・概要
- "『黒い未亡人』はチェチェン紛争により夫や家族を失った女性だけからなるイスラム武装組織で、二〇〇二年のモスクワ劇場占拠事件、二〇一〇年のモスクワ地下鉄爆破テロ事件など様々な重大事件に関与しており、さらに近年はワシントン・ダレス国際空港自爆テロ、パリの陸軍病院自爆テロなどの実行犯として西欧諸国にも活動領域を広げています"(『未亡』p.13)
- "その実力を背景に、シーラは大規模な在外チェチェン人コミュニティーのあるヨルダン、トルコ、サウジアラビアなどから資金のパイプを確保した。また、石油密売の利権を巡ってロシア当局と対立関係にあるチェチェン実業家グループとも渡りをつけた。資金源を握る者に、表立って抵抗する組織はない。(中略)イスラム過激派組織でありながら、シーラの目的ははっきりしていた――すべては虐げられた女達のために。いつの頃からか、『黒い未亡人』はシーラの組織のための称号となっていた"(『未亡』pp.109-110)
- "シーラ、ジナイーダ、ファティマの三人が上座に並んでいる。ナターリヤとヴァレーリヤは哨戒に出ているという。川崎での混乱の中でその五人が逃げ延びたことは把握していたが、後の七人の名前までは分からなかった。逆に言うと、今この施設内にいる十三人以外は全員が死んだのだ。このうち身長一五六センチ以下でエインセルに乗れるのは、アイシャ、ジャンナ、クレメンティーナ、マリアムの四人だけだ。アイシャとジャンナは十四歳。クレメンティーナとマリアムは十五歳。バスで迎えに来たリューバとアゼット、それにもう一人、ゾーヤを加えた残りのメンバーは皆二十歳を超えている上に背が高い。一番低いゾーヤでも一六四センチだ"(『未亡』p.258)
・構成員
- 登場:『未亡』
- 備考:三人のリーダーの一人。〈砂の妻〉
ジナイーダ・ゼルナフスカヤ
- 登場:『未亡』
- 備考:三人のリーダーの一人。〈剣の妻〉
- "シーラの部隊がダゲスタン国境に近い山岳地帯を転々と移動しながら訓練を重ねていたとき、同じく移動中のワッハーブ派の部隊と遭遇した"(『未亡』p.98)
- "――あんたにはもううんざりだ。ワッハーブ派の部隊全部にも"(『未亡』p.99)
- "見るからに屈強そうな大柄の体格の女兵士だった。頭部は黒いスカーフで包まれ、野戦服の背には長剣の鞘が覗いている"(『未亡』p.99)
- "ジナイーダ・ゼルナフスカヤはシャミーリ・バサエフ直系の野戦部隊で訓練を受けた筋金入りの闘士であった。彼女とその六人の部下の加入によって、訓練はさらに本格的なものとなり、部隊は格段に精強さを増した"(『未亡』p.109)
- "機甲兵装での格闘戦の際には、ジナイーダは好んで特製の長剣を使用した。三メートル近いその剣の威力は凄まじく、正面の装甲越しに斬りつけても剣先がコクピット内部に届くほどだった。たとえ装甲を貫通しなくても、鉄の棍棒で強打するのと同じであるから、コクピット内部の搭乗者は圧死する。その剣で彼女はこれまで数多くのロシア兵を屠ってきた。<剣>のジナイーダと言えば、イスラム過激派組織の中でも知られた存在であった"(『未亡』p.109)
ファティマ・クルバノワ
- 登場:『未亡』
- 備考:三人のリーダーの一人。〈風の妻〉
- "グムス川のほとりに、戦災を免れた石造りの古いアパートが建っている。そこはグデルメス一と評判を取る売春宿であると同時に、チェチェン・マフィアのボスの一人であるゴルベンコの隠れ家でもあった。ゴルベンコはチェチェン第二の都市であるグデルメスの人身売買を一手に仕切っていた"
- "黒く長い髪は天然のソバージュで、緩やかに波打ちながら扇型に左右に広がっている。優しげに垂れた女の左右の目尻から、不意に透明なしずくが伝わり流れた"(『未亡』p.111)
- "ファティマは戦士の家系の末裔だった。(中略)彼女の持つキンジャールは、何百年も異民族の血を吸ってきた正真正銘の山岳部族の証しである。誇り高い戦士の血筋に生まれながら、夫も家族もすべて失い、マフィアの愛人にされていたファティマは、意外にもカフカスの裏社会に精通していた。(中略)ファティマから得た情報を元に、シーラは主だったチェチェン・マフィアとも協定を結び、組織の地盤をさらに強化することに成功した"(『未亡』p.111)
カティア・イヴレワ
ナターリヤ
ヴァレーリヤ
リューバ
アゼット
ゾーヤ
ジャンナ
- 登場:『未亡』
- 備考:十四歳
- "丸顔で栗色の髪をしたジャンナ"(『未亡』p.259)
- "ジャンナはアイシャと同じ十四歳だが、生まれは半年ばかり早い。しかし四人の中では最も天真爛漫で、活気に満ちた存在だった"(『未亡』p.259)
アイシャ
- 登場:『未亡』
- 備考:十四歳
- "右隣に座ったアイシャが声をかけてきた。一番年下で、常に仲間に気を遣っているおとなしい少女"(『未亡』p.258)
マリアム
- 登場:『未亡』
- 備考:十五歳
- "マリアムはいつものようにおしゃべりだった。早口で思いついたことをそのまま口にしてしまう。みんなとっくに慣れっこだ"(『未亡』p.259)
クレメンティーナ
- 登場:『未亡』
- 備考:十五歳
- "向かいに座ったクレメンティーナも、自慢の巻き毛を指でくるくるといじりながら言った"(『未亡』p.258)
最終更新:2015年03月30日 15:20