「ヒイロそっち行ったぞ!」
「おう!」
蒼空で行われる殺し合いの一角、地図で言うならE-7にて、二人の少年がNPC相手に戦闘をしていた。
NPCは包丁を持った兎、シャンフロで序盤のモンスターとして登場するヴォーパルバニーである。
本来ならレベル1のサンラクでも倒せる相手。七つの最強種のうち一つ、ウェザエモンを超えた彼ならば、最早歯牙にもかけない相手である。
ならばなぜ戦っているかというと、一つは単に向こうが襲ってくるから。
二つ、互いの力量を確かめるため。
ヒイロの人となりはすぐに分かったものの、どれくらいの強さなのかはまた別の話。
とはいえこれもすぐに分かる。
ヒイロはヴォーパルバニーを特に苦戦することもなく倒していた。
元の世界にダンジョンは存在するが、ヴォーパルバニーは初見であるものの、所詮は初心者向け。
今のヒイロなら苦戦するほどの相手ではなかった。
そして最後、これはお互いに武器の性能を確かめるためだ。
二人とも業物ではあるものの、本来の得物の代わりに別の物を支給されている。
ならば使い心地を確かめるのは必然だ。
特にヒイロは魔導触媒器じゃないせいで、魔法が使えない。
それならば魔法に頼らない戦い方をしなければならない。
まあ元々それなりの修練は積んでいる。戦えない、という程のことはなかった。
一方サンラクも、両手剣なのは理解しているが見た目はハリセン。
どこからが刃なのかが、リーチがどれくらいなのかが分からないと迂闊に触れなくて普通に怖かった。
どういう仕組みでこんな武器を作れたのかと思わないでもないが、すぐに関係ないし気にしてる場合じゃないと割り切る。
自分がVRゲームのアバター、ヒイロがゲーム世界に転生したということもあり、どこかのゲーム世界のネタ武器を持ってきたのかもしれない。
自分の武器じゃないのはこの際諦めるとしても、せめて普通の武器にして欲しかった。
『初めましての方はいるだろう』
そうこうしている間にヴォーパルバニーは全滅し、直後にレデュエの放送が流れ始めたので、二人はひとますそれに集中する。
とりあえず名前を呼ばれた死者の中には、二人とも知り合いはいなかった。
なので死者を悼む気持ちは多少あるが、それよりも残りの生存している参加者に注目する。
結果、知人がいたのはサンラクだけだった。
「カッツォか……」
オイカッツォ。
本名魚臣慧。勝率八割を誇るプロゲーマーであり、自身と同じようにシャンフロアバターで参加しているなら、戦闘力は頼りになると思っていいだろう。
まあ格ゲーを得意にしているので単純戦闘ならいいだろうが、この殺し合いは幕末と鯖癌の悪いところ取りと言ってもいい。
幕末を苦手にしており、鯖癌もやったことなかったはずのカッツォを、無条件でアテにするには、ちょっと不安があった。
「それにあいつユニーク自発できないマンだからな。
最悪、この状況をユニークシナリオと勘違いして優勝狙いになっている可能性もゼロじゃない……かもしれん」
「マジかよ」
「いや、多分大丈夫だと思う。
というか、そうじゃなかったら笑えねえ」
最悪の可能性として一応念頭に置きつつ、まあ大丈夫だろうと思いついておきながらぶん投げるサンラク。
それはそれとして、ヒイロは1人の参加者に気づく。
「おい、織田信長がいるぞ」
「すっげぇ悪そうな顔してるな」
歴史上の人物が自分たちと同じ島にいるという衝撃も、既に異世界やらゲーム世界の具現化を知ってしまえば小さい物のような気がしてくる二人。
代わりにヒイロは、名簿で信長の上にあるいくつかの人物に注目していた。
「このゴスロリっぽい服を着た女の子二人から百合のオーラを感じる……」
「そんなの見て分かるのかよ」
ヒイロが注視するのは遠野ハンナと橘シェリー。
確かに彼女たちに面識はある、というか友人同士ではあるが、そんなこと彼には知る由もないはずだ。
にも拘わらず自信満々に断言する様を見て、サンラクは尋ねる。
「ああ、俺は女の子が二人隣り合ってるのを見るだけで、百通りの関係性を妄想することができるからな」
「つまり何も分かってねえ!!」
そしてヒイロが自信満々に断言した内容に、サンラクはツッコミを入れるのだった。
あれだけ自信満々だったのに実は妄想だったと知れば、そうなるのも当然だろう。
それよりサンラクは名簿の更に上にいる別の参加者たちに注目していた。
「それより、この上の方にあるここ見ろよ」
「ん?」
そう言ってサンラクが指さしたのは、名簿の折神家親衛隊とタギツヒメと書かれている部分。
もう少しメタ的に言うなら、刀使ノ巫女勢だった。
「この此花寿々花って子はお嬢様系、獅童真希って子は王子様系っぽいからなかなか王道のカップリングに見えるけど、それがどうかしたか?」
「ツッコまねえぞ俺はもう。
そうじゃなくて、その横にある名前見ろよ」
いい加減慣れてきたヒイロの妄言をスルーしつつ、サンラクは寿々花と真希ではなく更に横にある名前を改めて指さす。
そこにあるのは――
「燕結芽って名前が二つあるな……?」
「ああ、こいつをどう思う? 単なる誤植とかじゃないとしてだけど」
サンラクの問いにヒイロは少し考える素振りを見せ、やがて己の推測を口にし始める。
「これは百合に限った話じゃないが、同一カップリングという概念がある」
「……なんだそれ?」
かと思ったらいきなりカップリングについて話され、呆気にとられつつもとりあえずサンラクは続きを促す。
「簡単に言うなら、同じキャラ同士で組むカップリングだな。
公式で続編が出た時に、前作とその続編の同じキャラだったり、公式で性転換してたら性転換前と後でカップリングを組んだりするんだ」
「でもこの二人の燕は年齢は名簿の画像を見る限り年齢は変わらなさそうだし、性別も一緒に見えるぞ」
「だからおそらくだが、この二人は平行世界なんじゃないかと俺は思う」
「平行世界……」
ヒイロの言葉を思わずオウム返しにするサンラク。
異世界があるのだから平行世界だってあるだろうし、その中には別の人生を歩んだ者同士がそれぞれがいたとしても、最早おかしいとは思えない。
ただ、自分たちがなんとかしなければならない殺し合いの主催者たち、ラスボス勢の能力の未知数さには、流石に怯みそうになる。
「だからって諦める気は更々無いぜ。百合を守る為ならな!!」
サンラクと同じような考えにたどり着いているのかいないのか、いずれにせよ主催者たちの強大さは理解しているだろう。
にも拘わらず一切考えを変えることなく、反逆と性癖を高らかに叫ぶヒイロ。
「……ああ、そうだな」
そんなヒイロを見て、サンラクもまた決意を新たにする。
内容も難易度も間違いなくクソゲーなこの殺し合い。
されどクソゲーならば百戦錬磨。必ず攻略してやると。
とりあえず二人は目的地を決めるべく地図アプリを開く。
ヒイロと関連する施設はないが、サンラクと関連する場所、墓守のウェザエモンの地はすぐに見つかった。
もしかしたらカッツォもそこに向かうかもしれない、という思考になるのも当然。
ヒイロもアテはないのでそれに賛同し、目的地はあっさりと決まる。
だがそれはそれとして、一つ疑問に思うことがあった。
「キャメロット城って、名簿にもあったよな?」
「あったな。
擬人化系のソシャゲかなんかから参加者も呼んだのか?」
「あんまり詳しいわけじゃないけど、確かアーサー王がいた城だよなキャメロットって」
「そうなのか?」
「で、モルガンってのが確かアーサー王の姉だったはずなんだよ」
「……じゃあこの殺し合い、アーサー王がなんかの鍵なのか?
でも主催のベリアルとレデュエって、アーサー王と関係あるのか?」
「そうなんだよなあ……俺も知らないけど関係あるように見えないんだよな……」
疑問を呈すヒイロだが、ペンシルゴンがいりゃ詳しい説明できたかもなあ、などと愚痴るサンラク。
当人がアーサー王、弟が円卓の騎士のうち一人をモチーフにしたHNを使ってるんだし、もうちょっと元ネタ知ってるだろう、たぶん。
「俺、ホームズなら全部分かるんだけどな。
シャーリー・ホームズっていう、ホームズやワトソンなど主要な人物を女性化した小説があってだな――」
「ほーん」
ヒイロの何気に凄い知識を受け流しつつ、これ以上は話すこともないだろうと二人は出発の準備をする。
「なんか防具でも支給されてりゃよかったんだけどな」
「俺、あっても呪いのせいで上半身の防具装備できねーんだわ」
「MMOでそれはクソゲーなんじゃないか?」
などと会話しながら二人の準備は終わり、ひとまず墓守のウェザエモンの地を目指そうとしたところで
「貴様らは、こんなところで何をしている?」
一人の男に話しかけられた。
◆
ティンタジェル城に逃走されたバルバトスは、あてどなく殺し合いの会場を進んでいた。
道中、レデュエの放送も入ったが彼の意識を大いに割くようなことはない。
スマホは見慣れない道具ではあるものの、天地戦争を戦い抜き、上級晶術を使いこなす彼の頭脳ならば別に苦労するものではない。
そして名簿にも地図にも、彼の知る名前はどこにもない。
もし名簿にカイルやディムロスの名前があれば、バルバトスは血眼になって探しただろうが、そうでないのならどうでもいい。
適当に出会った参加者を殺していくだけだ。
さっき逃がしたティンタジェル城もまた出会えば今度こそ殺すが、その前に野垂れ死にするなら別にそれでもいい程度の関心しかない。
それから少し歩くと、何やら騒がしく会話している二人組を見つけた。
ここがどういう場所か分かっているのか、などと思うバルバトスだったが、別にどうでもよかったので特に気にすることもなく声をかける。
「貴様らは、こんなところで何をしている?」
バルバトスは声をかけたと同時に、斧を振りかぶって勢いよく振り下ろす。
別に不意打ちをすることもできた。
遠距離から晶術を打ち込めば成り立っただろう。
だが相手がディムロスかそれに近い実力者ならいざ知らず、この程度の相手にそんなことをする気にはならなかった。
ズザザザザ
一方、突如襲撃した男、バルバトスの斧を咄嗟に飛んで避けたサンラクとヒイロの二人は即座に戦闘態勢を取る。
殺し合いに乗った参加者がいることは想定していた。不意打ちもまあ考えてた。
サンラクとしては幕末で受けた様々な天誅よりはマシか、と思いながら目の前の敵を見る。
「やべえな、ウチの師匠の四百歳エルフと同じタイプか……?」
ヒイロはバルバトスを見て思わず言葉をこぼす。
魔導触媒器(マジックデバイス)が十全にあっても勝てないかもしれない、と目の前の相手と自分の差を分析する。
ならばやり方はこうだ。
「サンラク! 俺は一旦下がる!!」
「おう!!」
ヒイロは一旦下がることにした。
とは言ってもサンラクを置いて逃げる訳ではない。
基本的にはサンラクがアタッカーを務め、ヒイロは中距離を保ち要所要所でサポートするつもりだった。
刀は業物であり、一般人に毛の生えた相手程度なら戦えたとしても、バルバトス相手にはあまりにも不足している彼の運用としては、残念ながら妥当と言うべきだろう。
それが十全にこなせるならば。
「男に後退の二文字はねぇ!!」
だが現実は違う。
ヒイロが後ろに距離をとった瞬間、バルバトスが何かを叫ぶ。
「絶望のシリングフォール!!」
するといきなりヒイロの頭上から岩盤のようなものが降ってきた。
これはシリングフォール。地属性の中級晶術であり、バルバトスが使用し、ヒイロを攻撃したのだ。
「ヒイロ!?」
「大丈夫だ! 俺にかまうな!!」
思わずヒイロを心配するサンラクだが、当人の言葉を受けて即座にバルバトスへと向き直る。
ヒイロは頭から血を流しフラつきながらも、何事もなかったような表情で立ち上がろうとする。
心配なのはそうだが、だからといって治療している余裕はない。
強敵なのは百も承知だが、速攻で倒すべくサンラクはバルバトスへ斬りかかった。
ガキィン!
サンラクのハリセンをバルバトスは斧で受け止め、金属音が響く。
紙でできているであろうハリセンを受け止めたのに金属音が響いたことに、バルバトスは一瞬訝しむ。
”ムーンジャンパー”
その一瞬を付き、サンラクはバルバトスの頭上を飛び越え背後に回った。
ムーンジャンパーは跳躍に補正をかけるサンラクの所持スキル。これで人間を飛び越えるだけの跳躍を瞬時に繰り出したのだ。
そして背中を刺すべく、速やかにハリセンを突きつけようとする。しかし――
「俺の背後に立つんじゃねえ!!」
サンラクの攻撃よりも早く、バルバトスの左手がサンラクの頭を掴み、そのまま前方へと投げ飛ばす。
咄嗟に空中で回転し態勢を整えることでダメージなく着地するが、空中で彼の右手からハリセンの片割れが零れ落ちてしまった。
当然、バルバトスがそれを見逃す理由はない。
彼はサンラクの元へ走り斧を振り下ろそうと振りかぶる。
「はっ。剣士だからって、剣が無きゃ戦えないわけじゃねえぞ」
”インファイト””ハンド・オブ・フォーチュン”
だがサンラクはハリセンを拾いに行くことなく、二つのスキルを発動。
インファイトは超至近距離での格闘ダメージに補正を与えるスキル。
ハンド・オブ・フォーチュンは、ダメージを与える際にSTRではなくLUCでダメージを算出する格闘スキル。
また、このスキル発動の証として拳が光り、そのままバルバトスを殴る。
「ぬおっ!?」
まさか殴りかかってくるとは思わなかったことと、想定以上の拳の威力に、バルバトスは思わず怯む。
その隙にサンラクは落としたハリセンを回収し、素早く再び攻撃を仕掛ける。
「灼熱のバーンストライク!!」
しかしサンラクの攻撃より早く、バルバトスは空より炎の槍を幾度も降らせる。
だがその槍はサンラクからすれば避けられないものではない。
そう、サンラクは。
「やべえ!!」
サンラクは槍が向かうのが自分だけでなく、ヒイロにも向かっていることに気づき、慌てて彼の元へひた走ろうとする。
だがその前に、少しでも攻撃の頻度を下げるべくあるスキルを使用した。
”致命刀術【水鏡の月】”
サンラクがスキルを発動させると、バルバトスの背後にまるで波紋が広がった水面のようなものが移ったかと思うと、そこから十字のような飛び出し、そのまま背中を打ち付ける。
このスキルは敵の背後に攻撃判定を発生させるものだ。これにより敵の注意を背後に向け、隙を作りだすのである。
しかし――
「こんなこけおどしが俺に通じると思ったか!!」
バルバトスには通じない。
歴戦の戦士たる彼は、殺気や気配の有無により、攻撃の虚偽を見抜いたのだ。
よって炎の槍は変わらず、サンラクとヒイロの元へ向かう。
”スケートフット”
サンラクは地面を滑る、というよりは超低空を滑空し移動することで、ヒイロを抱え炎の槍を躱し続ける。
それからすぐに炎の槍は止み、サンラク達とバルバトスの間には一定の間合いが生まれていた。
サンラクは考える。
単純な戦闘なら、おそらく相手の方が強い。だが勝ち筋は見えないわけではない。
少なくともシャンフロプレイ初日に遭遇した、夜襲のリュカオーン程の力の差は感じない。
しかしそれはヒイロがこの場にいなければの話になる。
相手は自分がヒイロを見捨てないことを利用して、さっきみたいに巻き込むような攻撃を仕掛けてくるだろう。
そうなれば、戦いは相手のペースになる。
それは、自分のペースを押し付けることで戦う俺からすれば、途方もない不利を意味する。
ならば実質的な人質作戦を封じるために、猛攻を仕掛けるか。
ここからなら、適当に自傷ダメージでHPを減らしてからバフスキルの”クライマックス・ブースト”を使えば勝ち目はある、だろう。
――正気か?
コンティニューなどない殺し合いの中で、自ら命の残数を減らす真似がそう簡単にできるわけがない。
エムルが見ればヴォーパル魂がないと言うだろうか。
だとしても関係ない。
サンラクは明らかに戦いの精細を欠いていた。
その証拠に彼は、戦闘開始直後にしか使えないスキル、”イグニッション”を使っていない。
何かの意図があっての行いではない。単純に使い損ねただけだ。
彼は、命がけの戦いに恐怖していた。故に普段しないようなミスをした。
死ぬような痛みなら知っている。かつてのサバイバル・ガンマンなら日常だった。
理不尽な死なら知っている。そんなもの、辻斬・狂想曲:オンラインなら当たり前だ。
守りながらの戦いなら知っている。NPC護衛クエストなんてよくあることだ。
自分より強い相手との戦いなら知っている。シャンフロだとリュカオーンのせいでほぼそれしかできない。
しかしそれは全てゲームの、遊びの中の話だ。
いくらでも取り返しのつく世界の話だ。
こんな本当の命をかけた戦いではない。
己の行動の結果、自分だけでなく他人の命が消えるかもしれない話ではない。
「ジェノサイドブレイバー!!」
恐怖に駆られるサンラクに対し、バルバトスは遠距離から攻撃を仕掛けた。
彼の斧から放たれた闘気は、さながらビームのように向かっていく。
それをサンラク達は必死に飛びのいて躱した。
「『サンラクは逃がす』『百合は守る』
「両方」やらなくっちゃあならないのが、「百合の守護者」のつらいところだな」
一方、ここまで二人の成すがままだったヒイロは、小さく呟き何かを決意する。
そして懐から何やらカードのようなものを取り出したかと思うと、即座に使用した。
「サイクロン発動!!」
ヒイロが叫んだかと思うと、彼の手にあるカードが光る。
すると同時に少しずつ空気が渦巻いていくかと思うと、やがて巨大な竜巻が生まれ、サンラクを飲み込んだ。
ヒイロが使ったカードは、参加者の中で言うなら鬼柳、クロウ、ロットンが確実に知っており、使用者当人もどこか見覚えのあるもの。
デュエルモンスターズ、あるいは遊戯王OCGと呼ばれるカード群の一角。
名前はサイクロン。
本来なら場にある魔法、罠カードを破壊するカードだが、この蒼空の殺し合いではそれだけではなく、竜巻を参加者に向けて使うことで対象1人をランダムなエリアへと吹き飛ばす効果も与えられていた。
無論、会場の外や禁止エリアには行かないように調整されたうえで。
「ヒイロ、お前捨て石になる気かよ!?」
「俺ら二人が共倒れになるより、どっちか生き残った方がこの島にある百合を守れる可能性が高くなるだろ?」
「」
ヒイロの言葉に絶句するサンラク。
百合に対する情熱はおかしいと思っていた。
だが本物の命を捨てる程だとは思っていなかったのだ。
しかしそれに何かを言うより先に、サンラクはこのエリアから飛ばされていった。
一方、バルバトスは怒り心頭だった。
逃げられるというだけなら、さっきも経験した。
しかしそれは参加者の自力を使ってのことだ。
新手が割り込んだ結果ではあるが、本物の戦争で人数の制限などあるわけがない。卑怯も外道も当たり前だろう。
だからこそ、そこまでの執着はなかった。
しかし、これは違う。
敵に逃げられたのは、天地戦争時代にいくらでもいた雑兵同然の、目に入れる価値もない虫同然の奴が、姑息なアイテムを使ったからだ。
「アイテムなぞ使ってんじゃねぇ!!」
バルバトスは怒りに任せ、魔法で作られた闇の刃と十字架でヒイロを切り刻む。
鍛え上げられた戦士なら大した痛手でもないかもしれないが、今の彼には大きな傷。
全身を血にまみれさせながら、刀を支えに辛うじて倒れないようにしつつも膝をつく。
そんな彼に、バルバトスは悠然と近づいていく。
生きてこそいるが、もう抵抗する余力などないと判断したために。
しかしそれは過ちだった。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「何ィ!?」
なんと、ヒイロは膝をついた体制ではあるものの刀を斬り上げ、バルバトスに一太刀入れたのだ。
咄嗟にバックステップを決めたのでダメージは小さいが、斬りかかってきたことには驚くバルバトス。
無論、ヒイロのこの耐久力には病的なまでの百合への愛着だけではなく、明確な秘密がある。
もしこの場面を映像で見ていたのなら、彼の背負っているリュックが他の参加者と違うものだと気づけただろう。
参加者の中なら、宇沢レイサが見覚えがあるかもしれない。
なぜならこれはシャーレで支給されるスリングドライバックで、装備するとHPと防御力が上がる防具である。
ヒイロの生身なら本当に余力すら残さなかっただろうが、装備品のおかげで一太刀入れるだけの力が残ったのだ。
「虫けらがぁ!! 俺の戦いの邪魔をした挙句、体に傷までつけるとは……覚悟はできてるんだろうな?」
「はっ」
ヒイロの無意味としか思えない抵抗に怒るバルバトス。
その怒りを鼻で笑って受け流し、ヒイロは強く言い放つ。
「俺は百合ゲー史上最も嫌われた男、百合に挟まるお邪魔虫三条橙色だぜ?
だったら邪魔するに決まってるだろうが! 百合を壊そうとする、女の子を泣かそうとするお前のこともな!!」
「屑が!!」
バルバトスの斧の一撃がヒイロの頭を叩き潰し、命を一抹も残さず奪い取る。
とはいえ彼の怒りは収まらない。
名簿をもう一度確認すれば、ヒイロが逃がした少年の名前などすぐに分かる。
サンラク、と下に書かれた顔写真を見ながらバルバトスは考える。
命がけで逃がされた意趣返しとしてこの鳥頭の小僧、サンラクを俺の手で血祭りに上げてやろう、と。
竜巻で飛んで行ったが、方角は覚えている。だが今から追いかけたところで、追いつけるとは思えない。
ならば、ここはあえて違う場所を目指し、待ち構えるというのも一つの手だ。
この殺し合いに抗うなら過程はどうあれ、いずれ自分と戦わなければならないのだから。
バルバトスは思案する。サンラクを追うか否かを。
サンラクが呼び水となり、悪魔との死闘が再び始まるのか。
あるいは別の場所で悪魔の殺戮が始まるのか。
それを知る者など、蒼空の中でも外でもいるはずがなく。
【三条橙色@男子禁制ゲーム世界で俺がやるべき唯一のこと(漫画版) 死亡】
【???/深夜/一日目】
【サンラク@シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~(アニメ版)】
[状態]:健康、本物の殺し合いに対する恐怖(大)
[装備]:ハリセン@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2(確認済み)
[思考]:殺し合いはしない
1:ヒイロ……
2:カッツォと合流したい
3:これが本物の殺し合いか……
4:この殺し合い、アーサー王に何か意味があるのか?
[備考]
※参戦時期は少なくともウェザエモン戦終了以降です。
※どこに飛ばされたかは次の書き手氏にお任せします。
【E-7/深夜/一日目】
【バルバトス・ゲーティア@テイルズオブデスティニー2】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、怒り(中)
[装備]:凍土の巨斧@御城プロジェクト:Re
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:皆殺しだぁ!
1:サンラクを追うか否か、いずれにしても俺の手で殺してやる
[備考]
※参戦時期は採用され次第後続にお任せします
※E-7に以下の物が放置されています。
三条橙色の遺体、天の叢雲@ファイナルファンタジーシリーズ、サイクロン@遊戯王OCG(6時間使用不能)、スリングドライバック(LvMAX)(中に基本支給品一式)@ブルーアーカイブ
【サイクロン@遊戯王OCG】
三条橙色に支給。
速攻魔法
①:フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
(遊戯王ニューロンより引用)
本ロワでは使用すると魔法でできたもの(結界など)を破壊する。ただし、対象に破壊耐性がある場合はその限りではない。
また、参加者に向けて使うと、参加者一人をランダムなエリアに吹き飛ばす竜巻を発生させる。吹き飛ばされた参加者は島の外、あるいは禁止エリアに落下することはない。
6時間に1回使用可能。
【スリングドライバック(LvMAX)@ブルーアーカイブ】
三条橙色に支給。
装備すると最大HP+12000/防御力+1600/最大HP+5%の効果を得られるアイテム。
本ロワではヒイロのリュックの代わりにこのバックが使われており、持っているだけで効果を発揮するが、別のリュックに入っているときはその限りではない
最終更新:2026年05月18日 13:43