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「貴方の方は知り合いは? 私の方はいなかったが。」

「織田信長を知り合いとしていいのか、
 有名な物語の城を知り合いとしていいのか、
 そういう距離感の人物だけならいるんですけどね。」

 騒音がやりなまぬ中、
 淡々と情報を交換する二人。
 鳴海歩もいなければ五条悟もおらず。
 鳴海清隆もいなければ禪院甚爾もなし。
 共通の知り合いとなるのはひよのの言葉通り、
 ただ一方的に名前を知ってるだけの偉人とかぐらいしかいない。
 一瞬だけリコと言う名前に反応したが、カタカナ表記から彼女でもなく。
 安心と言うべきか、不安と言うべきか。夏油は少々複雑な感情が出てきていた。
 悟がいれば、この殺し合いは犠牲者が少なかった可能性もあるのだから。

(いや、それは早計かもしない。)

 五条悟が参加者としていました。
 であれば、相手も悟が相手できるような存在、
 それこそ禪院甚爾が参加者にいてもいいレベルと言うことになるはず。
 勿論、悟がいないからと言って『参加者の強さの基準は下がっています』はありえない。
 NPCは低級の呪霊しか確保してないし、悟に比肩するわけではないにせよ自身も十分な強さを持つ。
 この蟲毒にどのような意味があるかはともかく、乗らない奴が有利になるものでもないはず。
 星晶獣なる存在も、ベリアルはある程度の存在の指標としていテンションが上がっていた。
 二人には知らないワードだが、脅威に比肩しうるものの指標としてはおかしくはないはず。

「言い換えれば自由行動ってことができるとしましょう。」

 パタン、と本を閉じる動作のように両手を合わせる。
 ひよのも夏油も、今更取り乱すような状況でもないことだ。
 呪術師をした夏油、歩の最後のトリガーとして行動したひよのも、
 どちらも誰かが生きるか死ぬか、そういう経験をしてきてるのは事実だ。
 たとえ既に死者が出ているとしても、早々にそれに取り乱すこともない想定内である。
 自分たちみたいな穏健に(と言うほどで穏健でもなかったが)物事を進める参加者。
 それが完全にいない、と言うわけではないのだから。

「名前の羅列から、私が知らないだけで関係者がいるのかもしれない。」

 紙袋呪詛師とかいう、名前ではなく容姿そのものではないかと思う人物もいた。
 心当たりとしては、悟が返り討ちにした呪詛師がそんな容姿だった話を聞いた気がする。
 となると、乙骨や粟坂の二名も、もしかしたら呪詛師か呪術師関係者かもしれない。
 ───あるいは、自分が向かう予定だったあの村で出会っていた何者かの可能性もある。
 とは言え『かもしれない』を無限に考えても仕方ないので一先ず片隅に置いておいた。

「とりあえず結崎さんの言うように選択肢は自由だ。
 地図上では……此処は南東の秤の賭場が付近にあるようだ。
 となると『他の』最寄りは牢屋敷かクラッシュタウンのどちらかか。」

「ではクラッシュタウンでしょうか。
 牢屋敷の規模は不明ですが、街と言う以上規模は広そうですし、
 あんまり理由なく牢屋敷に行く人も、そんなにいないと思いますから。」

 二人の会話は、なんともおかしな話だ。
 近くに秤の賭場があるのならば向かうべき。
 だと言うのに、二人とも知らない方へ行きたがっている。

「で、問題は……」

 何故なのかと言うと、

「この銃撃の中、どうするかですよねー。」

 呑気に今後について話している二人ではあるものの。
 実のところ二人は今、身を隠せるほどの岩陰で大量の銃撃を防いでいた。
 場所は秤の賭場とされる、ビルの入り口から文字通り湯水のように。
 近くのビルだから入ろうとしたものの、一人の女性が躊躇なく撃ち始め、
 身を隠せるだけの岩陰へと隠れて、様子を伺いながら様子を見てる状況だ。





「十二大戦とはさほど違いがないのはありがたいですこと。」

 異能肉は少なくとも軽やかな気分でいられた。
 湯水の如く(ノンリロード)で弾切れは永遠にない。
 無論銃が最強の武器、と言うのはすぐに考えを改めていた。
 相手が銃弾程度なら弾き飛ばす防具を持っている可能性だってある。
 今回の相手は岩陰に隠れたためそうではなさそうにしても、
 次も、その次もこれで攻略できるとは思ってない。

 ロットンを傘下に引き入れたはいいが、彼に対する信用はそこまで高くもなかった。
 十二大戦に出るために妹すら死に追いやったのだ。だからいつでも切り捨てられる存在と同じ認識。
 窮鼠猫を嚙む。背後から撃たれる可能性を否定できるほど、彼を善なる存在などと信じてなどいない。
 寧ろ危険因子。敵に回そうと味方に回そうとろくでもないことを画策しているのだと分かる。
 だが少なくとも優勝は現状では不可能。媚びを売るような真似も生き残るための処世術の一つ。
 とにかく死ぬのだけは後回しにしてくれと、ロットンを知るものがいたら笑い話にされる。
 そう言い切れるだけの素早い行動を彼はとって今に至ると言うわけだ。

「で、そちらは何をしているのですか?」

「その能力に見合った支給品探しだよ。」

 即座に命乞いをして何とか生き延びる道を選ぶことができたロットン。
 鬼柳が崖下に落ちて生きていたのは驚いたが彼のことはどうでもいいと思っている。
 それ以上に隣の女。カードゲームによる勝敗も関係ない、無限の銃弾を放てる間違いない化け物。
 今更、死神なんての異名を持つあの男なんて強さは自分と同様に程度が知れている。
 さっきの男のように、粗挽き肉団子にしてやればいいだけのことだ。

「速射性はこちらだけど、やはり破壊となれば此方かしら。」

 一瞬撃つのをやめたりで隙をわざと作るが、
 チャンスと思って出てくる様子はかけらもなかった。
 向こう側もそれを警戒してるのだろうことがよくわかる。
 ならば岩をより削れるであろうロベルタの傘を中心に添える。
 人を吹き飛ばすぐらいの威力のある銃で岩を削り取っていけば、
 否が応でも行動せざるを得なくなるのだから。

 一瞬止まったことに警戒して夏油が軽く覗くが、覗いていた付近の岩が削られる。
 壊れた蛇口から噴き出すように溢れ出る水のように無数に飛び交う弾幕を防ぐ手段はなく、
 このまま居座り続けようと、二人とも揃ってハチの巣にされてしまうのも時間の問題だ。

「困りますね。リロードした隙を夏油さんが動けるならいいんですが。」

「おそらく相手の構築術式か、異なる世界の技能を持ち合わせている。
 この量を躊躇せず消費と言うことは、疲れることもないと見た方がいい。」

 肩は痛めそうだけど、なんてことを考えるがすぐに思考を戻す。
 こういう時のために備えた呪霊ではあるものの、等級は殆ど低い。
 だから弾丸のように放ったり、場合によってはバリアとしても使えるが、
 流石に弾数が多すぎる。ひよの含め防ぎきるだけの呪霊を確保はしていない。

(せめて虹龍があればと思うが、たらればなんて話を考えても意味がない。)

「結崎さん。私の支給品に何かいいものは?」

 ひよのは全ての支給品を総動員で使うことにより夏油に勝利した。
 言い換えれば支給品はそれで打ち止め。自分の方を探すのが手っ取り早いが、
 確認中に相手がグレネードランチャーとか撃ち始めたら手に負えない。
 その為夏油が相手の様子を確認し、ひよのが彼が背負うデイパックから何かを漁る。

「あ、ちょっと難しいかもしれませんがいいのありましたよ。」

「? 難しいって何が───」

 何の事だろうと彼女の方を見やれば、軽く言葉を失う。
 出てきたのは赤い車。どうみてもセレブが使いそうな高級なスポーツカーだ。
 人によっては高級な車として、今の二人には喜ばしい移動手段となる代物。
 確かに逃げにはいいかもしれないが、でかくなって的が当たりやすくなっただけ。
 それ以前にオープンカーなので、防御面では余りにも心許ない代物だ。
 寧ろ、ガソリンを使ってる以上被弾したときの危険度は段違いになりうる。
 呪力で防御できるのは自分だけで、彼女を守ることは困難だろう。

「なのですが……多分大丈夫かと。」

 説明書を読んでいるひよのからの安全の太鼓判を押され、
 当然ながら、夏油は疑念を持たざるを得なかった。
 一体このスポーツカーには何があるのだろうか、と。





「車? 逃げ切れるとでもいうの?」

 岩陰から見えた車の姿。
 当然、異能肉からすればそれは格好の的だ。
 車のエンジン音と二人が乗り込んでるのを見て、
 ガソリンが漏れ出るようにモエの使ってた銃を無数に放つ。
 穴が空けば即座に爆発を起こし、二人を黒焦げになるのは間違いない。
 だが、車には当たるものの、弾丸が突き抜けることはなかった。
 速射性が強みな分か、威力が低いにしても傷跡は浅く軽く驚かされる。

「無駄に固い。こっちの傘の方がいいかしら!」

 傷らしい傷を与えられなかったので、拳銃より傘の方がいい。
 傘の内蔵された銃ならばと思うが、車体に傷をつけるものの、
 ガソリンを撃ち抜くにはこの銃ですら不足だと言うのか。
 まるで戦車のような耐久力に、反応しないわけにはいかなかった。

 隙を見て赤いオープンカーは走り出す。
 せめてパンクを狙おうと乱射を再開して殺しにかかる。
 それを夏油が搭乗しながらイカのような呪霊を引き延ばして、
 自分たちに当たりそうな攻撃を的確に防いで攻撃を妨害してくる。
 そうこうしてる間に車のエンジンはかかり、あっという間に走り出す。
 荒野を駆け抜けていくオープンカーを、ただ二人は見届ける以外にない。

「どうする? 追うか?」

「いいえ。こちらは弾こそ潤沢だけど、移動手段は皆無。
 今から追撃をを提案しないのも、貴方の方もないのでしょう?」

「ないな。あったらおめーに捧げてるさ。」

 あっても便利だったら別だがね。
 なんてことを内心で愚痴をこぼすロットン。
 正面戦闘もろくにできない自分からすれば、支給品は生命線だ。
 まだ何も言われてないが、支給品を開示したら持ってかれる可能性もある。
 だからなるべく交渉や彼女に見切りをつけるために必要な支給品はとっておきたい。

「相手の移動先はともかくとして、貴方の言うクラッシュタウンに行きません?」

「ああ。あの町のことはよく知ってるからな。
 あの町なら、先に待機しておけば罠だって仕掛け放題だ。」

「仕方ないわ。追うのは諦めてそこへ向かいましょう。」

 弾が無限だとしても、銃には射程がある。
 アレを何かしらでガードしながら、そのうえ頑丈すぎる車に乗って、
 殺しに行くまでの手間がかかり過ぎる。無論徒党を組めば厄介だが、
 そう言う不安な精神があるようならば十二大戦には参加するわけもなく。
 情報は持たれてしまったものの、隠すほどのことでもないので気にも留めなかった。










 一方、夏油達はと言うと。

「すみません。」

「何がだい?」

 後ろから追ってくるか撃ってくるか。
 確認のため常に呪霊操術を駆使して守れるように後部座席で構える夏油。
 一応そういった様子は見受けられず、暫くすれば後部座席に座り込み、
 運転しながら謝罪する彼女についてを問いかける。

「私の命を優先に行動してくれてることについてです。
 少なくとも、一人なら彼ら相手に遅れはとらないでしょう?」

 相手の強さがどの程度かと問われれば、
 少なくとも禪院甚爾と比べれば遥かに格下の相手だ。
 その気になれば応戦は不可能ではないが、問題は相手は二人いた。
 背後から銃撃を眺める男が、いかような人物かが判断できない状況だ。
 もう一人の男がひよのを人質に取る可能性も十分にありえていたわけで、
 彼女をかばいながら戦うことを視野に入れると少々厳しいところがある。
 特に、護衛任務で理子を死なせてしまった夏油にとっては猶更不安なことだ。
 事実、こんなオープンカーがあるのであれば質量にものを言わせて車で衝突を狙ってた。
 弾丸を受けても多少の凹みで済ませている車だ。並の車よりも頑丈で武器にもなりえる。
 それをしなかった、と言うよりできなかったことに対しての謝罪だ。
 そんなことをすればまずひよのが危険にさらされてしまうだろう。
 最悪の場合も想定すると、流石にそのような暴挙には出れない。

「そのことについては確かに否定はできない。けれど、
 此処は荒野が多く、見晴らしがいい。銃が強いエリアにもなる。
 可能なら西のエリアまで行って、君の身の安全を優先するべきだ。」

「随分お優しいナイトさんですね。風に当たって少しだけ気持ちが和らいだとか?」

「否定はしないよ。まったく、悟とバカなことをやってた頃を思い出すよ。」

 さっきまで殺すかもしれなかった相手が、
 今や自分の身の安全を優先してくれている。
 あの村へ赴いた後だったらどうなっていたか定かではないが、
 少なくとも今は、隣にいる彼女と共に行動するつもりではある。

「ところで、君随分運転できるんだね。随分様になってるが……」

「それもまた企業秘密ですよ、夏油さん。」

【G-9 秤の賭場付近/深夜/1日目】

【ロットン@遊戯王5D’s】
[状態]:健康、異能肉に対する恐怖と警戒(中)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:なんとしても生き残る
1:当分はこのおっかない女(異能肉)に従う。こいつよりましなのがいればそっちに裏切る
2:鬼柳なんぞ考えてる暇はねえよ。
3:クラッシュタウンへ向かう。
[備考]
※参戦時期は坑道でダイナマイトを爆破させ、崖に落ちる遊星と鬼柳を見届けた直後


【異能肉@十二大戦】
[状態]:健康
[装備]:RABBIT-224式拳銃@ブルーアーカイブ、ロベルタの傘@ブラック・ラグーン
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1
[思考]:優勝して願いを叶える
1:当分はこの男(ロットン)を従者としてこき使う
2:十二大戦ではないようだけれど⋯⋯
3:クラッシュタウンへ向かう。
[備考]
※参戦時期は十二大戦参戦前
※異能「湯水の如く(ノンリロード)」により所有する重火器の弾数制限は異能肉がそれを所有している限り無制限です

【結崎ひよの@スパイラル~推理の絆~】
[状態]:健康、運転中
[装備]:ベレッタM92@現実、夜闇を駆ける鉄処女(テスタロッサ・メイデン)@Fate/Grand order
[道具]:基本支給品一式、転ばし屋@ドラえもん、とめるくん@うえきの法則(日中まで使用不能)
[思考・状況]
基本方針:生還し、鳴海さんの選択を見届ける。
1.結崎ひよのとして動く。となると殺し合いするわけには行きませんよねぇ?
2.夏油さんは……ま、適度にお尻を叩いてあげますか。
※原作15巻76話終了後より参戦です。

【夏油傑@呪術廻戦】
[状態]:後頭部に鈍い痛み、自暴自棄(極大)、後部座席で哨戒
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2(虹龍は確定でなし)
[思考・状況]
基本方針:もう少しだけ呪術師として生きるか。それとも…
1.勝負に負けた以上、結崎ひよのに協力する。
2.もし本当に、世界を変える力があるのなら…
※原作9刊玉折‐弐‐旧■■村任務参加直前より参戦です。
※会場で何体か呪霊をストックしています。具体的な手持ちは後続の書き手にお任せします。

【夜闇を駆ける鉄処女(テスタロッサ・メイデン)@Fate/Grand order】
夏油に支給。一見すると赤い高級スポーツカーではあるが、これでも水着カーミラの宝具。
一応腐っても宝具ではあるので並の乗り物よりは頑丈にできている。
水着のカーミラにとっては、これも鋼鉄の処女らしい。

026:夢と青色で出来ている 投下順 028:マリスボラス
時系列順
204:信じる者の選択 夏油傑
結崎ひよの
87:粗挽き肉団子 ロットン
異能肉

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最終更新:2026年06月07日 20:27