浮かべて。
「さようなら」
――――お別れの台詞はいらない。
そうでしたね。
……失礼、噛みました。
【一日目/午前/E-3】
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康、
[装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)
[道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ランダム支給品(4~6)、お菓子多数、缶詰数個、
赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り)
[思考]
基本:「主人公」として行動したい。
1:真宵ちゃんと行動
2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流
3:診療所、豪華客船、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう
[備考]
※ネコソギラジカルで
西東天と決着をつけた後からの参戦です。
※
第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。
※名簿、八九寺の動向について知りました(以後消してもらって構いません)
※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている)
※
球磨川禊との会話の内容は後続の書き手様方にお任せします。
※何処に向かっているかは後続の書き手様方にお任せします。
※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。
【八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(中)
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3)
[思考]
基本:生きて帰る
1:戯言さんと行動
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします
「ありがとう、ございました」
最終更新:2012年10月02日 16:02