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 ブレイブアサギ号。                                                             
 ライジングボルテッカーズの移動する空を飛ぶ船にして拠点。
 拠点であるがため船内の設備は非常に充実しており、
 たとえ空を拠点に生活する分には十分なレベルに達している。
 医療、食堂、自室など充実した内容は、少々規模が小さいだけで、
 設備についてはランドルの知るグランサイファー以上と認めざるを得ない。
 十人程度で活動するのであれば、確実にあちらよりも優れていると。
 だがここに来たのはあくまで人探しだ。この船に乗りたいかどうかではない。

「どうやら、飛行船として使えるみてーだな。」

「と言っても操舵できる参加者はいないんじゃねえのか? 因みに俺ちゃんは無理。」

「ラカムもいねえ状況だ。下手に動かして墜落でもしたらぞっとするぜ。」

 燃料などのエンジン周りについては、ポケモンが代わりを務めていた機関室だけ改造されており、
 その気になれば一定の時間ぐらいは飛行することが可能なようになってはいるようではある。
 しかし操舵するとなれば話は別だ。二人とも飛行船の操舵の経験なんて当然なかった。
 加えて、飛行船が殺し合いの舞台を舞っていたらどうなるか。どう考えても目立ってしまう。
 撃墜させる手段があれば、墜落は免れないし、最悪空の底に落ちていくのが容易に想像がつく。
 ブレイブアサギ号を操舵できる参加者がいれば別だが、これもまた当然だが二人は知る由もない。

 規模はグランサイファーよりは小さいが、
 船内は結構入り組んだ設計になってるのも相まって、
 他に人を探すべく二人は別々に行動をすることを選ぶ。
 単独行動は危険とも思うものの、捜索に時間をかけるのも問題だ。
 達のガタイの良さもあるし、一人で行動させても大丈夫だろうと。
 一人エレベーターを利用し、展望室で屋上へと向かうランドル。

 本来ならばブレイブアサギ号の翼を担う部分は、
 ポケモンバトルができるウイングデッキとなって足場となる。
 モンスターボールを模したような床の円の中心に、一人の少年が立っていた。

「よ、ランドル。」

「アイルか。」

 アイル。グランサイファーで旅をする仲間の一人だ。
 アルビオンで行われた格闘大会やトレーニングルームなど、
 同じ得物は己の肉体とする者同士で、それなりの縁を持っている。

「アイルか。流石に端のエリアだとグランサイファーに向かわなかった感じか?」

「ああ。団長達も別に全員集合ってしなきゃいけない程弱くもないだろうからな。」

「俺と大体同じか。」

 デッキから周囲を見渡しながら、ランドルはデッキの上に立つ。
 見晴らしはいいのだろうが、まだ黎明。暗いこともありあまり景色は見えない。
 呑気に雑談を交わしながら、アイルの立つ円の淵に右足が置かれる程度に近づく。

 同時に、アイルの左ストレートが襲い掛かる。
 生半可な鍛錬では到達できない、並の魔物すら撃沈できるだろう一撃。
 しかしそれはランドルも同じ。ナビスの抗争に巻き込まれた彼にとって、
 多くの経験を積んできた。この程度の不意打ちであれば大して問題にならない。
 右足を軸とした回し蹴りがぶつかり合い、互いの一撃が相殺される。

「あれ? ひょっとしてバレてたのか?」

「バレバレの殺気を放つような奴でもねえからな。テメー、ボーマンだな。」

 普段のアイルとは明らかに違う服装、状態。
 そこまで詳しくは知らないが、アイルが言うには別の人格があり、
 相方みたいなものだが、危険な人物として挙げられることがあるのは知っていた。

「正解。まあ朝になったら目ぇ覚ますだろうから、
 それまでフリータイムってことでちょっくら肉体を借りてるんだ。
 だからよランドル。そっちも俺のことは気にせず他を探してくれよ。」

「寝言が言いてえなら寝かしつけてやる!!」

 このまま放っておけばどうなるか。
 決まってる。己の闘争心のままに他の団員を、
 団長の命すら狙ってるかもしれないのだから看過できない。
 相殺した左足を槍のように連続で突き出して、ボーマンと交戦を始める。
 アイルと同様に並の格闘家ではない彼の鋭い蹴りはどれも洗練されたものだ。
 当たることを良しとせず、次々と迫る攻撃をすんでのところで躱していく。

「おらどうした! 大会の時はそんなやわな奴じゃねえだろうが!」

「おいおい。いつの話をしてんだよ。それにあの時は俺じゃなくてアイルだろうが。」

 嘗ての大会で相対した漆黒の断罪者との戦い。
 相手は(仲間からはどうみても)十天衆のシスだったのもあり、
 その試合ではアイルは敗北してしまったが、食らいつこうとしたガッツは本物だ。
 こんな程度で押されるような存在でないことぐらいは分かっている。
 事実、先ほどから攻撃しているのに当たってないのがその証拠だ。

「にしてもオタクも面倒な性格をしてるよな。
 別にいいだろ? 朝まで待てばアイルに主導権が戻るんだぜ?」

「アイルの事情は余り知らねえが、テメエに暴れられたらこっちも困るからな。」

 団長ことジータは許容範囲が広いを通り越して、甘すぎる部分もかなりある人物だ。
 勿論危険な人物を一切気にしないわけでもなく、特にロベリアはかなりの要注意人物として、
 団長ですら警戒してる程度には全てを受け入れるわけではないにしても、その甘さは欠点だ。
 団員が何かやらかしたのなら責任は当然彼女が負うものだ。普段の状態であるならまだしも、
 殺し合いにおいて危険人物を仲間に抱えてると言うのは後々不利になってくのが予想できる。
 ベリアルのことを一番知ってるであろう存在の信頼を落としてしまうわけにはいかない。

「にしても足技しかねえのかよ。もっと楽しもうぜ。」

「その足技にテメエは押されてんだろうが!」

 ボーマン(アイル)とランドルの身長差は9cm程度とそう差はないが、
 ランドルの足の長さによるリーチの差は僅かな差でも互いの武器は拳と足。
 しかもアイルの方はボクサーのようなファイトスタイルなので足より拳が強い。
 その結果短い拳は届かず、ランドルの足技の方がリーチの方がどうしても勝る。
 ついでに言うと、ボーマンが舐めた態度でいると言うのもいくらか影響してるだろう。
 ランドルが被弾することなく、繰り出される足技をボーマンは数発だが軽く受けている。

「こいつは余裕だよ。さっきから気絶前提の闘争心、温い一撃でしかないさ。」

 ボーマンの言う通り、ランドルは手加減してる状態だ。
 いくら問題のあるボーマンでも、本来の人格のアイルは少々ぶっきらぼうだが、
 決して悪人とか要注意人物でもない、副人格の悩みを持った団員の一人である。
 だからアイルに戻るまで、此処で気絶させるつもりでいたのもあるため、
 フェルディナンドの前で全力でフェザーとやりあい続けた時のようなことはしない。

「オラッ!」

「ッ!」

 そうこうしていると、一発ではあるが手ごたえのある蹴りが鳩尾を捉えた。
 たかが一発、されど一発。割と堪えたようで少々彼の表情が苦痛でゆがむ。
 蹴りの衝撃で、二メートルほど吹き飛ばされるボーマン。

「いってえなぁ……仮にも同じ団員なのに、やっていいことと悪いことがあんだろ。」

「その悪いことをやろうとしてるテメエに問題があんだよ!」

 一々言動が神経を逆撫でしてくる。
 フェルディナンド程ではないにしてもろくでもないのは聞いてたが、
 此処まで面倒な性格をしているとは思いもせず舌打ちをしてしまう。

「んじゃ、此処からは俺の攻めってことでいかせてもらうぜ。」

 拳を握りなおすと、笑みと同時に反撃と言わんばかりにボーマンが肉薄。
 瞬く間に距離を詰めていき、先ほどまで届くことのない拳の射程内に入る。
 間合いを詰められてはリーチの差による優位性はこの距離では無に等しい、
 素人の目線であればよけに専念する……と考えるだろう。

「セイッ!」

 だがランドルは拳の射程に入った瞬間、サマーソルトキックでを叩き込む。
 拳でガードされるものの、そのまま空中での回し蹴りによる追加の反撃。
 空中と言う自由を奪われやすい場所であろうとも、ランドルの蹴りは止まらない。

「随分攻めるじゃねえか。焦ってんのか?」

「まあな。あいつの時とは違うんだよ事情が!」

 空中で旋回して手で着地し、鋭いキックが迫り躱していく。
 シュラの時と違って、ボーマンは少なからず団員の情報を持っている。
 勿論シュラの方も本来なら釘を刺す程度で済ませず同行も選択肢の一つだったが、
 今は同行しないで正解だと思えた。アイルではなくボーマンであるならば話は別だ。
 確実に危険人物に団員の情報を流される。交友関係がどの程度かは不明にしても、
 団員の不利になるようなことだけは避けなければならない。同じ騎空団の一員であり、
 時にトレーニングルームで一緒に鍛錬したことのあるアイルに重責を負わせるのはさせたくない。
 ランドルは別にお人好しと言える人間ではないが、かといって自己責任と押し付けるつもりもなく。
 まあ、要するに後味が悪いので止めたい。それだけである。

「んじゃ、解禁するかぁ!」

 迫るランドルの足を、ボーマンは蹴り合って相殺。
 ボクサースタイルを取ることの多い彼ではあるが、
 足技についても別に鍛えてないかと言うと、そんなことはない。
 地下闘技場で鍛えられた身体は、足技だって十二分に扱うことができる。
 特に、何よりの問題として『殺意の有無』が二人の差を開いてる要因だ。
 ランドルの視点からは仲間だし、アイルに大怪我をさせるわけにはいかない。
 一方でボーマンにはそれがない。暴力的なスタイルを躊躇することなく発揮してくる。
 おかげで先の蹴りの威力はボーマンが勝ち、姿勢が崩れてしまう。

「チッ、遠慮なくやりやがって……先に謝っておくぜ!」

 姿勢が崩れながらも、空中で回し蹴りによりガードを強いらせる。
 そのまま地面に倒れるところを片手ですぐに姿勢を整えて、
 再度サマーソルトキックを叩き込み、空中で更に宙を舞う。
 空中を舞ったところに更にサマーソルトキックを叩き込む。
 三連続のサマーソルトキック。これが彼の技の一つ、

「手加減しねえぞボーマン! エアリアル・アサルトキック!」

 三度もサマーソルトキックを食らいながらも空高く吹き飛ばされる。
 ランドルは着地し、ボーマンは受け身を取って着地するも軽く息を乱す。

「これで気絶してくれたら楽だったんだがな。」

「アイルが望んだ闘争だ。気絶したらもったいないだろ?」

「テメエが望んでるだけでアイルは望んじゃいねえだろうが!!」

「どうだかねぇ。俺の人格はアイツの闘争心の具現化みたいなものだ。
 つまり、俺がいる限りはアイルの闘争心がまだ秘めているってことさ。」

 返す言葉はない、と言うよりどう返したものかとなる。
 姉となるジェシカも、アイルの事情を知ってるジータも此処にはいない。
 いや、いたところで止まってくれるかどうかと言うと怪しいだろう。

「なんか上から聞こえると思ってみたら、大丈夫かよランドル!」

「イタルか。悪いがちょっとあいつに手を出すのは待ってくれ。知り合いなんだ。」

 畳みかけようとしたその時、
 道にでも迷っていたのかようやく達がウイングデッキに到達する。
 元々ここへ来るには展望室からのエレベーターか、空を飛ぶかの二択だ。
 初見で船内を巡っていれば迷いもするだろうと、ランドルは納得する。
 と言っても、遅れたからと言って責める気はない。あくまで団内の揉め事。
 決着がつこうとつかなかろうと、彼に介入させるわけにはいかなかった。

「いや待てってランちゃん! こっちは二人で相手は一人だ。
 この状況で無駄に体力を使うなんて俺ちゃんでも分かることだぜ?」

 構えるランドルの肩を掴みながら制止する達。
 だが二対一と言う優位な立場であろうとも、彼は譲る気はない。
 確かに数は有利だし、格闘が基本となるボーマンに武器が支給されても、
 殆どの確率で戦力にならないだろうが、これだけはこっちの問題だと。

 そう思っていられるのも、右肩がバキバキと異音を立てたら別だが。

「ガッ、アアアアア!?」

 骨が折れた、と言うより骨が砕けた。
 そんな感覚に襲われ思って咄嗟に回し蹴りで振り払う。
 戦闘でかいた汗は一気に痛みによる脂汗へと変わっていく。
 スーパー手袋で得た怪力は、肉体派である達ならば人の骨を折ることが可能だ。

「てめ、イタル……何して、やがる!」

「今しかないと思ったんだ。悪いな。」

 激痛でありながらも地面を蹴って距離を取る。
 そのついでに蹴りを叩き込むも、両腕でガードされてダメージは皆無。
 距離を取ったと言っても、ウイングデッキはそこまで広いフィールドではない。
 エレベーターは屋上にあるのですぐに逃げれるだろうが、ボーマンがそれを許すとは思わない。

「あーあー、腕が使い物にならなくなっちゃって。
 いや、別にいいのか? 足技だけで戦うんだからな。」

 煽りの言葉に何も返すことはしない。言ったところでまともな返事は期待できない。
 足技と言っても腕は片腕が折れてバランスが取れなければ、威力も相応に下がってしまう。
 それは嘗てソリッズに指摘された上半身のバランスのことが似てることを思い出す。

「そっちの坊主はどっちを助けるんだ?」

「んー、そうだな……アンタと手を組む方が面白そうだからな。」

(今しかねえ!)

 二人が呑気に会話してる隙を見て、ランドルはバックステップする。
 エレベーターまで走り切れる自信はなく、ウイングデッキから飛び降りる方が、
 確率的にまだ逃げ切れる可能性はある。夜の闇に乗じて逃げおおせるか。
 このまま戦えないと判断はとても正しいものだ。

「……は?」

 だが壁があった。見えない壁が邪魔をして彼に飛び降りることを許さない。

 ランドルは知らない。知るはずのないことだ。
 この展望台に置かれたウイングデッキは、空中でも使うことが多い。
 その為、バトルフィールドから落ちてしまわないようにバリアが張られている。
 互いに接近戦で、大きく吹き飛ぶことがなかったがゆえに気づくことのない仕様だ。

「闘志を『燃やす』。」

 ランドルはただ後ろへ下がり、壁にぶつかっただけ。
 余りにも大きな隙を晒した彼の顔面を逃すことなく、
 怪力と化した達の拳が迫ったのが彼の最後の光景だ。
 顔面を砕き、多量の血がウイングデッキに散っていく。

【ランドル@グランブルーファンタジー 死亡】





「あっさりと死ぬもんだな。」

 歴戦の騎空団の団員と言っても、下は掃いて捨てるほどいる。
 一応、ランドルは団員の中でも魔物や賊など戦いを仕事としている人間だ。
 だから弱者とは思わないが、思ってた以上に退屈な男であくびが出そうだった。
 こんなのでは腹ごなしにもならない。そこいらの賊とやり合う方がまだましである。

「で、そっちはどうする? 15歳のガキを殺す罪悪感はない感じか?」

「……いいや、やめておく。仇討もしないってことは優勝狙いなら都合がいいだろ?」

 一応殺し合いには乗っているのだろうし、
 医務室に行っていたお陰で、MP回復のためのペンと紙も用意できた。
 多少殴り書きではあるものの大量の『燃やす』の字が彼のMPを戻していく。
 ウイングデッキに遅れたのは、それをやっていたと言うところもあったりするが。

「とは言え、ただ譲るのはいただけねえな。
 こいつの支給品を一つだけ貰う。それで手打ちだ。」

「適当に引いた奴がはずれでも文句を言わないならOKだ。」

 交渉成立し、適当な支給品を投げ渡される。
 投げ渡されたものをチェックしながらそれをしまい込む。
 少なくとも使い道がない支給品、と言うわけではなさそうだ。

「よこしてくれたついでに、うちの団員の情報でも流しておくか。
 全員よく知る間柄ってわけじゃないが、結構いい感じにいるもんでね。」

「そりゃどうも。」

 顔面がひしゃげたランドルの遺体を置いて、二人はエレベーターへと乗り込む。
 ボーマンにとってはアイルにはいい手土産が、達にとっては支給品を得ることができた。
 比翼連理の存在と、ライバルと高め合う男はもうどこにもいない。
 あるのは、目の前の殺意にばかり気を取られた哀れな男一人だけだ。

【Aー2 ブレイブアサギ号/黎明/1日目】

【奥伝達@ウェルベルムー言葉の戦争ー】
[状態]:オベロンに対する恐怖(大)、MP消費(中)
[装備]:スーパー手ぶくろ@ドラえもん、投げナイフ(7/10)、紙とペン(少なくとも1枚)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×3(自分1、ランドル×1~2)
[思考・状況]
基本方針:優勝して、ベルとの未来を取り戻す
1:あの化け物(オベロン)には最大限の警戒、あんな化け物までいるのか⋯⋯
2:嬢ちゃん(キャメロット)とはまた戦うことにはなりそうだ
3:隙を見てランドルを始末するか、集団を形成したら混乱を起こすか……どうする?
[備考]
※参戦時期は死亡後
※ボーマンからグランブルーファンタジーの関係者の情報を得ました。

【アイル@グランブルーファンタジー】
[状態]:ボーマンの人格、ダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~4(自分×1~3、ランドル1)
[思考・状況]
基本方針:好きにやる(ボーマン)
1:団長を殺せればいいんだがな。
2:好き勝手暴れる。最悪あいつら(シド、北ノ城)も殺す。
3:いい手土産ができたな、アイル。
[備考]
※参戦時期はボーマンの3アビフェイトエピソード後。
※現在アイルは人格がボーマンにのっとられています。
 ビジュアルはアイルにボーマン(闇SSR)の格好になります
※アイルが目が覚めるのは6時間後ですが、何かしらで早まるか遅くなります


027:いつまでどこまでなんて 投下順 29:修羅を切る
時系列順
017:言葉は必要ないさ ランドル GAME OVER
奥伝達
013:あの日見た世界をもう一度 ボーマン [[]]

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最終更新:2026年05月24日 17:23